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未来予想図【執筆者/唯様】






いつの日か。
あなたはきっと空を舞う。
夢めざし高く羽ばたき金色の光を掴む。


それを思い知った、冬の日


光の中にオレが入る隙間はない






「ン…」

「どうしたの甘えっこさん。そんなに僕が好き?」

「…バカ」


寒い冬の朝は、こうして周助の身体にしがみつく。
ベッドの中、裸でぴたり。
暖房はつけないの。
体温で十分。
隙間なくくっつけばあったかくて、聞こえる鼓動が心地よいリズム。


トクントクン


生きてる音。
なんてキレイ。


「…何してんの」


不意に周助の手が動き、オレの髪の毛を梳いた。
…気持ちイイ。
この仕草、大好き。


「リョーマの髪、サラサラで気持ちよくて。…いい香り」

「…そんなの、するわけないじゃん。バカしゅぅすけ」


髪の毛に顔を寄せられて、照れくさくて。
いつも通り、唇からこぼれる意地っ張り。
こんな自分大嫌い。
でも周助の前だからいいんだ。


「ふーん…そういう素直じゃないコにはお仕置きだよ?」

「ちょー…ッふ、ぁァ‥ッ//」






冬の朝は、こうしてよくじゃれあった。
身体中にあなたの熱を感じていた。
心地よくて幸せで‥ー愛しくて。


けれど


あなたは行く。
行ってしまう。


オレはあなたの幸せを邪魔するだけの存在だから。
お願い、もう優しくしないで。
キライになんて、なれる筈ないのにー


◇◇◇


それは、本当に偶然聞いた話。
意図なんてなく他意もなく。
偶然という巡りあわせの中で聞いた話。


『ーお見合い?』


その日はまだ、休みの日のオレにとっては朝早くて。
けれど隣に周助のぬくもりがなくて起き出した。
吐く息が、真っ白だった。


『もちろん、お断りしたんだけど‥先方が会うだけでもって』


リビングに足を踏み入れようと扉に手をかけた瞬間。
聞こえてきた会話。
頭がフリーズ身体もフリーズ。
ぴたり、固まって動けない。


さむい
さむい


白い息でうまる廊下。
扉一枚あければ暖かいのにー開けられない。


『断れないの?どうしても』


周助の困惑した声がする。


『父さんの古いお友達の娘さんなんですって。ねぇ、会うだけでいいからお願い出来ないかしら』

『でも‥ー僕にはリョーマが』






"僕にはリョーマが"






ーその時、気づいた。
あなたを縛り付けている愚かな自分。
あなたには未来があるのに期待されているのに!!
オレがいるせいで光る未来へいかれない。


ごめんなさい
ごめんなさい


それ以上聞いてられなくてこっそり周助の部屋に戻った。
なんてこと。
オレがいなければあなたはもっと幸せになれるんだ。
暖かい家庭を作り立派な父親になりー‥そんな未来図、オレとじゃ作れないね。


昨日抱かれたこの身体に残る熱。
もう二度と味あわない。
あなたを縛り付けている"オレ"なんて大嫌い。
こんなオレいらない。


でもオレは周助がいなきゃ生きていかれないの。
怖い寂しい苦しい辛い助けてダメ助けてッ!!


愛して
憎んで
愛して


キライになって


そんなのイヤ


どうすればいい?
どうすれば周助を苦しめない?


大好きなの。
ワガママ意地っ張りのオレを好きになってくれた人。
誰より大事な人。
幸せになってほしい人。


だから
だからーね?






ーばいばい






◇◇◇


【黙っていなくなってごめんなさい。どうか…キライになって下さい】


たった一枚、紙キレに書いた置き手紙。
話こんでたあなたに黙って、こっそり部屋をぬけだし家に帰ったのが少し前。
そしてこれから…オレは日本を離れる準備をしよう。
出来るだけ早く。
あなたから未来を奪ってしまう前に。


側にいたら耐えられない


けれど離れていれば、いつかこの気持ちが懐かしさに変わるかもしれない。
そして見守るよ。
ずっと…周助を。


アメリカに行くのは凄く簡単。
飛行機のチケットをとるだけ。
元より、親父はオレにアメリカに行けとよくこぼしていた。
今日の夜に言い出せば、来週にはアメリカで新しい生活を始めることになるだろう。
向こうにはオレを迎えてくれる場所がきっとある。
テニスの生活、それも悪くないかもね。


