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「子どもたちも大きくなって、また2人になっちゃいましたね」
「ああ、そうだなあ」
 コタツのなかで、洗い物でかじかんだ手を温めながらキリノが語りかける。
「もうすぐ、今年も終わりか」
「お年玉用意しました?」
「おっと、いけね。忘れてたよ。あー何人分だったか?」
 ひいふうみい、と手でコジローが数えていると
「10人ですよ」
 キリノが笑いながらお年玉袋を10枚取り出した。
「子ども1人に対して、孫が2人ずつか……。孫同士で団体戦できるな」 
「ちょっと、子どもを作りすぎましたね」
「お前が誘うからだろ……」
「自制しないのは誰でした?」
 いたずらっぽくカラカラと笑うキリノ。年相応に皺も増えたとはいえ、
2人とも初老に差し掛かったわりには若く見える。
「やっぱり、お互い老けたな」
 お茶をすすりながら、コジローがポツリともらした。
「そりゃ、年とりましたからねえ。あ、そういえばタルト作ったから食べませんか?」
 そういって、キリノが台所からオレンジタルトを運んできた。
「うん、うまいな。キリノのタルトはやっぱりうまい」
「もう、ほめても何もでませんよ」
 顔を少し高潮させてキリノはコジローをこづいた。
 TVでは、沢宮エリナと戸田涼子が年末の時代劇に出ている。
2人とも50台後半なのに、そうとは見えないほど若々しい。
「あー、やっぱり芸能人は年をとっても可愛いですね。
 私もあんな風に年をとりたかったなあ」
「何言ってるんだキリノ。お前は年をとっても十分可愛いぞ」
「ほ、本当?」
「ああ」
 そういって、コジローはニヤっと笑う。
「オレンジタルトもくれるしな」
「やったあ……! って照れ隠しはやめてくださいよ」
 ふうっとため息をついて、キリノはみかんを口に入れた。
「ハハハハ、ウチの部の女子たちは今でもみんな可愛いな」
「もう……あら」
 玄関のベルが鳴り、聞きなれた声がする。
「おばーちゃん、こんばんはー」
「おや、来たみたいだぞ。第一号が」
「今、開けますよ」
 キリノがドアを開けると、彼女の背丈の半分ほどしかない小さな女の子がちょこんと立っている。
その顔は、若いときのキリノそっくりだった。
「おかーさんは、タマおばあちゃんちのほうによってから来るって」
「いらっしゃい、じゃあ夕飯は特製のメンチカツにしようか」
「わーい! おばあちゃんのメンチカツ大好き!」
 とてとてと歩きながらキリノそっくりの少女が、祖母のあとをついていこうとする。
「あれ、おじいちゃんもおいでよ。一緒にメンチカツつくろー」
 途中で立ち止まり、コジローの袖を引っ張りながら少女はキラキラと目を輝かせた。
その目を見ながら、コジローは腰を少しかがめて少女の頭をなでる。
「はっはっはっは、今いくよ。それにしても、お前はきっとすごい美人になるぞ」
「ほえ、どーして?」
 キョトンとした目で孫娘がコジローを覗き返す。
 コジローは、キリノが台所に行ったことを確認すると少女にささやいた。

「おばあちゃんに似てるからさ」

「ちょっとー、2人とも手伝ってよー」
 台所のほうからキリノの叫び声が響いた。