@CoMForT-A
http://w.atwiki.jp/comfo/
@CoMForT-A
ja
2019-07-25T01:31:40+09:00
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TOP
https://w.atwiki.jp/comfo/pages/4.html
ここには、藍奈が今現在執筆中の小説や、貰い物など、掲載しています。
現在メインで動かしているブログへ移行作業予定です。
移行予定地…[[*蝶華部屋*〜PBR black-side〜>http://blackpb.blog87.fc2.com/]]
※PNは現在、榎楠蝶華として活動中です。
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▼メニュー
TOP…ここ。
[[小説>小説]]…貰い物/捧げ物を含めて短編/長編小説置き場。
[[連載>連載]]…完結/未完関係なく、連載小説置き場。
[[企画>企画]]…参加企画ページ
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2019-07-25T01:31:40+09:00
1563985900
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@twit
https://w.atwiki.jp/comfo/pages/47.html
【 twitter 】なるものを始めた藍奈ですが。
その中に診断メーカーというものが存在します。
この診断メーカーとは、何か。
ユーザーが独自で作ることのできるもので、その名の通り、様々な種類の診断が用意されている診断メーカーなるものですが。
その中でも【 恋愛お題ったー 】というものがあります。
恋愛系のお題を、場所・行動・単語で出題されるというものです。
面白そうなので、その恋愛お題ったーで出題されたお題を元に書き上げた小説を、ここに掲載しようと思います。
2010-10-03T22:23:48+09:00
1286112228
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小説
https://w.atwiki.jp/comfo/pages/6.html
貰い物/捧げ物/長編/短編などの作品を置いてます。
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*下に行くほど新しいです。
▼テニスの王子様
[[SecRet StoRy>秘愛]]●CP⇒不二リョ 交錯する想いを込めた詩。
[[PRESENT>プレゼン]]●CP⇒鳳宍 場所⇒部室 ギャグ(…)
[[Jealous>嫉妬]]●CP⇒幸真 場所⇒病室 ピラニア生息。⑱禁
Pure Love●CP⇒大英 場所⇒部屋 純愛物語…現在作成中。
▼Get Backers
[[BLUE SKY & SEA>空海]]●CP⇒蛮銀 場所⇒海岸 待ち遠しいあの人。
壊したいほどの愛●CP⇒屍銀 現在作成中。
▼最遊記
[[行方不明>行方]]●CP⇒三空 場所⇒丘 構って欲しい…
[[ひなたぼっこ>ひなた]]●CP⇒三空 場所⇒丘 たまには癒しも必要。
[[約束>約束]]●CP⇒三空 場所⇒ベッド 約束は守りましょう。
[[バレンタイン>バレンタイン]]●全員登場
[[Lost Memory>記憶]]●CP⇒三空 場所⇒ベッド 失った記憶…
▼貰い物
[[ROOM>ROOM]]●CP⇒蓮弦 場所⇒部室 ⑮禁くらい?(笑)
[[未来予想図>未来予想図]]●CP⇒不二リョ 場所⇒風呂場 ⑱禁…なるかな(基準何だ/爆)
▼捧げ物
[[天才様に不可能はない!>天才様]]●CP⇒忍跡 場所⇒部屋 ⑱禁(藍奈的基準で/何)
[[想い>想い]]●CP⇒蓮弦 場所⇒部室 ⑱禁
[[Little Rabbit>うさぎ]]●CP⇒不二リョ 場所⇒部屋 ⑱禁
[[Naughty MASTER>主人]]●CP⇒不二リョ 場所⇒台所 ⑱禁
2006-03-29T15:33:17+09:00
1143613997
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記憶
https://w.atwiki.jp/comfo/pages/46.html
*Lost Memory【執筆者/藍奈】
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思い出せない
俺が誰で、どんなやつなのか
・・・―思い出せない
俺の・・・キヲク
―3日前―
「なぁ~八戒。腹へった~!!」
「気持ちは分かりますけど、もう少し辛抱してくださいね」
つまんねぇの。
ジープの体調が良くなかったから、昨日は先に進まないで野宿だった。
だから、美味いもん食えなくて今日はいっぱい食べようと思ったのに…
「サルには我慢って言葉がねぇからな~」
「何だよ、触角」
「しょ、触角だと~?ふざけんな、このバカザルが!!」
「バカザル言うな。エロガッパ!」
八戒と交わす、いつもの会話。悟浄とする、いつもの口げんか。
そして・・・
「五月蝿い!この馬鹿どもが!!」
スパ―――ン!!
三蔵のハリセンも、いつもとおな‥…じ…(?)と思う。
俺の好きな時間(とき)。俺の居場所。
なのに――・・・・
「そうですか。どうします?三蔵」
「仕方ねぇだろ」
「すみません、それじゃ空いてる部屋でお願いします」
「はい。では、上に上がってすぐの向かい合わせになっている二部屋です」
「悟空、悟浄。すみませんが二人で荷物を部屋に運んでいてください。僕と三蔵は手続きをしていますから」
八戒に頼まれて、荷物を持つ。
「わかった。早く持っていって、メシにしようぜ!」
「あ、おい。待て、悟空。急がなくてもメシは逃げねぇよ」
「急いだら早く食えるだろ!」
悟浄をおいて、先に階段を登っていく。
2人分の荷物は当然俺の背より高い。だから、前から人がぶつかってくるのなんて分からなくて。
気づいたときはベッドの上だった。
「んっ・・・・」
「あ、気づきましたか。悟空、起きれますか?」
頭が回らない。
力が入らない。
体を支えてもらいながら、ゆっくりと起きる。
何だろう。
何かが、変。
違和感がある。
「大丈夫ですか?頭から落ちましたからね~どこか痛いとことかありませんか?」
「・・・大丈夫」
「そうですか。三蔵、大丈夫そうですよ」
「フン。当たり前だ!あのくらいでこの馬鹿がどうにかなるわけない」
「そうそう。八戒が気にしすぎなんだよ。なぁ、悟空?」
「・・・・・・」
「悟空?」
「ちっ、聞いてんのか?この馬鹿ザルが!!」
・・・・・誰だ、コイツ。
馬鹿ザルって誰だよ。
悟空って誰だよ?
三蔵?知らない。
八戒?分かんねぇ。
この赤いヤツ、ダレ?
「どうしたんでしょうか。やっぱり医者に診せたほうがよかったですかね?」
聞かなきゃ、何も分かんねぇ。
「なぁ」
「はい?」
「あんた達、ダレ?」
「え?誰って、私は八戒ですけど・・・もしかして、私たちの事が分からないんですか?」
「だから聞いてんじゃん。ね、誰?」
「・・・・・・っざけんなよ。おい、悟空!テメェ俺様も事も忘れただなんて言うんじゃないだろうな?」
「・・・誰?」
「~~~~~~!!!」
「おぉ。三蔵がまいってるぜ」
「ちょっと悟浄。笑ってる場合じゃないですよ。悟空が記憶喪失になった以上、旅はできませんよ?」
「あぁ~まぁ、なんとかなるだろ」
「なりません!!」
さっきから、何なんだ?
悟空って俺のこと?
てことは、俺って記憶喪失になったのか?
わけわかんねぇ。
「三蔵、どうします?」
「どうするも何も、記憶が戻るまで待つしかねぇじゃねぇか」
「そうですね。この際、仕方ありませんね」
こうして、俺の記憶戻しが始まった。
―3日後―
俺が記憶喪失になってから3日が過ぎた。
八戒が丁寧にいろいろと教えてくれた。
けど・・・・
いつまでたっても記憶は戻らない―
思い出せない事に対する『恐怖』『焦り』『不安』
どうしよもない。考えたって分からない。
それが、どうしようもなく怖い。
「おい。いつまで起きとくつもりだ?」
「え?」
一緒の部屋の三蔵。
不思議と三蔵といると落ち着く。
何でだろう・・・・
「早く寝ろ。明日も早いぞ」
「・・・うん」
三蔵に言われて、ベッドに入るため歩き出す。
部屋はとても静か。
昨日から雨がすごい。
今も、止まない雨の音が部屋の中に響く。
一瞬窓のすぐ近くで雷がビカッっと光る。
ド―――ン!!
