Ⅱ.主要産業別に見る関西の特色と系譜

 

 a. シェアの高い業種から見る関西

 関西を産業別にみると、第1次産業が2.2%、第2次産業が30.3%、第3次産業が67.5%であり、全国に比べて第2次、第3次産業の比率が高くなっている。
その中でも第2次産業の工業(業種)に見ると、出荷額では電気機器、一般機械、化学、金属製品の割合が全国よりも高くなっている。この基礎の1つには大手企業等研究所・研究開発部門の集積の厚さがあげられる。特に電気・電子機械器具製造業、無機・有機製品・プラスチック製造業の2業種の研究開発拠点が多く、研究開発が進んでいる。

一方、商業の卸売業における年間販売額を見ると、商社の本社機能の東京への移転、また流通拠点の地方分散などにより、全国シェアが17.2%まで低下している。卸売業の内訳を見ると、繊維・衣服等卸売業販売高が全国比35.3%を占めており、次いで建築材料、鉱物・金属材料等卸売業が17.6%、飲食料品卸売業が16.5%となっている。

飲食料の卸業を除く業種においての貿易は非常に盛んで大阪港、関西国際空港はその重大拠点となっている。大阪税関の調査によると、関西は01年輸出額が9.7兆円、輸入額が8.2兆円であり、全国比はともに20%弱を占めている。 品目別では、主要輸出品目は事務用品機器のほか、半導体等電子部品、織物用糸・繊維製品などのウエートが高く、また輸入は衣類・同付属品、電気機器、原粗油などの割合が高い。

 これらのことから考えられる関西におけるシェアの高い業種というのは、その市場の重点を国内に置くのではなく、海外、特に中国を中心とするアジアへ向けられた業種だということがわかる。

 

b. 中小企業の多さから見る、関西経済の脆弱性

 大阪というと「商業の街」というイメージと、「中小企業が活発」というイメージがある。中小企業の多さというのは産業基盤の充実さを表す一方で、多いがゆえにもたらされる脆弱性を読みとることができる。
 中小企業の発展には、大阪が淀川・大和川や大阪市内に張り巡らされた堀、大阪港や神戸港などを用いて昔から商業が活発であった歴史がある。モノの集積地として商人が多く集まるようになり、モノやサービスの需要が高まり、その結果工業の発展をも促したのである。結果、製造業を主とする中小企業が多く占めるようになったのである。

 中小企業の中でも製造業が多く、その製造物出荷額等では中小規模事業所が大阪におけるそれの66%を占めているのである。また「中小企業創造活動促進法」による平成17年4月までの認定企業数をみると、大阪府内には955社が立地し、全国の8.8%で東京都に次ぐ第2位であり、8%を上回るのは、全国でも東京都・大阪府・神奈川県であることから大阪の中小企業は非常に優秀であることがわかる。この様なデータをみると中小企業は大阪経済に対して良い面しか持ち合わせていないように見えるが、製造業だけでも6万社近く存在するという圧倒的な数の多さにより、中小企業のなかでも優劣が付いてしまい、零細な企業は常に倒産と隣り合わせの経営をしなくてはならないのである。
 中小企業の特性と言えば時代のニーズにいち早く対応できるといった柔軟性であるが、資本、規模ともに小さいため、景気やニーズの変化に非常に影響されやすい。これをあらわすのが大阪における倒産数の多さである。平成14年度と15年度においては月の倒産件数が平均200を超えており、非常に脆弱な大阪の中小企業を証明してしまっている。この様な中小企業を救うため大阪府はバックアップをせざるをえず、結果財政難にまで陥ってしまったのである。しかしその解決法として、中小企業を見捨てるというのは到底不可能である。なぜならわずか3000社程度しかない東証1部2部上場企業に対して、中小企業は460万社も存在しており、その切り捨ては日本経済の切り捨てを意味するからである。やはり中小企業はバックアップしなくてはならないのだが、大企業の関西離れという現状からさらに経営危機の中小企業が増える可能性が高く、その解決方法を模索する必要がある。


c. ベンチャー企業排出の多さ

 関西の経済に暗い影を落とすようなデータ、ニュースが多い中、京都発のベンチャー企業の活躍は関西経済の光と言えるのではないだろうか。ベンチャー企業は中小企業の1種ではあるのだが、その向上意識、最先端を行く開発などから、これからの日本経済を牽引、強いては世界の最先端を行くような企業になることを期待できる。そんなベンチャーの排出数が全国でも屈指であるのが京都市である。そんなベンチャー企業の活躍の背景には、京都政府の素晴らしいバックアップ体制が存在する。たとえば京都市の「京都市ベンチャー目利き委員会」があげられる。これは次の時代の京都経済をリードするベンチャー企業を発掘,育成するため,起業を考えている企業の事業プランの事業性,技術・アイデアなどを評価するための組織である。目的として、全国から素晴らしい事業が集まり,起業することにより,経済活性化の原動力にすることが挙げられる。この審査でAランクの認定受けると、年2%で2億円以内の融資を受けることができたり、助成金がもらえたりする。これでAランク認定を受けた企業は平成9年から20年3月まででのべ60社にのぼる。他にも各自治体や市などが独自にベンチャーを支援するような政策を進めている。こうした背景から、関西の経済の復興の兆しが見えてきた。

最終更新:2008年05月01日 14:48