※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

部活の終わり、キリノは一枚の紙を握り締め、勇気を出してコジローに切り出した。
「せんせー、映画とか好きっすか?」
「前振りもなくどうした?急に。」
「いやー、サヤと行こうって言ってたんすけどこの映画明日でおしまいなのに予定が合わないんすよー。」
「ん~、まぁ明日は部活もないし、これって予定もないけど…。」
「じゃあ決まりっすね。前売り券無駄にしなくてすんでよかったぁ~。明日四時っすよ?時計台のとこで。約束ですよっ!じゃあ、また明日ぁーっ」
「お、おい勝手に話進めながら帰んなぁぁ。」

翌日

どれが一番可愛く見えるか、昨日の夜から鏡の前で見比べた私服の中から一番大人っぽく見えるのを選び、時計台で待つキリノ。
コジローが約束の時間の1分前なのにまだ来ない。かなり強引だったからもしかしたら来てくれないんじゃないか、そう思うと不安になってくる。
すると時間ギリギリで待ち合わせの時計台に走ってくる影が。。
「せんせー、遅いっすよ。」
「悪い、できるだけ安い駐車場探してたら時間くっちまった。」
「んもぉ、こんな時にもそんなこと言ってぇ。遅れたせいでいい席とれなかったらどーするんすかぁ。」
「今日が最終日ならそんな混むこともないだろ。」
なんだかんだ言いつつも来てくれたことに安心するキリノにあけすけと言い返すコジロー。。

そして映画館に到着。
「周り、カップルばっかで俺ら浮いちゃってるし、なんか居づらいな。」
「そんなことないっすよ、こうやってたら、私たちもそれなりに、ねっ☆」
「だぁ~、何してんだおまえっ。」
キリノが腕を組もうとする。拒否されたらどうしよう、そんな気持ちもあったが、叫びながらも拒否はされないことに嫌な気はしなかった。
「こ、コーちゃん、…ポポッポップコーンとか食べま…、食べる?」
「コーちゃんて、おまえノリノリだな…。なら塩バターで頼むわ。」
「ほ~い。」



そして映画の上映が開始。内容はなんてことない恋愛映画だったが、キリノにとって男の人と二人っきりで映画に来ること自体初めてなのだ。
映画に集中できず、周りをきょろきょろしてしまう。よく見ると周りのカップルは手を握りあったり肩寄せあったりしているのがさらにキリノをドキドキさせた。
(うわぁ、ホントにカップルばっかしだぁ。…あーぁーあのカップルなんかチューしちゃってるし…、
私たちがチューなんてするの想像できないけど、手くらい繋ぎたi…!!にゃっ!?)
ふと気がつくとコジローが寄り掛かって来ている。
(はわわ、うれしいけど、うれしいけど。今私たちはカップルに見られているわたしたちはカップルにみられて、……って)
コジローからは小さく、ぐぅぐぅと聞こえた。
(お約束ですか…、はぁっ)

上映後

「いやー、よかったっすね、…てせんせーは寝てたけど。」
と、言いつつもキリノ自身もドキドキしっぱなしで内容は大筋しか捉えられなかった。
「悪い悪い。」
「今日のせんせー、二言目には『悪い悪い』って、それじゃ仮に好きな女の子ができても相手ヒいちゃいますよ。」
「いや、弁解させてくれ、寝てたのは途中の少しだけだぞ。て、おまえら年ごろの女二人でこんなの見ようとしてたのかよ。淋しいな。」
「!!サ、サヤが、サヤが意外とロマンチストでこういうの好きなんすよ。」
「ふーん、あのサヤがねぇ。でも内容は月並みじゃね?……そういや、好きな女の子といえばさっきのヒロインの子なんかタイプだな。」
「へっ?」
「ほら、もともと主人公とは上司と部下の関係なのに、そんなの関係なしに上司である主人公になついてフランクに話しかけてきたり飯作ってきてくれるし、
ネコ顔ってとこや素直なとこもポイント高いな。」
「あははっ、せんせー、それ高望みしすぎっすよー。」
(せんせー、ああいうコが好きなんだ…)
「私はあんなへたれた上司は嫌っすねー、やっぱ、かっこよくて背が高くて切れ者で
二言目には『悪いな』なんて言っちゃう男はだめだめっす。」
「はっ、最後のは俺のことかよ…。まぁ、しかしこれでただ帰るってのも淋しいし飯食って少しドライブでもするか?」
「!!…はいっ!」
(も、もしかしてレストランとか?いや、でもせんせーだし。でもでも、どこかおいしい料亭とか。)



