“獄炎覇王”ジーグ=ブリース

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“獄炎覇王”ジーグ=ブリース」(2011/02/23 (水) 19:05:40) の最新版変更点

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ジーグハルト=ローウェル(PL:サイトー) ■基本データ 【コロナ】 執行者 【ミーム】 コラプサー 【ブランチ】エンシェント/キュマイラ/サクセシュア/宇宙怪獣 【消費経験点】(能力値:0 特技:0 装備:0 パスの追加:0 ブランチの追加:30) 天地魔闘記念のコラプサー用テキスト。 デイブレイク凄いですね。 データは出番がありそうな時にでも作ろうと。 私の名前はウィンリー・スミス。歴史学者だ。 本日紹介するのは、ある魔王の運命の変遷と、それに関わった100年前の“大魔術師”の栄光と死、そして、それに連なる系譜の現在辿る数奇なる宿縁についてである。 さて、諸兄らは、100年前の“大魔術師”と問われて、誰を連想したであろうか? 魔術結社“黄金十字団”の創始者にして、“永遠の魔法”を手に入れたとされる稀代の魔術師にして錬金術師、アウルム=レンブラント=ヘルメース。 “黒白の使徒”を名乗り、大司教にして邪教崇拝者として、人間の身でありながら妖魔の軍勢を従えた“背教者”フェルディナンド=アラストー。 宮廷魔術師にして、神王の側近であり、己の私欲の為に王国の転覆を謀ったイスタム神王国最悪の悪漢にして大導師“蒼の”ヴィクトール。 当時台頭した魔術師は様々であるが、矢張り100年前の“大魔術師”と来て想起するのは、現在にまで語り継がれる魔術師の最高峰にして、彼の“邪険使い”ルー=シャラカンや“大勇者”ロード=ハインケルとも共に旅をした英雄、その二つ名も“大魔術師”たる偉大なる先駆者、アーサー=ペンドラゴンを措いて他にあるまい。 その天地を引き裂く大魔術を手足の如く操る様は、永遠存在にして人智の及ばぬ魔力を備えし居並ぶ大魔王すらも舌を巻いたという。 三千世界にその名を轟かせる彼の大魔術師ペンドラゴンの偉業について、今更になって私の口から語るのは蛇足であろうが、しかしながら、その偉業に隠された彼の闇については、さて、どうであろうか? 先ずは、その闇を今、白日の下に曝け出そう。 “獄炎王”イブリースを討ち果たした功績を称えられ、ハインケルは領土を下賜され、東の地の守護者としてロードの名を得た。その際、共に戦ったペンドラゴンもまた、勇名を買われ、宮廷魔術師として任官した、とは、有名な話であろう。 だが、宮廷魔術師として任官した後、大導師“蒼の”ヴィクトールを討ち果たした最期の戦いまでの十余年を費やした、ある邪法の研究についてを知る者は少ない。 その邪法こそは、人を神へと変じる魔術、“神化の法”である。 魔道、魔術の神秘については私も門外漢であるため、正確なところは定かではないが、それは、理論としてはヘルメースの手にした“永遠の魔法”にも似た魔法であるらしい。が、さて、そも“永遠の魔法”とはどのような魔法であるのか。 ヘルメース派を受け継ぐ魔術師の談に拠れば、通常、人の魂とは死して砕ければ意志も形も喪った単なるエネルギー状態、即ち、フレアへと還元され、フレアストリームへと還る。 “永遠の魔法”とは、その還元のプロセスに正しく干渉し、フレアストリームと一体となる事で肉体を喪おうとも意志を現在・過去・未来に到る永遠に補完し、自己をフレアストリームを介して全世界の情報を観測する存在として完結させる魔法であるという。 それはヘルメース派にとっては魂の最良の状態であり、全ての叡智を持ち得る至高の存在。一種の神であり、決して神ではない存在。ヘルメース派魔術師の理想的形状であるとし、その頂きへと到ったのは開祖・ヘルメースのみであるのだそうだ。 彼らの言に因れば、四年前に現れし英雄……カオスフレアの原点、栂尾薪は、その絶対武器の導きにより、ヘルメースの到った段階と極めて近い段階へと移行しているが、彼もまた不完全であるのだという。 己を確固とし、己を永遠とし、全知存在となった暁には、世界への干渉力は自ずと喪われる。その必要が存在しないからである。だとか。 彼らの言い分は、実に奇々怪々であると言える。そもそも、ヘルメースがその段階とやらに到ったと彼らはどのようにして立証したのだろうか?世界にヘルメースの意志は満ちていると、どのように確信しているのか?カルトというのは、往々にして、明確な解答を持たないモノであるのだろうが。ともあれ、それは本題ではない。 “永遠の魔法”という物の概念だけを感じて貰えれば、今後の話に差し障りは無い。 さて、では、本題であるところの“神化の法”とは何か? “永遠の魔法”はフレアストリームと一体化する魔術であり、それと一体化するという事は、永遠を同時観測する事であるというが、あくまで、それは現世に干渉する能力を持たない観測者としての形状に自己を固定させる術であるという。 