119 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2009/01/24(土) 13:56:42 ID:rkzV9Mkq
ユージ、タマちゃんのリンゴ拾ってあげてるね


リンゴといえばエデンの園だね
エデンの園といえばアダムとイブだね
つまりそういうことだね


120 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2009/01/24(土) 14:23:07 ID:Hpgdc2pO
119
お前天才だな


121 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2009/01/24(土) 17:28:30 ID:7AYsz7v5
119
やっと理解した
てかあれ明らかに二人で買い物行った後だな
もうあぐりさん的には公認か?


122 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2009/01/24(土) 21:21:14 ID:GLuD8Fxh
あのシチュはユージから誘ったのか、タマちゃんから誘ったのか、それとも新婚さんシミュレーションなのか。そこが気になる。


124 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2009/01/24(土) 21:38:55 ID:3DXYiU9F
こんなシチュエーションだよきっと



「あ……サヤ先輩、こんにちわ」
「ああ、タマちゃんだ!タマちゃんが林檎いっぱい持ってる!!」
サヤと一緒に歩いていたソフトボール部の二人はタマを見るとぱっと顔を輝かせる。
「あ、これがあんたやキリノが言ってた“タマちゃん”か」
「おお、ほんとにちっこくてかわいい!」

「ふふふ、なんせあたしの後輩だからね!」
胸を張るサヤにショートカットの友人が突っ込む。
「いや、あんたの後輩ならでっかい子を想像するよ普通」
「でっかい言うな!」
「あの……先輩達はどちらへ?」
「ちょっと皆で服買いにね。タマちゃんはおうちのお買い物?」

サヤは尋ねながら袋の林檎を一つ手に掴むとそれをタマキの口へ運ぶ。
タマキはそれをしゃりっと音を立てながら噛み締めつつ首を縦に振った。
「きゃー、林檎食べてる、かわいいー」
上級生達のハイテンションなかわいがり攻撃にたじろいで目を白黒させているタマキの頭をすりすりした後、
サヤはタマキの口に含ませた林檎を元の位置に戻し、
「また明日学校でね!」
と大声で叫ぶとタマキの進行方向とは逆の方へと歩いていった。





サトリの家でのお勉強会の帰り道、
ユージとキリノとミヤミヤの3人は前から歩いてくる赤い果実の山にぎょっとして歩みを止める。
「なんだろねアレ」
「大量の林檎……でしょうか?」
「……タマちゃんですよ、あれ」

最初にその大量の果実の持ち主の正体に気づいたのは彼女の幼馴染であった。
「どうしたのタマちゃん、そんなにたくさんの林檎」
正面から見れば小さなタマキの上半身がほとんど隠れるほど袋いっぱいに入った林檎に、
ユージは素っ頓狂な声を上げる。
ユージ達の存在に気づいたタマはバランスを崩さないように気をつけながら3人に挨拶をして、
違和感を覚え少し首を斜めに傾げる。

「あれ……今日は東さんのお勉強会ですよね?なんで栄華君がいなくて宮崎さんがいるんですか?」
とたんにミヤミヤがメソメソと涙を流し始める。
「うう……ダン君」
「ほらほら、泣かない泣かない」
よしよしとミヤミヤの頭を撫でるキリノを横目で見つつ、
ユージはタマキに耳打ちする。

「ダン君は風邪をひいちゃって……だけど教える内容をレジ目にして作ってくれてたから、
今日はダン君の代わりにミヤミヤがそれを持ってきてくれたんだ」
ユージの言葉を聴いたとたんミヤミヤが天を仰いで芝居がかった口調で叫ぶ。
「ああ、風邪を引いて倒れそうなのに仲間のためプリントを作るダン君ってば最高よ!
この後一生懸命看病してあげるんだから!ウサギに切った林檎をあげたり、
体の汗を拭いてあげたり……ああ、その前に林檎や卵酒の材料買って行かなきゃ」
隣で聞いていたユージとキリノはうんざりした顔で小さなため息を吐く。

「……ところでタマちゃんはどうしてこんなに林檎を買い込んでるの?」
タマキは紙袋を抱きしめつつ袋いっぱいの果実の使い道を説明した。
「この前、宮崎さんに作り方教えてもらったアップルパイ、皆に作ってあげようと思って」
「皆って、部活の皆じゃないよね?」
いくら飢えたコジローがいるとはいえ、室江高剣道部のメンバーではこの数で作られた
アップルパイを全て平らげることはできないだろう。
キリノが何か閃いたのか、両手を合わせて呟く。