もう、あなたには会わない


時計を見るともうすぐお昼。
そろそろ周助があの手紙を見つけるかな。


携帯電話の電源を切る。
だって別れの電話なんてかかってきたら泣いちゃうもん。
いつもは強気、でも弱気。
仕方ないよね、好きなんだもん。


好き、なんだもんー


「……‥」


ちくたくちくたくちくたく。
時計の針が進む。
家の電話とにらめっこ。
鳴らない電話、それが答え?
自分から携帯の電源を切ったのに、それならこっちにかかってこないかと期待してる。


『…しゅぅすけのばか』


何度も繰り返したその言葉、今は自分に返そうかな。
オレ…バカみたい。
自分で決めたんだから、もう潔くしなきゃ。


「ーアレ‥?」


ぼんやりキッチンの椅子に座ったら、自然に目からこぼれた水。
あーあ、また周助に泣き虫って言われちゃう。
あ、もう言われないか。
なんか疲れた。
これからしばらくばたばたするだろうし、朝早く起きちゃったし。
‥寝ちゃえ。


起きたら、全部夢だといいのになー‥






ふわふわ


ばたばた


ふわふわ


ばたばた


…うるさいなぁ…


なんか音がする、寝させてよ。
冷たいテーブルに伏せているのは寒いのに。
眠気が後から後から押し寄せてくる。
ねむぃー






「何してるのッ!?」





…ふわり…


急に身体があったかくなった。
身体に感じるあったい熱ー心地よい匂い。


まだぼんやり


「こんなに冷えてー身体中氷みたいじゃないかッ!!」


怒られてる。
凄く怖くて優しい声。
まったく、こんな夢見るなんてオレもまだまだだね。


「とにかく、身体をあっためよう。お風呂いくよ」


「‥ふぁ…?」


抱き上げられて。
初めて気づく違和感。
夢にしてはリアルな感覚、なんだろ?


「…冷たい…僕のせい、だよねーごめんねリョーマ、リョーマ…っ」

「しゅ…すけ‥?」


そっと冷たい浴室のタイルにおろされて。
瞬間。


「ぁ‥」


頭上から降り注ぐのはあったかいシャワー。
着たままの服がしっとりと濡れて身体にくっつく。
そうなると、ようやく思考が回ってきてー。


「‥…なんで…?」


サヨナラを言ったのに。
オレの身体に触れるあなたの手は泣きそうなくらいあったかい。
…愛しい。


「リョーマ」


じっと正面から瞳を見つめられる。
降り注ぐシャワーに濡れた全身がキラキラと光ってみえる。


「気づけなかった僕は、最低の人間だ。ーキミがいない事に気づいて心臓が止まるかと思った」


いい
周助は悪くない


言いたいのに言葉が出ない


「聞いていたんだね。リョーマを一人にして、僕はなんてことをーッ」


"ー僕には、リョーマしかいない"






その声は






降り注ぐシャワーに消されてあまり聞こえなかったけれど。
湯水のように身体に響き心にしみてー切なさが、溢れた。


「しゅ‥すけーしゅぅすけーッ!!」


子供のように泣きじゃくった。
自分の短絡的な行動に周助を傷つけオレも苦しんで。
それでもあなたの未来を奪いたくないんだ。
でもあなたと未来を歩きたいんだ!!


この矛盾、ごめんねごめんね


「リョーマ‥」


抱きしめてくれる腕、その背に手を回したら。
オレは周助の未来を奪うことになる。
もう離れられなくなる。






ー許される?






「愛してるんだ、リョーマを‥リョーマだけを…ッ!!」






――……‥






ー許して






許しを乞う


周助の未来を奪う自分にそして周助に。
周助の家族に赤い糸の相手に生まれる筈だった赤ちゃんに。


ごめんね


オレは、この人からー離れられないッ!!









