くちプロレス! 魅羽vsかもめ!
(これまでのあらすじ)
伝説の桐の木の伝説を聞き、日本を覆い尽くす森の中心部へと向かう猫岸魅羽と百合原かもめ(旧姓)。
そこに立ち塞がる奇怪な二人組。
「キヒヒ、永遠の命を手に入れるのは俺たちよォーっ!」
「ゲブゲブ、デッキの組み方も知らぬ素人が相手とは幸先が良いゲブ」
伝説の桐の木の魔力のせいか、フォレストではなんか特殊な戦闘ルールが適用されてて大変だったが、魅羽とかもめは協力して襲撃者を撃退した。
「どうやらこの森では普通の戦闘じゃなくてデッキで味方を召喚して戦わなきゃいけないみたいだね」
と言ったのは、猫耳ヘルムの婦人警官、猫岸魅羽。
「魅羽ちゃんの戦闘力を直接活かせないのは厳しいですわね……」
と答えたのは、暴走特急アンドロイド、百合原かもめ(旧姓)。
「うー、ホリラン終了時点のステータスなら転校生とだって互角に戦えるのにもどかしいー」
「今回は運良く勝てましたけど、次はきっと物凄く手強い敵がやってくる予感がしますわ……恐ろしい……」
「恐ろしい……」
「無理……」
「もう帰ろうか……」
「いけません! そんなことでは! 何か対策を考えましょう!」
「でも、こーゆー知略が必要なルールだと私弱いんだよね……あんまり頭良くないし……」
「恥ずかしながら私も、このような戦闘ルールは苦手ですの……」
「高性能AIを搭載しているのに?」
「ええ。この戦闘ルール、1ターンに実行できる手筋が多すぎて、演算が追い付かなくて。とても手強いですわ」
「うーん、戦術が駄目となると、ここは別の方法を考えなきゃならないのかー」
「どうしましょう……」
途方に暮れるふたり。
森は青々と繁り、ふたりを静かに見守っている。
「……くち」
魅羽が何か思い付いた。
「くち……!」
かもめのAIが、その単語を分析して結論を導き出した。
キュウウウウーン。かもめの内部で密かにプライミング機構が作動する。
「くちを使って戦おう! くちプロレス! 盤面で不利でも上手くくちを使えば優位に立て……むぐっ!?」
魅羽の台詞は途中で遮られた。
特急ダッシュで距離を詰めたかもめの唇が、魅羽の唇を塞いだのだ!
そのまま、しっとりと湿り気を帯びた森の冷たい地面に魅羽を押し倒す!
「くちプロレス! 望むところですわ!」
一瞬、唇を離したかもめが、艶然と笑みを浮かべた。
妖しく濡れた口許がきらりと光る。
「にゃっ!? 違っ!! くちプロレスってこういうのじゃ、にゃ、む、んぐうううーっ!」
魅羽の台詞は再び遮られる。
今度の攻撃はさっきよりも深い!
そのうち、魅羽も観念してかもめを受け容れ、その背に手を回してぎゅっと抱き締めた。
二人の様子を、伝説の森は静かに見守っていた。
伝説の森(こいつら駄目だ……)
(おわり)