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「終わった…な。俺の剣道」

書を認め終えた一人の部屋にぽつり、空しい言葉が響く。
横になった視線の先にあるのは、壁にもたれ掛かるようにして立つ2本の竹刀。
一本はよく見るとささくれ立ち、もう一本は細かなヒビが無数に入っている。
それはそのまま剣道部の、「強さの要」と「心の要」の今を表しているかの様だ。

(……どっちにしたって、もう、全部、終わっちまった。)
珠姫は敗れ、紀梨乃もまた、自分を見放したに違いない。
もはや自分があの部の顧問である意味も、いや教師である意味すらない。――その資格も、もうすぐ、失われる。

こんこんこん。
そんな精神状態のドン底で気付かなかったが、さっきから外でドアを叩く音が聞こえる。
こんな時間に郵便か?勧誘か?いずれにせよ、もう今日は誰のどんな用事も、とりあう気さえ起こらない。
居留守を決め込もうと、電灯のヒモに手をかけたその時。
ノックの音に混じって聞こえたのは、よく聞き覚えのあるあの声だった。

「コジロー先生?居るんですよね?キリノですけど」

―――よりにもよって。
ヒモを持ちかけた手が硬直する。
無理だ。無理だ無理だ無理なんだ!
今更お前に、どんな顔して会えって言うんだ!?
電灯を引きちぎるように消し去ると、そのまま布団に潜り込む。
しかしいくらそんなもので遮ろうとても、外からの声は途切れる事はない。

「居なくても構いませんから… 今日は、すいませんでした。それだけ言えたらと思って」

「あはは…ちょっと、あたしも言い過ぎたかなーって、ね?」

「あたし、ちょっとワガママでしたね、タマちゃんが居なくなるからって、八つ当たりみたいになっちゃって」

「よく考えてみたら顧問のコジロー先生があれ以上の事、言えるわけないのに」

「外山君と岩佐君の事あたしに決めさせようとしたのだって、きっと何か…」

「……違うぞ」
矢も盾もたまらずに布団を飛び出しドアを開くと。
放課後から随分経つと言うのにまだ制服姿の紀梨乃はそこに直立不動のまま、
突然出て来た自分に怯みもせずにじっ、とこちらの目を見据えてくる。
しかし、今の自分には……紀梨乃と目を合わせる事はできない。
反射的に目をそらすが、いきおい、そのまま否定の言葉をつなげる。

「……もう、全部、嫌になったんだよ。休部になろうがなるまいが、どうせ俺は今年でクビだ。
 俺達が勝手に無敵だと思ってたタマだって、あの鈴木リンにはどうやっても敵わない。
 アイツだってそう思ったから部活を辞…」

しかし、そこまででその弱音は遮られた。
気が付くと、目の前の紀梨乃は立ったまま、瞳に涙を一杯に浮かべている。
その表情はあくまで笑顔だったが、まるで今日の昼間のリフレインだ…
こちらの言葉の淀みに気付いた紀梨乃がはっ、と自分の目の下に手をやる。

「……あれ。あれれ?おかしいな、目にゴミでも入ったかな?あはは、ちょっと待って下さいね」

踵を返して屈み込み、取り出したハンカチで目の周りを拭くと再びこちらへ向き直る。
やはり心理的な負い目から、まじまじと見る事は出来ないが……
紀梨乃の瞼は、暗がりの中さえ誰が見ても泣いた後だと分かるほど真っ赤だった。
このまま家に帰ったのでは、親御さんが変な心配をしかねないほどに。
とても目にゴミだとか言う雰囲気ではない。

「お前、もしかしてあれからずっと泣き腫らして?」
「あ、はは、は…やだなあ、そんな事するわけないじゃないですか、あたし部長ですよ?」

紀梨乃がよく口にするこの”部長”と言う言葉。いや、肩書きか。
そして、今日の怒りに任せた言葉の中にもあった、自分の事を”顧問”だと言う紀梨乃。
―――顧問と部長、教師と生徒、大人と子供。
さりげなく、ずっと二人を隔ててきた、互いの心の中にどっかと横たわるこの重石は……
計らずも顧問である事を諦めた片方の自分には、何の障害にもならなくなっていた。

「もう、いいよな、どうでも」
「え?…ん!」

まだ何かを言おうとしている紀梨乃の口を強引に塞ぐ。
そのまま力任せに抱き寄せると、
紀梨乃はその細い腕で多少は抵抗して見せたものの、
すぐにその力は失われた。
少し時間が経ち、ぷは、と唇が離れると、お互いの唇の間に糸がかかる。