だが、“神化の法”は、そうではない。 一体化するのは、フレアストリームではなく、魔王。 フレアを介して魔王と融合、一体化し、自らを人智を超越した存在とする魔術、それが、“神化の法”である。 これが“永遠の魔法”と異なり、邪法と呼ばれるのは魔王と呼ばれる存在の特異性にある。 一部の魔王は、死によるフレアの拡散と、生命誕生時のフレアストリームからの集積を完全に操作する“転生”ないしは“復活”と呼ばれる秘術により、自らを永遠たらしめる。 死した後、その魂、意志、記憶を残したままに己をフレアへと還元し、誕生の際に、それらの全てを引き継いで再度自己を再構成せしめるという、人間には為し得ぬ技法により、彼らは永遠存在と呼称されるのである。 彼らがその気となれば、恐らく、ヘルメースがその生涯を賭して挑んだ“永遠の魔法”であれ、簡単に為し得るのであろう。彼らは既に永遠であり、循環を補完されているのだから。ヘルメースが挑んだ状態は、彼らにとっては常態であると言い換えても良い。 通常の人間が呼吸する事を望んで呼吸しないのと同一、其処に存在しているだけで生態的に、至極自然に為し得ている事に対して、殊更に強い欲求を抱く事は無い。 詰まる所、死と生のフレアの循環を操作する技術において、人と魔王では天と地ほどの開きがある。そのような存在に対して干渉しようなどという愚を試みる“神化の法”とは、己の魂を魔王に奉じる技術に等しい、言わば生贄となるための魔術である。というのが、魔術学会の見解であり、事実、歴史を鑑みれば、有史以来幾度も試みられた“神化の法”の実践の顛末は、魔術師よりフレアを捧げられ、更に強大な存在となった魔王の誕生、ないしは復活である。 それら強大なる魔王の力は幾度もイスタム神王国に危機を呼んだとなれば、禁忌の邪法とされるのも当然の事であろう。 ならば、何故、“大魔術師”と呼ばれ、栄達を手にしたアーサー=ペンドラゴンは、それに挑んだのか? 己が魔王よりも優れているという、魔術師としての自負だろうか? もしくは、宮廷魔術師の地位では足りず、更に上を望んだのだろうか? はたまた、人としての寿命の短命に嫌気を覚え、永遠を望んだのか? 或いは、魔王の持つ力を更に手にし、無限の魔力を望んだのか? そのような野心が、狂気が、彼を研究へと駆り立てていたのであろうか? それを語るには、先ず諸兄に思い出して貰わねばならぬだろう。 “大魔術師”ペンドラゴンと、“獄炎王”イブリースの因縁を。 ペンドラゴンとイブリースは、ペンドラゴンが未だ修行時代の頃、師がイブリースに挑み、敗れて以来、幾度と無く相見えて来た。 ペンドラゴンにとっては、真実、師の仇にして、幾度と無く辛酸を舐めさせられた相手であるのだから、当然の事。 一方のイブリースとしてはどうかと言うと、当初、単なる気紛れで生かした人間の一人が、今度こそはと挑んで来るのを袖であしらっていた程度の腹であった様子だが、ペンドラゴンの技が練磨され、遂には己を追随し得る存在となって来た頃より、イブリースのペンドラゴンへの態度は変じる。 それはペンドラゴンも同様。卑劣を好まず、如何なる時も堂々と正面から受け、如何なる雑兵であろうとも、その絶大なる力で粉砕せしめるイブリースの背を追う内に、そこに宿る感情に、憎悪を超えた何かが存在するようになる。 戦いの中で、彼らは互いを明確な好敵手として意識するようになっていったのだ。 そもそもが武人気質であり、将であるが故に前線を好んだ“獄炎王”イブリースは、数多の英雄との闘争を好んだが、何より好んだのは、“大魔術師”ペンドラゴンとの闘争であるのだと詩人は語る。 互いが炎の魔術に長じた事も、彼らが互いを意識し合った所以であろう。 炎の魔術の真髄を極め、遂には鳳凰の猛炎を操るに到ったペンドラゴンと、虎竜獅子狗の獄炎を操るイブリースは正しく相克の炎将。 その激突は天地を揺るがし、ルイムニー大森林での闘争の際は、その劫火で当時の森林の三割を灰へと変じたという。 また一時ペンドラゴンと旅をしていた侍女、イリスの存在もまた、彼らの物語を追う上では、見過ごす事の出来ない要素の一つであろう。 それは、ペンドラゴンが“大勇者”ハインケル、“魔海の踏破者”ロンバルトと共に“大海将”ヴォーケンに挑んだ際に、突然にペンドラゴンの侍女として顕れ、ヴォーケンを打倒した以後には一切語られない、謎の女性である。 紅の髪に緋色の瞳、一見すればか細く見えるが、芯の真直ぐに通った、絶世の美女であったと伝えられるこの女性、一説にはペンドラゴンの内弟子、ないしは愛人であったのだと言われる事もあるが――諸兄らが詩人の語る歌に聡ければ耳覚えもあるだろう異説がある。 そう、彼女こそは、“獄炎王”イブリースが変じた姿であるのだと。 確かに彼女は侍女でありながら、獅子の如き炎を操る魔術師であったとされ、であるが故に内弟子などという噂が囁かれるのだが、それでも、優秀なる内弟子の存在が、それまでも、また、それ以後も登場しないというのは、妙な話である。 