彼女は部活が終わって帰り道、いつものとおり彼と一緒に自転車をこいでいた。
しかし、いつもの彼女の冷静な表情とはちがい、すこし元気がないように見える。
「タマちゃんどうかした?」
彼の言葉に彼女は眉をひそめる。
口を開いたと思ったらまた閉じての繰り返し。
しかし彼女は決心したように口を開いた。
「テストが・・・・悪かったんだ・・・。かなり」
彼は何度か瞬きをした。
その表情はかなり落ち込んでいて、何度もため息している。
よほどショックだったのだろう。

彼は困ったように、苦笑していた。
「ユージくんはよかったよね。学年で5位だったし。」
「あ・・ははは、さがっちゃったけどね」
やはり苦笑しながら言葉をはく。
彼女は彼の成績のことを口にだすと、また肩をおとす。
ここまで元気のない彼女はあまり見なくて、正直見たくない。

彼は一つ提案を出した。
「それじゃあ今度みんなで勉強会する?」
彼の言葉に彼女はユージに視線をむけた。
その目はとても嬉しそうな目で彼を見ている。
「うん!」
彼女の返事に彼は笑いながら頷くと、時間と場所を決めて
二人は別れた。

***

後日、タマキたちは勉強道具をもってユージの家の前に立っていた。
メンバーはコジロー以外全員。
タマキも無表情だが、どこか楽しみにしていて
サトリは目に見えるほどウキウキしていた。

タマキがインターホンを鳴らすと、すぐにユージがドアを開ける。
「あ、タマちゃん。結構早かったね、あがって」
彼の言葉に頷くと、彼女らは靴を脱ぎ、彼についていく。
ユージの部屋につくと、少し剣道のポスターも貼っていて
中は男の子らしい部屋だった。

彼の部屋をみんなは一通り見ると、部屋の真ん中に少し多いテーブルの前に腰掛ける。
さっそく勉強道具を出して、勉強をし始めた。
少し静かな時間がその部屋に流れる。
しかし、それは5分も長続きしなかった。
「あああーーー!わかんないーー!キリノー!ここどういう意味?」
さじを投げたようにサヤはシャーペンを放り投げながら言う。
「あーここはね」
学年20位の学力をもつキリノがサヤに勉強を教える形になった。
ダンはミヤコに、イチャりながら教えている。
ユージはサトリが頭をかかえているのを見て、彼女に教えているような形だ。
一人ポツンとその様子を見ていたタマキはまたノートを広げた。

少しすねたようにシャーペンをノートに走らせる。
チラッとユージの方を見ると、やはりサトリに勉強を教えていた。

ユージくんが私に勉強一緒にしようっていったのに・・・。

彼の方を見て少し頬を膨らます。
しかし彼女の隣はキリノとサトリ。
ユージにとってタマキは一番教えにくい場所の位置だった。
一人で勉強しようと思ったが、なぜかペンが進まない。
ユージの母がもってきてくれた日本茶を飲んだ。

飲み終わるとユージたちの顔が見える。
ユージとサトリがかなり密着していた。
それを見るとタマキは不意に湯飲みを落としてしまう。
「あつっ!!」
彼女の声にみんなはタマキに視線を移し変える。
薄いワンピースの端まで熱いお茶が彼女にかかった。
「た、タマちゃん大丈夫!?」
横にいたキリノがそう声をかけるが、彼女の膝は大焼けど。
苦しい表情をしているとユージが立ち上がった。

彼女は熱さに苦しんでいると、いきなり視線が浮き上がった。
「きゃ!」
それにビックリした彼女は声をあげる。
彼は彼女にお姫様抱っこをしていたのだ。
膝も赤いが顔も赤いタマキ。
それをボーゼンと見つめるギャラリーたち。
彼はすぐさま自分の部屋をでると、風呂場に向かう。
向かうところをユージの母も父もボケッとそれを見つめていた。

「ゆ、ゆ、ゆゆ・・ゆー・・・?」
彼女はかなり動揺するが彼はお構いなし。
風呂場に彼女を座らせると冷たいシャワーを出して彼女の膝に浴びさせる。
彼の行動を彼女はしばらく見ていると、さっきまでのへんな動機が消えていった。
ひととおり膝を冷やすと彼は彼女に話しかける。

「大丈夫?熱かったでしょ。こういうのはすぐに冷やさなきゃ」
「・・・・あ・・う・・ん」
ぎこちなく彼女は返事をする。
さっきのお姫様抱っこにはビックリしたが、彼はそんなのなんとも思っていなかったんだろうな。
彼女はそう思うと少し寂しい表情をした。
その表情に気がついたのか彼は首を傾げる。

その状態が少し続いたが、彼女は口を開く。
「もういいよ。ありがとう、ごめんなさい」
そう言ってほんのり笑いかける。
彼も少し安堵の息を漏らしてシャワーを止めた。

彼はそのまま彼女の方を振り向こうとすると、またちがう方向へと首を向けた。
「?」
彼女は彼の行動に首を傾げる。
いったいなんなのか。
不可解に思っていたが彼は振り向かない。
彼は自分を見ないようにしているようだ。

私?と思うと彼女は自分の服装を見た。

「!?」
シャワーをかけすぎたのか、下半身のところやビミョーに上半身も透けている。
彼女はそれを手で覆い隠すが恥ずかしくてうつむいてしまう。
彼は彼女の動作に気がついたのか、後ろを向きながら慌てて口を開いた。
「あぁあ!み、見るつもりじゃなかったんだけど!ご、ごめんね!ほ、本当にごめん!」

後ろを向いているため彼の表情はわからないがとにかく必死で誤っている彼。
そんな彼に彼女も慌ててしまう。
「あ!ううん!いいよ!あ、いやよくないけど、えっと!じ、事故だし!」
明らかに動揺しながら話すタマキ。
顔を赤くしながら伏せている。
そのまましーんとなっている風呂場に、二人は息を吐いた。
「「はぁぁ」」
それが同時だったため、彼女らは少し笑ってしまう。
「あ・・ははははは」
ユージは少し気恥ずかしそうに笑うと、彼女も少し笑ってつぶやいた。
「みんなのところに戻ろう、ユージくん」
「うん」
彼女に返事をして二人は後ろを振り返る

するとそこにはニヤニヤしながらキリノたちとユージ両親が立っていた。

サトリは少し不服そうな顔をしていたけれども。

END
最終更新:2008年05月20日 23:28