「…センセー、いいの…?」
「もう、先生なんかじゃねえよ、俺は。ただの最低野郎だ」

頬を上気させた紀梨乃の、問い掛けになってない問いにそれだけ答えると、
思わぬ出来事に腰を抜かせそうになってるその身体を足から抱え上げる。
そのまま、いわゆる”お姫様だっこ”の状態で奥に敷かれた布団まで紀梨乃の身体を運び、
ゆっくりと横にして寝かせつけ、そのまま上にかぶさり、押し倒した後のような体勢で見下ろす。
いざ、と制服に触れると…紀梨乃の身体がびくんと震える。

「脱がすぞ」
緊張で口が利けなくなっている紀梨乃が辛うじて首を縦に振ると、
それだけ確認して紀梨乃の制服をゆっくりと開いていく。

「……!」

さすがに紀梨乃が恥ずかしそうに目を閉じる。
セーターを脱がせ、制服の前が開くと、紀梨乃のピンク色の下着が露になる。

「かわいい下着つけてるんだな」
冷やかすような言葉にも敏感に反応し、更に顔を真っ赤にさせる紀梨乃。
その一連の愛らしい仕草に思わず一瞬、手が止まる。

(――俺は。本当に、いいのか?)

ほんの数秒の躊躇いに、何かを察した紀梨乃が下からこちらの右手を掴む。
そのままその手を胸に押し当てると、にぱっ、といつもの猫口で微笑む紀梨乃。
その笑顔は引きつって震えていたが、後悔のようなものは何一つも含まれていないように見えた。

「そうだな……今更俺が躊躇ったって、何にもならないもんな」
その言葉にコクリと頷く紀梨乃の、胸に押し当てられた手をそのまま動かすと、
いまさら羞恥に顔を染める紀梨乃の視線の先がその手の動きに移る。
それに構わず、ゆっくりと脹らみに力を加えていく。だが。

「……しかしお前、直に触ってみると意外と無いんだな?」
こちらの手の動きを何か心配そうに見ていた紀梨乃がつい、目を逸らす。
どうやら気にしていたらしい。そう言えばお茶好きのこいつが最近はやけに牛乳を飲んでいたっけ。

「セクハラ…っすよ」

どうにか言葉を搾り出せた紀梨乃を見るに、多少は緊張もほぐれたらしい。
しかし、意外と、とは言っても、高校生にしては十分なほどなのだが。
無心に揉み続けている手をとめると、紀梨乃も訝しげにこちらに視線を移す。

「気にするな」
それだけ言い、今度は下着を少し上にずらすと、胸が目の前に晒される。
その、高校生にしては十分と言える隆起の上に、ピンク色の突起が小さく膨らんでいた。
その突起に顔を押し付け、口を近づけようとすると恥ずかしいのか、少し身体をゆすって逃げようとする紀梨乃。
だがそれにお構いなしに軽く舌先で、つん、と触れると、紀梨乃の体はすぐに反応した。

「んっ……」

背中を少し仰け反らせ、軽く呻き身体を強張らせる紀梨乃。
その身体に舌を伸ばし、乳首をくりくりとかわいがるように転がすと、
紀梨乃の口から、恥ずかしそうに声が漏れていく。

「ぁん……っ!んっ……!」

その声をもっと出させてやろうと、胸に口全部で吸い付くと、体をよじらせる紀梨乃。
更に吸ったり、舌先で転がしたりして愛撫を加えていく。

「んん…っ!んっ、あ、んんっ……んっ、んっ、んんっ!」

そうこうしていると、胸に集中している自分の後頭部にいつの間にか手がまわされる。
その手はこちらの頭を抱きしめると、邪魔をするのではなく、ぎゅっと胸に押し付けてきた。
少し呼吸にむせるが、右の胸をたっぷり虐めると、順次左のほうの胸を咥えこむ。
そして、空いた右の胸の突起を、片手でつまみあげる。

「あんっ! あ、あ、やだっ……ん、んんっ、あ、両方……だめ…っす…」

いやいやしながらも、胸に押し付けられた頭を両手で抱え込み愛しげに撫でる紀梨乃。
頭の後ろの方に触れるその両腕の感覚をひととおり感じた後、
おもむろに胸から口を離すと、紀梨乃の顔へと首を伸ばす。
両方の胸に指を這わせながら、紀梨乃の唇へと自分の唇を重ねる。

「あ、んっ……んむっ……」

紀梨乃の口は初め閉じていたが、手で胸の先を軽くつまむと、すぐにガードが緩くなった。
その隙間から、舌を侵入させて唇を裏から舐め回すと、
紀梨乃のとろりとした甘い唇が、舌に吸い付いてくる。

