791 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2009/01/25(日) 00:36:41 ID:5Lkdjldf
なぜだれも下敷き静電気ヘアーのキリノに触れぬのだ・・・


792 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2009/01/25(日) 00:55:26 ID:2v9JCTET
キリノ単萌えならそこも話題になるのだが、今求められてるのはそこではないからである。
でも下敷きキリノも可愛いと思うよ。

誰かキリノが下敷きでコジローの髪も立たせるSSを。



803 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2009/01/25(日) 13:13:42 ID:uuPkGmBS
792 こんなものでよろしければ



「おはようございまーす」

「おう、おはよ……おわっ、何だその髪!?お前?」
「いやー……ちょっと失敗しちゃいましてえ……」
毎朝恒例、自分のすぐ後にやって来たキリノのいつもと違う様子にコジローは溜息を漏らした。
いつも若干逆立ち気味であるキリノの後ろ髪だが、今日のハネっぷりは酷い物だ。
その姿は、さながらに。
「お前……いつかのサヤとかサトリを思い出しそうなんだが」
「わ、笑わないで下さいよね……?」
コジローが目線をやると、キリノは無意識にハネた部分を手で押さえる。
さすがに女の子ではあるらしい。
「なんか、まー……いや」
「もう、なんなんすか。言いたい事があるなら……」
「いや、ホントになんでもない」
キャラの違いだと言ってしまえばそれまでだが。
ポンとやったらドカンと返って来るサヤや、
ストッパーである普段のキリノが居たサトリの時とは違い。
そのキリノに見舞った不幸を、笑うより先に可哀想だと感じてしまった自分に。
(同じ生徒に、その扱いの差はどうなんだ俺?)
彼がそう思い悩んだのも無理なからぬ事であった。
腕を組んで黙り込むと、そのうちに下から睨めつける目は、不満を訴えてくる。
「……先生は」
「あん?」
「先生は、変えたりしないんすか、髪型」
精一杯の皮肉のつもりであった。
何せ、コジローの頭に髪型もなにもない。
ただ短く切り揃え、少しばかり伸びたらすぐに切る。
去年一年を通して見てもそのサイクルは一定であった。
おそらく美容院になど、終生一度も足を踏み入れた事もないのだろう。
「ふ~む」
ただ彼は、唸った。それは予想外の反応だったが、少し目線をあげればすぐに気が付いた。
いつもは剣山のように触れれば刺さりかねない彼の頭が、今は伸びかけの時期なのか、少しぼさぼさ感がある。
「そろそろ、切……」
「切ってあげましょうか?」
「……できんの?」
期待と不安が入り混じったその声には、散髪代を節約できる、という公算が大きく含まれているように聞こえた。
キリノは下を向き、「ふっ……」と少しイタズラな笑みを浮かべると。

「おまかせあれ!」
「じゃあ、頼むわ」
「立つくらいになればいいんでしょ?」
「ああ、まあテキトーで」
彼は普段理髪店でするそのままの受け答えで、ニヤニヤとパイプ椅子に腰を降ろす。
背中を向けたのを確認すると、彼女が鞄の中から取り出したのは。
普段持ち歩いてるソーイングセットの鋏ではなく、下敷き。
「ちょっと待って下さいね、準備しますんで……」
そう言うと、セーターと脇との間で、ゴシゴシと擦り始める。
「おお、まあゆっくりやってくれ」
何も知らない彼は、音にも気付かず呑気に構えているだけ。
やがて下敷きに十分な電力が溜まると。
「じゃあ、目、瞑ってて下さいね」
「ん」
つい、と頭皮の表面をなぞるように下敷きをスライドさせると。
ぼさぼさであった部分は次々に、天に吸い寄せられるように逆立ち、いつもの彼の髪型になる。
(ん~~、100点!)
実のところ、そこまで上手く行ってしまったのではやや張り合いに欠ける、とも彼女は思ったが、
それもまた、言うままに信じて目を閉じている彼の可愛さを見れば、どこかへと立ち消えていた。
やがて、彼の目が開くと。
「おおっ、すげえすげえ!できてんじゃん」
「むっふっふー……どうっすか」
小さな手鏡を自慢げに差し出し、彼女は鼻をならした。
さらに十分満足だ、という彼の表情を見届けると。
「じゃあ、あたし着替えてきますんで」
「おう、いってら。ありがとな」
兄妹か、夫婦かと見紛う様な仲の良さで言葉を交わし、彼女は更衣室へと引っ込んだ。
すると彼の傍らには、彼女が置き忘れていった下敷きがある。
(……なんだこりゃ?)
十分に帯電した下敷きを手に取り、なでなでと嘗め回すように観た後、彼は手を離した。
気が付けば、先程からの二人のやり取りをずっと眺めていたねこがいる。
なー、と奇妙な鳴き声をあげるその生物に、
「お前もそろそろ、毛変わりの時期じゃないか……?」
優しく指先で触れようとした、その時。

ばちちっ!

「ッ熱ちッ!?」「!!?」
二人(正確には一人と一匹)の間に強烈な電撃が走り、はじけた。
それと同時にねこは身構え、コジローは余計に髪を逆立たせる。
「てめえ……」
「フーッ!!」
きっかけは、些細な事。だが生まれてしまった溝は、何よりも深い。

「お待たせしましたー、おりょ、どうしたんすか?」
「つーん!!」「………!!!」
キリノがどうにか必死で髪形を整え終え、更衣室から出て来るまでの数分間。
その関係に和解の糸口は見られなかった。
最終更新:2009年01月30日 23:08