B-15:36-00689-01:藻女:神聖巫連盟 さん

「イヌは怖いです」



私、巫の藻女はイヌが怖いです。
みんなの前では平気な振りをしていても、見ているだけで逃げ出したくなっています。
目も開かぬ仔犬にさえ怯えます。
それどころか写真とさえまともに目を合わせていられません。
絵が相手でもたまに逃げ出しそうになります。
話だけでも泣きそうになることがあります。
それでも帝國の藩王でいるのは好きな子が帝國にいるから、イヌ以外のイヌ科の皆は好きだから、でも帝國を歩き回れるのは世界で一人だけ、信じる事ができた子がいたからです。

まだ幼い頃、近所にイヌが飼われていました。
その頃はまだイヌがどういうものかもよく知らずにすごしていましたが、そのイヌに子どもができ、そしてその子どもが大きくなる頃にはイヌが怖くなっていました。
イヌが怖くなったのは、色々理由があるけどその一つは本の中でいつもキツネを虐めていたからです。
「何人もあつまって、人間なんかと一緒になって私達を殺すイヌは怖い。」
多分まだ自分のことをキツネかなにかだと思っていたのでしょう、動物の出てくる本が好きなくせに読む本のほとんどでヒトやイヌに殺され続け、イヌのことを嫌うようになっていったのです。

けど、イヌはヒトがいるからそんなにキツネを襲うのです。
それを理解できるようになって、イヌを嫌うのだけは止めれました。
それでもやっぱり怖いのは直せなかったけれど、諦めずに直そうという努力はできるようになりました。
その努力は空回り、いいえそれどころか余計に怯えさせる結果ばかりでした。
「イヌはそんなに強くない。小さいイヌは襲ってきても撃退できるから怖くない。だから大丈夫、大丈夫…。
でもそれより小さい蚊だって時に命を奪うよね?第一弱いからって何もできないわけじゃないっていうのは普段自分が言っている事じゃないか。だからきっと戦ったら私もただじゃすまない。それにやっつけることができるから怖くないっていうのは違うよ。
命を奪われそうになっても好きな相手はいるじゃないか、それに怖がる事は無いのにゴキブリに怯えるヒトは多いよ。」
そんな風に大丈夫だと暗示をかけようとしてもそれ以上にダメという理由が浮かび上がります。
その上、冷静に大丈夫と言い聞かせようとするたびに襲い掛かってくるイヌが頭に浮かび上がり、イヌを克服するのは適わないかと思えるほどです
けれど、まだイヌが怖くなかった頃に出会っていたイヌに対してだけは、イヌとしてではなく隣人としてみる努力をする事で少しずつ怯えないで済むようになっていきました。
最初は怯えながらも見る事ができる程度、それが前を通ることができるようになり、いつしか怖がらず前を歩けるようになりました。
そうなると後はすぐ、挨拶を交わせるようになって隣人として仲良くなっていく事ができました。
けれど、それまでに掛けた時間が長すぎました。
少しずつ仲良くなっていつか触れることができる日が来るかもしれない。
そんな風に思えるようになった頃、その子は死んでしまいました。

それからは今まで仲良くなれたイヌは一人も居ません。
これからも現れないかもしれないです。
でも、一度だけでも信じる事ができました。
友達未満だけど仲良くなる事ができました。
今は世界中に一人も居ないけど、世界で一人でもいたのは嘘じゃないから、だからまた仲良くなれる子にであえる可能性を信じています。
そして。もしも再び出会うことができたなら今度は友達になりたいです。
だからこれからも出会いを積み重ねていくために歩き続けるでしょう。
イヌへの恐怖を超える愛情を抱ける相手が見つかる事を信じて。




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    ○実は自分も犬が苦手です(所属はわんわんですけど)。 -- (27-00518-01:od:ヲチ藩国) 2008-07-03 23:29:54
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最終更新:2008年06月26日 10:49