派手な音がして雷が落ちた。
その衝撃からか、宿中が停電になる。
「あ」
「ちっ、停電か。おい、電気がつくまで動くなよ?」
「うん」
真っ暗な部屋。
まるで、闇の世界。
何も見えない。
部屋の中に置かれているタンスや、テーブルに椅子。
三蔵のいるベッド。
床も壁も扉も見えない。
さっきまで見えていたのに。
三蔵も見えない。
俺自身も・・やっぱり見えない。
暗い、怖い、暗い、怖い、暗い、怖い、暗い、怖い・・・・・・・・・・・・
電気がついたのに、動けない。
足が、動かない。
「どうした」
「・・・・動けねぇ」
「・・・・・」
俺の言葉を聞いて、三蔵がベッドから抜け出す。
ゆっくりと、1歩1歩、近づいてくる。
「記憶があってもなくても、世話が焼けるな。馬鹿ザルが」
そういうと、俺を軽々しく持ち上げてベッドに向かう。
そっと下ろされる俺の体。
横に入ってくる、俺より大きな三蔵の体。
「とっとと寝ろ」と言うと、俺に背を向けて寝る。
広い背中。
見た目よりガッシリしている肩幅。
心が、体が・・・・暖かくなる。
ホッとする。
「三蔵・・・」
口から出た言葉は、あまりにも自然で、あまりにも愛しそうで・・・
涙がでる。
どうして、思い出せないのだろう。
どうして?
どうして?
どうして?
「どうして・・・っ」
また一粒、頬を伝う涙。
止まらない。
零れ落ちる涙。
ツライ。
クルシイ。
ムネガイタイ。
「・・・・悟空」
「!!」
もう寝たと思っていた三蔵が突然俺を呼ぶ。
「な・・・なんだよ」
泣いていたのがバレないように、平然を装って、精一杯の強がり。
ふいに感じる暖かさ。
顔を上げると、そこには向こうをむいていたはずの三蔵の顔。
そして、そこで初めて三蔵の腕の中にいることを知る。
「悟空・・・・」
「なに・・・んっ!!」
唇におちる柔らかい感触。
ほんの一瞬の出来事。
「な///」
「心配するな」
「え?」
「焦っても何も思いださねぇ」
「・・・」
「焦るな。考えるな。サルに考える脳はねぇんだからな」
「!!!!あのな、三蔵。俺はサルじゃ・・」
唇で涙の痕を辿っていく三蔵に、恥ずかしながらも嬉しく思う。
「サンキュな。三蔵」
「フン。さっさと寝ろ」
ゆっくりでいいんだ。
焦らなくていいんだ。
考えても分かんないんだから、考えるだけムダだよな。
ありがとな。三蔵―
「・・・・・」
「ん・・・・・?」
「・・・・・」
「おい。悟空」
「・・・・・」
「聞いてんのか?おい!」
「なぁ、三蔵」
「あぁ?」
「何で、俺ベッドにいんの?」
「・・・・・・・」
スパ―――ン!!
「いってぇぇ―――!!!何すんだよ!」
「五月蝿い!死ね」
三蔵。
記憶がなかったときのこと、俺あんま覚えてねえけど・・・
三蔵が優しくしてくれてたのはちゃんと覚えてるからな。
さんきゅ、三蔵。
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2006-03-29T15:32:31+09:00
1143613951
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バレンタイン
https://w.atwiki.jp/comfo/pages/45.html
*バレンタイン【執筆者/藍奈】
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「なぁなぁ、八戒」
「何ですか?悟空」
「あのさぁ~バレンタインって何?」
「・・・・バレンタイン・・ですか?」
「うん」
「そうですねぇ~まぁ簡単に言うと、好きな人にチョコレートのお菓子をあげる日ですかね」
「好きな人に・・・?」
「えぇ。そうだ、今からチョコレートケーキを作ろうと思ってたんですけど、悟空も何か作りますか?」
「・・・うん。オレ、作って三蔵にやる!!」
「では、早速はじめましょうか」
―10分後―
「あぁ~悟空!それは別々にしてください!!」
「へ?コレ?」
「そうです。って、悟空・・・何をレンジに入れました?」
「何って、卵」
「!!!卵はレンジで温めちゃいけないんです!!って、わあ」
ボン!!!
「・・・・・」
「・・・わりぃ八戒・・・・」
「・・ふぅ。さ、悟空。今度はちゃんとうまくいきますから、頑張りましょう!ね?」
「でもさぁ~」
「三蔵に渡すんでしょ?」
「・・・・そうだよな。よし、作るぞ!!」
―1時間後―
「できたぁ――!!サンキュな、八戒!」
「いえいえ。良かったですね上手に出来て」
「三蔵、くってくれるかな?」
「さぁどうでしょう。でも、悟空が一生懸命つくったものなら何でも喜ぶと思いますよ?」
「・・・・俺、三蔵のとこに持っていってくる!」
「いってらっしゃい」
「三蔵――――!!」
「ぁあ?五月蝿い」
「なぁなぁ、三蔵。今日何の日か知ってるか?」
「・・・・バレンタインだろ。それがどうした」
「はい」
「・・・何だ?これは」
「俺が作ったんだ!な、食ってみろよ」
「あぁ?誰がテメェが作ったもんなんか食うかよ」
「何でだよ。八戒に教えてもらったんだから美味いぜ!」
「ふん。なおさら食えんな」
「何だよ~せっかく作ったのによ」
「・・・・」
「八戒が今日は好きな人にお菓子やる日だって言ったから、」
「から、何だ?」
「だから・・俺、三蔵怒るとこえーけど、一番好きだからやろうと思ったのに・・」
「悟空」
「な、何だよ」
「貸せ」
「へ?」
「よこせっつってんだよ!」
「さん・・ぞう?」
「・・お前にしちゃ、よくできてんじゃねぇか」
「!ホントか?」
「こんなもんで嘘つくか。アホが」
「~~~~三蔵!!!」
「離れろ!このバカ猿が!!」
「ヤダ!!ぜってぇ~離れねぇ!」
「どうやら上手くいったみたいですね」
「けっ。何が悲しくてあの猿の失敗作をくわにゃならねぇんだよ」
「仕方ないでしょ?捨てるのはもったいないですし」
「はぁ~あ。バレンタイン嫌いになりそう」
「そうですか?私は好きですよ?皆が幸せになれる日ですからね」
「・・・ったく。八戒には敵わねぇな」
「褒め言葉ですね」
皆さんにとっても、素敵な日であることを―
ハッピーバレンタイン♪
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2006-03-29T15:30:22+09:00
1143613822
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約束
https://w.atwiki.jp/comfo/pages/44.html
*約束【執筆者/藍奈】
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「三蔵のばか!!!」
俺は持っていたクッションをおもいっきりドアにぶつける。
三蔵が少し前に出て行ったドアに。
―30分前―
「なぁなぁ、三蔵」
「何だバカ猿」
「今日、何の日かわかるよな?」
「今日?・・・大晦日だろ」
「うん。でさでさ、一緒に・・・」
「今日は先に寝てろ」
「・・・・何で?」
「くそババアに呼び出されてんだよ。行かねぇと後が五月蝿いからな」
「じゃあ、俺との約束はどうなんだよ?!!」
「あ?約束だぁ~?」
「そうだよ。この前からおおみそかは一緒に過ごそうって言ってたじゃんかよ!!」
「んなこと言った覚えねぇな」
「言ったんだよ!!!だから、俺・・・・すっげー楽しみにしてたのにさ」
「・・・・ふん。知るか。とにかく寝とけ、分かったな」
言うだけ言って三蔵は出て行った。
「三蔵なんか嫌いだ・・・」
約束したのにさ。
一緒に過ごそうって。
一緒に新しい年を迎えるんだって。
なのに、三蔵は・・・・・・
「あぁ~あ。つまんねぇー」
俺はベッドの上に寝転がった。
どうせ三蔵は明日の朝まで戻ってこねぇだろうし。
三蔵の言うとおり、寝てようかな~
何もすることねぇし。
「三蔵なんか、嫌いになってやる・・・・」
何か・・・・煙い・・
あ、三蔵のタバコのにおいだ・・・これ・・・・
ん?三蔵?
「さんぞう!!!!」
「・・・・何だ」
「・・・・・・あれ?三蔵?」
「だから、何だ」
何で三蔵がいるんだ?
あれ?
