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A-31:15-00752-01:久遠寺 那由他:ナニワアームズ商藩国 さん

「Mimie the Funny Cat」



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 猫が鼠を追うのが世の中の決まりというものです。
 今日も今日とて、とある家の中では追いつ追われつの悲喜劇が繰り返されるのでした。
 追われて全力疾走、場違いにも鼠はふと考えました。
「僕はいつもミミーさんに追われて逃げているけれども、それは本当に仕方がないことなのか?
 僕のレエゾンデートルとは追われて食べられて一生を終えることにしかないのか?」
 と。
 一方追う側の猫もふと考えました。
「なんでわたしってば来る日も来る日もシッポー追うのかしらねえ。
 猫は鼠を狩るものよ、っていっつもママが言ってたけど、何かそれっておかしくない?」 
 と。
 そう考え始めるといつものチェイスも何だか興が乗らず、シッポーは物陰へ、ミミーはキッチ
ンマットの上へと引き上げていったのでした。
 それから数日の後、熟考に熟考を重ねた末、シッポーは意を決してミミーの前に歩み出ました。
 ミミーが謹慎中(お仕置きでキャットバスケット入り)で金網越しとはいえ、クマネズミの歴
史上例を見ない会見ではありましたが。
「えー、ミミーさん。今日は食べるものと食べられるものとしてではなくですね、お互い一己の
独立した生命としての対話を希望したいわけですが」
「いいよ。一時休戦ってやつね。この中じゃあどうせ暇だし。で、お題はなに?」
「はあ、ありがとうございます。実は僕、この前からちょっと考えていることがありまして。実
際の所、ミミーさんはどうして僕を追っかけるのですか?」
 シッポーはふん。と前足を組んだミミーの前から慎重に一歩下がって見上げました。どうした
って怖い物は怖いわけで。
「それそれ。わたしもこの前から考えてるんだけどさ、本能とかこうするべき慣例、とかいうの
でシッポーを追うのってなんか違うよね」
「ふむ。じゃあぶっちゃけエサとしての僕には魅力がないと?」
「まぁ鼠よりは魚の方が好きね」
 そういいながらもミミーは一瞬ケモノの目でシッポーを見ました。シッポーの毛がたちまちの
うちに逆立ちます。
「ま、まあ僕の捕獲は生存上絶対必要な要件ではないですよね。しょっちゅうミルクを盗み食い
してらっしゃる様ですし」
「シッポーは知らないかもしれないけどミルクをお腹いっぱい飲んだあとのうたた寝ほど気持ち
いいことはないのよ。
 じゃあ聞くけどさ、シッポーはどうしてわたしの顔を見るなり逃げ出すわけ?逃げたら追いた
くなるのが人情って思わない?」
 かしかしと網を叩くミミー。一応の礼儀として爪は引っ込めていました。
 シッポーは首を傾げて考えると口を開きます。
「第一の理由は体格差、でしょうかね。ミミーさんは自覚が無いかも知れませんが、僕から見る
とミミーさんはかなり威圧感ありますよ」
「わたしだって好きでこの体型になった訳じゃないけどね。あとはさ、職業上の義務って言うの
?シッポーは色々かじるじゃない。
 この前なんか廊下の角が丸く削れててご主人様、すごい落ち込んでたんだから」
「う、それは申し訳ありませんが、僕ら一生歯が伸びるんで定期的に削らないと伸びすぎてご飯
食べられなくなるんですよ。で、仕方なくですね。
 故意に器物損壊したりミミーさんのご主人様に迷惑をかける意図があるわけではないです」
「あー、それはわかるかも。爪研ぎみたいなものかな。
 わたしも爪伸びすぎるとぎーってしたくなる。そんでいっつも怒られる訳ね。
 じゃさ、わたしのお古の爪研ぎ上げるから、それかじったら?」
「いいんですか?じゃあ僕も何かお返しをしますよ。
 なにがいいかな。そうだ、僕の宝物にブリキの鼠のオモチャがあるんです。これはくるくる良
く動きますし、本物の鼠みたいに一度獲ったら終わり、じゃないんで長く楽しめますよ」
「あら、それは素敵。
 前々からこう、ご主人様のプレゼントしてくれるオモチャってヌルいなーって思ってたとこ」
 お互いに贈り物の交換を終えた頃には二人には何だか不思議な感覚が通っていました。
 これは案外悪くないかも。と。
「今思ったこと言っても良いですか」
「奇遇ねー。わたしも思い付いたこと、あるんだけど」
 それから更に数日後のこと。
 ミミーの飼い主はシッポーによる食害から解放され、シッポーは命の危険から解放され、ミミ
ーは実りのない不当な労働から解放されたのでした。
 こうしてミミーがうたた寝をする間、ふかふかのお腹に寄り掛かってくつろぐシッポーの姿が
度々目撃されることになり、種族を越えたこの奇妙な共同生活は長くミミーの飼い主を和ませた
といいます。
 たまにミミーがケモノの目をしたり、シッポーがつい出来心でキャットバスケットに歯形を付
けたりすることはあっても。
 でもまあ、それは些細なことでしょう。
 平和な時間と相互理解の続く限りに於いては。
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  • ○020003201:忌闇装介:akiharu国
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    長いこと喧嘩していても喧嘩の理由がないこともありますよね。
    仲が悪い人たちほど勇気を出して話し合うことが必要だと思いました。 -- (忌闇装介@akiharu国) 2008-06-21 15:39:22
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