タマちゃんが高校卒業するのと同時にコジローとゴールイン。
   流石に元教師と元教え子なので結婚式はささやかに身内と剣道部だけで。
   盛り上げ役に徹するキリノ。
   そんな二次会の夜、キリノはふらりと外に出た。
サヤ(キリノ……)
   キリノの気持ちを知ってるサヤ、追いかけたいがミヤミヤの絡み酒に捕まっていた。

キリノ「はぁ~…」
ユージ「どーした、キリノ元気ないぞ!……って、コジロー先生風に言ってみたんですけど、似てませんねやっぱり」
キリノ「ユージくん?」
   二人分のジュースを自動販売機で買うユージ
ユージ「キリノ先輩の好きな人、知らないのはコジロー先生ぐらいですよ」
キリノ「へ?えっ!…な、なんのことかなぁ~……あはは」
ユージ「タマちゃんも……キリノ先輩がいるのに、先生と付き合っていいのかな私?って俺に相談したぐらいですから」
キリノ「タマちゃんも?……そっか。アハハハハ、馬鹿だね~別に私の片思いなんだから気にする必要ないのに~アハハ」
   キリノの笑いには力が無い。困ったように頬を掻くユージ。
サヤ「キリノ!」
   ミヤミヤから逃れてきたサヤはキリノを見つける。ユージ、バトンタッチと言わんばかりに入れ違いに戻る。
サヤ「キリノ……」
キリノ「アハハ……サヤにもバレてた?私がコジロー先生のこと好きだってこと……」
   キリノ、涙を流す。サヤ、そんなキリノを抱きしめる。
キリノ「ふぇ~~ん……駄目なのに!私、コジロー先生とタマちゃんを祝福しなきゃ駄目なのに!!」
サヤ「そりゃそうだよ。でもアンタがコジロー先生が好きだったって気持ちも閉じこめちゃ駄目なんだから!!」

ユージ「やっぱりサヤ先輩じゃなきゃ……俺じゃキリノ先輩の心にズカズカ入っていく訳にはいかないもんな」
   会場に戻ったユージ、祝いの席の中心で舞い上がるコジローと寄り添うタマキを自然と視線で追っている。
ダン「ユージ、男ってのはな~流して格好いい涙と、格好悪い涙があるんだぞ~」
ユージ「え?」
   ユージ、自分でも気づかない内に泣いている。慌てて涙を拭うユージ。
ダン「お前は馬鹿だな~」
ユージ「…………うん、そうなのかも知れない」

<三年後>
サヤ「キリノ~アンタはいいわよね~最悪実家に就職すればいいんだから~~」
   大学四年生になったキリノとサヤ。相変わらず仲がよい。
ユージ「よぉぉし、もう一軒いこーーー!!」
後輩1「ちょっと、勘弁してくだいさいよ部長。もう、本当に剣道以外はダラしない人なんだから!」
後輩2「っていうか後輩にお酒奢らせないでください」
キリノ・サヤ「「ユージくん!?」」
ユージ「はへ?」

   住んでいる場所が近い為、半ばユージの後輩達に押しつけられる形でユージを送ることになったキリノ。
キリノ「剣道、続けてるんだユージくん」
ユージ「うぃ~……先輩は続けてないんですかぁ~……」
キリノ「……ウン」
   ユージの部屋に入るキリノ。散らかっている部屋。布団は敷いたまま、カップ麺の空が散乱している。
キリノ「……アンタ本当にユージくん?」
ユージ「ユージですよぉ~中田勇次でぇす~」
   キリノの肩から崩れ落ち、そのまま寝てしまうユージ。キリノ、溜息をついて腕まくりをする。

キリノ「あ、起きた?かってに掃除させてもらってるよ~たはは!いや~私も一人暮らしの男の家にいって何してるんだろ~ね~」
ユージ「……キリノ先輩?あ…そうか、昨日」
キリノ「ホント、高校時代のユージくんからは想像できないだらしなさだよ~これじゃあまるで…まるで……」
ユージ「コジロー先生みたい…でしょ?」
    二人の間に沈黙が流れる。
ユージ「何やってるんでしょうね、俺。今更コジロー先生のマネしたって、タマちゃんは……タマちゃん…は……」
キリノ「ユージくん…」
ユージ「俺、応援してたんですよ、先生とタマちゃんを。だってタマちゃんは俺の幼なじみで、友達で、尊敬できる剣道家で……
     二人が結婚するまで、そう思ってたんです。でも試合で小手打たれた時みたいに、始めは大丈夫なのに、
     段々竹刀を握れないくらいになってくるみたいに痛くて、俺……タマちゃんのコト、好きだったんだなぁ……って!!!」
    ポロポロと涙を零すユージ。拭いもしない。
ユージ「ずっと後悔してて、応援なんかしなきゃよかった。ううん、してもいい、タマちゃんが先生のこと好きでもいい。でも俺はタマちゃんが好きだって
     言えたらよかった!そうずっと胸にしまいながら……でもキリノ先輩に会ったから、思い出しちゃって……格好悪いですね、未練たらたらで」
キリノ「そうやって後悔してるところ、コジロー先生みたい」
ユージ「………」
キリノ「ま、ユージくんは先生と違って剣道打ち込んでるみたいだし、根っこはやっぱりユージくんだよね~」
    キリノ、ユージの家の台所と冷蔵庫を漁り、朝食を作り始める。

ユージ「美味しい……」
キリノ「そりゃ総菜屋の娘ですから!駄目だよ、ちゃんと食べないと」
    キリノのつくった朝食を囓るユージ。懐かしさを覚える。
ユージ「そうですね」
キリノ「あ、そうだ!近くなんだしさ、私ん家に寄ってくれればお総菜とお弁当サービスするよ」
ユージ「はは……変わってませんね、キリノ先輩」
キリノ「そーかなー?変わったよ?……お弁当、作る相手は」
最終更新:2008年04月19日 12:01