また、ヴォーケンの台頭と共に、イブリースの勢力は大きく減退している。 コレは、嵐の海より出た魔王を諌めんとした彼の“獄炎王”が逆に深手を負わされが故であるが、果たして、彼の“獄炎王”が辛酸を舐めさせられた相手を放置し、己の回復のみに徒に時間を費やすであろうかと問われれば、それも些からしくはない行為である。 だというのに、イブリースは撤退したまま事態を静観し、版図を広げるヴォーケンに対して、ペンドラゴンらは打って出た。唐突に出しイリスと呼ばれる侍女を伴って。 詩人の語る詩に曰く、彼の魔王を討つに当たり、イブリースは一計を案じたという。 己の力の全てを以ってすれば討てぬではないにしろ、神同士で諍いをして面白い事は無い。神は人の手で討たれるが道理。ならば、神を討つ者を己で導いてやろう、と。 そうして、己の好敵手であるところのペンドラゴンらを導いた。イリスという少女の姿で。 それは、ペンドラゴンをより深く知る為の行いでもあった――と。 事の帰結はどうであれ、ヴォーケンを討った直後にイリスという名の侍女は歴史より姿を消し、イブリースは勢力を回復する。ヴォーケンを討つという行為は、イブリースの意に適っていたのは事実であり、当時の詩人にとっては、この話が不自然でない程に、ペンドラゴンとイブリースの間には何かを思わせる点があった。 イリスという侍女の逸話には、詩人の彼らに対する想いが籠められているように思える。 しかしながら、遂には“獄炎王”イブリースはペンドラゴンとハインケルの前に倒れる。 東の魔王、オルディアとルー=シャラカンの相打った後の東の地へと勢力を広げようとしたイブリースと、ペンドラゴンらの決戦は、アウステル山脈の頂にて行われ、七日七晩の激闘の末に、ハインケルの暗黒聖剣ギュンヌンガガップがイブリースの奥義と共に魂を打砕き、永きに渡る因縁には終止符が打たれた。 その時、ペンドラゴンの胸中に過った感慨を知る者は、彼のみであるが……私は想像する。 彼は、空しかったのではないか?と。 イブリースを討ち果たしたと共に始まった宮廷での生活など、彼は望んでいなかったのだろう。それまでに幾度も任官を勧められ、拒んで来たペンドラゴンが、任官を受けたのは、最早己にとって追うべき者が無くなってしまった虚脱感では無かったろうか? そして、だから、彼は望んだのではないか?“神化の法”を。 イブリースと己の魂を一にする事しか、その空虚を埋める手段を見出せなかったのではないだろうか? そこに在るのは、野心でも狂気でもない、寂然とした無力感では無かったろうか? それは野心や狂気に犯されるよりも余程に人間らしく、余程に英雄らしい、“大魔術師”ペンドラゴンの選択だったのではないだろうか?と、私はそう考えるのだ。 だが、彼の選択は、結果として世に出る事は無かった。 彼の事を疎んじた大導師“蒼の”ヴィクトールの姦計により、死の呪いを与えられたペンドラゴンは、ヴィクトールの神王抹殺と国家転覆の計略を知るに到り、そして、単身宮中にてヴィクトールと相討ち、その生涯を閉じる事となる。 心の臓に架せられた呪いにより、磨き上げて来た絶対必殺の魔術すらも封じられた彼は、それでも一振りの短剣のみを頼りに巨悪と闘い、己の命を賭けて打ち倒したのである。 衛兵の無数の槍に貫かれ、魔術に焼かれ、呪いに心臓を食い破られたその様は、正に凄絶を極めたという。 宮廷魔術師として任官して7年。享年36歳の英雄の最期は一時は乱心したかつての英雄の凶行として伝えられたが、数年の後に、詩人らの手によって全ての真相は詳らかに世に出で晒され、非業の英雄にして“大魔術師”の名は、是を以って燦然とオリジン史上に名を連ねる事となるのである。 さて、元より、彼の魔術の師により拾われるまでは孤児であったペンドラゴンは、その生涯に渡って家庭を持つ事が無かったとされる。 で、あれば、最初に語った、ある“大魔術師”の系譜はどうしたのか?そろそろ、その話をさせて頂こうか。 発端は、嵐の海の南西にあるボルト=イリアス島。 “魔海の踏破者”ロンバルトの隠し財宝があるとの噂が囁かれるという――嵐の海にはありがちな――島だ。島には村が一つきりで、住民は300人余り。漁業程度しか稼ぎに出来る事も無い、過疎化の進行している、無論、戦術的に侵略する価値も無い、恐ろしいのは魔物よりも嵐といった風情の島。 その島は、先のバシレイア動乱におけるグレズの大規模機械侵食が進行する世界の中で結果呑み込まれなかった、ごく小規模の土地の一つである。 動乱を生き延びた島民は語る。今、正に侵食に呑み込まれんとするボルト=イリアス島全体を炎が覆い、侵食を食い止めたのだと。 小さいとは言え島一つを包み込む程の猛炎の大結界。それを作り出したのは、島に住まう若き一人の青年であった。 それまでは、島で普通に学問を修め、教職に就いていた、島の住民からすれば、言っては何であるが冴えない感の否めない、そんな青年であったらしい、彼の名を、ジーグハルト=ローウェル。 