満天星国

新型エアバイクの開発:ブラウエ=アドラー

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doudan

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だれでも歓迎! 編集
L:新型エアバイクの開発 = {
 t:名称 = 新型エアバイクの開発(イベント)
 t:要点 = 一般性能要求{
 新型エアバイクはピケ、サイドカーの成功を受けて生み出された機体である。少々複雑になっても構わないので高性能な機体をということで、機体は大型化され、武装、装甲がめぐらされ、選択式ではあるものの閉鎖式防弾キャノピーも装備された。新基軸として同乗者2名がそのまま手持ち武器で戦えるように作られている。

 t:周辺環境 = 平原
 t:評価 = なし
 t:特殊 = {
  *新型エアバイクの開発のイベントカテゴリ = 藩国イベントとして扱う。
  *新型エアバイクの開発の位置づけ = 生産イベントとして扱う。
  *その国用の新型エアバイク(乗り物)を作成できる。
 }
 t:→次のアイドレス = なし

L:ピケ・パンツァー = {
 t:名称 = ピケ・パンツァー(騎跨装備)
 t:評価 = なし
 t:特殊 = {
  *ピケ・パンツァーの騎跨装備カテゴリ = バイクとして扱う。
  *ピケ・パンツァーはパイロットとして歩兵もしくはそれに準拠した1名を必要とする。
#銃を使い、かつ、I=Dに乗らないで攻撃行為ができるもの。
  *ピケ・パンツァーは装備者のほか2名を輸送出来る。
  *ピケ・パンツァーは出撃時に燃料3万t、資源1万tを必要とする。
  *ピケ・パンツァーを装備する歩兵・偵察兵のARに+2する。同乗者も同様に扱う。
  *ピケ・パンツァーを装備する歩兵・偵察兵の中距離移動で消費するARは1である。同乗者も同様に扱う。
  *ピケ・パンツァーは中距離戦闘行為をすることが出来、この時中距離戦闘能力に評価+4される。燃料を1万t消費する。
  *ピケ・パンツァーの人機数 = 5人機として扱う。
 }
 t:→次のアイドレス = 非人型I=Dの開発(イベント)




BIGINA-B03 ピケ・パンツァー“ブラウエ=アドラー”
所属   わんわん帝國
全長   5.3m
全高   2.1m
乾燥重量 940kg
使用用途 陸戦
機動性  最高
センサー 微弱
装甲   普通
搭乗者  3名
固定武装 12.7mm重機関銃2門(同乗者席側面)
     5.56mm近接防御機銃2門(機体前部)
     RHEES(排熱再利用)式レーザー砲(機体後部上面)2門
     APKWS(先進精密攻撃攻撃兵器)2門(機体後方側面 左右24発ずつ)
推力   静止1320kg
ステーション 2(サイドカー/専用重機関銃・座席専用)
装備可能武装 閉鎖式防弾キャノピー

機能:空中・水上移動、姿勢制御コンピュータ、機体状況をパイロットに伝えるコンタクト型網膜投影式モニター、ピケシリーズとのデータリンク、側車による2名随員




歩兵の高機動化。それに成功した稀有な兵器こそがピケ。

 歩兵のみならず、ありとあらゆる人員をも高機動化させる。それに成功したのがサイドカー。

  その後継たる機体に課せられたのは、両者をさらに上回ることであった。


□ピケ・パンツァー概要

1.構造
 (1)概要
 (2)RHEES
 (3)推力
 (4)装甲
 (5)操縦方法
 (6)その他
2.武装
 (1)RHEES式レーザー砲
 (2)12.7mm重機関銃
 (3)APKWS
 (4)5.56mm近接防御機銃
 (5)その他装備
3.マニューバリスト
4.試作型開発史
 (1)乗り越えるということ
 (2)訪れる転機
 (3)新しい姿、新しい形
 (4)総括