「あむっ、ん、はあっ……んんんっ……んむぅっ……!」

最初はされるがままだった紀梨乃も、徐々にこちらの舌の動きに合わせて、自分の舌を絡ませる。
ぎこちない動きだが、健気に愛撫に反応する姿は可愛らしくもある。
吸い合う度に、ちゅっちゅうっちゅう…と言う音が部屋に響く。
紀梨乃も必死に舌を動かすが、主導権を握られそうになるとこちらが胸を責め、思うようには動かさせない。

「んんんんぅぅ……んっ、んむっ、あ、あぁ、やっ……んぅんっ! あふっ、あ、はぁ……な、なんか、エロいっすね…」
「エロいことしてんだっつの……緊張感ねえな」
「そ、そりゃ、そうっすけど……んぅ」

まだ、まともに目を見られないこちらより先に、紀梨乃の方が恥ずかしそうに目を逸らす。
何か言いたいことがあるようだ。ちょっと動きを止める。

「先生は、その、あたしとこういう事してて楽しいっすか?」
「……お前、自分の立場分かって言ってるのか?」

どうにも、こいつの前ではペースが狂う。
確か今日って、自分が顧問である事を諦めて、そこにこいつがやって来て、
自暴自棄になって流れに任せてこいつを……その、襲っている、はずなのだが。

「いや、なんだかええっと、その…あたし、サヤやミヤミヤなんかと比べたら…色気とかあんまそんなに、ある方じゃないですし」
「そんな事も無いと思うが……何の話をしているんだ?」

こちらがさっぱり話のスジを読めないでいると、
ひとつ大きな深呼吸をして、意を決した紀梨乃がこちらの顔をじっと見つめたままで切り出す。

「やっぱり一人でとかって、先生もするんですか?」

ぶはっ。吹き出す音が部屋中に響きそうな勢いなのを必死に堪える。
なんでそんな話になるんだ、とでも言わんばかりのこちらの態度に
流石にバツが悪いのか俯いたままの紀梨乃。

「……先生はあたしの事、好きですよね?」
「幾らなんでも嫌いな奴にこんな事しねえよ俺は」
「そしたら……あ、あたしの事もオカズにしてたりとか、そんな事も…な、無いっすよね、あははは」
「……それ、俺が『おう』とか答えたらどうなるんだ」
「…先生の見方が変わります」

あのなあ、とでも言いたくなるような奇妙な問いかけに唖然とするこちらを尻目に、緊張しながらも楽しげな様子。
ある意味紀梨乃のほうが楽しんでいるのではないか、この状況。
そしてさらに。

「だけど、もしそうなら……ちょっと嬉しいかも…」
「な、なんでだよ?普通ヘンタイ!とか思うものなんじゃないのか、そこは」
「そ、そりゃそうなんすけど、他の女の子の事考えられるよりはいいじゃないっすか!……吉河先生とか!」

ここまで来てようやく、なんだそういう事か、と少しは腑に落ちる所があった。
こいつでも人並に妬く事もあるのか、と新しい発見をすると同時に……
自分の態度がこいつに与えていた心理的ストレスの重さに今更ながら驚愕する。
当の自分としては……ただ、黙って頭を撫でる他にどうする術も持たない。

「済まなかったな、キリノ。……本当に」
なでりなでり、と頭から頬にかけてを撫でられると、
紀梨乃もまた目を閉じてその感触に酔いしれているようだった。
そのまま再び、唇を重ね合わせ、横の髪をくすぐっていると、
身体をこちらの胸にもたれかからせる紀梨乃。
そのまま背中から腰へと手を回し、紀梨乃の体を覆う、残りの生地を脱がしにかかる…と、そこにまた小さな抵抗。

「あー、あの、あたし……その…」
「今度はなんだ?」
「れ、練習あったから、汗かいてるかも……シャワーは浴びましたけど…」
「そんなの……」

いじらしいもんだ、とお構いなしにスカートに手をかけ、
ファスナーの位置を探り当てると、そこから徐々に脱がせていく。
引っ張るとするり、と足から脱げ落ちるスカート。
そのまま両脚に手をかけ、身体を下げると、顔を下半身の方へ移す。

「ちょっ、先生、やっぱ恥ずかしい……!」

必死に閉じようとする両脚を腕の力で押さえつけ、
一瞬のスキにその間にある大事な部分に顔面をもぐりこませる。
鼻息がかかり、うっ、と呻いたかと思うと、再び全身を強張らせる紀梨乃。
しかし鼻先に触れる紀梨乃の下着は既に十分湿っていた。

