こちらの作品は「Gambling with the Devil!」からの派生作品です。



――――ひそひそひそ。

「とうとうそっちにまで…」
「ま、まさか…違うでしょ。そんな話いくらなんでもあんな堂々とは…」
「あたし、何かの本で読んだ事あるよ。”聖水プレイ”とか言うんだよね」
「サヤ先輩……それ直接的過ぎます…ってか何の本読んでるんですか」
「(……何のお話してるんだろう???)」

後から来て事情のよくわからない部外者四人が、当事者二人に猜疑の目を向ける。
そうするのが普通、そうせざるを得ない程にその光景は―――歪んでいた。

「……いやウ○コだ!」
「オ○ッコに決まってるっすよ!」

初めは何でもない可愛らしい物であった些細な賭け事がエスカレートし…
根拠のない自論のぶつけ合いに発展し、ついには―――
小学生以下の低レベルな議論に堕しているのに気付かぬ二人。

ともあれ周りの目も流石に誤解が行き過ぎたものであるかも知れない。
まだ何とか、辛うじて冷静にその議論に嘴を突っ込む事のできる人物―――
すなわちミヤがごほん、と一つ咳払いをし、助け舟という形でのジョイントを出す。

「………で、何の話なんですか、今日は」

そこで初めて4人の目に気付いたコジローとキリノにとっては…
割って入った人物がミヤであった事こそが最大の不幸であったのかも知れない。
なにせ議論の中身は「ダンが遅れている理由―――すなわち大か?小か?」。
幾らなんでも、彼女であるミヤにそんな話をするわけには。
何も答えられず、黙りこみ……俯く二人。
その姿に、周囲の誤解は更に加速する。

「(やっぱり…そうなんだ…)」
「(キリノ、幾ら悪趣味でもそれは…あたしでもフォローできないわ…)」
「(世界は、広いなあ…俺なんかの全然知らない事がこんな近くで行われてるなんて…)」
「(……一体、何のお話してるんだろう???)」

部外者も巻き込み、計6名の頭上にカオスの扉が開かれんとしていた矢先。
道場の門戸に現れる2つの人影。

「お~みんなあ~遅れてごめんなあ~」
「あはは、そこでダンくんと会っちゃって、一緒に来ましたーすいません、遅れちゃって」

二人の到来を知るや、たちまちその足元に注がれるコジローとキリノの目線。
しかして二人の道場へと足を踏み入れるタイミングは―――全く、寸分の狂いもなく…同時。
写真判定に審議のランプが灯るかに見えた決着は、さらにその矛先を全く異なる物へと向ける。

「ダン!…お前、大っきいのだったろ?そうだよな?なあ!」
「違うよねー、ちょろちょろ~っと、出して来たんだよねー、ねっダンくん?」

猛烈な勢いで詰め寄る顧問と部長に、流石に戸惑いを隠せないダン。
しかしてその二人の背後では―――全てを察した、鬼百合が嗤う。

「あんたら…人の彼氏のナニで賭けしてんの…?」

かつて無いほどの暗黒の闘気を身に纏うミヤの手から、振り下ろされる竹刀が一閃。
――――ガスッ!ゴスッ!
頭からぷしゅうううう、と言う白煙を上げ、倒れ伏す剣道部の管理責任者2人。

「はいみんなー、揃った所で練習するよー」

サヤがてきぱきと号令を下し、いつもの光景に戻る剣道部。
……道場のスミで、芋虫のように這いずる若干2名を除いては。

「センセー…やっぱり賭けは、よくないっふねえ…」
「おっ、おお……賭けは、やめとこう…」


これが後に、アニメ14話にて…
頑なにトロフィーを賭けのダシに使うのを拒むコジローの姿勢に――――繋がってるわけないじゃないっすか。



おわり
最終更新:2008年05月20日 23:09