「なあ中田、お前と川添って付き合ってんの?」

 いきなりクラスメートの一人からそう言われたユージ。
 自分としては心当たりが無いだけに素直に疑問をクラスメートに返した。

「なんでそうなるの? 俺とタマちゃんは幼なじみってだけで付き合うとかの関係じゃないよ」
「そうなのか? だってお前ら二人でいる時の顔、すっげー幸せそうだぞ。それにあの川添があんなに嬉しそうに話すのってお前だけだし」

 ユージはクラスメートの「あの川添」の「あの」の部分が少しだけ気になったが、それよりも今はタマキのことを思い返していた。
 確かにタマキが他の男子と話す時は自分と話す時とは違い、あまり表情をコロコロと変えたりはしない。
 そのことに気付いたユージはそのことを嬉しく思うと同時に、あることに気付いた。

(俺だけに見せるタマちゃんの表情? 言われてみたらそうかもしれない。確かにタマちゃんの笑顔はかわいいしドキッとさせられるし……あれ?)
「おい中田、聞いてるのか? もし付き合ってないならオレが川添に告白しても問題ないよな?」
「(タマちゃんに告白? タマちゃんがそれをオッケーする……)ダメだ! タマちゃんは渡さない!!」
「あ、ああ悪かったよ。やっぱりお前ら付きあってんじゃんか。それならそうって言えよな」
「ゴメン。でもありがとう! 俺、やっと気付けたよ。今からタマちゃんに告白してくる」

 自分の気持ちを理解したユージはクラスメートにお礼を言うと、教室を飛び出してタマキのクラスへと向かった。
 お礼を言われたクラスメートはそのお礼の意味を理解するのに数秒かかり、気付いたところで思いっきり後悔していた。
 ユージはタマキのいる教室に到着すると、わき目も振らずにタマキの所へ向かうとタマキの肩を掴んで、

「タマちゃん、好きだ!!!」

 大声でタマキに告白した。
 教室内にはまだ生徒も何名かいたが、ユージの告白に水を打ったように静まり返った。
 当の告白されたタマキはというと、ユージの真剣な顔を顔を赤らめながらジッと見つめた後で消え入りそうな声で、

「……あたしも、ユージくんが好き、大好きです」

 ユージの告白の返事を返した後で、ユージから顔をそらすように俯かせ、ユージの体を抱きしめた。
 タマキが顔を俯かせた理由、それは嬉し涙を隠す為だったのだが、それはタマキだけの秘密だった。

「ありがとうタマちゃん。これからもずーっとずーっと一緒だよ」
「うん。あたしたち、高校卒業しても大人になってもずっと一緒にいようね」

 二人のプロポーズともいうべき言葉に教室に残っていた生徒は大騒ぎしながらも、一組のカップル誕生を祝福した。
 周りの祝福を受けながら、ユージはタマキにだけの、タマキはユージにだけのとびっきりの笑顔で見つめ合っていたのだった。
最終更新:2008年11月25日 00:17