「んんっ……あ、やだっ……は、恥ずかしい……ってば…」

その中心部を、下着の上から舌先でつつく。
下の方を見ずに、手の力だけでこちらの頭を押し返そうとする紀梨乃。
しかし如何せん、そのか細い腕だけの力では何の障害にもならない。
片方の手でそれを撥ね退けながら、もう片方の手で、
下着の上から紀梨乃の秘所を押し込むように力を加えていく。

「んんっ……んっ、あぁ……」

弱々しく声を出す紀梨乃。
その場所のふちをなぞるように、指を回転させていく。

「ああっ、あっ、ああ……んっ……ああっ……あ、ああっ」

押し返そうとする紀梨乃の手と、それを跳ね除けていた自分の手。
いつのまにか握りあっていた二つの手の指先が、そのまま行動を示すようにいやらしく絡み合う。

「んっ……ああっ、あ、うぅ……はっ、はぁっ、あ、んん……」

指を出し入れする度に聞こえる切なそうな紀梨乃の声を聞いていると。
自分の欲望の方にもそろそろ限界を感じ、おもむろに紀梨乃の秘所を隠す最後の布地に手をかける。

「ああっ、あ……う~~…!」

反射的に下着の端を押さえて抵抗する紀梨乃。
だが流石にこんな所で間誤付いてもいられない。

「…じゃあ、俺以外の男に全部見られるのと、どっちがいい?」
「……い、意地悪っすよ、そんなの……」

いい加減こいつのペースでやらされるのもうんざりなので、ささやかな反撃。
ともあれ、お陰ですっかり抵抗の弱くなった紀梨乃の体から、残りの下着を剥いでいく。

「あっ、ああっ、ああ、あぁぁ……」

裸のままの紀梨乃の体が、眼前に開かれる。

「…かわいいって」
思わずもれた本音の軽口に、恥ずかしさの余りしどろに両手をバタバタさせる紀梨乃。
ちょっとかわいそうかなとも思ったが、その隙に紀梨乃の秘所に口を近づける。
そこは、綺麗な桃色のつるんとした肉の襞が重なっていた。
その襞の間を開いて、舌の先を固くして、つんつんとつつきだす。

「わっ!あ、ああっ……や、やだ……なにしてるんすか……?」

その襞の先と後ろも、それぞれ丁寧に指でなぞっていく。
後ろのほうへ指を滑らせていくと、先の後ろの穴に指が当たる。

「やっ!そ、そんなトコ、触ったら、汚い……って、ホントに何してるんすか…!!?」
「ん、お前がいつもやってる事だけど」
「そっちの方がずっとヘンタイですよぉ……」

指を一度引き、その臭いを嗅いでると突っ込みが入った。意外とわがままな奴。
秘所を舌で弄りながら、後ろの窄まりを指で軽くほぐしてやる。

「いぅっ……!あ、ふああっ……あ、ひっ、あああっ……」

そこを柔らかく弄ると、紀梨乃の体からどんどん力が抜けていくのがわかった。
そして、前のほうになぞっていった指も、襞の間の固い部分に先が当たる。
その部分を、人差し指と中指でくりくりと弄り回ると、紀梨乃の体が一際大きく反応する。

「あああっ! あ、ああっ、あ、ああ……そこ、ダメッ……!」

「ここかよ?」
何度か繰り返しその部分を、指で挟むように弄って遊んでやると。

「あっ! ああっ……! やだ、あ、はぁっ……あ、あああっ! あ、あぅ、ん……あ、はあっ……あ、やぁっ!
 あんっ! あ、ああんっ! あ、うぅ……あ、いやぁ……こ、声が……ああっ、あ! あっ!……ひゃんっ!」

「はは、すげえな」
しばらく紀梨乃に愛撫を続けて楽しんでいたが、
もうこちらの欲望も行き場を求めてはちきれそうになっている。
舌を使い愛撫を続けながら、ズボンを下ろして、下着の中から肉棒を取り出すと、
それは紀梨乃の痴態に呼応するかのように巨大に膨らんでいた。

