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あらすじ

和服の話題を通じて互いにフラグ成立したアリスと霖之助。
嫉妬した魔理沙が爆発、修羅場になる。
霖之助は紫に背中を押され、いち早く立ち直った。



一体どれくらいの時間がたったのだろうか。
部屋を閉め切っているから、今が昼か夜かもわからない。
ずっとベッドにうずくまっていたせいか、体中が硬くなっているのがなんとなくわかった。
霖之助とアリスに対する負の感情はピークを越え、今は小康状態だ。
代わりに、自己嫌悪が心をじわじわと侵食していた。

「……やっちまったなあ……」

もっと賢い方法があったかもしれない。
あの時点での行動次第では、今のような未来が訪れはしなかっただろうに。
合わせる顔がないというのはこういうことかと、体験して初めてわかった。全く嬉しい経験ではないが。

「……はは」

そんなことを考えている自分がおかしくて、声に出して笑ってやった。
今考えることはそんなことじゃないだろう。
少し冷えた頭は、アリスの言葉を浮かべてくる。

―――あなたの想いが本物なら、また私の前に立ちふさがりなさい―――

最初は、諸悪の根源が何を、と思った。
しかし、よく考えてみればおかしな話だ。
アリスが霖之助を奪いたいなら、そんなことを言いに来る必要はない。
兄を取られたようで悔しいんだろうとでも言っておけば、あの朴念仁は簡単に騙される。
そして自分が沈んでいるうちにまんまと篭絡すればいい。
これ以上簡単な話はないはずなのに、アリスはわざわざ恋敵を激励しに来た。

そもそも今から対等な勝負を挑んだって結果は目に見えている。
店での反応を見れば一目瞭然。霖之助の気持ちが誰にあるのかわからないほど短い付き合いではない。
だがアリスはそんなことを微塵も考えていないのだろう。本気で正々堂々と戦う気だ。

(あいつらしいと言うかなんと言うか……)

そうだ。アリスはそういうやつだった。
普段は斜に構えたような態度で、自分の好意を意地でも悟らせないような言動が目立つ。
なのに、人が迷惑かけても文句は口先ばかりで、困っていたら損得抜きで助けてくれる。
ひねくれもののおせっかい。
今回もきっとそうだ。

「……やれやれ」

気がつけば口元が緩んでいる。
ああ、全くこんなの自分らしくない。

勝ち目なんかないに等しい。立ち上がったところで、また打ちのめされ一敗地にまみれるだけだろう。
それでも、膝を屈することは許されない。
せめて、あの不器用で真っ直ぐな友情だけは失わないために、決着だけはきっちりつけてやる。

「悲劇のヒロインなんて、真っ平ごめんだぜ」



一方、アリスはいまだに自己嫌悪の渦から抜け出してはいなかった。
魔理沙にはああ言ったものの、この件で自分に何ができるというのか。
結局のところ、自分か魔理沙かを選ぶのは霖之助だ。
自分はただそれを待つだけ。
いまさら霖之助の気を引くことなどできるわけがないし、これ以上魔理沙に塩を送るような真似もできない。
結局全て自分のエゴだ。霖之助を魔理沙から掠め取るような真似をしたくない。それなのに、霖之助を失うのが怖い。

「アリスーーー! 出てこーーーい!」

ああ、ついに幻聴まで聞こえ出したか。
いまあいつがここに来るわけなんてないのに。

「いるのはわかってんだ! 出てこないならこの家吹っ飛ばすぜ!?」

うるさい。今はそっとしておいてくれ。

「よーし良い度胸だ! さーん! にー! いーち!」

ああもう、幻覚までが自分を追い詰めるというのか。

「うるさいわね! 用事があるならそっちが勝手に入ってくれば良いでしょ!?」

怒鳴りつけると声は聞こえなくなった。
やはり幻聴か。自分もなかなか追い込まれている。
そう思った瞬間、

ガチャ

「人が折角立ち直ってきたってのに。全くご挨拶なやつだ」

あれ?

「ほらさっさと立て。香霖のとこに行くぞ」

「何……で……?」

なぜこいつがここにいるんだろう。

「何でってお前が言ったんじゃないか。また立ちふさがりに来いって。それともありゃ嘘か? ほら、早く立てって。」

「あ……うん」

「よし、じゃあ香霖のとこにいくぞ。あいつにはきっちりカタをつけてもらわないとな」

「ねえ」

「あん?」

「あんたはそれで良いの? なんなら私は何日かじっとしてるからその間に……」

「おいおい、私をなめるのも大概にしろよ」

睨みつける魔理沙。

「そんなお情けをかけてもらって、それで勝ったからって何も嬉しくないぜ。
 どんなに不利な状況でも構わない。自力で勝ち取ってこそ意味があるんだ
 お前が私の立場でもそうだろう?」

言葉が詰まる。そうだ。もう自分にできることなんて何もない。
威勢のいいことを行っておいて情けない限りだが、霖之助の選択を甘んじて受け入れよう。

「わかったわ。あんたは本当にそれで良いのね?」

「くどいぜ。女に二言はないって言うだろう?」

魔理沙がここまで言うのならば、もう何も言うまい。
後は霖之助がどのような選択を取るのか、ただそれだけだ。

2人の魔法使いが並んで空を舞った。