B-10:34-00430-01:薊:リワマヒ国 さん

「疑惑(1) 立ち込める暗雲篇」



*この作品は、連作で2つの小作品で構成されています。


 オリオンアーム内tera領域。
第7世界からの介入者が数多く集うこの世界には、どうやら何か重要な秘密が隠されているらしい。
そのためかテラ領域の藩国群は事ある毎に存亡の危機に見舞われている。
そしてまた、その秘密に関わる新たな危機が近づいていた事に当時の私達は誰も気付いていなかった。

これは華やかな舞台の裏でひそやかに繰り広げられた冒険の軌跡である。


 ここはリワマヒ国。かつてポケット藩国と呼ばれていた国。
内職や生産に追われ続けたこの国は、外敵よりも何よりも、とにかく貧乏と戦い続けてきた。
そんな零細藩国が、てんやわんやの末に極貧生活から脱出できたばかりか
市場の信頼まで勝ち得てしまったのだから世の中は摩訶不思議である。

豊かにはなったものの、身に染み付いた生活習慣はそう簡単に変わるものではない。
藩王を始めとする国民の慎ましやかな生活は長らく変わる事はなかった。

とはいえ、リワマヒ国は南国。南国人というものは得てしてお祭り好きだったりする。
オーマの進攻が一段落して平和な日常を謳歌できるようになると
ようやくリゾートに目を向ける余裕も出てきたようである。


 私こと薊は宮城のおこたの間で技士のシコウと茶を飲んでいる。
今日は藩王の室賀兼一と摂政の東 恭一郎が揃って小笠原へ出向いているため暇である。
たしかポー教授の経済講座を受講するとか言っていたような気がするが、どこまで本気なのやら。

「そろそろお昼ですね。おふたりは息抜きしてる頃でしょうか(昼から呑むのかぁ)」
「お勉強しに行ったから学食かも~(食堂で呑むのか・・・・・・)」
きっとまた呑んでくるに違いない。
タフト元大統領に謁見すると言って出掛けた時は、しこたま呑んで上機嫌で帰ってきたのだから。


「あ、帰ってきたみたいですー」
「おかえりなさいませ~」

『薮蛇だぁ~!!』
兼一王と東はユニゾンでわめきながら帰ってきた。

「なんですか薮から棒に」
「いえ、棒ではなく蛇が」
「蛇なんかその辺にいくらでもいるじゃないですか」
「それはそうなんですけれども、いや、そうではなくて」
酔っ払いのたわ言だと思い適当にあしらう私と、事態の大きさに冷静さを失っている兼一王。
どんどん話がズレていく。

「それはおおごとネウ!」
「ふえ?」
「ん?」
見ると、シコウが拳を握りしめて立ち上がっている。

どうやら東は酒を呑んで落ち着いたらしい。こちらを無視してシコウに説明していたようである。
それにしても、掘りごたつから立ち上がっちゃうくらいのおおごとってどんなや(汗)。
シコウの慌てぶりからすると本当に大変らしい。

「一体何事ですか?」
「お金が無いんですっ!」
取り急ぎ結論を述べる兼一王。
「そんなのいつもの事じゃないですか」
「それはそうなんですけれども、いや、そうではなくて」


 改めて、今度は真面目に話を聞く。
なにやら難しい話を聞かされたが、どうやら公金横領の疑いがあるらしいという事は理解できた。
共和国の共有資産とも言える中央銀行の準備高におよそ5000億にゃんにゃんもの使途不明金がある。
その金に手を付けられる立場にいるのはタマ大統領だけなのだが、現在タマは拘束されている。
誰も手を出せない筈の金が何に使われたのか皆目見当がつかないのだそうだ。

「おおごとですー!」
思わず立ち上がり、拳を握りしめる。
「ええ。ですからどうしたものかと」
「ここまで桁外れの金額だと放っておくわけにもいかんだろうし」
「悪用されたら大変な事になるネウ」
シコウまで加わって頭を抱えてしまった。

息抜きしに行った筈の小笠原で余計な難題を抱え込んで帰ってきた兼一王と東。
消えた5000億の行方を探る2人の冒険は、後にニューワールド全土を震撼させる事になる。


 ここはリワマヒ国。
どういう訳か王道からは縁遠い国。
今日も今日とて地味で特殊な裏街道を驀進中である。

<了>




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最終更新:2008年06月20日 12:07