確か俺、三蔵にムカついて・・・・でも、何もすることなくてベッドに転がって・・・
あ、そのまま寝たのか?俺。
「なぁ、三蔵」
「・・・・」
「何でここにいるんだよ?仕事は?」
「んなもん、止めてきたにきまってんだろうが」
「何で?」
「・・・一緒に・・・・過ごすんだろ?大晦日」
「!!」
そうだ。
いつだって、三蔵は約束を守ってくれた。
俺との約束・・・破ったことが一回もない。
「やっぱり・・・」
「ぁあ?」
「やっぱり、覚えてたんだな。三蔵!!」
後ろから三蔵に飛びつくと怒られた。
けど、俺は怒られても離したくなかった。
それぐらい嬉しいんだ。
「ふん。忘れるわけねぇだろが・・・」
「へへっ」
「ヘラヘラするな」
「だって、嬉しいんだもん」
「・・・・ふん。ほざいてろ」
三蔵の一言が嬉しいんだ。
俺、三蔵のこと大好きなんだ。
三蔵が俺の事みつけてくれた日からずっと、ずっと好きなんだ。
「三蔵、大好きだかんな」
「・・・・」
「来年も、一緒にいような!」
「・・・・」
「な、三蔵」
「五月蝿い」
「なっ・・・・・・」
三蔵、照れてる・・・
これって、俺だけが知ってることだよな?
へへっ。
来年も、一緒な?三蔵。
A HAPPY NEW YEAR♪
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2006-03-29T15:29:16+09:00
1143613756
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ひなた
https://w.atwiki.jp/comfo/pages/43.html
*ひなたぼっこ【執筆者/藍奈】
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「なぁ、三蔵」
「・・・・何だ」
「外行こうぜ!」
俺は新聞から顔を上げると、窓から外を眺めている悟空を見た。
そして、一言。
「1人で行け」
「・・・・・」
「・・・・・」
「だあ―――――!!何でそんな事言うんだよ~??」
「黙れサル」
「なぁー三蔵。ぜってぇ~気持ちいいって!外」
「・・・はぁ。オイ、悟空」
「うん?」
「お前は何でそんなに行きたいんだ?」
「?何でって・・あ、やっぱり三蔵も行きたいんだろ?
何だよ、それならそうと言っ・・・」
「行かねぇっつったろ!」
こんなクソ暑い日に、何でこの俺様が外に行くんだ?ぁあ?
ったく。やっぱ悟空は動物・・・いや、それ以下か?
「だってよぉ~いいとこ見つけたんだよ」
「いいとこだぁ?」
「そ。いいとこ!この町がさ、綺麗に見えてさ大きな木があって、
風も気持ちいいんだぜ?俺、三蔵とそこでひなたぼっこしたくてさ」
「ひなたぼっこ・・だと?」
「うん!だから、行こう?な?」
ひなたぼっこ・・・・・この歳でか?
だが、一度言い出したら聞かねえしな。コイツは。
「行ったらすぐ帰ってくるぞ」
俺の一言で表情をくるくると変える悟空。
今は、顔に満面の笑みを浮かべている。
「~~~~~三蔵、大好き!!!!」
「・・フン。さっさと行くぞ、オラ!」
「おぅ!」
宿から30分。
連れられてきた場所は、町の一番奥。
小高い丘になっているそこは、悟空の言った通り中心に大きな木があった。
そして、そこからは町全体が綺麗に見下ろせた。
「な!な!いいとこだろ?」
「・・・・・悪くない」
「だろ―?」
地面に寝転んだ悟空は、本当に気持ちよさそうにしている。
俺は大木の側まで行くと、そこに腰を下ろした。
澄みきった空
爽やかな風
―――静かな場所
「三蔵」
いつの間にか俺の脚の上に顔をのせ、くつろいでいる悟空。
「何だ」
そっと髪を梳いてやりながら、静かに悟空の言葉に耳を傾ける。
「明日もまた来ような。ココ」
明日も・・・か。
「・・・・そうだな。お前が大人しく静かにするならな」
「へへっ//サンキュな、三蔵」
ひなたぼっこか。
たまにはいいかもな。
明日は八戒に頼んで、飯でも作ってもらって持ってくるか。
ピクニック気分でも味わおう。
悪くないだろ?悟空――――
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2006-03-29T15:26:52+09:00
1143613612
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行方
https://w.atwiki.jp/comfo/pages/42.html
*行方不明【執筆者/藍奈】
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「三蔵。悟空、知りませんか?」
ノックもなしに部屋に入ってくると、八戒は俺に聞いてきた。
「・・・・おい。ノックぐらいしやがれ」
視線を八戒から手元の新聞へと戻す。
悟空がいなくなるのなんざ、いつもの事じゃねぇか。俺の知ったこっちゃねぇ。
「あ、すみません。そんな事より、悟空ですよ。どうなんですか?」
「知るわけねぇだろうが。どっかその辺、散歩にでも行ってんじゃねぇのか?」
あのバカ猿のことだ。どこかに行ったって腹が減りゃ帰ってくるだろ。
「僕もそう思ったんですけど・・・」
躊躇いがちな八戒に俺はもう一度視線を八戒に向けた。
そして、続きを言うように促す。
「外には出てないみたいなんですよ」
「外に出てない・・だと?」
「えぇ。下に降りて聞いてきたんですけど、悟空は一度も外に出てないそうです」
俺達は珍しく昨日から宿に泊まっていた。下は食事ができ、上が宿になっていた。
部屋数が多く個別に部屋をとったんだが・・・
「部屋にはいないのか」
「いませんでした。念のため、今悟浄が外に探しに行ってます」
あのバカが。すぐ面倒事起こしやがる。
「おい!三蔵!!」
悟浄が勢い込んで入ってきた。
どいつもこいつも、勝手に入ってきやがって。
「五月蝿い!!静かに入ってきやがれ」
「あらぁ~三ちゃんったら可愛い悟空がいないもんだから、拗ねちゃってんの?」
「いけませんよ、悟浄。いくら本当の事だとしても」
スパ―ン
「って~~!何で俺だけなんだよ」
「ああ?テメェが一番、五月蝿いんだよ」
「まぁまぁ、2人とも。それより、悟浄。悟空はいましたか?」
八戒が俺と悟浄の間に入ってきた。
そう、知りたいのは悟空の居場所。
「あ~それが、どこにもいねぇよ。ったく、あの猿どこに行っちまったのかねぇ~」
「そうですか。いませんでしたか・・・」
八戒が俺のほうを見てくる。しかも、目で話し掛けてくる。
俺にどーしろってんだ?
