※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

一体誰にあやまればいいのかよく分からなくなってきた

――日本列島 地下

 こつ、こつ、こつ。
 どこまで続くのかも分からない長い長い螺旋階段を、カンテラの明かりだけを頼りにすすむ。
 光の届く限り階段は続いている。その先に何があるのか見えやしない。 
 寒気を覚えるような静寂の中、響くのは自分と先導人の足音だけだ。

 このまま進んでも気が滅入るだけだ、なんでもいい、何か話をしないか。

 僕がそう要求すると、先導人は小さくうなずき、ぽつぽつと話し始めた。 

「……ダンゲロスに投稿されたキャラクターの総数をご存じですか?」

 ローブの中から出てきたのは、そんな言葉だった。
 どんな表情をして喋っているのか、ローブの中の闇は深く、表情は伺えない。

 知らない、と僕は答える。
 でしょうね、と、先導人は抑揚のない声で同意する。

「本戦のたびに50キャラ以上、外伝も含めればもっと多い。そんなペースで増えていくキャラを把握することなど、不可能でしょうよ」

 では、と、平坦な声が闇の中に吐き出される。

「覚えているキャラクターは、何人ほど居ますか?キャラクター名と……設定か、能力か。簡単で構いません」

 思い出せる限りで暗唱していく。ついこの間やったばかりの本戦のキャラを、なかなか思い出すことが出来ない。

「……ええ、そんなものです。特に印象に残ったキャラ以外など、一週間もすれば忘れられてしまいます」

 寂しいことだ、と僕は思った。
 先導人がどう思ったかは、淡々と吐き出される言葉から読み取ることは出来ない。

 ふいに、何かをこするような音が耳朶を打った。

「使い捨てられたキャラクター達は、ここで労働バーという名の輪廻をめぐり続けることになる……思い出される日を、夢見ながら」

 ぴし、という音。うめき声、何かの擦れる音。

「わかっていますとも、あなたがここに来たのはTAG2の手札を探すためだ。設定も覚えていないような自キャラでも、本戦でたまたま活躍できなくとも、能力やステータスに有用性はあるかもしれない。そういうことでしょう?」

 螺旋階段の終わりには、頑丈な扉がそびえていた。

「……どうか、彼らのことを思い出してあげて下さい。勝つための手札でもいい。愛などなくともいい。全員を、なんて言わない。だからどうか」

 先導人が扉に手をかける。重い音をたてて、扉が開く。

「一人でも、ここから救い出してあげて下さい」

 扉の隙間からさした明かりが、先導人のフードの中を照らした。
 見覚えのある設定に、ふと、こいつも僕が作ったキャラなんじゃないだろうか、という考えが頭を過ぎった。

――でも、デッキには入らないな。

 そんな考えはすぐに忘れて、僕はデッキを決めるため、扉の中へと進んでいった。