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「暇だな……」

魔法の森の小さなお店、香霖堂。
店主の森近霖之助は、いつになく暇をもてあましていた。


【宿敵と書いてライバルと読む?】


店の中は今日も閑古鳥が威勢よく鳴いている。
まあそれはいつものことなのだが、困ったことに手持ちの本を全て読んでしまった。
もう一度読んでもいいのだが、やはり先の展開がわかっていると面白さも半減である。

「こんにちは~」

そこに現れたのはスキマ妖怪こと八雲紫。
狙い済ましたかのようなタイミングだが、実際話しかけるチャンスを3時間ほど伺っていたりする。
それはまあさておき、

「……君か」

暇なせいか、霖之助は虫の居所が悪いようだ。
あまり歓迎されていない様子にちょっとショックを受ける紫。
しかしそんな内心を悟られるのは恥ずかしいので、何とか取り繕いつつ本題に入る。

「あら、お邪魔でした?折角時間をつぶせるものを持参いたしましたのに」

「……できれば正当な客としてきて欲しいものだけどね。
 まあ時間をもてあましていたのは確かだ。それで何を持ってきたんだい?」

霖之助さんも良く知ってるものですけど、と前置きして紫が取り出したのは、何の変哲もないトランプだった。

「霖之助さんはスピードというゲームはご存知?」

「一応ね。
 昔は少々やりこんだこともあったよ」 (※ルールは長くなるので略。いないと思うけど知らない人はwikiをみてね!)

「それなら話は早いわ。
 ただやるだけじゃあつまらないし、何か賭けるというのはどう?
 例えば、7回勝負で勝ち数の多いほうが相手に言うことを一つきいてもらうというのはいかがかしら?」

何か嫌な予感がしないではないが、霖之助も勝つ自信はかなりある。
それになんだかんだで紫の力はいろんな意味で大きい。
トランプ如きで貸しを作れるチャンスをみすみす逃すこともあるまい。

「いいだろう。ただし、相手に何かしらの被害を与えるような過激なものはなしだ」

「それはもちろんよ。じゃ、賭けは成立ね」


互いにカードを切り、戦いの用意は整った。

「「せえの、スピード!」」

シュバババババババババババババババババババババババッ!!!

「ぬっ!」

「くうっ!」

互いの手が残像を残すほどの速度でカードを切り続ける。

(おのれ紫!さては相当特訓した上で持ちかけたな!)

(何が少しやりこんだことがある、よ! これじゃあホントに5分5分の勝負じゃない!)

実力を隠していたのはお互い様と言うものだが、文句を言っていてはその隙に差をつけられてしまう。
手を一切休めずカードを切り続け、初戦は後1枚で霖之助が負けた。

「くっ……なかなかやるじゃあないか」

「いいえ、霖之助さんのほうこそ」

声は笑っているが2人とも戦士の目になっている。
賭けのことも忘れてもう一回、もう一回と勝負は続き、結局藍が迎えに来るまで互いに172勝172敗という互角の勝負を繰り広げた。

「ハァ、ハァ、この決着はまた今度……だね」

「フゥ、フゥ、ええ、今度こそ完璧に打ちのめしてあげる」

勇ましい捨て台詞を残して帰っていった紫。
何しにいったんですかと藍に突っ込まれ、実は最初に決めたルールでは勝っていたことを思い出した紫は3日間寝込んだらしい。



「……紫は今日も来ないのか!?」

その代わり、霖之助が紫の来訪を今か今かと待ち焦がれるようになったとか。