「キリノ」
一瞬指と舌の動きを止め、最後の選択を迫る。

「いまさら聞くのもおかしいんだが……本当にいいな?」
「は、はい……大丈夫、です…!」

流石に顔にはまだ戸惑いと困惑が浮かんでいる。
だけど紀梨乃は、こんな自分をも受け入れてくれた。

「あはは……なんか変っすね、お昼にはあんなだったのに……
 なのに今こんな風に、願い事がいっぺんに全部叶っちゃうなんて……」

目を潤ませながら、なおも笑顔を絶やさない紀梨乃。

「でも、あたし、ヘンかも知れないけど……どこかで夢見てましたよ?……こんな日がくるの。
 えへへ、本当は、もうちょっとドラマティックって言うか、おしゃれーなの想像してましたけど……
 だから……だから、すごく嬉しい……」

そして、精一杯の強がりで笑う紀梨乃をたまらなく可愛いと思うと共に、
こんな形でしかその想いに応えてやれなかった今までの自分が、たまらなくミジメに思えた。
そんなこちら側の逡巡に気付いたのか、一度訝しげに覗きこむと、流れるように唇を合わせる紀梨乃。
一瞬触れて離れただけの、刹那的なキス。しかしその表情には、さっきよりも更に強い光が見て取れた。

「大丈夫、大丈夫……きっとこれからの事だって、全部うまく行きますよ!だから……」
「?」
「だから、これが終わっても、居なくなったりしちゃ、イヤですよ?」
「………」
「これが全部夢だったり、しません……よね?」
「………ああ、夢じゃない」

こちらの気持ちや考えを全て見透かすかのような紀梨乃の言葉に一瞬慄いた後、肝をくくる。

「俺、キリノが好きだよ。いつからかは分からないけど、ずっとずっと、好きだった」
「…はい」
「これからも、ずっと、好きでいる。……それじゃ足りないか?」
「……はい!あたしもっす!」

自分たちを遮る障害は、もはや消え失せていた。
お互いが離れないように片方の手同士を繋ぐと、
もう片方の手で紀梨乃の位置を確認しつつ、その入り口に自身の先の部分をあてがう。
紀梨乃はそれが当たると、逃げ気味に体を動かそうとするが、これは紀梨乃を責めるワケにはいかない。

「いくぞ……」
つぷ……
紀梨乃の中に、ゆっくりと侵入を開始する。

「ううっ……!」

紀梨乃の手に力がこもる。
身長は決して低い方ではないとは言え、
紀梨乃の細い腰から想像される通り、その入り口はかなり狭かった。
少しでも体が逃げると、ロックがすぐ外れそうになる。

「キリノ?大丈夫だからな……」
「は……はいっ」

頷いてはいるものの、紀梨乃はカチコチに固まっている。
それを見ると、あまり緊張させたまま我慢させるのも酷に思い、
少し強引に、手で紀梨乃の入り口を広げて、その中に向けて腰を押し込む。