「では、下に降りて待ってましょうか。そろそろ帰ってくるかもしれませんしね」
八戒の提案により、俺達は部屋を出て下に降りていった。
「あ、八戒さん。皆さんもお揃いで」
「凛銘さん。どうかしたんですか?」
「それが、お客さんの中で悟空さんを見たという方が・・・」
ここで働いている凛銘の言葉を聞いた八戒は一度、俺と悟浄を見る。
俺が目で合図をすると八戒は小さく頷くと凛銘に詰め寄った。
「それで凛銘さん。その悟空を見たというお客さんは、どちらに?」
「あ、はい。あの席です。一番奥の1人でお酒を飲んでいる方です」
「そうですか。ありがとうございます」
「いえ、これで見つかるといいですね。悟空さん」
「そうですね」
八戒が席を聞くと、俺はすぐにその席に向かった。
1人で酒を飲んでいるそいつに俺はこう言った。
「死にたくなければ悟空を見たという場所を言え」
銃口を向けると男は慌てはじめる。
「あ~あ、そりゃダメっしょ。人に物を聞くときは丁寧に言わなきゃね?三蔵法師ともあろう人が」
「なんならキサマが死ぬか?エロ河童」
「あら、三ちゃんったら怖~い」
「いっぺん死んでこい!」
俺と悟浄が言い合ってる所に凛銘と話し終えた八戒が間に入ってきた。
「二人とも何やってるんですか!!先に悟空の居場所を聞いてください」
「へ~い」
「チッ」
「すみませんでした。お怪我はありませんか?」
「あ?あ、あぁ。大丈夫だ」
「そうですか。それで、悟空を見たそうですが何処で見たんですか?」
「すぐそこだよ。ここに来る途中の、商店街。フラフラとぶつかってきてよ、ここでいつも見てる笑顔が
なかったからちょっと気になってよ」
商店街・・・か。そこに悟空がいる事自体は不思議じゃねぇ。
だが、ふらふらしてたとは?・・・・ったく、あのバカが。
「おい、八戒」
「何ですか?」
「・・・・・メシ、先に食ってろ」
「・・・分かりました。あまり遅くならないように」
俺は八戒と悟浄の側を離れ、悟空を探しに外に出た。
「こんなとこにいやがったか・・・」
散々歩き回り見つけた場所は、宿からかなり離れた静かな場所だった。
小さな丘の上に転がってる悟空に近づくと、俺に気付いたのか悟空が話しかけてきた。
「・・・なぁ、三蔵」
「ああ゛?テメェ、何1人で黄昏てんだよ。この馬鹿猿」
横に行くと俺はその場に座り込んだ。
「別に、黄昏てなんかねぇよ!!」
「じゃあ何でこんなとこにいんだよ」
「それは・・・・」
チラッと悟空のほうを見ると俯いて黙り込んだ姿が目に入る。
俺はタバコを取り出すと火をつけて一服する。
そんな俺の姿を見た悟空は少ししてから、話し出す。
「俺・・さ。強くなりてぇんだ」
「十分強いじゃねぇかよ」
「もっとだよ。もっと、もっと強くなりてぇんだ!だけど・・・」
「何だよ。言いたい事あんならとっとと喋れ!」
スパ―ン
「いってぇー!!今本気で殴ったろ!!」
「殴ったんじゃねぇ、叩いたんだよ」
「どっちだって同じじゃねぇかよ」
「あ?何か言ったか?」
「言ってねぇよ・・・・三蔵?」
小さく呼ばれて振り向いてやると、大きな悟空の目に俺が映る。
普段使わねぇ頭を使ってんのかいつもとは違う顔をしている。
「三蔵、俺ってやっぱ邪魔なのか?」
悟空の口からでた言葉に俺は少し驚いた。
「何言ってやがんだ?」
「だって!・・・俺、いつも三蔵に守られてばっかだからさ」
「それがどうしたんだよ。俺が好きでやってんだ」
「それでも・・俺。三蔵に守られるんじゃなくて、俺が三蔵を守りたいんだ」
初めて聞く悟空の気持ち。俺は、悟空の事を甘やかしすぎてたのかもしれねぇ。
「そうか。なら守ってみやがれ」
俺は立ち上がりながら悟空に言う。
悟空は俺の言葉に驚いたような顔をする。
「どういう事だよ」
「そのまんまだ。俺を守りたいんだったら守ればいいだろって言ってんだよ。
それとも何か、お前はこの俺を守る事ができねぇのか?偉そうなこと言ってよ」
「守れるに決まってんだろ!!」
「だったらいいじゃねぇか、それで」
「ぅん・・・なぁ、俺邪魔じゃねぇの?」
俺は悟空に背を向け元来た道を歩き出す。
後ろからは悟空がゆっくり歩いてくるのがわかる。
「・・・・」
「さん・・ぞう?」
「はっ、知るか。テメェで考えろ。おら、とっとと帰るぞ」
「んだよ、それ。いいよ、三蔵が邪魔だっつっても俺ずっと三蔵の側にいるからな!」
「ふんっ勝手にしやがれ」
何が楽しいのか悟空は鼻歌を歌いながら俺の前を歩いていく。
誰が教えるかよ。
悟空、お前にだけは教えねぇ。
俺が・・・・お前を必要としてることはな。
----
2006-03-29T15:25:08+09:00
1143613508
-
R.3
https://w.atwiki.jp/comfo/pages/41.html
*存在理由【執筆者/藍奈】
----
次の日、俺は仕事を休んだ。
理由は、大ちゃんの顔が見れないというのもあるけど、俺自身が頭の整理がついてなかったから。
休みの電話を入れたら、運悪くマネージャーの安部ちゃんにとられて怒られたけど、今は休んで考えなきゃいけないと思った。
今の俺は精神的に限界だった。
「・・・はぁ。今ごろ大ちゃんは新堂と仕事してんだろうな」
何をするでもなくただベッドの上でそんな事を考えていた。
大ちゃんの事を考えると、胸がイタイ。
新堂が現れてから俺は、自分の中にある様々な感情に驚いていた。
そして、俺がどれだけ大ちゃんの事を想っていたかも。
ねぇ、大ちゃん。
大ちゃんは本当に俺の事、どうでもよくなったの?
大ちゃん。俺、どうしたらいい?
俺、本当は別れたくなんかないんだ。
もっと大ちゃんを愛していたい・・・
もっと大ちゃんを、この腕で肌で感じていたい!
「・・・っ・・・・・だい・・ちゃん」
溢れ出る涙。
もう、とっくの昔に枯れていたと思っていたのに。
大ちゃんとの思い出が頭の中に1つ1つ浮かび上がる。
タノシカッタ
ツライコトモアッタ
デモ、アイシテイタ
大ちゃんだけだよ。
俺をこんなに虜にさせたのは。
一生、大ちゃんだけ。
忘れよう。いや、忘れないといけない。
全部。そして、俺は一人で歩いていく。
「大ちゃんいないから、難しいかもな」
それでも歩いていく。1歩1歩、確実に。
大ちゃん、見送りぐらいはしてよね。それだけで、いいから。
そこで俺の意識は途切れていた。
目が覚めると朝の日の光が、部屋の中に差し込んでいた。
「仕事・・・いくか」
さすがに昨日休んだので、今日休むことは許されないだろう。
(阿部ちゃん、コワいしな・・・・)
俺は素早く着替えると、車のキー片手に仕事場へと向かった。
スタジオへと続く扉の前。俺は立ち止まっていた。
(もう、大ちゃん来てるだろうな)
引き戻れない。俺は覚悟を決めると、目の前に立ち塞がる大きな扉を開いた。
中央にはもうセットがあって、大ちゃんがスタッフの1人と話をしていた。
新堂の姿は見当たらない。
(まだ、来てないのか?)
まぁ、俺にとってはアイツがいない方がいいんだけど。
大ちゃんの側まで行き、挨拶をする。
「おはよう、大ちゃん」
「あ、おはよう。ヒロ」
普通にできて、少しホッとした。
けど、大ちゃんの顔。どこか辛そうだった。
(何かあったのかな・・・俺には関係ないか)
自分にそう言い聞かせると、俺は自分の調整に入った。
今日歌う『TEAR’S LIBERATION』は今日からの俺にはピッタリの歌詞だった。
ちゃんと歌えるか心配だった。
あまりにも俺の状況をリアルに写し出されていたから。
けど、だからこそ逆に歌ったらスッキリする・・・そんな気にもなった。
バラード調のメロディーライン。
大ちゃんの細い指が奏でる音に耳を貸す。
俺は今までの大ちゃんとの思い出を胸に歌い出した。
(この曲で、最後になるかもな)
密かに思いながら俺は精一杯歌った。
メロディーから大ちゃんの気持ちが分かるような気がした。
そして、俺はそこに確かに感じていた。
曲を通して俺と大ちゃんは一つになった・・・・と。
it’s my tear’s liberation tell me now what is love!
Open My Heart 幾つかの夢の場面
想いは途切れても このまま立ち止まらない
Open My Wings 傷ついた夢を抱いて
もう一度歩き出せる I Believe・・・
Open My Heart せつなく揺れる夜にも
傷みを恐れずに 閉ざした壁を破ろう
Open My Wings 手探りで知る未来に
その手を伸ばしてみる 答え求めて</font>
この曲を最後に「access」は解散した。
そして、俺と大ちゃんもこの曲を最後に会わない約束をした。
―月日は流れて、7年後―
「確か今日だったなぁ。あれから、7年か」
俺は信号待ちする車の中、ふと思い出していた。
解散してから今日で7年。
この7年間、俺の仕事はaccessとして活動していた時より極端に少なくて。
大ちゃんの偉大さを身をもって感じていた。
それでも俺は1つ1つ仕事をこなしていた。
決して満足とはいえない生活。
俺の心は今でもポッカリと塞がることのない大きな穴を抱えていた。
パッパー!