5.満天の星のひとつ



1.構造


(1)概要

新型の形状は地を這う戦闘機である。その主翼は同乗者席を供えているだけでなく、地面効果を利用できるよう設計されている。これによりそれほど速度が出ていなくとも十分な揚力が得られるようになり、常に反重力機構を動かさなくてもよくなった。これはエアバイクにとって重要なメリットであった。これによって必要なエンジン出力の大幅な削減を実現。発電のためのジェネレーターを搭載する余裕が機体を溶かさない程度には確保された。
代わりに一定の速度で走り続けないと十分な高度が得られなくなるというデメリットができたが、速度とエネルギーの問題の方が優先された。何より、もともと高速移動を目的としているため、速度が落ちることは起こる可能性が少ないと判断された。
これでも実用にはまだ遠い有り余る熱が技術者の頭を悩ませたが、これはRHEESという新機能によって解決を見ることとなった。

(2)RHEES

膨大な電力消費に伴う熱量問題。これを解決する手段として、旧ビギナーズ王国では新領民を含む国民から識者を集めシンクタンクを結成。その結果としてRHEES(Radiated Heat Exchange to Energy System)という新機軸のエネルギーシステムが構築された。
直訳すれば『排熱再利用システム』となる。排熱を電力及び電磁波に変えて再利用しようというものだ。主幹となる部品が輪状、リースのようになっていることからこう名付けられた。
具体的には、エンジンから放出される熱をリースとなっている高伝導金属で吸収。リースに集められた熱はそのまま中心にて電磁波へと変換される。(これらの変換機構は機密であるため概要のみが公開されている)この電磁波の大部分が電力、エネルギーへと変換されてレーザー砲の動力となり、一部がレーザーの励起光にそのまま用いられる。このシステムの使用により従来のレーザー砲搭載機体に比べおよそ47%の電力消費でレーザーを稼動させることが可能となった。

(3)推力

新型になってもその動力はエンジン駆動の浮遊機構(反重力ジャイロ)、および機体後部のロケットブースターがメインである。ただ地面効果の利用により、浮遊することよりも前進する機能に機体の速度、機動性が左右されることになったため、浮遊機構とブースター双方について見直しが入った。
浮遊機構は地面効果が得られない地面を走行する場合に備えて、それ単体で十分にピケクラスのスピードが確保できるだけの推力と浮遊力を持っている。それだけに、大型化は著しかった。共和国からの新領民による技術提供による共和国製のホバーエンジンのノウハウの取り入れも行われ、従来のエンジンと同じサイズで約1.3倍のエネルギーを発揮することが可能となったが、大きいことに変わりは無かった。それでも副次的に発生する熱量はRHEESで処理されるためにそれでもよいと判断され、その巨体を新型の後部へと収めることとなった。浮遊機構の噴出口についてはベクタードノズルを採用。今までに無い小回りの利いた動きを現実のものとした。
ブースターについては栄光に使われたテトラバーニアを応用する方向で開発が進められ、機体背部に大型のブースターが取り付けられた。これは普段は開かれた状態で使用され、進行する方向にあわせてその噴出口の角度を変化させることにより、より柔軟な機動を可能にしている。

(ブースターの図)

サイドカーでは側車の下部全面に浮遊機構の噴出口が設置されていたが、地面効果の利用やシンメトリーな構造になりバランスが取れるようになったこともあり、翼の下にはそれほど大きな噴出口は設置されないこととなった。あくまでバランス調整及び緊急時の高機動戦闘のため、瞬間的な出力を重視した圧縮空気を噴出する小型のものが設置されている。
これらの機動面での改修によって、従来は熟練者しか不可能だった曲芸の大部分が一般兵にも可能になっているのだが、それはまた別項にて説明する。