ずぷ……
一瞬、あうっ、と呻きをあげる紀梨乃。
こちらの先が、なにかに包まれる感触がする。
これが紀梨乃の中か……

「ううっ、うっ、ううっ……」

めりめり……
肉の裂ける感触がして、紀梨乃の入り口が開いていく。
さらにこちらの腰を前に進めると、ようやく頭の部分が紀梨乃の中に収まった。

「ああっ、うっ、ううっ……」
「い、痛いか?やっぱり……」
「い、息できない…かも……」

紀梨乃の表情は苦しそうだ。実際、相当苦しいに違いない。
普段ならやせ我慢する性格がこう漏らすというのは、よっぽどきついのだろう。

「で、でも……やめないでっ……くだ、さい……
 あたし……がんばりますから……お願い……!」

紀梨乃の手にぐっと力が入ると、こちらもその手を握り返す。
ああ、と軽い返事を返した後、再び挿入を再開する。
ずぶっ

「ああっ……かっ、あああっ……!」

頭が入って、中から抜けるという事はなかなったが、それでもなかなか前には進まない。
捻じ込むように前へと体を進めていく。
ちょっと乱暴になるが仕方ない。

「キリノっ……」
「あっ、あああぅっ! あっ、あっ!」

めりめり……
紀梨乃の細い体は、肉体ではこちらを否定しつつ、必死に受け入れようと動いていた。
その体を、大事に、だけど傷つけようと、体を押し付ける。

「キリノっ……キリノっ!」
「あぁっ! あっ…あっ! うああっ……あ、あ、あっ!」

紀梨乃の体の中で、なにかが切れる音がした。
そしてこちらの肉棒が、根元まで紀梨乃の入り口に収まっている。
紀梨乃が初めての経験を終えた証だった。
 
「キリノ……入ったぞ」
「あうっ、は、はい……はいっ……」

紀梨乃は涙を頬に伝わせながら、何度も頷いた。
よっぽど痛かったんだろう。握られたこちらの手にも、紀梨乃の指の痕がついている。

「キリノ……俺たち」
「はい……一つに……なれたんですね……」

紀梨乃は弱々しく微笑む。
まだ痛みが消えていないその体で、精一杯の喜びを表現してくれている。

「じゃあ……動くな」
「はい」

さっき挿入したばかりの部位を紀梨乃の体から引き出すと、
ぬらりと光る愛液に加えて、赤い血液がこちらのモノに付着していた。
紀梨乃の体が傷ついた証拠だ。
ずぶっ

「んっ」

そのまま引き抜いたモノを再び挿入すると、
紀梨乃が息を漏らすように声をあげる。

「やっぱり、まだ痛いよな?」
「は、はい……で、でも大丈夫……だから……」

苦痛に耐えている紀梨乃の表情とは裏腹に、
肉棒は一度目よりずっとスムーズに紀梨乃の中を往復した。
おそらく、紀梨乃の血が潤滑油になっているんだろう。
ずぶっずぶっずぶっずぶっ

「んっ、んっ、んんっ」

紀梨乃が体内を圧迫される感覚に声をあげる。
口をしっかりと結び、耐えているようにピストン運動に合わせて体を揺らす。

「んっ、んぅっ、あうっ、うっ、うううっ」

だが、自分の方は動きを止められそうにない。
紀梨乃の中を往復するたびに、肉と肉がこちらのペニスをぎっちりと締め付けて、欲望を吐き出させようと快感を与えてくる。

「キリノっ、キリノっ……!」
たまらずに紀梨乃の名前を呼ぶと、
それに合わせて、紀梨乃の体も少しずつ動き始める。

「ううっ、うっ、あっ、ああっ……あっ、ああっ!」

紀梨乃と握り合った手の間に、じっとりと汗がにじむ。
いや、手だけではない。自分も紀梨乃も、全身に汗をじっとりと滲ませている。

「やぁっ、あ、ああっ、う、うぅ……あっ、きつ……あっ!あ、あっ!ああっ!
 はぁっ、はぅ、ん……あっ!ああっ!あ、あたし……あ、あっ、なんだか、ヘンな感じ……」

よく見ると汗だけではない。
紀梨乃との結合部分には、ねっとりと別の粘液が溢れ出していた。
ずっぷずっぷずぷっずぷうっ

「キリノ……俺、気持ちいいよ」
「あ、ああっ……うれしい、あ、ああっ!あっ……あ、よ、喜んでくれて、うれしい…っす……ああっ…」

やがてオルガスムは、最高潮に達しようとしていた。
段々と紀梨乃を突き上げる運動が早くなっていく。

「キリノ、キリノっ、俺……好きだから!」
「あ、ああっ、ああっ、あ……あたし、も……好き……ですっ! あ、あんっ! あ、ああ……っ」
 ずっと、ずっと好きっ……でも、言えな…くて……っ!はあっ、はっ、あ、あああっ……
 ぃうっ、あ、くあっ……だ、だから……すごく、うれしいっ……
 あたし……あたし、気持ちいいっ……!」

捻り出すようにしてなんとかその文字列を言葉に表すと、
紀梨乃の腕がこちらの体に巻きついてくる。
そして、こちらの動きに合わせて、紀梨乃も体のリズムを合わせていく。

「キリノっ……俺、俺はっ…!」
「ああっ、あっ、ああっ、あ、あたし……へいき、だからっ……
 つら、くっても……先生がいれば…ああっ…だい、じょうぶっ……だからっ!!」

「ううっ、き、キリノ……もう出そう、だ……」
「ああっ、あんっ、あっ……は、はいっ、だ、出して、いいっす、よ……
 あたし、ぜんぶ、受け止めますっ…か、ら……」

じゅぷっじゅぷっじゅぷっじゅぷっ
二人分の腰の動きが今までで一番激しくなる。
自分の剛直は、今にも欲望を吐き出しそうになっている。

「キリノっ、で、出るぞっ!」
「ああっ! は、はいっ!出してっ…ください!
 あ、ああっ! ああああっ! く、ぅん……っ! あ、あああぁぁぁっ!
 ふああっ、はっ、あうっ! あ、あ、ああ……あんっ! あっ! 出、して……!
 あたしの中に、ぜんぶ……ああっ! あああああああああっ!」