「もしかして、川添道場の皆に?」
「はい」
「ああ、それならこれだけ林檎が必要なわけだね」
「この前お父さんにアップルパイを作ってあげたら好評で、
お父さんが道場の人皆にそのことを話して、それで皆が自分も食べたいって言い始めて」
「ははは、ミヤミヤの作るアップルパイは最高だからねぇ。
そりゃ皆も食べたくなるよ」

「そうだ宮崎さん、栄華君にウサギの林檎をあげるなら、これ一つ持っていってください」
「え、いいのタマちゃん?」
「ええ、ちょっと大目に買いすぎたんで、23個ぐらいならいいですよ。
宮崎さんにはいつも料理教えてもらってますし」
「じゃ、遠慮なくもらっておくわ。ありがとうタマちゃん」

ミヤミヤは鞄から果物包丁を取り出すと、路上で林檎を素早くウサギに仕立て上げる。
「こらこらミヤミヤ、いくらダン君の看病を早くしたいからって、
こんなとこでいきなりウサギ作るのはどうよ」
「これはダン君にあげるものじゃありません」
「というかその果物包丁はどこから……」
「あら、彼氏を看病するためならこれぐらい持ち歩くのは彼女の嗜みですよ」

(……そんなもの持ち歩いてたら警察にしょっぴかれるんじゃないかな……)
しかし空気の読めるユージはあえて口にしなかった。
そして完成したウサギの林檎を、ミヤミヤはタマキの口へ放り込む。
「これはいつも道場のお手伝いをしてるタマちゃんへのごほうび。タマちゃんおいしい?」
「はい、おいしいです」

その時携帯電話をかけながら自転車を漕いでいた中年の男性が、
片腕の無理なハンドルさばきがたたって大きくバランスを崩し、
談笑しているタマキ達の方へと突っ込んできた。
「あ、危ない!」
背後からのけたたましい自転車のベルの音に、
タマキはバランスを崩し袋からはみだしていた林檎が零れ落ちる。

「あ、危ないだろこのガキども!」
自分のことを棚にあげ大声をあげる中年男性の声に、ミヤミヤのリミッターが簡単に外れた。
男はもちろんキリノタマキユージの3人すら凍りつく形相になった元ヤン少女を見て、
髪が蛇の鬼女メデューサに睨みつけられ石化したかのように凍りつく。
迷惑男は本能的な恐怖を感じ踵を返すが、もう遅かった。
近づいたミヤミヤは男の襟首を掴み自転車の上から引き摺り落とし、
そのまま路地裏へと引っ張っていく。

「キリノ先輩、入り口見張っといてください。誰かに見られると面倒なんで」
「えーと、ミヤミヤ、穏便にね?」
ミヤミヤは握りこぶしを閉じたり開いたりして指の関節をポキポキと鳴らす。
「……大丈夫です、すぐ済みますから」
路地裏へ消えた二人と、路地裏の入り口で奥の方を心配そうに眺めるキリノを見ながらユージはため息を吐いた。

「宮崎さん、大丈夫かな」
心配そうなタマキにユージは苦笑しながら答える。
「うーん、大丈夫じゃないかな?それよりタマちゃんこそ大丈夫?
さっきよろけた時、怪我しなかった?」
「大丈夫、ユージ君が支えてくれたから。でも、林檎はこぼれちゃったけど……」

タマキはしゃがみこんで林檎を掴もうとするが、
手を袋から離せば両手で抱えなければ持てないほど大きな袋からまた林檎が零れ落ちてしまいそうで、
膝をついたままどうしたものかと思案していると、ユージが林檎を拾って袋の中へと入れ始めた。
「ありがと、ユージ君」
「いえいえ、どういたしまして。さてと、これで最後かな?」

ユージが全ての林檎を袋へ入れると、タマキは鼻先で一つの林檎をつつく。
「その林檎、食べてもいいよ。落ちた林檎を拾ってくれたお礼。
もう1個ぐらい少なくなってもちゃんと皆の分だけアップルパイ作れるし」
「そう?じゃ、遠慮なくいただきます」
「あ、キリノ先輩と宮崎さんが戻ってきた」