(4)装甲

装甲は試作機に使用された技術を応用している。ナノカーボンチューブを用いた硬質素材と軟質素材を100nm単位で交互に組み合わせる積層構造とすることで剛性と柔軟性を実現。マイクロ単位の層構造ゆえに装甲の厚さは従来と同じままであっても、遥かに高い強度を誇ることが可能となった。その上で装甲の厚さを従来の1.7倍に増加し、搭乗者及び同乗者の安全性を確保した。
同乗者席の横にある装甲はその被弾率を下げるだけでなくより表面効果が生まれやすいようにと配置されている。あえて本体と隙間を作ることで熱が直に同乗者に伝わるのを避けている。角度は大きすぎず小さすぎず45度。この角度が同乗者を守る鍵なのだ。
防弾キャノピーは、その武装の増加に伴う被弾率の向上を考慮して開発が新たに進められた装備である。ピケシリーズはエアバイクであるが故に、操縦者も同乗者もその身体をほとんど晒している。これは武装強化により更なる激戦の中に入っていくと想定される新型にとって致命的とも言える弱点であった。そのため追加装備としての扱いではあるものの、操縦者席と同乗者席の双方において閉鎖式防弾キャノピーをピケシリーズで初めて採用している。これは特殊な製法で強度と弾性を増したポリカーボネートと強化ガラスのラミネート構造部と、通常の装甲を応用して作られている。透明なラミネート部分はUL752で言えばLevel8以上の強度を誇り、実験では対戦車砲までならば貫通することはなかった。なお内側は被弾による視界悪化を考慮し、外部状況を投影するモニターとなっている。そのためのカメラは装甲の継ぎ目などに計20個設置されており、キャノピーが無い状態と比べてもも遜色のない画像が展開されるようになっている。
ちなみに余談だが、このキャノピーの装備時はかなり外見が変わり、透明な部分が目に見える。そのためこの状態のものは、虫ピケと呼ばれていたりする。

(5)操縦方法

操縦は基本的には今までのピケシリーズと変わりはない。体重移動によってその挙動をコントロールし、両手をフリーにして高機動のまま戦闘を行う。そのフリーになった手で操るのが銃そのものか、そのスイッチかに変わっただけである。新型になって左右の足元にはフットペダルが追加された。これを踏み込むことで翼の下に備えられた追加の浮遊機構から圧縮空気が噴出し、大きく翼が跳ね上がるようになっている。

(6)その他

今回新たに取り入れられた機能として、コンタクトレンズを利用した機体状況把握システムがある。その形状によるところも大きいが、新型では全体を見渡すことが不可能となっている。防弾キャノピーなどを利用している場合などは特にそれが顕著である。
そのため、パイロットが常に情報が更新されるコンタクトレンズを装着し、機体異常や残弾数を把握できるようにと考慮されてる。これによって操縦者席のモニターには他の兵器管制システムや作戦情報などを見やすく表示することができるようになった。
完璧に機体にまたがっている操縦者はともかく、戦闘中に同乗者が落下する可能性も考えられた。その解消法として旧ビギナーズ王国では頭の悪い方法を考え出した。無茶な機動ができるように(ついでに安全のために)、同乗者を固定してしまえば良いじゃないかというものである。それもただベルトで固定するのではなく、靴を固定してしまおうというものである。とは言っても、完全に床と固定するわけではない。
  • ある程度以上の遠心性の力がかかったとき
  • 片足が離れているとき
  • 特殊な機動を行うとき
以上の条件のどれかを満たすときに強力な電磁石が働き、同乗者の落下を防止するのである。使用状況は概ね好評で、動きをそれほど邪魔せず安全を確保できるとの評価も得ている。
これによって、実は使用可能な手持ち武器に近接武器、即ち白兵武器も追加されたのだが、使うのは本当にごく一部の武人だけだったという。
もう一つ構造的な特徴として、サイドカーから継承されたものがある。同乗者席(いわゆる翼である)の緊急時取り外し機能である。その国是から、同乗者を見捨てるような行動はしないのが満天星国の兵士ではあるが、誰も載せていなかった場合などに同乗者席が破損した場合、それを取り除いたほうが結果として速く戦線を離脱することが可能となる。そのため、同乗者席の緊急パージ機能だけは残されることとなった。



ピケ・パンツァーのカラーバリエーション

オーソドックスなピケを継承した色。青よりもこっちが好きな兵士も多い。


上の白と対照的に黒一色で染まったもの。夜間用などに使われた。



ノーコメント


2.武装


武装については新型に相応しい最新のものが揃っている。
従来の重機関砲のみならず、近接防御に向けて小口径の機関銃を設置。また、更なる火力を求め、レーザー砲及び小型ミサイルを増設。同乗者席からもそれら全てを制御できるだけでなく、銃座をつけたことにより同乗者が独自の装備を用いることを可能としている。以下でそのそれぞれについて解説をさせていただく。

