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「お邪魔します!」
元気な声と共に入ってきたのは、紅魔館の門番こと紅美鈴。
「おや、こんな昼間から珍しいね。今日はお休みかい?」
「ええ、お嬢様が『部下を労わるのも主の勤めよ』ということで、定期的にお休みがいただけることになったんです」
休みがもらえたことよりも、気遣ってもらえたことが嬉しいのだろう。
大輪の向日葵のような笑みを湛える彼女に、知らず知らずこちらも口元が緩む。
「そうか、それはおめでとう。
それで、その大切な休日にわざわざこんな店まで来てくれた、と。光栄のあまり言葉もないよ」
「またまたそんな。良いお店ですよここは。落ち着くって言うか。咲夜さんも褒めてましたし」
どうやら紅魔館におけるこの店の評価は上々のようだ。
「ありがとう。それじゃあゆっくりしていくといい。
お茶を入れてくるから待っていたまえ」
「いえ、そこまでしていただくわけには……」
こういうところで遠慮するあたり、彼女の人の良さが垣間見える。
霊夢や魔理沙も見習って欲しいものだ。言っても無駄なので口には出さないが。
「なに、僕の店を褒めてくれたお礼だよ。受け取ってもらえないと、僕が悲しくて死んでしまう」
「ふふっ、わかりました。霖之助さんに死なれては困りますしね」
口元に手をやって笑う美鈴。慣れない冗談にも相手をしてくれる。やはり彼女は好ましい客だ。
「店のものは好きに見てて構わないよ。それじゃあ」
しばし穏やかな時間が続く。
美鈴が品物を物色し、手にとっては霖之助に説明を受ける。
その姿をなんとなく見ている霖之助。
ここで、少し前に無縁塚で拾った商品を思い出す。
この女性にとって有益なものになる可能性が高いその品。
ここは一つ、勧める前に彼女のほうの情報を集めようか。
「そういえば美鈴、少し教えて欲しいんだが」
「はい? 何でしょうか?」
「君は今、どんな下着をはいているんだい?」
店の空気が一気に凍りついた。
何かまずいことを聞いただろうかと悩む霖之助。
その瞬間、美鈴の両目からはらはらと涙がこぼれた。
顔に手を当てて嗚咽する美鈴。
「……うう」
わけもわからずあわてる霖之助。
理由はさっぱりわからないが、今の流れだと間違いなく自分がきっかけだ。
そうこうしているうちに美鈴が次の行動に出る。
「霖之助さんは……霖之助さんだけは、他の自分勝手な人たちとは違うと信じていたのに……。
優しくて常識のある人だと……信じてたのに……っ!」
間一髪、飛び出していこうとする美鈴の手をつかむことに成功する。
「ちょちょ、ちょっと待ってくれ! 別に変な意味じゃないんだ!」
「離してください! 今の発言に変な意味がないわけないじゃないですか!」
流石に力が違うためズルズルと引っ張られるが、ここで誤解させたまま行かせるわけにもいかない。
「とにかく話を聞いてくれ! 確かに言葉が足りなかったが、本当にやましいつもりはないんだ!」
結局、十数分間にわたる説得により、何とか美鈴を店につれもどすことに成功した。
「ぜぇはぁ」
久しぶりに全力を出した霖之助は息が切れまくっている。美鈴は息一つ切らしていないというのに。
少し男のプライドが傷つくが、今そんなことはどうでもいい。
いまだに不信な目を向ける彼女を説得しなければ。
「何度もいうように……君の下着について聞いたのは……商品を勧めるにあたっての情報収集のためで……
やましい意味じゃないんだよ……」
「……じゃあ最初にそう前置きしてくださいよ」
ぷぅ、と頬を膨らませて睨みつける美鈴。よし、聞いてくれる気にはなったか。
「そのことについては本当にすまなかった。謝罪の言葉もないとはこの事だと痛感しているよ」
「……もういいです。それで、その商品というのはなんですか?」
内心の安堵を抑えつつ、まずは情報提供に移る。
あれの形状は今見せるには少々まずい。心を落ち着かせてもらわねば。
「その前に、僕の考えを聞いてくれ。
僕が君の下着について聞いたのは、君が今来ている服の形状から一つのことを懸念したためだ。
聞くところによると君は弾幕より格闘のほうが得意なんだろう?
となると、蹴り技を放つときにそのスリットの入った服ではなにかと問題があるんじゃないか?」
「……」
霖之助のいうことは間違ってはいない。
が、先ほどの顛末もあっておおっぴらにそういうことを言うのはためらわれる。
それに、いかに霖之助といっても男性相手にこの話題は恥ずかしい。
返事はなかったが、それを肯定と受け取った霖之助はさらに話を進める。
「幻想郷ではいわゆるドロワーズをはくことでそういった問題に対応している。魔理沙なんかが良い例だろう。
しかし君の着ている服ではドロワーズはまず邪魔になる。
となるといわゆるショーツといわれる下着の出番なのだろうが、残念ながら幻想郷で安定して入手することは難しい。
しかも格闘を主体とする君ではすぐに擦り切れてしまうだろうが、かといって何もはかないなどというのは論外だろう」
「……そうですね」
返事が返ってきた。
生真面目な彼女のことだ。こういう話を堂々とするには抵抗があるのだろうが、やはり今自分が言ったような問題が気になってはいるらしい。
「確かにそうです。一応下にはくズボンはあるんですが、冬は良くても夏は熱くて仕方ないですし」
「だからこそ、これを君に勧めようと思ったんだ。
外の世界の女性が運動時にはくもので、まあ水着の仲間のようなものだろうね」
そう言って霖之助が取り出したのは、どこからどう見ても完膚なきまでに、
ブルマだった。
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