A-33:29-00548-01:下丁:になし藩国 さん

「魔王の子守唄」



暴れ者の魔王がいました
彼は退屈が嫌いで、いつも暴れては国や町を壊していました
人々は魔王を見ると怖くなって逃げ出してしまいました
魔王の強さは皆が知っていたので誰も手を出そうとはしなかったのです
「物足りない、満たされない、毎日が退屈だ、もっと変化に富んだ毎日が欲しい」
魔王は、そう思いました

そんなある日、魔王の元に一人の勇者が現れました
「貴方が魔王ね。はじめまして、私は貴方にあって話したい事があったの」
魔王は答えます
「いかにも俺が魔王だ。一人で乗り込んでくるその度胸に免じて話を聞いてやる」
勇者はまだ年端もいかない女の子でしたが、彼女はは臆する事無く言いました
「お願いがあるの、これ以上、国や町を壊さないで欲しい」
それを聞いた魔王はこう言いました
「いいぜ、国や町を壊すのやめてやっても。ただし…条件がある」
「条件?」
「そうだ、なんの見返りも無しにただで帰るとでも思ったか?」
「確かに、その方が魔王らしいね。条件って何をすればいいのさ」
魔王は笑って言いました
「簡単だ、俺は毎日が退屈でたまらない。だから俺を楽しませてみろ」
魔王の難題に女勇者はこれ以上無い優しい笑顔で言いました
「ねえ、魔王。そんなに退屈なら私の所においでよ。退屈なんてする暇が無い毎日が待ってるからさ」
そして魔王の前に手を差し出しました
「…わかった。お前についていこうじゃないか」
「決まりだね。じゃあ、行こうか」
2人歩き出した


勇者に連れてこられたのは、小さな村の一軒家
「ただいまー」
家の中から小さな女の子が出てきた
「おかえりー、ままー」
魔王は驚いたように聞きました
「ママって、こいつはお前の子供なのか?」
勇者は答えます
「違うよ、この子は訳ありで引き取った孤児だよ」
魔王は不思議そうに言いました
「それで、俺に何をさせようと言うんだ」
勇者は言いました
「で…この子をあなたにお願いしたいんだ」
「お願いって…、なんのお願いだ?」
魔王はいやな予感がしました
「最近、仕事が忙しくなって一人じゃ面倒見きれなかったんだ。だから、この子事頼んだよ」
「ガキの子守りをしろと、この魔王に」
「もー、無茶苦茶忙しいから。退屈する事なんで絶対にないよ」
「なにーーー」
「それじゃ、仕事が残ってるから。また、夜に」


「ぱぱー、ままはー?」
「仕事が忙しいとさ、だから待ってないで早く寝なさい」
不満そうな顔をする女の子
「うー、あっそうだ。ぱぱー、子守唄歌ってー、そうしたら寝るからー」
「子守唄?」
戸惑う魔王
「知らないのー、ままはいつも歌ってくれてたよー、こんなふうにー」
得意そうに歌ういだす女の子
「あー、わかった。歌ってやるからちゃんと寝るんだぞ」
「うん」
魔王の歌を聞きながら子供は眠りに着きました

子供寝て少しすると勇者が帰ってきました
「ただいまー。あの子は?」
魔王が向かえに出てきました
「おう、お帰り。ガキは寝たから静かにな」
勇者は笑顔で答えます
「ありがと。どう?毎日大変でしょ」
魔王も笑って答えます
「大変だがな。ま、確かに退屈はしねぇ。あいつ見ていて全然飽きねぇしよ」
「あはは、それはよかったよ。あの子も寝ている間は可愛い天使なんだけどね」
「魔王が天使の世話をする、ってか。気が利いてるじゃねぇか」
2人で笑い合いました
「最初は退屈しのぎのつもりだったけどな…、俺はこういう生活も嫌いじゃねえぜ」
嬉しそうに話をする勇者
「魔王…、ありがとう。魔王の事はすこく頼りにしてる」
「頼りに…ねぇ。本気か?」
「当たり前じゃないか。でなけりゃ、あの子の事なんて任せられないよ。すごく信頼してるし、助かってる。それは本当」
「まったく、人をおだてるのが上手い勇者だな」
「あはは…、とりあえず魔王。今後とも、よろしくお願いします」
「おう、安心してよろしくお願いしとけ」


こうして魔王の育児生活が始まりました




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    父親=魔王にしただけなのに想像するとおもろいなあ。
    -- (00-00804-01:あんどーなつ:天領) 2008-06-23 03:32:15
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最終更新:2008年06月21日 05:52