(1)RHEES式レーザー砲

新型サイドカーの目玉とも言える兵器であり、難産の一番の原因となった要因である。試作機から得られたノウハウを基に小型化されたレーザー砲の出力はキロワットクラスに相当する。その励起に必要とする電力はそれこそ個人用騎跨兵器というものではなく、もはやI=Dクラスである。
その励起には専用のジェネレーターによって半分の電力が、そこから発する熱をRHEESで処理することによってもう半分が供給される。レーザーの励起器そのものは砲身のもっとも後方に位置しているが、同乗者の視力への影響をなくすため、砲口は同乗者席よりも前になるよう設計されている。
厚さ20cmのI=D用装甲に穴を開けることが可能な有効射程は2000m。その以上では3500mまで10cmの装甲に穴を開けることが可能であるが、それ以上は観測ができないため4000mまでに減衰するようにプログラミングされている。

(2)12.7mm重機関銃

サイドカーにも備えられていた重機関銃を引き継ぎ、その配置を同乗者席の側面に変更した。それに伴い操作方法を機械制御に変更。操縦者や同乗者が席に座ったまま自在に狙いをつけ、標的を打ち抜くことができる。制御には銃身に平行して設置されているカメラの映像を用いる。万が一に備えて銃身の上と下、二箇所に備えられている。
レーザー砲が設置されたことで主な役割は牽制となったが、レーザーが使えないような悪天候などでは十分に主力として敵の脅威となるだけの攻撃力を持っているのは事実である。
そのため、信頼性からあえてレーザーよりこちらを多用するパイロットもいるとか。

(3)APKWS(先進精密攻撃攻撃兵器)

武装の追加において真っ先に考案されたのはレーザーであるが、時点に挙がったのがミサイルであった。同じように反動が少なく超射程、高威力の武器であるが、弾数が限られるということと、スペースが必要だということで採用は見送られていた。しかし、RHEESの採用によってある程度の余剰スペースが設けられたこともあり、またより正確な攻撃ができるものを、ということで採用が決定した。
しかし、スペースがあるといってもそれほど大きくは取れない。必然的に大きさはかなり小型のものである必要があった。そのため本来予定されていた既存の大きさのものは使用できず、新たに小型のものが開発された。
元は1m弱の長さがあったミサイルだが、射程距離と命中精度を落とすことで30cmまでの小型化に成功した。その分射程は著しく短くなり、最大有効射程1000m、最低射程が500mとなっている。正確な捕捉機能ははずされたものの簡易赤外線追尾システムを搭載され、射程内ならば70%の確立で命中させることが可能となっている。
発射口は機体後部側面の装甲に内蔵され、装甲が展開することで左右それぞれ12発のミサイルが顔をのぞかせる。

(4)5.56mm近接防御機銃

防弾キャノピーの設置によって搭乗者が自らの武器で攻撃することが難しくなった。その対策として武装が巡らされたのだが、上記の3つの武器は遠距離を狙うのに秀でている上、まったくの真正面を狙うことは構造上難しくなっている。その対策として機体前部に近距離用の防衛兵器を設置し、接近された場合の備えとした。これは操縦者席からしか操作できず、また緊急の武器だけに誤作動を起こさないようしっかりと機体に固定されている。狙えるのはあくまで正面に接近した相手だけであり、使われることが無いのが一番ではある。
(5)その他装備
正確には武装ではないが、同乗者席の後方に支援ツールボックスが備えられている。ここには予備弾薬のほか、サバイバルキット、応急整備ツール、牽引用ケーブルが備えられている。容量にはかなり余裕があり、そこに私物を入れているものも少なくないという。



3.マニューバリスト

地面効果の利用と翼の下にも浮遊機構の噴出口が二つ備えられたことで、可能となった機動の一覧である。
比較的簡便になったとはいえそれでも高い難易度であることは変わらない。
しかし有用なものばかりなので、是非練習して身に着けて欲しい。
注:いずれも同乗者への注意をすることを忘れないよう気をつけること。

(1)急旋回(90度ターン)
左右への急旋回を行う機動。
ハンドルをしっかりと握り、曲がりたい方向と逆方向のペダルを踏みます。
それにタイミングを合わせて一気に体重を移動させましょう。
ある程度はコンピュータが自動で調節してくれるので、気にせずにがっと行ってしまうのがコツです。

