部活が終わってアルバイト。
まだ慣れないお仕事で、緊張しちゃって大変です。
でも今日は先生が来てくれました。何かお母さんに贈り物をするそうです。
お母さん、かあ。

「これでいいか。ちょーだい」
「1000円になります」
「…おふくろにゃ高い!別のにするわ」
「はぁ…」

そう言うと、先生は外を見て何か少し驚いたような顔をした後、再び棚とにらめっこを始めました。
随分長い間悩んだみたいですが、決まったみたいです。

「これとこれにするわ」
「あれ、二つ…ですか?」
「ん。別々にして」

あれ、これ、この間も売ったような。
女のコたちが可愛いって言ってたっけ。
絶叫してる人のお人形…と、待てパのQ様のキーホルダー。
ひとつはお母さんで、もうひとつは…誰にあげるんだろう?
じっと先生の顔を見てみると、不思議そうな顔をしたので、恥ずかしくて声が小さくなってしまいます。

「ありがとうございました、またおこしくださいませ」
「………むー…」
「???」
「愛想悪ィな!もっと明るく楽しく言え!ほら顔もくずせくずせ!」
「はがが…」

いたたたた。
ごめんなさい先生。

「―――ありがとうございました、またおこしくださいませ」
「おう、んじゃまた明日な、タマ」

うん、頑張ろう。目指せ、クリクリDVD!


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「…何してんだよ」
「え、お、おりょコジロー先生奇遇っすね」
「さっきチラチラ外から見てただろうが。気付かないとでも思ってんのか」
「い、いやータマちゃんちゃんとバイト出来てるのかなーって心配で」
「ふー…まあ俺も似たようなもんか。ほれ」
「あり、なんすかこれ」
「その部長働きに免じて、プレゼントだ。お前こういうの好きだったろ」
「プレゼント?コジロー先生が、あたしに?」
「…聞き返すなよなんかむずがゆい…」
「…えへへ。ありがとうございます!大事にします」
「おう、そーしろそーしろ」


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あれから色々あって、今日は皆で練習試合に行く途中です。
ユージくんとお話しながら、緑が生い茂る公園を歩いていると。
ふと、前を嬉しそうに歩く部長のカバンに見覚えのある物を見つけました。

「キリノ先輩、それ…そのお人形」
「んー?タマちゃんも知ってるの?これ今流行ってるんだよ~」
「いえその…前にバイトで見た事があるので…」
「うんうん、ムームーハウスにも置いてあるよね」
「あたしも売りました…2個」
「そうそう…でもこれ、あたしが買ったんじゃないんだ」
「え…」

そう言うと、先輩は一番前を行く先生の後ろ姿を一目見た後、うれしそうに。

「もらいものだよっ」

と言って駆け足になると先生の隣に並び、楽しそうに会話を始めました。
少し、なんだか気になって隣を見ると、ユージくんがいます。
あたしも勇気を出して、聞いてみました。

「ねえ、ユージくん」
「ん、なに?タマちゃん」
「あたしが欲しい物…じゃなくて、いいなあ、って思うものがあったら…」
「うん」
「ユージくんは、その…買ってくれたり、する?」
「うーん…あんまり高いものじゃなかったら、いいよ?」
「ほんとに?」
「う、うん…どうしたの、急に?」
「…ありがとう」
「???」

ちょっとだけ、心があったかくなりました。



おしまい
最終更新:2008年12月20日 23:58