後ろからクラクションを鳴らされ信号が青になっていたことに気付く。
「ヤベッ」
俺は慌ててサイドブレーキを入れ、アクセルを踏む。
そのとき俺は目の端に大ちゃんの姿を見たような気がした。
家に帰り着くと、滅多に鳴ることのない家の電話が鳴った。
「誰だよ、こんな時間に」
と言ってもまだ9時を少し回ったとこだから、そんなに遅い時間じゃないけど。
何コールか響いた後、留守電に変わった。
『・・・・・・・ヒロ、僕だけど分かる?・・あのね、実は・・・・』
耳に入ってきた声に俺は一瞬固まる。
分かる?って、分かるに決まってるだよ。
7年前と何ら変わらない声と喋り方。
忘れようと誓ったのに結局、忘れられなかった愛しい人。
(大ちゃん!!)
俺は急いで電話の前まで行くと、受話器を取った。
「大ちゃん?!」
『あ・・・ヒロ。いたんだ・・・・・留守電になったから、いないと思った』
「さっき帰ってきたんだ。そしたら電話が鳴って、大ちゃんの声が聞こえてきたから」
『そう・・・・』
「うん・・・」
久々にというか7年振りに聞いた大ちゃんの声。
どこか、暗い感じの声。
それでも声が聞けたことが俺は嬉しかった。
「ねぇ、大ちゃん。どうかしたの?電話なんて」
なかなか話し出そうとしない大ちゃんに、とうとう堪えきれずに聞いた。
すると大ちゃんは小さな声で話しだした。
『あのね、ヒロ。明日、仕事が終わった後・・・2人で会えないかな・・』
「え?」
大ちゃんの口から発せられた言葉に、俺は呆然とする。
『あ、別にダメならいいんだ。うん。無理にってわけじゃ・・・』
「大丈夫!!仕事終わった後だろ?大丈夫だよ。会えるよ」
『そう、良かった。じゃ、明日。おやすみ、ヒロ』
「おやすみ、大ちゃん」
受話器の向こうからは無機質な機械音。
(大ちゃんが・・・大ちゃんに会える・・・)
俺の全身から喜びが溢れる。
早く明日になってほしい。俺は受話器を握りしめたまま、歓喜に浸っていた。
次の日、俺は朝からソワソワしていた。
大ちゃんに会える・・・ただそれだけの事なのに天にも昇った気分だった。
まぁ、おかげで仕事にも力が入ったのは言うまでもないだろう。
仕事が終わると、俺は楽屋で少し時間を持て余していた。
何の因縁があってか今、俺が使ってる楽屋は7年前にも使った楽屋と同じだった。
「・・・ここって思い出深いよな」
この楽屋でいろいろあった。
大ちゃんに叩かれて叩かれて叩かれて・・・・・あれ?
そんなに叩かれたっけ?俺・・・・あ、でも俺も叩いたんだよな。大ちゃんのこと。
(痛かったよな、やっぱ)
あの時、叩いたこと謝らなきゃ。
「ヒロ」
「!!!」
いきなり名前を呼ばれ心臓がバクバクする。
ゆっくりと後ろを振り向くと、そこには大ちゃんの姿があった。
「大ちゃん・・・」
抱き締めたい衝動に駆られるが、そこは理性で抑えこむ。
雑誌とかで見たら分からないけど、大ちゃんはどこかやつれた感じがした。
「ヒロ、あのね・・・その、ご飯を食べに行こうと思ったんだけど、その前に少し話しておきたいことがあって」
「?・・・いいけど、ここで?」
「うん。じゃ、ちょっと待ってね」
「え?ちょっ、大ちゃん?」
俺に待つように言うとドアの方まで歩いていく。
俺は何がなんだか分からず、言われた通り大人しく待っていた。
大ちゃんはいったん外へ出ると誰かをつれて中に入ってきた。
そのダレかは・・・俺が一番嫌いな男――新堂 直哉だった。
「久しぶりだね、貴水くん。元気だった?」
「・・・どうも」
俺は一言返すと視線を大ちゃんに戻す。
「大ちゃん、何でコイツがいるの?」
「ヒロ、今から僕が話すこと信じてくれる?」
「・・・・・」
俺は少し考えた。
大ちゃんの言うことは信じてやりたい。けど、話の内容にもよる。
大ちゃんを見ると、大ちゃんは少し震えていた。
それを見て俺は信じると決めた。
「信じるよ。だから、話して」
優しく言うと大ちゃんは、俯いていた顔を上げ俺の方を見た。
その目には、うっすらと涙が滲んでいた。
俺はその涙を指で掬ってやると、大ちゃんが抱きついてきた。
それも、泣きながら。
「・・・ごめ・・ん、ヒロ・・・・・ありがと・・・っく・・」
俺は何も言わず、黙って大ちゃんが泣き止むのを待った。
「落ち着いた?大ちゃん」
背中を撫でてやりながら様子を伺う。
「うん・・・ごめん・・」
「謝る必要ないよ。ビックリしたけど」
それにしても大ちゃんは、どうして泣き出したんだ?
最初の「ごめん」。
あれは泣くことに対しての「ごめん」じゃないような気がする。
そして、新堂が来た理由。
俺は、それが早く知りたかった。
俺の心中を察したのか、大ちゃんがゆっくりと話しだした。
「ヒロ・・・・僕ね。ヒロがいないと、ダメなんだ」
突然の告白に、俺は動揺した。
いや、俺がいないとダメってことは大ちゃんには俺が必要ってことだろ?
それは嬉しいけど、何で今なんだ?
今更じゃないのか?
「どうしたんだよ、突然」
「うん。・・・・・僕ね、あの時・・・ヒロに嘘をついたんだ」
「・・・・・」
(もしもし、大介さん?話、とんでない?)
嘘をついたっていつの事だよ。7年前のいつかだろ?
てかさぁ、大ちゃん。
君の話に順序というものはないのか?
俺は頭をフル回転させて大ちゃんの言う「あの時」を探す。
そして、俺はもしかしたらと思い大ちゃんに聞いてみる。
「あの時って、俺が大ちゃんにセックスしたか聞いた時?」
「///うん」
「嘘って、したのにしてないって言ったこと?」
「違う!!・・・やっぱり、誤解してたんだ・・・・・」
寂しそうな顔をして一瞬上げた顔をまた俺の胸に埋める。
(誤解?)
何がゴカイなんだ?
あの時、大ちゃんは顔を赤くして「どうでもいい」って言った。
俺はてっきり大ちゃんが新堂とヤったから赤くして言ったんだと思ったんだけど、それが違うのか?