(2)Uターン
進行方向を180度変更する機動。
ハンドルをしっかりと握り、両方のフットペダルを同時に踏み込みます。
その際左右どちらでもよいので全力で体重を寄せてください。
空中に浮いている間にバーニアと各噴出口が調節され、急旋回が行われます。
着地したときにはUターン終了です。
着地後は速度が落ちているのですぐに全力で走り出しましょう。
ただし、応用することで急停止にも使えますので状況判断をしっかりとしましょう。

(3)バレルロール
ミサイルにロックオンされたときや攻撃を避けるときに用いる機動。
これを行うには十分な速度が必要ですので、しっかり加速してから行ってください。
また、同乗者への負担がヒドイので後で殴られることを覚悟して行いましょう。
速度が規定値を超えたら、左右どちらかのペダルを踏みます。
同時に機首を上げ、ペダルを踏んだのと逆方向に少し体重をかけます。
上手くいっていれば世界が反転して見えるでしょう。
後は着地をするだけです。ね、簡単でしょう?

(4)宙返り
空中で一回転する機動です。敵の攻撃をこれで避けると多分カッコいいでしょう。
バレルロールと同じく十分な速度が必要ですので、加速はしっかりと。
でないと途中で落ちて地面に刺さります。上司からの雷も落ちるので気をつけましょう。同乗者へは以下同文です。
速度が規定値を超えたら、左右のペダルを同時に踏み込みます。
このとき機首を上げるのを忘れないこと。上げてさえいればバーニアが十分に補助してくれます。
また、上昇するにしたがってペダルから足を離しましょう。無理でもやらないと落ちます。
そしてまた下降してきた段階でペダルを踏み込みます。
上手くいけば滑らかに着地できるでしょう。

(5)インメルマンターン
宙返りの頂上でロールして進行方向を変える、縦方向のUターンです。
もっとも難易度が高いので、シミュレーターでの十分な練習をお勧めします。
実践する場合は始末書、整備士からの小言、同乗者からの鉄拳等を覚悟して行いましょう。
上昇するところまでは宙返りと同じ要領で行います。
上昇しきる前あたりから、左右どちらかのフットペダルを踏み込みます。
これにより機体がロールします。急に世界が反転しても驚かないように。
機体が水平になったらもう一方のペダルも踏み、浮遊力を確保します。
後は落ち着いて着地し、落ちた速度に気をつけて走行しましょう。

以上が、新型の使用に際して予定されている機動の一覧である。
ここに上げたほかにも様々な機動があるので、腕を磨いて挑戦してもらいたい。



4.試作型開発史


これは、新型を開発するに当たってもっとも長い期間を費やしたという、試作型作成までの記録である。

(1)乗り越えると言うこと


旧ビギナーズ王国ではピケの開発以降ピケシリーズを作ることを国家事業の一つとして掲げてきた。その成果の一つがサイドカーである。ピケもサイドカーも、どちらも成功をした兵器として王国史に残る兵器となった。
それに続くシリーズとして、サイドカー開発以降いくつかの構想が巡らされた。降下用、輸送用、変形型等々。しかし、そのうちメインで開発が進められたのは『新しいピケ』であった。
特殊な用途に使うものはともかく、それ以外のシリーズを一つのピケにまとめる。それが新しいピケである。これはとりもなおさずピケもサイドカーも含めて、さらにその上を行くということである。

