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A-35:00-00778-01:エド・戒:天領 さん

「よろこびのうた」



暗いところで泣いている子供がいた。
子供の周りには何もなく、ただ暗い闇だけが広がっていた。
子供はうずくまって、耳を塞いでいた

「なにも聞きたくない、なにもみたくない、何も…感じたくない」

呪文のように紡がれる言葉は、ただ闇に吸い込まれていった。
子供は世界を拒み続けた。

ずっと、ずっと…
それこそ気の遠くなるほどの長い間、子供は世界を拒み続けて…

気づけば子供は青年になっていた。

誰とも触れあわず、語り合わず、何とも関わらずに生きてきた青年は声を無くしていた
表情を無くしていた

そんな青年はある日、突然何かを感じた
青年の世界に突然飛び込んだ変異
青年は顔を上げて辺りを見回した。
何も変わらない、闇が広がっているだけだった。

青年はふと視線を下にさげ、視界にはいったものに驚き、それを凝視した。

(これは…何だ…)

ふわふわした何かがあった。
青年は恐る恐る手を伸ばした。
(暖かい…?)
暖かいと、うれしかった。
闇に囲まれた世界
青年は孤独で、自分以外の温もりに触れたことがなかったから
青年は生まれて初めて微笑み、その温もりを抱き上げた。
暖かい塊が動いた。

「にー」

クリクリとした目が動いて、青年の目と視線が合った瞬間 暖かい塊は青年の手からすり抜けて走っていってしまった。
暗い闇の中、暖かいモノの目だけが見えた。
青年は立ち上がった
暖かいモノは青年が歩み寄ると、また少し離れた。

(…何がしたいんだろう)

青年は少し足を早めた
暖かいモノはまた離れる
青年は意固地になって距離を詰めようと駆け出した。
どれほど走っただろうか、青年の息は切れ切れで、額には汗が浮かんでいた
それでも青年は走るのをやめなかった

 独りはイヤだ
 寒いのはイヤだ

それだけしか頭にはなかった。
それでも体力に限界はある
ついに、青年は倒れてしまった。
暖かいモノの走る音が聞こえる。

(…あぁ、いってしまった、僕はまたひとりだ)

青年は泣いた
悲しかった
しかし、そんな青年の涙を拭うものがいた。
小さな暖かいモノは、その小さな舌を伸ばして青年の涙を拭って、また少し距離をとった。

青年は再び立ち上がり、小さな生き物の小さな背中を追った。

「……ま、て…」

青年の喉が何年かぶりに音を出した。
駆ける生き物を追いかけて青年は走り出した。
そして、ついに闇から抜け出した。


抜け出した先は、沢山の色に溢れていた。

風が髪を梳いていった 光が踊っていた

様々な匂いで溢れていた

青年は立ち尽くした

小さな生き物は、闇から抜け出した瞬間にどこかへ行ってしまっていた

青年の眼から知らず知らずのうちに涙が溢れた

「…なんて、すばらしいんだろう」

青年は笑った 青年の喉からは歓喜の歌がこぼれた。




  青年は今も歌っている




そしてこれからも歌い続けるのだろう

この素晴らしい世界への歓喜の歌を


君がどこかを歩いていて道に迷ったら耳を澄ませてみて?

きっと、歌が聴こえるから…




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