彼はその日、襲い来る機械の唸りを前にして、怯む事無く、こう名乗った。 我が名はジーグハルト=ペンドラゴン。“大魔術師”アーサー=ペンドラゴンの孫である、と。 この彼の言だけでは、信に足るものではない。先も述べた通り、そも、アーサー=ペンドラゴンは、家庭を持っていないし、関係を持った女性というのも伝えられていない。 英雄としては、恐ろしくストイックで倹約的な生活をして来たペンドラゴンに、浮いた噂は皆無に等しいのだ。……只の一つを除いては。 ジーグハルト氏の紅の髪と緋色の瞳を見て、私は、その少女の容姿を脳裏に蘇らせていた。 ペンドラゴンの内弟子。愛人。炎の獅子の魔術を駆る侍女。イブリースの化身。“大海将”ヴォーケンに、ペンドラゴンと共に挑みし、紅蓮の髪に、緋色の瞳を持つ少女、イリス。 語られてはいない、歴史の空白。 ヴォーケンとの戦いに臨む道中、ないしは帰路。 ボルト=イリアス島に立ち寄っていたとすれば。 もし、彼らが子を生していたというのであれば。 それは、何とも奇跡的な、闇に埋もれた歴史の煌きであろうか。 しかしながら、それを真実とする術は我が手には無く、ジーグハルト氏も柔和な笑顔を浮かべ、自分は何かを知っているワケではないと語るに止まった。 ただ、彼の母から密やかに名を継いだ、それだけの事なのだ、と。 では、最後に、ジーグハルト氏の駆る幻獣、炎の巨神の名を述べて、この話については、筆を置かせて頂こう。 何故なら、この先は未だ語られざる歴史、この書の書かれた先に広がる、未だ見ぬ未来の話であるのだから。願わくば、この書が、この先到る未来において、諸兄に知を導く礎とならん事を祈る。 彼の魔神の名は、“獄炎覇王”ジーグ=ブリースである。 ――諸兄に、知の光と歴史の真実が共にあらん事を。 ~“歴史学者”ウィンリー・スミス著『近現代英雄目録第七巻~一日一英雄~』より抜粋~
ジーグハルト=ローウェル(PL:サイトー) ■基本データ 【コロナ】 執行者 【ミーム】 コラプサー 【ブランチ】エンシェント/キュマイラ/サクセシュア/宇宙怪獣 【消費経験点】125(能力値:0 特技:95 装備:0 パスの追加:0 ブランチの追加:30) ■能力値/耐久力 【能力値】    肉体:6  技術:4  魔術:12  社会:10  根源:2 【戦闘値元値】  白兵:4  射撃:9  回避:5  心魂:10  行動:10 【戦闘値修正値】 白兵:4  射撃:9  回避:5  心魂:10  行動:10 【HP】     元値:26  修正値:26 【LP】     元値:4  修正値:4 ■宿命/特徴/闘争/邂逅  宿命:   特徴:   特徴効果:   闘争:   邂逅:  ■初期パス  【因縁】からの ■準備された装備  部位:名称(必要能力/行動修正/ダメージ/HP修正/射程/備考/参照P)  右手 :               (必:―/行:―/ダ:―/HP:―/射:―/―/―)  左手 :               (必:―/行:―/ダ:―/HP:―/射:―/―/―)  胴部 :               (必:―/行:―/ダ:―/HP:―/射:―/―/―)  その他:               (必:―/行:―/ダ:―/HP:―/射:―/―/―)  乗り物:               (必:―/行:―/ダ:―/HP:―/射:―/―/―)  予備1:               (必:―/行:―/ダ:―/HP:―/射:―/―/―)  予備2:               (必:―/行:―/ダ:―/HP:―/射:―/―/―)  予備3:               (必:―/行:―/ダ:―/HP:―/射:―/―/―) ■コロナ特技 【SC104/自動/自/オ/フ1】◆大いなる力  宣:判定直後。[フレア]だけ、対象の判定の[達成値]を減少 【SC104/自動/自/マ/10H】◆魂魄破壊  ダメージを与えた場合、ターン終了まで対象が受けるダメージが〈根〉になる。《輝く闇》には無効 【SC105/DB/自/オ/フ全】◇ラハティエル  〔Sin1〕ダメージを与えた対象は次のリアクションの[達成値]が0になる 【SC105/DB/自/オ/フ1】◇アレーティア  〔Sin1〕特技級プロミネンスを1つ打ち消す 【SC105/DB/心/メ/フ3】◇クシエル  モブか[軍団]を装備している対象と【心】対決。  対象は【LP】に1のダメージ&1シーン[軍団]使用不可 ■ミーム特技 【SC120/-/自/ク/なし】降魔の衣  クライマックス専用。【白】【射】の判定を【魔】で行える。【白】【射】への修正を【魔】の判定にも適用可 【SC122/DB/自/オ/なし】◇ガブリエル  〔Sin1〕対象の【心】が【魔】以下の場合、対象が宣言した特技を打ち消す 【SC122/DB/自/オ/フ1】◇プロノイア  〔Sce1〕捨てられた直後のフレアを1枚回収する 【LF116/-/自/オ/フ1】状態復元  〔Sce1〕[水中]以外の[BS]ひとつを解除する。