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Lost Memory【執筆者/藍奈】








思い出せない



俺が誰で、どんなやつなのか


・・・―思い出せない




俺の・・・キヲク






―3日前―


「なぁ~八戒。腹へった~!!」
「気持ちは分かりますけど、もう少し辛抱してくださいね」


つまんねぇの。
ジープの体調が良くなかったから、昨日は先に進まないで野宿だった。
だから、美味いもん食えなくて今日はいっぱい食べようと思ったのに…

「サルには我慢って言葉がねぇからな~」
「何だよ、触角」
「しょ、触角だと~?ふざけんな、このバカザルが!!」
「バカザル言うな。エロガッパ!」

八戒と交わす、いつもの会話。悟浄とする、いつもの口げんか。
そして・・・

「五月蝿い!この馬鹿どもが!!」


スパ―――ン!!


三蔵のハリセンも、いつもとおな‥…じ…(?)と思う。


俺の好きな時間(とき)。俺の居場所。
なのに――・・・・




「そうですか。どうします?三蔵」
「仕方ねぇだろ」
「すみません、それじゃ空いてる部屋でお願いします」
「はい。では、上に上がってすぐの向かい合わせになっている二部屋です」

「悟空、悟浄。すみませんが二人で荷物を部屋に運んでいてください。僕と三蔵は手続きをしていますから」

八戒に頼まれて、荷物を持つ。

「わかった。早く持っていって、メシにしようぜ!」
「あ、おい。待て、悟空。急がなくてもメシは逃げねぇよ」
「急いだら早く食えるだろ!」

悟浄をおいて、先に階段を登っていく。
2人分の荷物は当然俺の背より高い。だから、前から人がぶつかってくるのなんて分からなくて。




気づいたときはベッドの上だった。




「んっ・・・・」
「あ、気づきましたか。悟空、起きれますか?」

頭が回らない。

力が入らない。

体を支えてもらいながら、ゆっくりと起きる。

何だろう。

何かが、変。

違和感がある。

「大丈夫ですか?頭から落ちましたからね~どこか痛いとことかありませんか?」
「・・・大丈夫」
「そうですか。三蔵、大丈夫そうですよ」
「フン。当たり前だ!あのくらいでこの馬鹿がどうにかなるわけない」
「そうそう。八戒が気にしすぎなんだよ。なぁ、悟空?」
「・・・・・・」
「悟空?」
「ちっ、聞いてんのか?この馬鹿ザルが!!」

・・・・・誰だ、コイツ。

馬鹿ザルって誰だよ。

悟空って誰だよ?

三蔵?知らない。

八戒?分かんねぇ。

この赤いヤツ、ダレ?

「どうしたんでしょうか。やっぱり医者に診せたほうがよかったですかね?」

聞かなきゃ、何も分かんねぇ。

「なぁ」
「はい?」
「あんた達、ダレ?」
「え?誰って、私は八戒ですけど・・・もしかして、私たちの事が分からないんですか?」
「だから聞いてんじゃん。ね、誰?」
「・・・・・・っざけんなよ。おい、悟空!テメェ俺様も事も忘れただなんて言うんじゃないだろうな?」
「・・・誰?」
「~~~~~~!!!」
「おぉ。三蔵がまいってるぜ」
「ちょっと悟浄。笑ってる場合じゃないですよ。悟空が記憶喪失になった以上、旅はできませんよ?」
「あぁ~まぁ、なんとかなるだろ」
「なりません!!」

さっきから、何なんだ?

悟空って俺のこと?

てことは、俺って記憶喪失になったのか?

