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「行方」(2006/03/29 (水) 15:25:08) の最新版変更点
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*行方不明【執筆者/藍奈】
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「三蔵。悟空、知りませんか?」
ノックもなしに部屋に入ってくると、八戒は俺に聞いてきた。
「・・・・おい。ノックぐらいしやがれ」
視線を八戒から手元の新聞へと戻す。
悟空がいなくなるのなんざ、いつもの事じゃねぇか。俺の知ったこっちゃねぇ。
「あ、すみません。そんな事より、悟空ですよ。どうなんですか?」
「知るわけねぇだろうが。どっかその辺、散歩にでも行ってんじゃねぇのか?」
あのバカ猿のことだ。どこかに行ったって腹が減りゃ帰ってくるだろ。
「僕もそう思ったんですけど・・・」
躊躇いがちな八戒に俺はもう一度視線を八戒に向けた。
そして、続きを言うように促す。
「外には出てないみたいなんですよ」
「外に出てない・・だと?」
「えぇ。下に降りて聞いてきたんですけど、悟空は一度も外に出てないそうです」
俺達は珍しく昨日から宿に泊まっていた。下は食事ができ、上が宿になっていた。
部屋数が多く個別に部屋をとったんだが・・・
「部屋にはいないのか」
「いませんでした。念のため、今悟浄が外に探しに行ってます」
あのバカが。すぐ面倒事起こしやがる。
「おい!三蔵!!」
悟浄が勢い込んで入ってきた。
どいつもこいつも、勝手に入ってきやがって。
「五月蝿い!!静かに入ってきやがれ」
「あらぁ~三ちゃんったら可愛い悟空がいないもんだから、拗ねちゃってんの?」
「いけませんよ、悟浄。いくら本当の事だとしても」
スパ―ン
「って~~!何で俺だけなんだよ」
「ああ?テメェが一番、五月蝿いんだよ」
「まぁまぁ、2人とも。それより、悟浄。悟空はいましたか?」
八戒が俺と悟浄の間に入ってきた。
そう、知りたいのは悟空の居場所。
「あ~それが、どこにもいねぇよ。ったく、あの猿どこに行っちまったのかねぇ~」
「そうですか。いませんでしたか・・・」
八戒が俺のほうを見てくる。しかも、目で話し掛けてくる。
俺にどーしろってんだ?
「では、下に降りて待ってましょうか。そろそろ帰ってくるかもしれませんしね」
八戒の提案により、俺達は部屋を出て下に降りていった。
「あ、八戒さん。皆さんもお揃いで」
「凛銘さん。どうかしたんですか?」
「それが、お客さんの中で悟空さんを見たという方が・・・」
ここで働いている凛銘の言葉を聞いた八戒は一度、俺と悟浄を見る。
俺が目で合図をすると八戒は小さく頷くと凛銘に詰め寄った。
「それで凛銘さん。その悟空を見たというお客さんは、どちらに?」
「あ、はい。あの席です。一番奥の1人でお酒を飲んでいる方です」
「そうですか。ありがとうございます」
「いえ、これで見つかるといいですね。悟空さん」
「そうですね」
八戒が席を聞くと、俺はすぐにその席に向かった。
1人で酒を飲んでいるそいつに俺はこう言った。
「死にたくなければ悟空を見たという場所を言え」
銃口を向けると男は慌てはじめる。
「あ~あ、そりゃダメっしょ。人に物を聞くときは丁寧に言わなきゃね?三蔵法師ともあろう人が」
「なんならキサマが死ぬか?エロ河童」
「あら、三ちゃんったら怖~い」
「いっぺん死んでこい!」
俺と悟浄が言い合ってる所に凛銘と話し終えた八戒が間に入ってきた。
「二人とも何やってるんですか!!先に悟空の居場所を聞いてください」
「へ~い」
「チッ」
「すみませんでした。お怪我はありませんか?」
「あ?あ、あぁ。大丈夫だ」
「そうですか。それで、悟空を見たそうですが何処で見たんですか?」
「すぐそこだよ。ここに来る途中の、商店街。フラフラとぶつかってきてよ、ここでいつも見てる笑顔が
なかったからちょっと気になってよ」
商店街・・・か。そこに悟空がいる事自体は不思議じゃねぇ。
だが、ふらふらしてたとは?・・・・ったく、あのバカが。
「おい、八戒」
「何ですか?」
「・・・・・メシ、先に食ってろ」
「・・・分かりました。あまり遅くならないように」
俺は八戒と悟浄の側を離れ、悟空を探しに外に出た。
「こんなとこにいやがったか・・・」
散々歩き回り見つけた場所は、宿からかなり離れた静かな場所だった。
小さな丘の上に転がってる悟空に近づくと、俺に気付いたのか悟空が話しかけてきた。
「・・・なぁ、三蔵」
「ああ゛?テメェ、何1人で黄昏てんだよ。この馬鹿猿」
横に行くと俺はその場に座り込んだ。
「別に、黄昏てなんかねぇよ!!」
「じゃあ何でこんなとこにいんだよ」
「それは・・・・」
チラッと悟空のほうを見ると俯いて黙り込んだ姿が目に入る。
俺はタバコを取り出すと火をつけて一服する。
そんな俺の姿を見た悟空は少ししてから、話し出す。
「俺・・さ。強くなりてぇんだ」
「十分強いじゃねぇかよ」
「もっとだよ。もっと、もっと強くなりてぇんだ!だけど・・・」
「何だよ。言いたい事あんならとっとと喋れ!」
スパ―ン
「いってぇー!!今本気で殴ったろ!!」
「殴ったんじゃねぇ、叩いたんだよ」
「どっちだって同じじゃねぇかよ」
「あ?何か言ったか?」
「言ってねぇよ・・・・三蔵?」
小さく呼ばれて振り向いてやると、大きな悟空の目に俺が映る。
普段使わねぇ頭を使ってんのかいつもとは違う顔をしている。
「三蔵、俺ってやっぱ邪魔なのか?」
悟空の口からでた言葉に俺は少し驚いた。
「何言ってやがんだ?」
「だって!・・・俺、いつも三蔵に守られてばっかだからさ」
「それがどうしたんだよ。俺が好きでやってんだ」
「それでも・・俺。三蔵に守られるんじゃなくて、俺が三蔵を守りたいんだ」
初めて聞く悟空の気持ち。俺は、悟空の事を甘やかしすぎてたのかもしれねぇ。
「そうか。なら守ってみやがれ」
俺は立ち上がりながら悟空に言う。
悟空は俺の言葉に驚いたような顔をする。
「どういう事だよ」
「そのまんまだ。俺を守りたいんだったら守ればいいだろって言ってんだよ。
それとも何か、お前はこの俺を守る事ができねぇのか?偉そうなこと言ってよ」
「守れるに決まってんだろ!!」
「だったらいいじゃねぇか、それで」
「ぅん・・・なぁ、俺邪魔じゃねぇの?」
俺は悟空に背を向け元来た道を歩き出す。
後ろからは悟空がゆっくり歩いてくるのがわかる。
「・・・・」
「さん・・ぞう?」
「はっ、知るか。テメェで考えろ。おら、とっとと帰るぞ」
「んだよ、それ。いいよ、三蔵が邪魔だっつっても俺ずっと三蔵の側にいるからな!」
「ふんっ勝手にしやがれ」
何が楽しいのか悟空は鼻歌を歌いながら俺の前を歩いていく。
誰が教えるかよ。
悟空、お前にだけは教えねぇ。
俺が・・・・お前を必要としてることはな。
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