「ヒロが、僕に・・・その、新堂とのことを聞いてきた時、僕は嬉しかったんだ」
「嬉しい?」
「うん。僕はいっつもヒロが綺麗なお姉さんたちとアソんでるのを見ると妬けてくるから、新堂との事を聞かれた時、ヒロも妬くことってあるんだなぁと思って嬉しかったの」
「え?てことは、大ちゃんは新堂と・・・」
「その時はね」
新堂の方を見ると、新堂は大きく頷いた。
「大介をデートに誘った時、しようと思ったんだけど見事に拒絶されたよ。君じゃないと嫌だって言われて・・・結局、できなかったんだ」
俺の勘違いだった。
まさか大ちゃんがそんな事を思っていたなんて知らなかったし、新堂とも何もなかったんだ・・・・
「でもねヒロ。僕、その日新堂と寝たんだ」
「?でも、大ちゃん今してないって・・」
「ヒロがキスしてきたでしょ?で、理由を聞いたらシたかったからって・・・・・」
確かに言った。でも、あれは本心なんかじゃなくて。
そう。ただのやつあたりだった。
「あの言葉を聞いた時、あぁヒロにとって僕は所詮その程度の存在でしかないんだって思ったら、すごく悲しくなってきて・・・気付いたら、ヒロを叩いてた」
俺は、自分だけが被害者気分になってたけど実は、大ちゃんの方が俺より傷ついていて本当の被害者なのかもしれない。
気付いてやれなかった。大ちゃんの気持ちに。
「僕は壊れていたのかもしれない。あの後、楽屋を出て新堂の所にいったら新堂は何も聞かずに僕を抱き締めてくれたんだ」
「大介、大丈夫?僕が話そうか?」
新堂が大ちゃんを心配して声を掛けてくる。
「ううん。大丈夫。僕が話す。・・・・話さなきゃ、前に進めないから」
そう言って、大ちゃんは話を続けた。
「新堂のその優しさが、あの時の僕には凄く嬉しくて、暖かくて・・・その日、僕は新堂の家に行って寝たんだ・・・」
「大ちゃん・・・俺・・・」
「ヒロ、ごめんね。ヒロに叩かれて目が覚めたんだ。何をしてたんだろうって思ったら罪悪感も出てきて、でも遅かった。ヒロに、別れようって言われた時、もう戻れないんだ・・僕が戻れなくしたんだって・・・っ・・・」
大ちゃんの頬に涙の道ができる。
ポロポロと大粒の涙が大ちゃんの目から溢れてくる。
もういいよ、大ちゃん。
もう、わかったから。
大ちゃんだけが悪いんじゃない。
俺も悪いから、お互い様なんだよ。
俺は抱き締める腕に力を入れる。
「っく・・・ヒロ?・・・くるしぃ・・・」
「大ちゃん、大好きだよ」
「!?な・・・に・・」
「俺、この7年間。大ちゃんの事を忘れようと努力したけど無理だった」
何かを言いかけた大ちゃんは、俺の言葉に耳を傾ける。
新堂が気をきかせてか、そっと出ていくのが分かる。
(ありがとう・・・新堂)
きっと、新堂はこの7年間ずっと大ちゃんを支えてきたのだろう。
でもこれからは、俺の役目。
「街とか歩いたり、車を運転してるときも、目は大ちゃんを探していた。大ちゃんの載ってる雑誌を買って読んだりしてた」
もう離さない。
絶対、離さない。
「それに月日が経てば経つほどに、大ちゃんへの愛しさが増えていって、どうしようもなくなってた・・・」
「ヒロ・・・」
この腕の中の温もりを、もう二度と失いたくない。
俺は大ちゃんを一人にさせすぎたのかもしれない・・・
「昨日、大ちゃんから電話が掛かってきたとき、本当に嬉しかった。大ちゃんが俺に会いたいって言ってくれた時、調子いいかもしれないけど心の中のどこかでもしかしたらって思う自分がいてさ」
「・・・ヒロ。僕ねもう1つ話があってね。実は、もしヒロが許してくれるなら・・・僕の事を見捨てないでくれるなら、もう一度accessをやろうと思ってるんだけど・・・ダメかな」
俺は一瞬、自分の耳を疑った。
だって、大ちゃんがaccessをやろうって・・・それって、俺はまた大ちゃんの側にいれるってことだろ?
「だめ・・・・じゃないけど、でも・・・何で?」
いや、ここは素直に喜ぶところなんだろうけど、信じられない!っていう気持ちの方が強い。
大ちゃんが何を思って言ったのか、その真意が知りたい。
「さっき、ヒロが僕の事を忘れられなかったって言ってくれたでしょ?僕も同じだったんだよ。もう元には戻れないって思ったあの日から・・・あの時からヒロの事を忘れようと思ったんだ」
俺は大ちゃんの言葉に全神経を集中させる。
「でもやっぱり僕も忘れられなかった・・・暇さえあれば、ヒロのことを探してた。いないと分かっても、探さずにはいられなかった」
大ちゃんは俺の背中に腕を回して服を掴む。その仕草がまた可愛くて、俺は込み上げてくる笑いを必死に堪える。
「何度も電話を掛けようとして・・・掛けようと思ってボタンを押すんだけど、最後のボタンだけ押せなくて。自分のした事に何度も悔やんで、でも悔やみきれなくて。ヒロから電話かメールがくるかもと思って何度も携帯のディスプレイ見るんだけど、全然なくて・・」
俺と大ちゃんは、どこまで考えることが一緒なんだろう。
実は俺も大ちゃんと同じことをした時があった。
何度も電話しようと思ったし、メールだってしようと思った。けど、かけることも送ることもできなかった。
理由はいろいろあるけど、一番強いのは・・・・
「怖かったんだ。ボク。だから、待つことしかできなくて」
怖い。
俺も怖かった。電話しても、とってくれないかもしれない。
とってくれたとしても、会話になるかどうか心配。メールをしても名前を見て消されそうだし。
恐怖と不安。
この2つの感情に阻まれて、待つことしかできなくなった俺たち。
(でも、大ちゃんはやっぱり凄いね・・・)
俺のできない事を平気でやってのける大ちゃん。
俺は改めて大ちゃんの事をスゴイと思った。
「大ちゃん、アリガトウ」
「うん?・・・何が?」
「ありがとうv」
大ちゃんの額にキスを落とす。
「ヒロ?何?」
「大ちゃん、access本当にするの?」
「うん。したい。・・・・ヒロが僕の事を許してくれるなら・・だけど」
どこまでも愛しい大ちゃん。
大ちゃん、許すも何もないよ。
悪いのは俺だったんだから。
俺たちは少し遠回りしすぎたのかもな。
「やろう、大ちゃん。俺の方が大ちゃんに許してもらえるかどうか分かんないけど、もう一度大ちゃんと音楽がやれるなら俺は・・・俺もやりたい」
「ヒロ、そんな、ヒロは悪くないよ。僕がいけなかったんだから・・・」
「大ちゃん」
また謝り始めそうな大ちゃんに、俺はストップをかける。
「大ちゃん、もう止めよ?お互い様って事でさ・・大ちゃんばっかりに謝られると、俺どうしたらいいか分かんないよ」
俺も大ちゃんも、あの時から十分苦しんだ。
相手を傷つけて、自分も傷ついて。
俺は大ちゃんの傍にいれるだけでいいんだ。
だから、大ちゃんの「accessやろう」っていう言葉は俺にとって凄く意味のある嬉しい言葉で。
「そうだね、ヒロ。ありがとう」
「何言ってんの、俺の方こそありがとう。大ちゃん、今でも俺は大ちゃんのこと愛してるよ」
俺のその台詞に大ちゃんは、うっすらと顔を朱く染めていく。
「///あのね、ヒロ。僕も・・・」
そっと耳元で囁かれた言葉は、たぶん一生俺の中で響きつづけるだろうな。
これから、また一緒だよ。
ねぇ、大介。人を愛するって難しい事だよな。
俺も大介も、成長したと思ったけど、「恋愛」に対しては全然成長してないよね。
大ちゃんの気持ちが分からなくて苦しくなった時もあった。
醜い嫉妬で、大ちゃんを傷つけた時もあった。
この7年間、忘れることができずに足掻いた自分がいた。
そして何よりも
―――俺は大介だけしか
ア イ セ ナ イ ―――
俺は大ちゃんの額にもう一度キスを落とすと、瞼や頬にもキスを落としていった。
くすぐったそうに身を捩る大ちゃんの顔に手を添えると、少し上を向かせる。
俺を7年前と何ら変わらない汚れない瞳で見つめてくる。
そんな可愛らしい大ちゃんに、今度は唇に軽い触れるだけのキスを贈る。
「・・・大ちゃん、一緒に歩いていこう?ゆっくり」
「うん。ヒロ、もう僕を一人にしないでね?」
「約束するよ」
そう言うと俺は、また一つキスを贈る。
ゆっくりと、少しずつでいいから一緒に歩いていこう。
これからだって、決して楽しいことばかりが俺たちを待ってるわけじゃない。
だけど、迷わずに、相手を見つめていこう?