わけわかんねぇ。

「三蔵、どうします?」
「どうするも何も、記憶が戻るまで待つしかねぇじゃねぇか」
「そうですね。この際、仕方ありませんね」


こうして、俺の記憶戻しが始まった。


―3日後―

俺が記憶喪失になってから3日が過ぎた。
八戒が丁寧にいろいろと教えてくれた。
けど・・・・

いつまでたっても記憶は戻らない―


思い出せない事に対する『恐怖』『焦り』『不安』

どうしよもない。考えたって分からない。
それが、どうしようもなく怖い。

「おい。いつまで起きとくつもりだ?」
「え?」

一緒の部屋の三蔵。
不思議と三蔵といると落ち着く。
何でだろう・・・・

「早く寝ろ。明日も早いぞ」
「・・・うん」

三蔵に言われて、ベッドに入るため歩き出す。
部屋はとても静か。
昨日から雨がすごい。
今も、止まない雨の音が部屋の中に響く。
一瞬窓のすぐ近くで雷がビカッっと光る。

ド―――ン!!

派手な音がして雷が落ちた。
その衝撃からか、宿中が停電になる。

「あ」
「ちっ、停電か。おい、電気がつくまで動くなよ?」
「うん」

真っ暗な部屋。
まるで、闇の世界。
何も見えない。
部屋の中に置かれているタンスや、テーブルに椅子。
三蔵のいるベッド。
床も壁も扉も見えない。
さっきまで見えていたのに。
三蔵も見えない。
俺自身も・・やっぱり見えない。

暗い、怖い、暗い、怖い、暗い、怖い、暗い、怖い・・・・・・・・・・・・

電気がついたのに、動けない。
足が、動かない。

「どうした」
「・・・・動けねぇ」
「・・・・・」

俺の言葉を聞いて、三蔵がベッドから抜け出す。
ゆっくりと、1歩1歩、近づいてくる。

「記憶があってもなくても、世話が焼けるな。馬鹿ザルが」

そういうと、俺を軽々しく持ち上げてベッドに向かう。
そっと下ろされる俺の体。
横に入ってくる、俺より大きな三蔵の体。
「とっとと寝ろ」と言うと、俺に背を向けて寝る。
広い背中。
見た目よりガッシリしている肩幅。

心が、体が・・・・暖かくなる。

ホッとする。

「三蔵・・・」

口から出た言葉は、あまりにも自然で、あまりにも愛しそうで・・・

涙がでる。

どうして、思い出せないのだろう。
どうして?
どうして?
どうして?

「どうして・・・っ」

また一粒、頬を伝う涙。
止まらない。
零れ落ちる涙。
ツライ。
クルシイ。
ムネガイタイ。

「・・・・悟空」
「!!」

もう寝たと思っていた三蔵が突然俺を呼ぶ。

「な・・・なんだよ」

泣いていたのがバレないように、平然を装って、精一杯の強がり。

ふいに感じる暖かさ。
顔を上げると、そこには向こうをむいていたはずの三蔵の顔。
そして、そこで初めて三蔵の腕の中にいることを知る。

「悟空・・・・」
「なに・・・んっ!!」

唇におちる柔らかい感触。
ほんの一瞬の出来事。

「な///」
「心配するな」
「え?」
「焦っても何も思いださねぇ」
「・・・」
「焦るな。考えるな。サルに考える脳はねぇんだからな」
「!!!!あのな、三蔵。俺はサルじゃ・・」

唇で涙の痕を辿っていく三蔵に、恥ずかしながらも嬉しく思う。

「サンキュな。三蔵」
「フン。さっさと寝ろ」

ゆっくりでいいんだ。
焦らなくていいんだ。
考えても分かんないんだから、考えるだけムダだよな。

ありがとな。三蔵―



「・・・・・」
「ん・・・・・?」
「・・・・・」
「おい。悟空」
「・・・・・」
「聞いてんのか?おい!」
「なぁ、三蔵」
「あぁ?」
「何で、俺ベッドにいんの?」
「・・・・・・・」


スパ―――ン!!


「いってぇぇ―――!!!何すんだよ!」
「五月蝿い!死ね」


三蔵。
記憶がなかったときのこと、俺あんま覚えてねえけど・・・
三蔵が優しくしてくれてたのはちゃんと覚えてるからな。


さんきゅ、三蔵。








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