frame_decoration

「壱」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

」(2006/03/02 (木) 21:07:01) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

*二人の結末-two side story,one epilogue-【執筆者/藍奈】 ---- ―今から約400年前。江戸時代初期の日本。 徳川家康を始め、徳川家が支配する中・・・ 幕藩体制が敷かれ、町人たちにとって暮らしにくい制度が次々と制定。 混沌とした時代だった。 だが、江戸時代も後期になると・・・ 城下町ができ、人々も活気溢れる時代となっていった― * * * * おかしな夢を見た。 城下町を歩いていると、一人の男が連れ去られる場面に出くわす。 その男は涙を流す事も、叫ぶ事もせず・・・ただ歯を食いしばり、切なげに目を伏せて従っていた。 辺りには俺しかいなくて、「助けて」と言われたら直ぐに助けただろう。 だが、男は一瞬視線をよこすと、何も言わずに会釈していった。 残された俺は、静かにその光景を眺めていた・・・ 「あの夢はなんだったんだろう・・・」 ぼんやりと夢の内容を思い出しながら、当てもなくブラブラと城下町を歩いていた。 賑やかな人通り。どこかの店に入るでもなく、人の流れに身を任せる。 そんな退屈で何の刺激もない平凡な毎日に飽きを感じる最近。 だけど、このときの俺には・・・まだ何も分かっていなかった。 突然見た不思議な夢 この後、必然のように出会うであろう男 その全てが「運命」となり「歯車」となり 悲しくも残酷な物語になることを・・・ * * * * 夢を見てから数日が経っていた。 相変わらず何の変化のない毎日。 今日も、何もせず、何も考えず、ぼんやりと午前中を家で過ごしていた。 「散歩でもしてこようかな・・・・」 ふと思い立ち、家を出るといつものように城下町に向かった。 「・・・・これは一体・・・・」 殺風景といって言葉がピッタリな、昨日までとは全く違う空気を纏う。 人が全くいないというわけではない。 だが、うろついているのはガラの悪い連中や身売りをしている吉原[1]の女達。 活気はあるが、どこか淫靡な感じのする雰囲気。 「散歩は中止かな。・・・帰ろう」 そう思い来た道を引き返そうとする。 城下町に背を向け、歩き出そうと一歩足を踏み出すと・・・ 『タ ス ケ テ』 誰かの声が頭に響く。 振り向くがそこは先程見た光景と何ら変わりはない。 「気のせいか」 不審に思いながらも再び城下町に背を向けると、同じ声が聞こえた。 それも、さっきよりも確実に頭に響く。 『お願い・・・ダレカタスケテ』 悲痛なその声に引き寄せられるようにして家に帰るのを止め、城下町を歩き出す。 ジロジロと男達に見られながら一つ一つ店を見て回る。 「いったい、どこから声が?」 立ち止まり考えていると、一人の女が近づいてくる。 「ね、お兄さん。こんなとこをブラブラ歩いてどうしたの?」 「・・・君には関係ないだろ」 素っ気無く返し辺りを見渡す。 女は、そんな俺の腕に自分の腕を絡ませてくる。 「そんな冷たいこと言わないでさ。ね、遊びましょ?」 「・・・・離れてくれないか?」 冷めた目で見下ろすと、女は諦めたのか腕を離す。 「それじゃ、お兄さん。いい話、教えてあげましょうか」 「いい話?」 どうせろくな話じゃないだろうと思いながらも、誘いを断った代わりに話だけでも聞いてやる。 「さっき、ここに女衒[2]がいたのよ。それもちょっと変わった女衒でね」 「変わった?」 「えぇ。普通は私みたいな綺麗な女を買うでしょ?だけど、その女衒は男を買ったのよ」 「男?」 「お兄さんより背が高かったわ。いい体してそうな男だったわよ?着物とか似合うんじゃないかしら」 思い出しながら呟く女。 何かが引っかかる。 助けを求める声 女衒に買われていった男 その話を俺にする女 ふと思い出す夢の内容。 確か、一人の男が連れ去られる夢・・・・連れ去られる? 全てが繋がった気がした。 「ね、その男がどこに連れて行かれたか知ってる?」 「何、お兄さんって女より男が好きなの?」 楽しそうに笑い見つめてくる女に違うと答え、男の居場所を再度聞く。 「分かったわ、教えるわよ。大門[3]よ」 「大門?」 「この城下町を抜けると橋があるのは分かるわね?」 「あぁ」 「その橋を渡りきったとこに大門があって、そこに連れて行かれたのよ。その先までは知らないけどね」 そう告げる女に礼を言うと足早に大門に向かった。 そこで、俺は運命の出会いとも言えるような出来事に境遇する。 ---- 1,江戸で公許とされていた遊郭のこと。 2,簡単に言うと人買いのこと。遊女になるものを探し買う者のこと。 3,吉原の出入り口。

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: