A-10:35-00682-01:アム:ゴロネコ藩国 さん

「封印された怪物」



昔ある世界に醜い怪物が住んでいました。耳まで裂けた大きな口に火の玉のような紅い目、鎧も盾も簡単に貫いてしまうであろう大きな牙。暗闇のような漆黒の毛皮を持つ巨大な怪物でした。その泣き声は木々を揺らし寝ている赤ん坊はみな目を覚ましエンエンと泣き出してしまう恐ろしい声でした。住処の森のそばに暮らす人たちは恐怖で夜も眠れませんでした。その話を聞き近くの神殿の高僧が怪物に勝負を挑み怪物を洞窟に封印しました。人々は大いに喜んだとさ。
それから百年が過ぎようとして人々は怪物のことをすっかりと忘れていました。しかし怪物はこの百年少しずつ少しずつ高僧のかけた封印を破りもう少しで自由になろうとしていました。怪物は一つの楽しみがありました。封印された洞窟の隙間から見える町の景色を見ることだった。そこには魔法使いでも勇者でも人たちが与えられた命を輝かせながら自分にできることをして、ささやかな幸せを作り守り生きていました。怪物は醜く恐ろしい姿でしたが。人間のことが大好きだったのです。怪物はわかっていました醜く恐ろしい姿だから人間は私を恐れ封印されたのだと。人間は自分達を護るために相手の話や相手の立場を考えられるのに、それを忘れて取り返しのつかないことをすることもあるということを。しかしだからと言って怪物は人間のことを嫌いにはなりませんでした。悪いとこ含めて人間が好きだったのです。百年前は人間と共に生きたいと声をあげたが、逆に脅かしてしまった。今度は静に生きよう、この封印をといたらイロイロな町や村の暮らしを静に見守っていこうと考えていました。
ある日、町が騒がしく人々の笑顔がなくなりました、戦争が始まったのです。町からも多くの若者が兵隊として町から旅立っていきました。それとともに町はどんどん活気を失っていきました。そして町からでて行った若者が戦死したと言う報告が町にもたらせるたびに町は悲しみに包まれました。ささやかな幸せを作り護ってきた、それが戦争の前で無力に壊されていくことに怪物は我慢できませんでした。怪物は大きく暴れて封印を壊しはじめました。さらにしばらくすると町は戦場になりました。町からは悲鳴が溢れました。幸せが全て壊れた景色に怪物は完全に怒りました。そして封印を破り洞窟から出て町に一気に走っていきました。物凄い速度で迫ってくる恐ろしい怪物に兵士たちは敵味方問わず脅えました。そして木々を揺らす怪物の鳴き声で兵士たちは敵味方問わず逃げ出しました。怪物は一人廃墟と化した町の広場に立ち火の玉のような目から涙を流しました。大好きな人間が互いに殺し合い互い幸せを奪い合う姿を見たくないとそして怪物は戦争を終わらせようと決意しました。
それから怪物は戦争をする両国の戦場という戦場に現れました。怪物は危害を加えませんでしたが姿と声だけで兵士たちは逃げました。敵味方関係なく逃げました。転んだり逃げ遅れた兵士を敵国の兵士が担いで逃げたり戦場で睨みあっていた両国の将軍が並んで逃げていきました。恐ろしい怪物が暴れまわっていると言う報告は両国の王様にもたらされました。両国の王様は困りましたそして、そして戦争を終わらせて共同で怪物を退治することにしました。それを聞いた怪物は進んで姿を現し討伐軍の攻撃に身を任せました。投石器の石が当たり立派な牙が折れ、矢が喉に刺さり木々を揺らす声を失いました。傷つきなから大声で叫びました。「人間たちよ、よく聞け、私は与えられた命を精一杯輝かせ。自分にできることをして、ささやかな幸せを作り護り生きていくと言うのなら我は二度と現れないだろう。だがそれを忘れて互いのことを考えずささやかな幸せを護ることを忘れ世界が憎しみで覆われたときまたこの地に現れるそれを忘れるな。」
 そう叫び怪物は消えていきました。怪物に脅え協力することを思い出した両国は互いに手を取り合って繁栄していきました。怪物の消えた場所には怪物の言葉が刻まれた石碑が建てられ、怪物の言葉を忘れないようにしているとさ。
 ところで消えた怪物は死んでしまったのでしょうか。いいえ生きています。漆黒の体を夜の闇に隠して人々の静かな眠りを見守り闇と共にくる悪しき夢を狩り続け大好きな人間の笑顔を静に護り続けているのです。今夜あたりあなたの夢にお邪魔するかも知れません醜いかも知れませんが怪物は人間の幸せを願っています。人間の幸せのためなら身を犠牲にできます。だから楽しく遊んでくださいそして、怪物が悲しまないように多くの人と手を取り合いささやかな幸せを作り護っていきましょうね。(おしまい・おしまい)




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最終更新:2008年06月10日 23:08