それだけに、新型に課せられた課題は多かった。
ふざけんなコノヤロー、私は理系でも工学とちゃうねんぞー、と機構開発を担当した者が言うくらい多かった。

まず、ピケを上回るには速度が絶対条件である。速度が同じままでは上回るとは言えない。サイドカーを上回るためには単純に輸送人数の増加、及び武装の強化が必要となる。
これらの対応策として、エンジンの巨大化、側車の増設、武装の追加などが大まかな流れとして考えられ、そのどれもに問題が生じていた。
エンジンを大きくは出来る。ただ、大きさに比例して排熱量も増える。ピケやサイドカーより大きいサイズとはいえ、あまりに熱くなるようでは搭乗自体が難しくなる。また、単純に容積が増えたことでエンジンの配置も問題となった。従来のように前部にしては収まりが悪いし何より排熱で搭乗者を焼いてしまう。そのためエンジンは後部に移動するということで落ち着いた。
側車は単純に左右につけることで2名まで輸送できるようにと考えられたのだが、前述の通りエンジンを後部に移動したために従来の側車の形ではバランスがどうしても悪くなってしまった。
また、サイドカーの側車のデザインのままでは速度を上げる上でどうしても限界がある。装甲をなだらかに接続するにしても、ただ単純に接続しただけでは意味がない。どうしても根本的なデザインの一新が必要であり、それにピケらしさを両立させるのは困難であった。
武装についても然りである。武装を強化すると決めた時点で重機関銃より強力な砲を設置することは決まっていたが、少しの衝撃で移動に影響が出るエアバイクにとって後ろ向きのベクトルの衝撃は忌避すべきものである。
そこで、試作機である程度のノウハウが得られていた、衝撃が少ないレーザー砲が採用されることとなった。しかしその電力消費量は従来の装備とは桁違いである。専用のジェネレーターを搭載してそれを解決しようとしても、エンジンと相加相乗的に熱を産生し続けるようなものを積むのは自殺行為に等しい。また、排出しきれない熱量だけでもフレーム及び装甲まで影響を及ぼす可能性がある。
何日も続いた会議の結論は、とりあえず保留というなんともお粗末なものであった。

結果、開発はしばらく停滞を余儀なくされることとなる。



(2)訪れる転機


そんなある日のことである。話はT11中に溯る。

「げらげらげら」

兵器廠に笑い声が響いていた。
笑い声の主は今回新型機の機構設計を担当することになった執政、里樹である。
何故笑っているかといえば別に酒が入っているわけでもなく、皇帝が天領へ宣戦布告したニュースを聞いたからであった。

「馬鹿だ馬鹿だ、いやー、王女も父親も馬鹿ばっかりだひゃっほう!」

不敬罪が適応されそうな発言だが、尊敬しているからこその発言である。あしからず。
そこにおそるおそる近づいてきたのは、今回のデザイナー、西條華音である。
最近作業が行き詰っていたこともあって、なにかいいアイディアでもでたのかと期待して来たのだった。

「あ、あのー、里樹さん……やたら上機嫌ですね」
「おう!西條さん!いやー、もうね、皇帝陛下すごいわ。娘バカもあそこまで行けばすごいね」
「そ、そうですか……」

あっれー、酒入っていないよなー。
何度も確認したが明らかにシラフである。いや、言動はシラフじゃないが。

「で、です」
「は、はい」
「私も馬鹿なピケを考えたっ」
「……はい?」

いつもはツッコミの立場の執政が、何を言い出すんだと耳を疑った。
だが、がははと笑いながら執政が出した設計図を見て、疑ったことを少し後悔した。

で、数秒後また後悔する。

「……あの」
「何?何?何でも聞いてっ」
「これ、飛行機じゃ……」
「いや、ピケだよピケ」

と言われてもう一度よく見てみる。確かに、機首の部分はピケ独特の雰囲気を持っている。違うところはあまりにも巨大な機体後部。そして翼とも見える同乗者席である。というかもう翼である。
飛行機と違うところといえば翼の下端が機体の下端と同じ、つまりはスペースシャトルのようであるということである。その上で同乗者も装甲で守られるよう、滑らかに装甲が伸びている。

「確かに……ピケですね」
「でしょ?まぁ、種を明かすと地面効果ってもんが働くように計算してあって、端的に言えばものすげー浮力が出るんですよ。」
「なるほど……ってそっちを先に言ってくださいよ!」

言われてよく見れば、確かに設計図の翼の辺りに揚力計算が事細かに書かれている。
横にある『多分イケる』のメモが不安を誘ったが、それは黙っていることにした。
それでもこれならば、ある程度リファインは必要だろうが、本当にイケるような気がした。
そうと決まれば善は急げである。

「よし……うん、早速試作を組んでみますね!皆を働かせないと」
「うん、お願いしますー私は寝る!」
「えええ?!」

西條の抗議ももはや聞こえないかのように、里樹は35時間ぶりに眠りについた。


(3)新しい姿、新しい形


執政の考え出した新しい方式は、停滞していた開発を一気に推し進める原動力となった。ごく一部の某スー○ァミ世代が異様な盛り上がりを見せたことがその要因だったと言われているが、詳細は不明である。
異様な盛り上がりが功を奏したのか、約一週間でそのスケッチを基にした試作が完成した。色が青かったのは言うまでもない。
ハンガーの中心に鎮座するその機体の周りには、多くの技術者たちが集まっている。その最前列には里樹と西條が立っていた。設計図を手に最終チェックをしているのだ。
おおー、本当におんなじだー等と感嘆の声を漏らしながら、設計図との差異だけでなく機体そのもののチェックも行っていく。