「くっ!」
どくっ! どく、どくっ!
紀梨乃の肉襞に強く引き絞られて、
肉棒はその、たまりにたまった白い液体を紀梨乃の中に全部放出した。

「あっ! あ、ああ……あ、あたしの中に……いっぱい出てる……」

そのまま力尽き、寄り添うように倒れこむと、荒い呼吸が重なる。
――余韻に浸りつつ、といった趣きだったが、紀梨乃の様子がヘンだ。

「……ぐずっ…」
「ど、どうした……まだどっか痛いのか?」

一瞬、紀梨乃がやっぱり後悔してるのかと思って本気で心配する。
だが、そうではなかった。
紀梨乃が縋り付くようにこちらの身体を抱き締める。

「…ううん、そうじゃないんですけど……
 なんかあたし達、別に今なんにもいい事ないじゃないですか。
 それなのにこんな事してて、でも、とっても……本当に幸せで、いいのかなあって……
 それ考えてたら、なんだか泣けてきちゃいまして」
「キリノ…」

紀梨乃はこちらを責めてるわけでは、決して無い。
だが、こいつにこんな思いをさせているのは、常に自分なのだ。
思い返せばIH予選の時ですら、そうだった。自分はこいつの力に、何一つもなってやれない。
今、自分の背中に回されているこの細い両腕に、一体どれだけの負担をかけ続けるのか?

(―――方法は、ある。実際自分はそれを選ぼうとしている。しかし…)

ふと、机の中に封じた書を横目に見やると、
そんなこちらの緊張を察したのか、紀梨乃が抱える力を強める。

「先生は、ここに居ますよね?」
「??……ああ」
「絶対、勝手に居なくなっちゃダメですよ?」
「……ああ」
「絶対に、絶対に…」
「心配すんな。約束だからな」

相変わらず、紀梨乃の目を見る事が出来ない自分にはどんな返事も生返事にしかならない。
いつもの紀梨乃なら、ここで自分の首を捻ってでも真意を訊き出しただろう。
しかし、紀梨乃もまた、普段の状態ではない。
お互いがお互いの事情に踏み込むのを恐れたままで、身体だけは欲望に負けてしまった。
絡み凭れ合わないと立ってさえいられない歪な双樹の様なもの。
どこまで行ってもそれが客観的に見た今の自分たちなのだから。

「……シャワー、借りますね」

自分から作り出してしまった重苦しい雰囲気を振り払おうと、一度場を立つ紀梨乃。
その音だけが部屋中に響く中、様々な思いが押し寄せるように胸を劈いていた。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

「じゃあ……あたし、帰りますね」

少し長めにシャワーを浴び、瞼の腫れも多少は引いた紀梨乃が部屋を出て行こうとする。
部屋の空気は相変わらず、重苦しいままだ。自分の方も、最早それをどうする事も出来ない。
遅いし、送るぞ?というこちらの言葉にも自転車で来ちゃったから、とけんもほろろ。
完全に噛み合わないもどかしさをそのままに、勝手口まで見送る。

「……気をつけてな」
なんとかそれだけ言葉を搾り出すと、
それでも目を合わせられないこちらの首の後ろに手を回そうと、背伸びをする紀梨乃。
必死で強引に自分の方を向かせ、つま先立ちの姿勢で唇を重ねる。そしてそのまま離れると。

「……大丈夫っす!あたしが、何としてでも先生の首を繋いであげますから」
「お前……?」
「じゃあ、おやすみなさい、コジロー先生!」

そう言って去って行く紀梨乃は、全くいつも通りの紀梨乃…に、見えた。

(あいつ……何をするつもりなんだ……?)
しかし今は、こちらもその真意を探るどころではない。
今自分が選ぼうとしている方法と、昼間、紀梨乃が言い残した言葉。

誰がどう見ても、正しい、筈だった”方法”―――自分の退職と引き換えに、全て、帳消しに。
そうすれば……外山と岩佐だってまだ形の上では剣道部に居られる。
二人が剣道への情熱を失っていない、ただバツが悪くて部活に来られないだけなのは知っている。
そもそも自分が居なくなればもっとマトモな顧問が二人を更生させてくれるだろう。
今の剣道部も何の問題もなく存続できる……しかし、それでも。

「―――なんで逃げるんですか?」

その夜は一睡も出来そうに無かった。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

「…っち、またか…」

キュルルルン、キュルルルン。
キーを幾ら回そうにも動かないエンジン。
それはあたかも自分自身の状態を示しているように思えた。
ひとしきり、駆動を諦め、今日一日に思いを馳せる。

(……くそ。どこまで半端なんだよ俺は?)
時間はあれから一日が過ぎた、夕暮れ時。
部活には出られず、けっきょく”方法”が採択される事も無く、こんな時間を迎えてしまった。
紀梨乃は学校を休んでおり、自ら設定した刻限も、とうに過ぎようとしている。
そして未だ引っ掛かっているのは、紀梨乃のあの言葉。