俺は大ちゃんを支えるから、大ちゃんも俺を支えてよ。
2人で前に進もう。
また、今日から――
次の日、俺と大介はかつてのaccessのスタッフに挨拶に行った。
そして、翌日発売の雑誌にはこんな見出しがあった。
『7年の沈黙を破ってaccess復活』
「大ちゃん、一生愛してるよ」
「///あのね、ヒロ。僕もヒロの事・・・愛してるよ」
俺がこの世に生まれてきた『存在理由』
それは・・・
『君に恋するため』
----
▼藍奈'sコメント
これまた懐かしいものが出てきた…
これは高校2年の時に、授業中ずっとルーズリーフに書いてた。
友達にリクされたもので。
歌が三部作になってるんだけど、それに合わせて書くっていう初の試みだったんだけど…
読み返してみたら、なかなかいいもん書いてんだな~と思ったり(うわぁ)
最近こういうの書いてないな~…
2006-03-29T15:19:19+09:00
1143613159
-
R.2
https://w.atwiki.jp/comfo/pages/40.html
*存在理由【執筆者/藍奈】
----
「おはようございます」
今日も仕事。毎日仕事。
たまには休みが欲しいけど、そんなこと言ってられない。
職業柄、休みなんて許されない。
(大ちゃんは・・・まだか)
周りを見回しても愛しの大ちゃんの姿は見当たらない。
「昨日の事、謝りたいんだけどな~」
「何を謝るの?」
不意に耳に入ってきた声は俺の探していた人の声で、ゆっくりと振り返ると、そこにはやっぱり大ちゃんがいて。
「だ、大ちゃん!お、おはよう」
「おはよう。で、ヒロ何かしたの?謝るって言ってたけど」
「あ、いや別に。うん。何でもないよ」
言えるわけないだろ。謝る相手は大ちゃんなんだぜ?心の準備というものが。
「おはよう。貴水くん」
「オハヨウゴザイマス」
当たり前のことのように大ちゃんの隣に立って俺に挨拶をしてくる。
大ちゃんの隣・・・・オレの居場所。
「ねぇ、大介。ちょっと彼と話がしたいんだけど、いいかな?」
俺と話?悪いけど俺には話なんてないんだけど。
新堂の言葉に少し顔を歪めた大ちゃんは小さく頷く。
その様子に違和感を感じた俺は少し心配になる。
(大ちゃん・・・?)
何かあったのか?それとも昨日の事・・・?
「じゃ、貴水くん。ここじゃ何だし、外出ようか」
「ここじゃできない話?」
なるべくならここにいたい。大ちゃんの近くにいたい。
「僕は大丈夫だけど、君が困るんじゃないかな?」
(俺が困る?)
一体何の話をしようとしてるんだ?でも、今の俺にとって困る話といえば、大ちゃんからの別れ話ぐらいだ。
「まぁ、別にいいっていうんなら、ここで話すけど・・・・・」
「けど?」
「大介の為にも、ここではちょっとね」
そう言って大ちゃんのほうをチラリと見ると、また俺の方を向いた。
大ちゃんの為と言われれば従わないわけにはいかない。
「わかった。けど、早くしろよ」
「努力するよ」
俺は新堂の後ろについてスタジオを出ていった。
「・・・大丈夫かな。ヒロ」
2人の後ろ姿を不安そうに大ちゃんが見つめていた。
「で、話って何?」
スタジオを出て少し歩いたところの休憩所に着くと同時に、俺は新堂に問い掛けた。
「うん。・・・何て言ったらいいか、よく分からないんだけど・・・」
どこか遠回しな言い方をする新堂。
俺が困って、新堂が言いにくい話・・・って何なんだ?
「はっきり言えよ。大ちゃんとの事?」
「そうだね。はっきり言った方がいいのかもしれない」
俺の言葉に何か吹っ切ったのか、少しずつ話しだす。
「単刀直入に聞くけど、君と大介は付き合ってるの?」
「そんなの付き合って・・・・」
俺と大ちゃんは、付き合ってるのか?
新堂に言われて俺は少し考える。俺と大ちゃんの関係。
自信が・・・確信が持てない。
「質問が悪かったみたいだね。じゃあ、君と大介はセックスする仲だよね?」
「・・あぁ。それが?」
「僕が口を出すことじゃないのは分かってる。けど、見てられないんだ」
「だから何が?」
コイツの言いたいことが分からない。だんだん、腹が立ってくる。
「貴水君。君には悪いけど大介の為だと思って、もう大介と関わらないでほしい。仕事以外で」
まるで頭を殴られた気分だ。
関わるなって何?俺に大ちゃんと別れろっていうのか?
もう俺は、大ちゃん以外の人を愛せないのに。
なのに!!
何がいけないんだよ!?
俺が男だから?
相手が誰でもない大ちゃんだから?
だから別れろって?
何だよ・・・・一体、何が起きてるんだ?
俺は、どうすればいいんだ。
俺に、どうしろっていうんだよ?
「ヒロ?大丈夫?顔色悪いよ?」
どうやって戻ってきたのか分からない。
目の前には大ちゃんがいて、心配そうに俺の顔色を見ている。
「ね、ヒロ?・・・・って、ちょっと!ヒロ!!」
気付いたら俺は大ちゃんを抱き締めていた。
(温かい・・・)
「ヒロ?・・どうしたの?ねぇ、ヒロ?」
離したくない。この腕の中にいる、温もりを離したくない。
大ちゃんを失いたくない!!
知ってる?大ちゃん。
俺さ・・・俺、もう大ちゃんなしじゃ生きられないんだよ?
大ちゃん。
タスケテ
「・・・でもない。何でもないよ!なに~大ちゃん、俺のこと心配してくれてんの?」
「な、何バカな事言ってんの?!ほら、準備してよね!」
「照れてる大ちゃんもカワイイv」
そう言って俺の少し前を歩き出した大ちゃんに、再び抱きついた。
「わっ!ヒロ!?離れてよ。動けない!!」
「ヤ・ダ。絶対離さねぇ」
例え大ちゃんが嫌って言っても、俺は離さないし、離れない。
絶対に。一生、大ちゃんの傍から離れない。
離れたく・・・ないんだ。
いつまでたっても俺が腕を放さないと分かると、大ちゃんは観念して俺を引きずるようにしてセットの方へと歩きだした。
「ヒロ・・・・重い」
文句を言いながらも小さな背中で俺を支えて歩く姿に俺は少し笑えてきた。
「何笑ってんの?人がせっかく連れていってあげてるっていうのに」
「あはは、ごめんごめん。ありがとう、大ちゃん」
「別にいいよ。慣れたし」
セットにつくと、俺より先に戻ってきたであろう新堂が待っていた。
俺は新堂の顔を見たくなくて、大ちゃんから離れると今日歌う曲の歌詞に目を通し始めた。
俺の後ろからは新堂と何か話している大ちゃんの声が聞こえてくる。
ときどき、笑い声が耳に入ってくる。
この場から逃げ出したい――
スタッフにそろそろ始めると言われ、俺は大ちゃんに声を掛けた。
「大ちゃん、始めるみたいだけど・・・」
「え?あ、うん。わかった」
とは言うけど、大ちゃんは新堂と話すのをやめない。
(大ちゃん・・・俺の事はどうでもいいのか?)
少し寂しい思いをしながら、再度声を掛けてみる。
「大ちゃ~~ん。歌おうよー」
「あーハイハイ。でも、歌うのはヒロでしょ?」
大ちゃんは新堂との会話を切り上げて準備を始める。
今日歌うのは『SCANDALOUS BLUE』。
スタッフから合図があって、大ちゃんが音を奏でる。
そして、俺は歌いだす。
「・・・・心は君を求めて」
1番のサビに突入。歌い始めてから気付いたんだけど、この歌は今の俺には正直言ってキツイものがある。
歌詞という名の言葉や意味が俺の心に重くのしかかる。
そして、心に響いてくるのもまた事実。
ねぇ、大ちゃんはこの曲どういう気持ちで弾いてるんだ?
他の人はどうか分からないけど、大ちゃんは分かるだろ?
この曲、俺と大ちゃんみたいだろ。
大ちゃんには俺の気持ちって伝わってないのか?
大ちゃん。俺、大ちゃんのこと本気なんだ・・・・本気で愛してる。
でも、結局は俺の一方通行。大ちゃんはきっと・・・俺のこの気持ちを知らない。
「あやまちで終われない・・・・・」
終われない・・・というより、終わらせたくないな。
新堂の言葉が頭から離れない。
ダイスケトカカワルナ
頭の中で木霊する。
考えたくないのに考えてしまう。
俺は大ちゃんを失ったらどうなるんだ?
答えはまだ出ない。いや、出せない。
出したくない!!
考えると恐くなってくる。
俺にとって大ちゃんは必要だけど、もしかしたら大ちゃんにとって俺は必要ないかもしれない・・・・
ラストのサビに入る。
愛だからいけない 行き止まるAffection
それでもいい はぐれても もう君なしでは歩けない
追いかけて探して 瞬間のHalation
儚さが音をたてる 二人の夜に・・’Cause It’s Scandalous
歌い終わった瞬間、俺の中で何かが壊れた気がした。
演奏を終え、大ちゃんが近づいてきた。
「ヒロ、すごく良かったよ!心に響いて・・・・」
大ちゃんが息をのむのが分かった。
「どうしたの?大ちゃん」
問い掛けたら大ちゃんは静かに俺にこう言った。
「どうしたのって、ヒロこそどうしたの?」
「俺?」
大ちゃんの手が伸びてきて俺の頬に触れる。
「何でヒロは・・・泣いてるの?」
切なげな瞳で見つめられる。
俺が・・泣く?