「いやー……やればできるもんだね」
「ええ、皆頑張ってくれました」
「うんうん、まさか私もこんなに立派になるとは思わなかったよ」
「またまたぁ」
「すごいなぁ、このぶるーふぁr」「そこはいっちゃだめですー!!」

途端に周囲からどっと笑いが起こった。やっぱり、ですよねー、俺技術者やっててよかった等の声がちらほら混じっている。
対する里樹はうけけけ、と笑っていた。決して寝不足で壊れているのではない。デフォルトだ。
狙い通りというか、自分も想定したように皆が感じたのが嬉しいのである。何より自分もその世代であるから、目の前でそれ(もどき)が実在していることが本気で嬉しいのだ。ツッコミを入れてはいるものの、西條もそれは同じである。
何はともあれ、その憧れも実際に動かなければ意味が無い。
その場の期待を一身に受けた機体はハンガーから運び出され、トライアル用の滑走路に配置された。万が一に備えてWDを着たテストパイロットがその搭乗席に跨る。データ採取用の各種機器もスタンバイし、いよいよ試作機が動くときが来た。

スタートの合図が、里樹から送られた。
テストパイロットがゆっくりとエンジンを起動させた。
ドルル、という重い音に続いて、ほんのわずかに試作機が浮き上がる。
ピケやサイドカーに比べればまったく浮いていないにも等しいが、まだ本領発揮ではない。
テストパイロットがその体重を前に寄せた。ゆっくりと動き出す試作機。

時速20Km まだその高度は低いまま。地面と擦るかと思うほどに。

テストパイロットがさらに速度を上げた。

時速40Km エンジンが次第に大きな唸り声を上げ始めていた。

テストパイロットがさらに速度を上げた。

時速75Km まだ浮かび上がらない。機体の最前部が地面によって削り取られようとしていた。

これ以上は前傾はできない。テストパイロットが最後の加速をした。

時速90Km。
現時点での高さで得られる、最大の速度に達した。
それでも、目に見えて地面との距離は開かなかった。
ああ、これでも駄目なのかと、多くの人間が頭を振った。


しかし、一部のものは気付いていた。地面と擦れる音は聞こえなかったと。
エンジンの駆動音が、地面と無理やりに反発していたその音が和らいだと。
西條がはっとして顔を上げた。里樹はもうそれを見ていた。

試作機は、十分な高さまでその高度を上げていた。


…………うぉ

うおおおおおぉぉぉ!

誰かの声をきっかけに、地鳴りのような歓声が沸きあがった。
まだ最高速度も最高高度も出ていないし、完成もしていなかったが、ただ浮いたというだけが、その事実だけが、彼らの求め続けてきたことだったのだ。

「いやー、やったねぇ西條さん」
「ええ!本当に……よかった……!

里樹と西條も感慨深げにその光景を眺めていた。
しかし、それも長くは許されなかった。まだまだ完成には程遠いのだ。やることはそれこそ掃いて捨てるほどある。

「はぁ、もう少し浸っていたいんだけどなぁ……」

ま、執政でもあるしメインの設計士でもあるし、と呟いて里樹は手を叩いた。

「ほらほら!データ集めしないと!手を抜かないっ!」
「次はレーザーの実用化ですよー!」

西條もそれに倣い、周りの技術者たちもその言葉に従った。
まだまだ地獄はこれからやってくるのだ。これくらいで喜んではいられない。
彼らの戦いは、今始まったばかりなのだ!