(なんで逃げるんですか、か…)
何故、あの時点で紀梨乃に、そんな事が分かったんだ?
そして自分はいまなお、何から逃げようとしている?
それすら把握できないまま、とりあえず、で今日を終えようとしている今の自分。
何よりも昨日の事。とりあえず、で大切な紀梨乃を、傷付けてしまったかも知れない自分。
どうする事も出来ないジレンマと自己嫌悪が極まろうとしていた矢先。
息を切らせて、自転車からこちらを見ている人影がいる。

「…タマキ」
我が部の紀梨乃ともう一人の「要」、川添珠姫。
しかし、彼女もまた、敗れた事で退部を決意したのではなかったか。
では何だ。どうする事も出来ない自分に、まだ預かっていない退部届でも突き付けに来たのか。

(……勘弁してくれ。)
とは言え、話を聞いてみない事にはどうにも収まりそうも無い剣幕に、
とりあえず車を降り、場所を変えて話を聞く。
しかし、その第一声は意外な物だった。

「上段との戦い方を、教えて下さい―――」

……正直、自分よりも長く剣道をやっている珠姫が、上段との戦い方を知らないとは到底思えない。
川添道場にはブランクのある自分などより、いや自分のブランクなど関係無いほど技術的には上の練習生も居るだろう。
それが何故、自分なんかに。大体、道場主である親父さんは。
今の後ろ暗い気持ちとその逡巡がそのまま言葉に表れる。

「俺がお前に教えてやれる事なんて、無いよ。……お前の方がもう、ずうっと強いんだし、な」
そんな、こちらが並べる通り一遍の否定の言葉にも、お辞儀の姿勢を崩さない珠姫をちらと見やる。
その真剣さに、決してこちらを冷やかしているのではない事は見て取れる、が…

「……長く剣道をやってれば、負ける事だってあるさ。
 どうしても勝てない相手だって、出て来る……
 いいじゃないか部活なんだから、楽しければ」
今の自分が辛うじて掛けられる、精一杯の言葉をつなぐ。
だが、こちらがそこまで言い終わるか言い終わらないかの内に、
お辞儀の姿勢のままタマが返す言葉を向ける。

「楽しければいいんですか?」

一瞬、ここが剣道場で、互いに面を被って相対している時のような気迫をぶつける珠姫に気付いた事が、みっつ。
自分が考えていたような……珠姫が安直に、鈴木リンに「勝てない」と悟るや、退部届を出したのではない、という事。
今目の前に居る珠姫が、おそらく彼女なりに”敗北”と言う事実を持て余していたのだという事。
また、今自分に尋ねているのが「上段との戦い方」等ではなく「心構え」であるという事。
そして……

「負けた事に、ちゃんと向き合いたいんです!」

”向き合う”、ただそれだけの言葉が何度も脳内に響く。
フラッシュバックする、高校時代の光景。
そして、ここ数日の出来事。
自分が、何から逃げていたのか。
全てが氷解して、一つになって行くような気がした。

(キリノは、ここまで全部分かっていたのか…?)
…どちらにせよ。

(……向き合わずに、一方的に逃げるのは、卑怯、だよな)
思わず自分の掌を見る。今まで、剣道に対して、真摯に向き合って来た証がそこにはある。

「そうだよな…向き合わないと始まんねぇよな、剣道は…」
それだけ呟くと、拳をぐっ、と握り締める。
道場へ行くぞ、と言うと、ふっと安心したのかこちらに倒れ掛かる珠姫。
体の疲れもひどいが、心労の方が余程、酷かったのだろう。いずれにせよ無理はさせられない。

「……明日から、向き合うか?」
それくらいの方が多分、自分達の剣道部らしいのだろう。
情けないが自分とても、今から遅れて出て行くのは流石にきまりが悪い。
そう言うと、珠姫も渋々ながら承諾してくれた。
そのまま、疲労困憊の珠姫を車で家の近くまで送り届けると、
ダッシュボックスの中から昨日認めた”書”―――退職願を取り出し、ビリビリに破り捨てる。

(逃げるな、か――キリノ、ようやく俺、お前の言葉の意味、分かったのかも知れない。)
明日、みんなで考えよう。
例えそれが、お前達から剣道を奪う事になっても。
せめて全員が納得できる答えを探そう。
どんな事になっても、その責任は、自分がとってやるから。

……キーを回すと、車のエンジンは一発でかかった。