大ちゃんの言葉の意味が分からず目元に手をもっていく。
確かにそこは濡れていた。
俺は無意識のうちに涙を流していた。
「あ、俺・・」
「ヒロ、楽屋いこうか」
大ちゃんは俺の手を握って楽屋を目指して歩き始めた。
「落ち着いた?って、ちょっとチガウかな?」
笑いながら替えの冷たいタオルを俺の目の上にのせる。
(あぁ~~気持ちいい)
まさかこの年になって泣くとは思いもしなかった。
最後に泣いたのはいつだっけ。
もう、今となっては思い出せない。
「・・・・ねぇ、ヒロ。どうしたの?急に」
大ちゃんの声が近くでする。
たぶん、俺の前か横にいるんだろうな。
「・・・・」
大ちゃんとの事を考えてたら泣けました、なんて言えない。
言ってもいいんだけど、大ちゃんの事だから「バカじゃないの?」で片づけられそうだし。
「ヒロ。もしかしてさぁ、あの歌詞が原因?」
その問いに俺はハッとする。
(やっぱり、大ちゃんも・・・・)
大ちゃんも俺と同じように思ってたのかな?
「あの歌詞、僕もビックリした。何か、ボクとヒロの事みたいだなって」
「大ちゃんもそう思ってたんだ」
「うん。ヒロも同じでしょ?」
「・・・・ああ」
沈黙が2人を包む。
室内には時計の音だけが空しく響いていた。
長い沈黙の後――時間にしたら短い――大ちゃんが重く閉ざした口を開いた。
「ねぇヒロ。1つ聞きたいことがあるんだけど」
「なに?」
「さっき・・・新堂と2人でスタジオを出ていったとき、2人で何を話してきたの?」
口や顔には出していなかったけど、大ちゃんは気になっていたのだろう。
でも、あの話を大ちゃんにどう話せというんだ?ムリだろ・・・
「それに、昨日の事も気になるんだ」
「アレは昨日言ったじゃん。したかったからシただけだって」
少し投げやりな気分で言うと大ちゃんが声を張り上げた。
「違う!!!絶対に違う!!」
「・・・何が違うわけ?」
「何って、よく分かんないけど。でも、ヒロはそんな人じゃない」
勝手・・・だと思う。
大ちゃんはズルイよ。
「何となく」で俺の核心に近付いてくる。・・・ズルイよ。
「ヒロ。答えて。新堂と何があったの?」
「言ってどうなる?」
「それは・・分からないけど、とにかく知りたいんだ。ヒロが今、何を言われて何を考えてるのか。・・・涙の理由を」
俺は少し考えてから大ちゃんにこう告げた。
「言っても大ちゃんには一生分からないことだよ」
自嘲気味に言う俺。
今、君のその瞳には俺はどう写ってるんだろう。
俺は自分が情けないような感じがした。
「どうして決めつけるの?せっかく力になってあげようと思ったのに」
力になる?大ちゃんが、俺の?
何だよ、ソレ。こういう時だけ年上ぶって。
大ちゃんに何が分かるんだよ。俺の何を知ってるっていうんだよ?!
「もういいよ。何を話したかなんて新堂に聞いたら分かることだし。ヒロに聞いた僕がバカだったみたいだね」
大ちゃんは何をイラついてんだよ。イラつきたいのは俺のほうなのに。
「・・・大ちゃん」
俺はタオルを取り、大ちゃんの目を見つめた。汚れのない綺麗な瞳を。
「大ちゃんにとって、俺って何?」
「え?何言ってるの?」
俺の唐突な質問に大ちゃんは戸惑いの色を隠せないみたいだった。
当たり前だよな。いきなり、そんな事聞かれたら誰だって戸惑うだろうな。
俺だって、もし大ちゃんに今の言葉を言われたら頭がパニックになるだろう。
でも、俺はもう限界だった。
大ちゃんの行動。新堂の台詞。
疑惑、不安、恐怖、怒り、嫉妬、愛情―
いろんな感情が交錯して俺の心を支配する。
「俺にとって大ちゃんは・・・大介は大事な愛しい人で、何よりも一番大切にしたい人なんだ。大介にとって、俺ってどんな存在?俺と大介の関係って何?」
本当は口に出してはいけないのかもしれない。
でも言わずにはいられない。
俺にはもう、どれが真実なのか見極めることなんてできないから。
そして何よりも、疲れたから。考える事とか、怒ることとか、いろんな事に。
「ヒロ、僕にとってもヒロは大切な人だよ?どうして今更そんなコト聞くの?」
(そんなコト・・・)
結局、「そんなコト」で片づけられる存在なんだよな。大介の中の俺は。
そういうのって偽善じゃないの?
口で言うのって簡単なんだよな。明らかに俺と大介の「大切」の重みが違うんだよね。
「じゃあ、大介。俺と大介は付き合ってるの?」
「は?そんなの付き合ってるに決まって・・・」
「ホントにそう言いきれる?確かにさ、俺と大介は想いあってるしエッチだってしてる。けど、だからといって付き合ってるの?って聞かれたら、一瞬考えるだろ」
「・・・・・」
「それに、大介は俺が気付いてないと思ってるみたいだけど・・・新堂と寝ただろ」
「!!」
図星かよ。
ま、予想通りというか何というか。
実は昨日の夜、俺は仕事が終わってから先に仕事を切り上げていた大介に車を運転しながら電話をした。
会って話をするために。
だけど、それは叶わなかった。
何コールかした後、電話の向こうから聞こえてきたのは「電源が入っていないか、電波の届かない・・」というお決まりの内容。
こういう場合、大抵が前者の方だ。
これだけで新堂と寝たという確信には繋がらない。
決定的なものがいる。
だが、俺は今朝見つけてしまった。
その決定的となるものを。
「大介のその服、遠くからだと隠れてわかんないけど、こうやって近くにいると見えるんだよね。ソレ」
俺は大介の首筋を指差す。
そこには、小さいけれど大介の白い肌にはキレイに映える赤い印。
昨日なかったものが今日はある。
―動かない証拠。
どんどん青ざめていく大介の顔。もう、ごまかしは効かない。
大介、もう逃げられないよ?どうするんだよ。
俺はそれ以上何も言わず、黙っていた。大介が本当の事を話してくれるのを。
しばらくして、大介が話しだした。そして俺は大介の言葉に衝撃を受けていた。
「あ~あ。バレちゃった。そうだよ、ヒロの言う通り。僕ね、昨日新堂に抱かれたんだ。ヒロも凄いけど、新堂も凄くてさぁ。もう、気持ち良すぎて僕ヘンになっちゃったよ」
笑いながら言う大介に俺は何も言えなかった。
目の前にいるダイスケは、俺の愛したダイスケとは違う。別人だ。
「ねぇ、ヒロ。新堂に言われなかった?僕と関わるなって」
何で知ってるんだ?俺は言った覚えなんてないし、新堂と大介の会話には出てこなかった。
それなのに知ってるってことは・・・まさか。
「あれはね、僕が新堂に頼んだんだ。さすがに自分から、それもヒロにあんな台詞言えないでしょ?だから・・・」
パンッ!!
乾いた音が楽屋に響く。
気付いたときにはもう、大介に手を上げていた。
そして、俺は・・・また一筋・・・・涙を流していた。
「もういいよ。大介が誰と寝ようと、俺には関係ないことだよな」
「ひ・・ろ・・・?」
「別れようか。大ちゃん」
「・・・・」
「そのほうが都合がいいんだろ?」
「そうだね。別れよう、ヒロ。今まで楽しかったよ。ヒロと一緒にいれて、仕事ができて、楽しかった。バイバイ、ヒロ」
大ちゃんは俺に背を向けると静かに出ていった。
俺は・・・・・その場に座り、泣き崩れていた・・・・・・
「っ・・・ばいばい・・・・大ちゃん・・・」
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2006-03-29T14:36:45+09:00
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