※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

「な……何これ~!?」
「抱き枕です」
 剣道場の壁に立てかけられた抱き枕を指差しながら、レイミが答えた。
その抱き枕には篭手をつけたまま、道場でゴロゴロしているキリノが写っている。
「室江高校もTVに出るんですから、
やっぱりグッズとか作ってもっとアピールするべきだと思ったんです。
とりあえず、ロリ系の川添さんと正統派のキリノさんと、
ミヤコちゃんで一つずつ試作品を作ったんですけど。
あ、でもミヤコちゃんの抱き枕はアタシが家で使ってるからダメなんです」
「レイミ……あんた、ちょっと何勝手なことしてんのよ!」
 ミヤミヤが眉間に皺をよせながら、レイミをにらみつける。
「ええわー、怒ったミヤコちゃんええわー」
 レイミには逆効果だった。

「それにしても、ねえ……」
チラ、と抱き枕のほうを見るキリノ。
「タマちゃんも抱き枕作ったっていってたよね?」 
「ハイ、ユージ君にあげました」
「え」
 予想外の答に部活のメンバーが凍りつく。
「家に持って帰っても邪魔だし、お父さん怒りそうだから……
ユージ君にあげたら、TV見るときとかにちょうどいいねって」
「あー、ユージ君だわー」
 キリノは、深くため息をつく。
「先輩は持って帰るんですか?」
「え、ええ。でもこんな大きいの邪魔だしなあー」
 そのとき、抱き枕がコロンと転がり裏側の絵柄が一同の目に入った。
そこには、部屋でスカートの中身に手を伸ばしているキリノが写っている。
顔はほてり気味で、何をしているところなのかは想像に難くない。
「キ、キ、キリノ? こここここれ」
 サヤがパクパクと口を開けながら指差す。
「にゃあああ! なんで、こんな写真があるの!!」
「あ、それはいもーとさんと取引してもらった写真です」
 そういって、レイミは元となった写真を取り出した。
写真の日付は、コジローが室江高に帰ってきた日になっている。
キリノは思い出した。その日、確かあまりにうれしくて……うれしくて……。

「おーい、練習始めるぞー」
 その瞬間、間の悪いことにコジローが剣道場に入ってきた。
「お前ら、何集まってるんだ……ん? 何だそれ?」
「ウワー! コジロー先生見ちゃダメー!」
 あわてて隠そうとするキリノだったが、抱き枕はしっかりコジローの目に入ってしまった。
「ななななな、何じゃこりゃ!」

 「ハイハイ、ストップ。ストップ。コジロー先生。最近枕が壊れたっていってたでしょ。
だから、キリノが特製の枕を作ったんだよ」
 見ていられないとばかりに、サヤが助け舟を出す。
「え、でもこれって抱き枕ってやつじゃ」
「マ・ク・ラ!」
「この写真は、そのナニをしているというか」
「ナニもしてない!」
 赤面しながらキリノが必死に言い訳した。
「いいから、とっとと持って帰りなさい! ほら、帰った帰った!」
 サヤは、コジローに抱き枕を押し付けると尻を蹴飛ばして道場から追い出す。
「え、あれ? おーい、練習は……」
 抱き枕を抱えたまま、コジローは1人剣道場の入口で立ち尽くしていた。