A-20:26-00723-01:でいだらのっぽ:たけきの藩国

「りゅうにつかえるいちぞくのおはなし」



ある所に、とても武に長けた、強い強い一族がありました。
彼らは闘争を繰り返し、だんだんと勢力を伸ばしていったのです。
次第に一族の領土は拡がり、大きな国をつくるまでになりました。
その国は平和でしたが、野蛮な部分も残っていました。
彼らの長は、最も武に長けた、一族で一番強い者でなければならなかったのです。
だから、この一族の長となるため、人はみな来る日も来る日も、己を鍛え続けたのです。

この国には、一つの伝説がありました。
どこかの山奥に、世界で一番の力を持った、恐ろしい姿をした龍が宝を守って隠れている、という伝説です。

あるとき、一族の長となった若者が龍を探しにいきました。
彼は一族で一番強かったので、戦う相手がいなかったのです。誰も彼もが、彼を恐れていたのです。
彼は孤独を感じて、自分を恐れることのない龍と会いたいと考えたのでした。
彼は旅の果てに、龍の住み処を見つけました。
そこは、人の踏み入ることのないような、とても静かな場所でした。

若者は龍に会うため、進もうとしましたが、呼び止められました。
呼び止めたのは、一人の女性です。彼女は自分のことを龍の巫女だといいました。
若者は龍に会わせてほしいと頼みましたが、巫女は許しませんでした。
若者は龍に会うことを諦めず、そこで暮らし始めました。

若者は気付きませんでした、巫女は彼のことを恐れてはいなかったのです。

毎朝、巫女に挨拶をして、狩りに行き、時折食事を共にして、色々な話をして、そんな日々が過ぎました。
しばらく時が経ち、彼はそこで暮らし始めてから、寂しくなくなったことに気付きました。
龍に会えなかったのは残念でしたが、彼は満ち足りていました。

あるとき、龍の宝を求めてきた者たちがやって来ました。
巫女を押し退けて、無理矢理通ろうとした彼らを若者は力付くで追い返しました。
若者は、いつのまにか、龍とその巫女のことが好きになっていたのです。

彼は会ったこともない龍と、巫女のことを、この静かな場所を、長い長い時が過ぎても守り続けると決心しました。
若者は家族を連れて来ようと考え、一度国へ帰ることにしました。
いつの間にか、国の長は変わっていました、一番強い長が、長い間留守だったためです。
しかし、長ではなくなりましたが、彼はもう自分の大事なものを見つけていたので、ただ新たな長を祝福するだけでした。

彼は、小さな集落でやっと家族を見つけました。
家族は彼の無事を喜び、彼と共に、龍と巫女のいる土地に移り住みました。

この噂を聞いた、一族の者が時折、龍の住み処へとやって来ます。
この場所へ来た者は、なぜか、以前ほど若者を恐れたりはしなくなりました。

彼の顔付きが優しいものに変わっていたからです。

そうして、ここには村が出来て、長い時を龍を守り続ける一族となったのです。

誰も気付きませんでしたが、龍は彼らと共にありました。

巫女は龍の化身だったのです。

龍も人と仲良くしたかったのかもしれませんね。


(応援絵:月光ほろほろ:たけきの藩国)


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  • 「りゅうにつかえるいちぞくのおはなし」
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    ○若者を恐れなくなった理由が良かったです。 -- (舞花@スタッフ(代理投票)) 2008-06-30 23:01:24
  • ○15-00758-01:やひろ:ナニワアームズ商藩国
    ○個人口座:1
    ○みんななかよしがいちばんー。
    -- (やひろ@ナニワアームズ商藩国) 2008-07-03 20:54:12
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最終更新:2008年06月29日 06:03