[重圧]でも使用可能 【RR064/デ/自/オ/フ2】◇フル  宣:覚醒直後。シーン中ダメージ+[【魔】×2]。。《※超獣神》取得時は+[【魔】×3] 【SC122/自動/自/ダ/フ2】◆いにしえの支配者  宣:DR直後。[分類:幻獣]を得る。対象のダメージ+[差分値] 【SC122/DB、強化/自/マ/なし】※大魔王  [MP]中に行なうあらゆる判定の[達成値]+【魔】 【LF116/-/自/ダ/フ1】過ぎ去りし未来  [Sin1]宣:DR時。[覚醒]専用。対象のダメージに+[差分値]。差分値を既に得ている場合、+[差分値]を+[差分値×2]へ変更 【SC123/自動/自/セ/5H】◆変貌せるもの  [分類:幻獣]を得る。[防:技]を得る。1シーン、【白兵値】+5 【SC123/DB/自/常/なし】※超獣神  ダメージ+【魔】 【LF116/-/自/オ/なし】巨獣の姿  宣:《変貌せるもの》使用時。1シーン、【最大HP】【HP】+30 【SC123/-/自/オ/2H】魔獣の牙  宣:マイナー直前。[MP]の種別:魔法の特技の効果を。能力値:【白】、射程:至近に変更、ダメージ+【魔】 【RR064/デ・強/白/リ/4H】※覇王天舞の陣  [白攻][射攻]に対して[突返]。達成値+【魔】し、ダメージ[【魔】×8+4d6]。未行動時のみ使用可、メジャーを行えない。[束縛][マヒ]を受ける 【RR064/-/射/メ/8H】※鳳凰天翔撃  射撃攻撃を行い、[【魔】×6+4d6]ダメージ。。フレア2枚を消費で対象が範囲に 【RR064/-/自/常/なし】環境適応体  《●●の実》の効果中、CT値が10になり、ダメージ+【魔】。。《※超獣神》取得時、この数値は+[【魔】×2]になる 【LF119/DB/自/オ/10H】※大怪獣  宣:マイナー直前。《遺跡巨獣》専用。[MP]の〈魔〉属性攻撃ダメージ+[【魔】×4] 【LF119/-/自/常/なし】フレア袋  [宇宙怪獣]の特技で与えるダメージ+【魔】。常に受けるダメージ+4D6 【LF119/強化/自/マ/15H】無双怪獣  〔Sin1〕[MP]で行なう攻撃の[達成値]+[【魔】×2] 【LF118/防御/自/オ/なし】倒れ込み  宣:DR直後。ダメージ-[【魔】×2]。BS[転倒]を受ける 【LF117/効参/自/常/なし】◆遺跡巨獣  【最大HP】+100、[乗り物]スロットに装備を準備できない。エキストラを得る 【LF117/自動/自/常/なし】◆原初の生命  [防:肉][防:技]。プロミネンス以外で[防:魔]を得られない。[財産点]使用不可。《光の巨人》《遺跡巨獣》《原初の生命》《究極生物》から1つを取得する 【SC123/-/自/オ/フ1】◆太古の記憶  宣:メジャーかリアクション直前。[分類:幻獣]を得る。ダメージの基準と属性を【魔】に変更する 【SC123/-/自/オ/フ1】運命介入  〔T1〕同意した相手の判定の出目1つを1か6に変更する 【SC123/-/自/オ/フ1】おもいでの欠片  〔Sin1〕宣:判定直後。自分以外の判定をクリティカルにする 【SC123/-/自/マ/10H】無限の解放  1シーン、【魔】+10(【HP】は変化しない) 【SC123/DB、Lv/効/効/効参】※記憶継承  「種別:自動取得/DB/エネミー」特技以外の特技が1つ使用可能になる。 ■装備 ■属性防御  肉体:× 技術:× 魔術:× 社会:× ■戦術、設定、メモなど ザックリとデータ作成。まぁ、悪くはない。 私の名前はウィンリー・スミス。歴史学者だ。 本日紹介するのは、ある魔王の運命の変遷と、それに関わった100年前の“大魔術師”の栄光と死、そして、それに連なる系譜の現在辿る数奇なる宿縁についてである。 さて、諸兄らは、100年前の“大魔術師”と問われて、誰を連想したであろうか? 魔術結社“黄金十字団”の創始者にして、“永遠の魔法”を手に入れたとされる稀代の魔術師にして錬金術師、アウルム=レンブラント=ヘルメース。 “黒白の使徒”を名乗り、大司教にして邪教崇拝者として、人間の身でありながら妖魔の軍勢を従えた“背教者”フェルディナンド=アラストー。 宮廷魔術師にして、神王の側近であり、己の私欲の為に王国の転覆を謀ったイスタム神王国最悪の悪漢にして大導師“蒼の”ヴィクトール。 当時台頭した魔術師は様々であるが、矢張り100年前の“大魔術師”と来て想起するのは、現在にまで語り継がれる魔術師の最高峰にして、彼の“邪険使い”ルー=シャラカンや“大勇者”ロード=ハインケルとも共に旅をした英雄、その二つ名も“大魔術師”たる偉大なる先駆者、アーサー=ペンドラゴンを措いて他にあるまい。 その天地を引き裂く大魔術を手足の如く操る様は、永遠存在にして人智の及ばぬ魔力を備えし居並ぶ大魔王すらも舌を巻いたという。 