「でもすげぇなぁ、ぶるーふぁるk」
「だから駄目ですって!」


(4)総括
この後、シンクタンクの結成、武器の再設計、幾度と無く繰り返されたマイナーチェンジなど、さまざまな事件が開発のために起こり、それらをを経て新型サイドカーは今の姿になったのである。
その間に、いくつも記録すべきことはあった。
だが、その形状を決定付けたこの記録こそが、もっとも記憶に残るべきではないかと思う。
後世の記憶にこの記録が残ってることを祈って、筆をおくことにする。

願わくば、この機体が帝國の新たな足とならんことを。



5.満天の星のひとつ


都築藩国とビギナーズ王国が一つになり、その星の輝きは満天にちりばめられた。
これをもって満天星国という。
ピケと歩兵用WDという二大歩兵支援兵器を有する、NW屈指の近代歩兵国である。
この国が持つ物はそれだけではない。環状線、銀河鉄道、長距離輸送システムといった輸送機関。そして法官と並ぶもう一つの法の支援者TLIO。
この二つを狙うため、動乱が起きることは想像に難くなかった。



それに対抗するために、満天星国兵器廠では急ピッチで新型とWDの連携が検討されていた。
主に天陽、陽光のままの搭乗とデータリンクの調整、そして甲殻型WDの搭載をどうするか。前者はそれほど苦も無く行われたが、後者が問題であった。
甲殻型は大きいから搭乗者となることはできないとして、同乗者席にも乗せれないかという試みがされた。だが、片翼ではバランスが悪すぎるし、エンジン部をまたぐにはヨガを体得しなければ無理であった。
どうするかなーといいつつもヨガを実践した強者がべきべきと音を立てている中、その混乱の中心で書類に埋もれる影が二つあった。



「っつっても、私も書類仕事多いんだけどなー」
「まぁ、任されちゃったんだからやりましょうよ」



新型の設計者だからとこっちに回されている里樹と西條であった。もー、せっかく作業終わっていすに座ってゆっくりできると思ったのにーとかぶちぶち言いながらも、ヨガを見て大爆笑している。



「やー、アレは無理だね、無理。うけけけ」
「笑ってないで解決方法考えましょうよー」
「わーあってますって」



華音さんに急かされちゃしゃあないなぁとしぶしぶ立ち上がる里樹。ハイどいたどいたーと兵士たちをどかすと、おもむろに同乗者席の後ろのボックスを開いた。
開くんすかそこ?!との周囲の声を無視し、ケーブルを引っ張り出す。そしてそれを甲殻型の装甲にくっつけた。ケーブルの先は真空圧着で機体に接着しており、もう一端はボックスの中で機体とつながっている。これなら外れなくて安心である。



「はい、これでローラーで走れば問題なし」
「「それを先に言ってくださいよ!」」



元都築藩国の歩兵と元ビギナーズ王国の整備士による、同期ツッコミが響いた。
まぁ、仕様書を見ろ貴様ら、とぶん殴りたくなった衝動を抑えつつ、里樹はやっぱり上手くいけてるねーと実感していた。
これならば、どんな困難にも立ち向かえるであろう。多分。
西條もそれを感じていたようで、周囲の苦笑いに対して満面の笑みを浮かべている。
彼女も不安を感じていたのだ。そしてそれが解消された。その笑みである。
そして、いい加減にしないと里樹さんがハリセン無双をやりかねないと気付き、声をかける。このあたりのさじ加減もみんなに覚えてもらおう、そう思いながら。



「さ!みなさん、作業に戻りましょう!」






それを遠くから眺めている影があった。
満天星国藩王都築つらねだ。
完璧にカムフラージュかけていて傍目にはどこにいるのかすら分からない。
そこまでしてさらに双眼鏡まで使って、吐いた第一声が、



「はぁ……」



ため息である。
これでもかというほどに都築は疲れていた。合併処理にTLIOに処理にTLIOにTLIOに、あれTLIOしかなくね?
そう気付いた瞬間、彼の体は大地へと還っていた。早い話、ストレス解消がしたかったのである。そして楽しそうなことやってそうなところに(男の子センサーを稼動させた上で)匍匐前進した結果、ここにたどり着いたのだ。
そして、実際そこはとても楽しそうであった。



「はぁ……俺も混ざりたい」



思わずもれたその言葉は、彼の本心であっただろう。
しかしてその後ろには、ビギナーズ王国で鍛えられてきたバトルメードたちが迫っていたという。
藩王のその後数時間を証言するものは、誰もいなかった。



文:里樹澪
絵:西條華音

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