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二人の結末-two side story,one epilogue-【執筆者/藍奈】







―今から約400年前。江戸時代初期の日本。

徳川家康を始め、徳川家が支配する中・・・

幕藩体制が敷かれ、町人たちにとって暮らしにくい制度が次々と制定。

混沌とした時代だった。

だが、江戸時代も後期になると・・・

城下町ができ、人々も活気溢れる時代となっていった―






* * *







おかしな夢を見た。
城下町を歩いていると、一人の男が連れ去られる場面に出くわす。
その男は涙を流す事も、叫ぶ事もせず・・・ただ歯を食いしばり、切なげに目を伏せて従っていた。
辺りには俺しかいなくて、「助けて」と言われたら直ぐに助けただろう。
だが、男は一瞬視線をよこすと、何も言わずに会釈していった。
残された俺は、静かにその光景を眺めていた・・・


「あの夢はなんだったんだろう・・・」


ぼんやりと夢の内容を思い出しながら、当てもなくブラブラと城下町を歩いていた。
賑やかな人通り。どこかの店に入るでもなく、人の流れに身を任せる。
そんな退屈で何の刺激もない平凡な毎日に飽きを感じる最近。
だけど、このときの俺には・・・まだ何も分かっていなかった。


突然見た不思議な夢

この後、必然のように出会うであろう男

その全てが「運命」となり「歯車」となり

悲しくも残酷な物語になることを・・・



* * *




夢を見てから数日が経っていた。
相変わらず何の変化のない毎日。
今日も、何もせず、何も考えず、ぼんやりと午前中を家で過ごしていた。


「散歩でもしてこようかな・・・・」


ふと思い立ち、家を出るといつものように城下町に向かった。


「・・・・これは一体・・・・」


殺風景といって言葉がピッタリな、昨日までとは全く違う空気を纏う。
人が全くいないというわけではない。
だが、うろついているのはガラの悪い連中や身売りをしている吉原[1]の女達。
活気はあるが、どこか淫靡な感じのする雰囲気。


「散歩は中止かな。・・・帰ろう」


そう思い来た道を引き返そうとする。
城下町に背を向け、歩き出そうと一歩足を踏み出すと・・・


『タ ス ケ テ』


誰かの声が頭に響く。
振り向くがそこは先程見た光景と何ら変わりはない。


「気のせいか」


不審に思いながらも再び城下町に背を向けると、同じ声が聞こえた。
それも、さっきよりも確実に頭に響く。


『お願い・・・ダレカタスケテ』


悲痛なその声に引き寄せられるようにして家に帰るのを止め、城下町を歩き出す。
ジロジロと男達に見られながら一つ一つ店を見て回る。


「いったい、どこから声が?」


立ち止まり考えていると、一人の女が近づいてくる。


「ね、お兄さん。こんなとこをブラブラ歩いてどうしたの?」


「・・・君には関係ないだろ」


素っ気無く返し辺りを見渡す。
女は、そんな俺の腕に自分の腕を絡ませてくる。


「そんな冷たいこと言わないでさ。ね、遊びましょ?」


「・・・・離れてくれないか?」


冷めた目で見下ろすと、女は諦めたのか腕を離す。


「それじゃ、お兄さん。いい話、教えてあげましょうか」


「いい話?」


どうせろくな話じゃないだろうと思いながらも、誘いを断った代わりに話だけでも聞いてやる。


「さっき、ここに女衒[2]がいたのよ。それもちょっと変わった女衒でね」


「変わった?」


「えぇ。普通は私みたいな綺麗な女を買うでしょ?だけど、その女衒は男を買ったのよ」


「男?」


「お兄さんより背が高かったわ。いい体してそうな男だったわよ?着物とか似合うんじゃないかしら」


思い出しながら呟く女。

何かが引っかかる。


助けを求める声

女衒に買われていった男

その話を俺にする女


ふと思い出す夢の内容。
確か、一人の男が連れ去られる夢・・・・連れ去られる?
全てが繋がった気がした。


「ね、その男がどこに連れて行かれたか知ってる?」


「何、お兄さんって女より男が好きなの?」


楽しそうに笑い見つめてくる女に違うと答え、男の居場所を再度聞く。


「分かったわ、教えるわよ。大門[3]よ」


「大門?」


「この城下町を抜けると橋があるのは分かるわね?」


「あぁ」


「その橋を渡りきったとこに大門があって、そこに連れて行かれたのよ。その先までは知らないけどね」


そう告げる女に礼を言うと足早に大門に向かった。
そこで、俺は運命の出会いとも言えるような出来事に境遇する。







1,江戸で公許とされていた遊郭のこと。
2,簡単に言うと人買いのこと。遊女になるものを探し買う者のこと。
3,吉原の出入り口。
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