三千世界にその名を轟かせる彼の大魔術師ペンドラゴンの偉業について、今更になって私の口から語るのは蛇足であろうが、しかしながら、その偉業に隠された彼の闇については、さて、どうであろうか? 先ずは、その闇を今、白日の下に曝け出そう。 “獄炎王”イブリースを討ち果たした功績を称えられ、ハインケルは領土を下賜され、東の地の守護者としてロードの名を得た。その際、共に戦ったペンドラゴンもまた、勇名を買われ、宮廷魔術師として任官した、とは、有名な話であろう。 だが、宮廷魔術師として任官した後、大導師“蒼の”ヴィクトールを討ち果たした最期の戦いまでの十余年を費やした、ある邪法の研究についてを知る者は少ない。 その邪法こそは、人を神へと変じる魔術、“神化の法”である。 魔道、魔術の神秘については私も門外漢であるため、正確なところは定かではないが、それは、理論としてはヘルメースの手にした“永遠の魔法”にも似た魔法であるらしい。が、さて、そも“永遠の魔法”とはどのような魔法であるのか。 ヘルメース派を受け継ぐ魔術師の談に拠れば、通常、人の魂とは死して砕ければ意志も形も喪った単なるエネルギー状態、即ち、フレアへと還元され、フレアストリームへと還る。 “永遠の魔法”とは、その還元のプロセスに正しく干渉し、フレアストリームと一体となる事で肉体を喪おうとも意志を現在・過去・未来に到る永遠に補完し、自己をフレアストリームを介して全世界の情報を観測する存在として完結させる魔法であるという。 それはヘルメース派にとっては魂の最良の状態であり、全ての叡智を持ち得る至高の存在。一種の神であり、決して神ではない存在。ヘルメース派魔術師の理想的形状であるとし、その頂きへと到ったのは開祖・ヘルメースのみであるのだそうだ。 彼らの言に因れば、四年前に現れし英雄……カオスフレアの原点、栂尾薪は、その絶対武器の導きにより、ヘルメースの到った段階と極めて近い段階へと移行しているが、彼もまた不完全であるのだという。 己を確固とし、己を永遠とし、全知存在となった暁には、世界への干渉力は自ずと喪われる。その必要が存在しないからである。だとか。 彼らの言い分は、実に奇々怪々であると言える。そもそも、ヘルメースがその段階とやらに到ったと彼らはどのようにして立証したのだろうか?世界にヘルメースの意志は満ちていると、どのように確信しているのか?カルトというのは、往々にして、明確な解答を持たないモノであるのだろうが。ともあれ、それは本題ではない。 “永遠の魔法”という物の概念だけを感じて貰えれば、今後の話に差し障りは無い。 さて、では、本題であるところの“神化の法”とは何か? “永遠の魔法”はフレアストリームと一体化する魔術であり、それと一体化するという事は、永遠を同時観測する事であるというが、あくまで、それは現世に干渉する能力を持たない観測者としての形状に自己を固定させる術であるという。 だが、“神化の法”は、そうではない。 一体化するのは、フレアストリームではなく、魔王。 フレアを介して魔王と融合、一体化し、自らを人智を超越した存在とする魔術、それが、“神化の法”である。 これが“永遠の魔法”と異なり、邪法と呼ばれるのは魔王と呼ばれる存在の特異性にある。 一部の魔王は、死によるフレアの拡散と、生命誕生時のフレアストリームからの集積を完全に操作する“転生”ないしは“復活”と呼ばれる秘術により、自らを永遠たらしめる。 死した後、その魂、意志、記憶を残したままに己をフレアへと還元し、誕生の際に、それらの全てを引き継いで再度自己を再構成せしめるという、人間には為し得ぬ技法により、彼らは永遠存在と呼称されるのである。 彼らがその気となれば、恐らく、ヘルメースがその生涯を賭して挑んだ“永遠の魔法”であれ、簡単に為し得るのであろう。彼らは既に永遠であり、循環を補完されているのだから。ヘルメースが挑んだ状態は、彼らにとっては常態であると言い換えても良い。 通常の人間が呼吸する事を望んで呼吸しないのと同一、其処に存在しているだけで生態的に、至極自然に為し得ている事に対して、殊更に強い欲求を抱く事は無い。 詰まる所、死と生のフレアの循環を操作する技術において、人と魔王では天と地ほどの開きがある。そのような存在に対して干渉しようなどという愚を試みる“神化の法”とは、己の魂を魔王に奉じる技術に等しい、言わば生贄となるための魔術である。というのが、魔術学会の見解であり、事実、歴史を鑑みれば、有史以来幾度も試みられた“神化の法”の実践の顛末は、魔術師よりフレアを捧げられ、更に強大な存在となった魔王の誕生、ないしは復活である。 それら強大なる魔王の力は幾度もイスタム神王国に危機を呼んだとなれば、禁忌の邪法とされるのも当然の事であろう。 ならば、何故、“大魔術師”と呼ばれ、栄達を手にしたアーサー=ペンドラゴンは、それに挑んだのか? 