連れてこられたのは仕事帰りの背広の人がガヤガヤ言ってるこじんまりとした店だった。
「……」
「キリノ、ここの食堂うまいんだぜ?もっと食えよ、な、この芋のにっころがし、車じゃなかったらビール飲みたくなるくらい旨いんだぜ?」
「…やっぱせんせーはせんせーだね…。」
「はぁ?」
『よっ、先生っ、また今日は女の子なんか連れてぇ、デートの帰りかーい?』
「またまたぁ、コイツはそういうのじゃないっすよ。」
(でも、なんかあったかいなぁ。少しうちのお惣菜に似てるかも。)

「よし、食ったか?
すみませーん、お会計!!」
『まいどっ、1760円になりまーすっ』
「今日は映画観させてもらったからな、俺が出すよ。ほら鍵、車乗っとけ。」
コジローの財布を気遣いつつも、そこは男のプライドという物があるのだろう。そう感じたキリノは素直にごちそうさまと言い、店の外へ。
『へい、ちょーど。おおきにぃ。…と、先生っ、……あのコは今にべっぴんさんになるで。しっかり捕まえときなよ?』
「ははっ、ごちそーさま。」

店を出ると外はもう真っ暗である。キリノはというと、駐車場で竹刀を持って素振りをするジェスチャーをしており、コジローを見つけるとすぐさま、「めーんっ」と言って打ち込んできた。
「なんのこれしきっ、こてーっ……って何やってんだ、早く車乗れ。いいトコ連れてってやる。」
「はぁーい…」

そのまま車を出すと、キリノの来たことない道を選んで走りだした。だんだんと山の方に入っていく…。



最初はガソリン税がどーだこーだ言ってたコジローも妙に静かになる。
(え、まさか、まさか…、先生に限っ…でも男は狼って言うし、せんせーもそういう気になることがあって、えっ?今日可愛い下着はいてたっけ?あ、いや、でも初めてだし…。)

「着いたぞっ」
そこは山の展望台だった。
「!!きれいだねーっ。」
「だろっ、こっからなら街が一望できるからな。仕事に煮詰まったりしたら時々来るんだ。さっきの食堂はあそこだ、んで映画館はあの辺りかな…。」
「あれが室江高ですね。…この間試合があったトコは?」
「えーと、あぁ、市民体育館は…こっからだと山の影になって見えないな。」
「で、私のおウチがあるのがあの通り…」
「ほら、今日は晴れてるからな。町戸の方も見えるんじゃないか?」
「んせ…」
「町戸は今日も休みなしなんだってよ、先輩、厳しくしすぎだっつーの。」
「せんせー!!」
「どうした…?」
「私、今日言おうと思ってたの。せんせーを誘ったときから。だから、聞いて、ね。…あーあの、あのね、ずっと、ずっと、…私せんせーのこと…」
(ドキドキして言葉がなかなか出ない。今日はなんだかんだで一日、すっごく楽しかった。もし、成功したら、きっと明日からもっと楽しい毎日になると思う。でもっ…、でももし失敗したら…)
「…れもだよ。」
「…えっ?」
「…俺もだ、そう言った。」
「わっ私まだな、何も言ってないっすよっ?な、何いってんすかエスパーじゃあるまいし…」
「だ か ら 、聞けって。確かにエスパーじゃねーよ?でもおまえのことならわかる。その言葉に対する返事だ。」
「せんせ…」
「かっこいい言葉で決めたかったんだが、こんな中途半端な言葉でしか表せなかった……悪いな。」
「……じゃあここからは、かっこよく決めてください。」
「…あぁ、そうさせてもらおう…。」
そういうとコジローは、さっとキリノのクチビルを奪った…。



次の日。
「おーい、サヤ。」
「なんすか、先生。朝練開始早々、おっきな声ださないでくださいよ。」
「昨日はおまえの映画のチケット使わせてもらった。おかげでいろいろ助かったよ、ありがとな。」
「?え?なに?映画…??」

「サーヤー、聞いてよ、昨日せんせーと映画行ってね、それからそれから…」
「??…?…あたしの知らんトコでいったい何がどーなってんのぉーーっ!!!!」

おしまい