「‥しゅぅすけッ」





濡れた身体をもっと濡らして。
あなたの熱で濡らして愛して。
この罪深い手をたくましい背に回し、身体にしがみつく。
貪るような口づけが落ちたのはその直後。


「ン‥ふぁ…っ」


口づけをしたまま、周助の手がオレの服をたくしあげる。
濡れてべっとりと身体にはりついた服を捲り、露わになる胸の果実。


「んぁ‥っァ、ぁ…」

「ごめんー余裕がない。優しくできないーッ」


指で果実をころがされて、あっと言う間に下肢にたまる熱が恥ずかしい。
こりこりとたちあがった乳首を指で潰されたり、摘まれたり。


「ココだけでイっちゃう?」

「ゃ、だぁ・ぁン‥ッ」


すりすりと腰が動いちゃう、恥ずかしいよ。
自分自身を周助の身体に押しつけるみたいな動き。
しょうがないじゃん、とまんない。


「下‥脱がしてあげるから。腰をうかして…そう、イイコだ」


言われるままに腰を浮かすと、起用な手がするりとオレの身体から服を奪う。
ぷるんっと勢いよく飛び出たソレ…どうしよう、もうイっちゃいそう。


「やぁ‥みなぃでよぉ‥//」


じっと目でソレを犯される。
視姦は周助が好む行為の一つ。


「床に座って、足を開きなさい。さあ、膝をたてて。僕が、ほしいでしょう‥?」


ーゾクッ


ああ‥周助だ。
欲情した、いつもより少し低めの声でされる淫らな命令。
オレはいつも従ってしまう。
だって、その声だけで感じちゃうから。


「リョーマ…じっくり解してあげる。痛みなんか感じないように、ゆっくりと」


ーそれはどんなに残酷な優しさか。
オレはもちろん知ってる。
でもうれしかった。
うれしくてうれしくてー涙が溢れた。


「泣かないで、可愛いリョーマ」

「ゃァンっンーッかきまわしちゃ、だめだよぉ‥ッンぅー!!」

「ダメ?リョーマのダメはうそつきだね。もっともっとってひくついてる蕾のほうが正直だ」

「ぁぁぁ…っ」









ー実際には、短い時間だったのかもしれない。
けれど時に優しく時に激しくいじられた蕾は、柔らかく解れていた。
いつの間にか、シャワーは止められ身体が自由。
二回の射精を強いられるほどの長い愛撫に、身体が悲鳴をあげている。


「…‥そろそろいいかな」

「しゅ‥しゅ、‥けー」


待ち望んだ言葉に胸が踊る。
欲しかった。
熱い楔で身体をかき回してほしい。

濡れたズボンの前を幾分イライラしながらあけている周助。
カチャカチャと響く音がいやらしい。
やがて周助のソレが外気に飛び出しオレの蕾に触れる。


「ぁ‥ッ」

「ひくひくしてる…誘ってるの?」

「も…ッそれ、やだぁ‥っ」


つんつんってソコで遊ばないで。
早くちょうだい、熱いのほしい。


「いいよ‥誘われてあげる。リョーマに、リョーマだけに誘われるから。ずっとー」


「ん・ぁーーッ!!」


ぐちゅッぐちゅん!!


執拗に愛撫された蕾に、一気に押し入ってくる熱い塊。
けれどソコは痛みなんか感じない。

休む間もなく揺さぶられる。
タイルが痛い、でも平気。
今行為をやめられたら死んじゃうよ。


「ンッん…ぁ、ぅ‥ッしゅ・すけ…」

「気持ちイイ…?」

「ぃぃ‥ッだから、また…ーッ」


オレの蜜壺に枯れるという言葉はないのだろうか。
律動にあわせて周助の身体に擦られてる己は、最後の解放を強請っている。


枯れない欲は、あなたの前だけ


「クス。いいよー何度でも。僕の前なら、僕の前だけなら。何度でも」


ぎゅちッて音。
腰を捕まれ、一番奥を突かれた音。
ああ、キスして。
必死で強請る。
笑うあなた。


「ンッーーッ!!」


…最後に達した瞬間。
ふさがれた唇からは、溢れる愛しさが流れたー










◇◇◇


「ン…」

「目が覚めた?」

「……‥?」


ぼんやりぼんやり。
ついていけない現実にしばし呆然。
梳かれる髪が気持ちいい。
この仕草、オレ大好き。
癖みたいにしてくれる周助も、大好き。


「気分はどう?」

「ふぁ‥へーき、‥」


だんだん覚醒してくる頭。
今夕方くらい?
ココはーオレの部屋だ。


そして思い出すいろんなこと


「‥……」


ぎゅ…って周助の身体にしがみついた。

だって怖い。
やっぱりサヨナラ、なんて言われたら死んでしまう。
オレにはもう、周助のいない未来などないのだから。


「ー大丈夫」


しがみついたオレの頭を撫で、強く抱きしめてくれる。
気持ちいい、腕の中。


「なにがあっても、僕はリョーマの側にいるから。この先どんなことがあってもー」

「しゅ…」

「ー僕の未来に、キミはいる」






夢みて
憧れて


そんな未来


ごめんなさい
誰かに謝罪

ありがとう
誰かに感謝


数え切れない程の"モノ"を背負い、これから始まる二人の道






「だからーリョーマの未来を、全部下さい」


ちゅっ額にキス。
優しいキス。
気だるい身体をおこし、答えは周助の唇にあげる。






これから先
しばし別れもあるだろう


それでも心はいつも一緒


これが二人の、未来予想図





◇◇





▼藍奈'sコメント
はにぃに、小説をプレゼントして、そのお礼でもらったやつ。
甘く切ないラブストーリー。
最終更新:2006年02月26日 21:11