己が魔王よりも優れているという、魔術師としての自負だろうか? もしくは、宮廷魔術師の地位では足りず、更に上を望んだのだろうか? はたまた、人としての寿命の短命に嫌気を覚え、永遠を望んだのか? 或いは、魔王の持つ力を更に手にし、無限の魔力を望んだのか? そのような野心が、狂気が、彼を研究へと駆り立てていたのであろうか? それを語るには、先ず諸兄に思い出して貰わねばならぬだろう。 “大魔術師”ペンドラゴンと、“獄炎王”イブリースの因縁を。 ペンドラゴンとイブリースは、ペンドラゴンが未だ修行時代の頃、師がイブリースに挑み、敗れて以来、幾度と無く相見えて来た。 ペンドラゴンにとっては、真実、師の仇にして、幾度と無く辛酸を舐めさせられた相手であるのだから、当然の事。 一方のイブリースとしてはどうかと言うと、当初、単なる気紛れで生かした人間の一人が、今度こそはと挑んで来るのを袖であしらっていた程度の腹であった様子だが、ペンドラゴンの技が練磨され、遂には己を追随し得る存在となって来た頃より、イブリースのペンドラゴンへの態度は変じる。 それはペンドラゴンも同様。卑劣を好まず、如何なる時も堂々と正面から受け、如何なる雑兵であろうとも、その絶大なる力で粉砕せしめるイブリースの背を追う内に、そこに宿る感情に、憎悪を超えた何かが存在するようになる。 戦いの中で、彼らは互いを明確な好敵手として意識するようになっていったのだ。 そもそもが武人気質であり、将であるが故に前線を好んだ“獄炎王”イブリースは、数多の英雄との闘争を好んだが、何より好んだのは、“大魔術師”ペンドラゴンとの闘争であるのだと詩人は語る。 互いが炎の魔術に長じた事も、彼らが互いを意識し合った所以であろう。 炎の魔術の真髄を極め、遂には鳳凰の猛炎を操るに到ったペンドラゴンと、虎竜獅子狗の獄炎を操るイブリースは正しく相克の炎将。 その激突は天地を揺るがし、ルイムニー大森林での闘争の際は、その劫火で当時の森林の三割を灰へと変じたという。 また一時ペンドラゴンと旅をしていた侍女、イリスの存在もまた、彼らの物語を追う上では、見過ごす事の出来ない要素の一つであろう。 それは、ペンドラゴンが“大勇者”ハインケル、“魔海の踏破者”ロンバルトと共に“大海将”ヴォーケンに挑んだ際に、突然にペンドラゴンの侍女として顕れ、ヴォーケンを打倒した以後には一切語られない、謎の女性である。 紅の髪に緋色の瞳、一見すればか細く見えるが、芯の真直ぐに通った、絶世の美女であったと伝えられるこの女性、一説にはペンドラゴンの内弟子、ないしは愛人であったのだと言われる事もあるが――諸兄らが詩人の語る歌に聡ければ耳覚えもあるだろう異説がある。 そう、彼女こそは、“獄炎王”イブリースが変じた姿であるのだと。 確かに彼女は侍女でありながら、獅子の如き炎を操る魔術師であったとされ、であるが故に内弟子などという噂が囁かれるのだが、それでも、優秀なる内弟子の存在が、それまでも、また、それ以後も登場しないというのは、妙な話である。 また、ヴォーケンの台頭と共に、イブリースの勢力は大きく減退している。 コレは、嵐の海より出た魔王を諌めんとした彼の“獄炎王”が逆に深手を負わされが故であるが、果たして、彼の“獄炎王”が辛酸を舐めさせられた相手を放置し、己の回復のみに徒に時間を費やすであろうかと問われれば、それも些からしくはない行為である。 だというのに、イブリースは撤退したまま事態を静観し、版図を広げるヴォーケンに対して、ペンドラゴンらは打って出た。唐突に出しイリスと呼ばれる侍女を伴って。 詩人の語る詩に曰く、彼の魔王を討つに当たり、イブリースは一計を案じたという。 己の力の全てを以ってすれば討てぬではないにしろ、神同士で諍いをして面白い事は無い。神は人の手で討たれるが道理。ならば、神を討つ者を己で導いてやろう、と。 そうして、己の好敵手であるところのペンドラゴンらを導いた。イリスという少女の姿で。 それは、ペンドラゴンをより深く知る為の行いでもあった――と。 事の帰結はどうであれ、ヴォーケンを討った直後にイリスという名の侍女は歴史より姿を消し、イブリースは勢力を回復する。ヴォーケンを討つという行為は、イブリースの意に適っていたのは事実であり、当時の詩人にとっては、この話が不自然でない程に、ペンドラゴンとイブリースの間には何かを思わせる点があった。 イリスという侍女の逸話には、詩人の彼らに対する想いが籠められているように思える。 しかしながら、遂には“獄炎王”イブリースはペンドラゴンとハインケルの前に倒れる。 東の魔王、オルディアとルー=シャラカンの相打った後の東の地へと勢力を広げようとしたイブリースと、ペンドラゴンらの決戦は、アウステル山脈の頂にて行われ、七日七晩の激闘の末に、ハインケルの暗黒聖剣ギュンヌンガガップがイブリースの奥義と共に魂を打砕き、永きに渡る因縁には終止符が打たれた。 その時、ペンドラゴンの胸中に過った感慨を知る者は、彼のみであるが……私は想像する。 彼は、空しかったのではないか?