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「こんにちわ~」

魔法の森の古道具屋、香霖堂に女性の声が響き渡る。
声の主は幻想郷トップクラスの有名人、八雲紫。
今日もまたスキマを使って入ってきた紫に、霖之助が声をかけた。

「いつも言っているが、せめて店の戸を開けて入って来てくれないか? 心臓に悪いんだが」

「だあってこっちのほうが楽なんですもの」

「あんたがどうこうじゃなくてこっちが迷惑だって言ってんのよ……」

突っ込むのは最近店の看板娘となった七色の人形遣い、森近アリス。
今日はいつもの洋服ではなく、水色の着物を着ている。

「こんなか弱い女性を2人でいじめるなんて。このドS夫婦」

「あんたがか弱かったら大概の妖怪は虚弱体質よ」

今日も皮肉の切れ味は良好なようだ。

「霖之助さん、こんな意地悪な女なんかほっといて私とイイ事しない?」

「折角のお誘いだが遠慮しておこう。僕は愛する妻で十分だよ」

「あらあら、お熱いことことねえ。まあ飽きたら言って頂戴。いつでも相手になるわ」

どうやら今回は簡単に引き下がるようだ。
適当に相槌を打とうとした霖之助だが、何かが頭に巻きくのを感じた。

「アリス?」

見れば、アリスが霖之助の頭を胸に抱き寄せて紫を睨みつけていた。

「そんな怖い顔しなくてもほんとに取ったりしないわよ。まったく見せ付けてくれるわ。それじゃあまたね」

そういい残して紫は帰っていった。
が、アリスは霖之助の頭を離そうとしない。

「アリス。そんなことをしなくても僕は逃げたりしないよ?」

「だって……」

「アリス。何度も言っているが、僕が愛しているのは君だけだ。
 世界中のどんな美女が言い寄ってこようが僕が動くことはありえない。
 僕の心は君でいっぱいで、他の女性が入り込む余裕なんてないんだから」

「……うー」

今までの反動か、事あるごとに霖之助にくっつこうとするアリス。
そのアリスを説得しているうちに、歯が浮くような台詞をこともなげに放つようになった霖之助。
アリスとしては嬉しいやらくすぐったいやらで、むしろ前よりたちが悪い。
結局、今度は赤面してしがみつくアリスが離れてくれたのは、夕食時になってからだった。