「タマちゃん大丈夫だった?」
「宮崎さんこそ大丈夫ですか?」
ミヤミヤはまたその顔にメデューサのような殺気を漲らせ、
髪の毛が怒りのあまり蛇のようにうねうねと蠢いた。
「あー、あのおっさんならもうあんな舐めた真似できないよう砂にしといたから」

ミヤミヤの背後でキリノが拝むように手を合わせたが、
ユージは空気を読んで何が起きたか問わずただ苦笑する。
「あれ、ユージ君その林檎は?」
「林檎を拾ったお礼にってタマちゃんにいただきました
はは、それじゃまあいただきます……あれ?」
りんごを少し齧った瞬間ユージは渋い顔をする。
「なに……あたしの切った林檎、食べれないっての?」

「あ、いや、そうじゃなくて、なんか変なデコボコが、その」
落としていないはずの林檎の表面に微かな凹凸を感じ、
凄むミヤミヤに怯えながらもユージは注意深くその起伏を調べる。
「あれ、この林檎に歯型がついてるよ?」
「え……あ、ごめん。それ、さっきあたしがちょっと齧った奴だ」
その林檎はさきほどタマキがサヤに咥えさせられた林檎だった。

「なんだ、タマちゃんが齧った奴か」
何事もなくまた林檎にかぶりつくユージにミヤミヤが突っ込む。
「なんだって事はないでしょ。それって間接キスじゃない?」
一瞬ユージは動きを止めるが、少し笑って気にもとめない。
「はは、間接キスってそんな、小学生じゃあるま……」

ユージの言葉が止まったのは、眼前で赤面しているタマキの姿を見たからだ。
「か……間接キス……」
耳まで真っ赤になっているタマキを前に、
ユージは思わず絶句してしまう。そんな反応をするタマキを見るのは生まれて初めてだったから。
「え、タマちゃんどうしたの?」

「もしかして……照れてるんじゃない?間接キスのこと」
キリノの呟きにユージが混乱する。
「え、……そんなのおかしいですよ」
「なにがおかしいのよ」
ミヤミヤのすばやい突っみにユージは訳が分からないといった顔で答える。
「だって今までお弁当の時とか普通に俺とタマちゃんペットボトルの回し飲みとか
何度もしてるんですよ?それなのに今さらいきなり照れるなんて」

「う、……何度も……」
タマキは林檎と同じぐらい赤くなった顔を袋に埋め、脱兎のごとく逃げ出した。
「あ、タマちゃん?おーーい、タマちゃーん!そっちは家とは逆の方向だよ?」
いくらユージが呼びかけても、もうタマキは曲がり角を右折し彼の視界から消えてしまった。
「え……なんで?こんなの、普通のことなのに」

「普通じゃないでしょ、高校生になった男女が間接キスするなんて。
あたしが間接キスって具体的に言葉にしたから、普通じゃないってタマちゃんが気づいたんでしょ」
「でも俺達は……高校に入ってからずっとこんな感じでしたよ?」
「ユージ君、それってこういうことじゃない?
ユージ君とタマちゃんの間での普通は、普通の人達の間では普通じゃないこともある」

「え……うーん、確かに俺、クラスメイトに時々天然とか剣道馬鹿とか言われますけど……
俺の感覚がずれてるのかなぁ……とりあえず俺はタマちゃん追いかけますね。
あっちはタマちゃんの家と反対方向だし、あんなに走ってたらまた林檎こぼしそうだし」
言うや否や、ユージはさっさとタマキの後を追う。
「アダムとイブか……」
キリノの独り言にミヤミヤは首を傾ける。
「なんですか、それ」

「ほら聖書にあるじゃない。アダムとイブは林檎を食べて知恵つけて、
恥ずかしさ覚えた……だっけ?なんかあれ思い出しちゃって。
林檎を食べて気づいたんじゃないかな、
タマちゃん自身にとってユージ君がどういう存在なのかをね」
「……アダム役の方は何にも気づいてないみたいですけど」

「そりゃまあ、ミヤミヤに林檎を食べさせてもらってないしね~」
「……それってどういう意味です」
「あ、いやいや、こっちの話」
「……そういえば、アダムとイブは蛇に林檎を食べさせられたんでしたっけ?
つまりタマちゃんに林檎を食べさせたあたしが蛇みたいにおっかないって事でしょうか?キリノ部長?」
「ごめんなさい、果物包丁持って凄まないで下さい」


終わり
最終更新:2009年01月30日 23:33