と。 イブリースを討ち果たしたと共に始まった宮廷での生活など、彼は望んでいなかったのだろう。それまでに幾度も任官を勧められ、拒んで来たペンドラゴンが、任官を受けたのは、最早己にとって追うべき者が無くなってしまった虚脱感では無かったろうか? そして、だから、彼は望んだのではないか?“神化の法”を。 イブリースと己の魂を一にする事しか、その空虚を埋める手段を見出せなかったのではないだろうか? そこに在るのは、野心でも狂気でもない、寂然とした無力感では無かったろうか? それは野心や狂気に犯されるよりも余程に人間らしく、余程に英雄らしい、“大魔術師”ペンドラゴンの選択だったのではないだろうか?と、私はそう考えるのだ。 だが、彼の選択は、結果として世に出る事は無かった。 彼の事を疎んじた大導師“蒼の”ヴィクトールの姦計により、死の呪いを与えられたペンドラゴンは、ヴィクトールの神王抹殺と国家転覆の計略を知るに到り、そして、単身宮中にてヴィクトールと相討ち、その生涯を閉じる事となる。 心の臓に架せられた呪いにより、磨き上げて来た絶対必殺の魔術すらも封じられた彼は、それでも一振りの短剣のみを頼りに巨悪と闘い、己の命を賭けて打ち倒したのである。 衛兵の無数の槍に貫かれ、魔術に焼かれ、呪いに心臓を食い破られたその様は、正に凄絶を極めたという。 宮廷魔術師として任官して7年。享年36歳の英雄の最期は一時は乱心したかつての英雄の凶行として伝えられたが、数年の後に、詩人らの手によって全ての真相は詳らかに世に出で晒され、非業の英雄にして“大魔術師”の名は、是を以って燦然とオリジン史上に名を連ねる事となるのである。 さて、元より、彼の魔術の師により拾われるまでは孤児であったペンドラゴンは、その生涯に渡って家庭を持つ事が無かったとされる。 で、あれば、最初に語った、ある“大魔術師”の系譜はどうしたのか?そろそろ、その話をさせて頂こうか。 発端は、嵐の海の南西にあるボルト=イリアス島。 “魔海の踏破者”ロンバルトの隠し財宝があるとの噂が囁かれるという――嵐の海にはありがちな――島だ。島には村が一つきりで、住民は300人余り。漁業程度しか稼ぎに出来る事も無い、過疎化の進行している、無論、戦術的に侵略する価値も無い、恐ろしいのは魔物よりも嵐といった風情の島。 その島は、先のバシレイア動乱におけるグレズの大規模機械侵食が進行する世界の中で結果呑み込まれなかった、ごく小規模の土地の一つである。 動乱を生き延びた島民は語る。今、正に侵食に呑み込まれんとするボルト=イリアス島全体を炎が覆い、侵食を食い止めたのだと。 小さいとは言え島一つを包み込む程の猛炎の大結界。それを作り出したのは、島に住まう若き一人の青年であった。 それまでは、島で普通に学問を修め、教職に就いていた、島の住民からすれば、言っては何であるが冴えない感の否めない、そんな青年であったらしい、彼の名を、ジーグハルト=ローウェル。 彼はその日、襲い来る機械の唸りを前にして、怯む事無く、こう名乗った。 我が名はジーグハルト=ペンドラゴン。“大魔術師”アーサー=ペンドラゴンの孫である、と。 この彼の言だけでは、信に足るものではない。先も述べた通り、そも、アーサー=ペンドラゴンは、家庭を持っていないし、関係を持った女性というのも伝えられていない。 英雄としては、恐ろしくストイックで倹約的な生活をして来たペンドラゴンに、浮いた噂は皆無に等しいのだ。……只の一つを除いては。 ジーグハルト氏の紅の髪と緋色の瞳を見て、私は、その少女の容姿を脳裏に蘇らせていた。 ペンドラゴンの内弟子。愛人。炎の獅子の魔術を駆る侍女。イブリースの化身。“大海将”ヴォーケンに、ペンドラゴンと共に挑みし、紅蓮の髪に、緋色の瞳を持つ少女、イリス。 語られてはいない、歴史の空白。 ヴォーケンとの戦いに臨む道中、ないしは帰路。 ボルト=イリアス島に立ち寄っていたとすれば。 もし、彼らが子を生していたというのであれば。 それは、何とも奇跡的な、闇に埋もれた歴史の煌きであろうか。 しかしながら、それを真実とする術は我が手には無く、ジーグハルト氏も柔和な笑顔を浮かべ、自分は何かを知っているワケではないと語るに止まった。 ただ、彼の母から密やかに名を継いだ、それだけの事なのだ、と。 では、最後に、ジーグハルト氏の駆る幻獣、炎の巨神の名を述べて、この話については、筆を置かせて頂こう。 何故なら、この先は未だ語られざる歴史、この書の書かれた先に広がる、未だ見ぬ未来の話であるのだから。願わくば、この書が、この先到る未来において、諸兄に知を導く礎とならん事を祈る。 彼の魔神の名は、“獄炎覇王”ジーグ=ブリースである。 ――諸兄に、知の光と歴史の真実が共にあらん事を。 ~“歴史学者”ウィンリー・スミス著『近現代英雄目録第七巻~一日一英雄~』より抜粋~

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