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572 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2008/02/09(土) 04:14:49 ID:GNlcg+jn
上の剣道部=家族の話してたあたりで思ったんだけど、
もしもコジローがタマ入部でも覚醒せず、ダメ教師のままだったら…
きりのんがものすんげえ可哀想な事になってたような気がした。
と言うわけで以下そんな感じの妄想。

………
「い~んだよ部活なんて面白おかしく適当にやれてりゃ。
 あ、俺今日ちょっと用事あるんで剣道部ちゃんと、やっといてくれな?」
「も~またっすかあ?どうせ今日も先輩と飲みいくとか吉河先生とゲームしたりそんなんじゃ」
「ば、バッカ、ちげーよ!!用事…そう用事だよ!そんじゃな!」
「あっ…もう!」

あたしが部長になって、もう半年が経とうとしている。
なのにこの部は、まだ何の実績も得られてない。

「キリノ先輩…今日も先生は?」
「ユージくん…うん、ダメ。来られないって」
「そうっすか…」
「…あはは、それにしても殺風景だねえ、ここの道場は」

道場の壁は見事にキレイさっぱり掃除されていて、飾る賞状の一枚も無い状態だ。
タマちゃんや皆が入部してくれて、一瞬変わったかに見えたコジロー先生は、でもすぐに元のダメ教師に戻ってしまった。
サヤも復帰してから最初の内は熱心に道場に来てくれてたけど、最近はまた相変わらずの悪癖が顔を出したか、姿を見せない。
ユージくんとダンくんにミヤミヤ、タマちゃんと、後から入部してくれたさとりんも真面目にやってくれてるのに…
肝心の部長のあたしが、この子達を試合に出してあげられない状況を生んでいるのが辛い。
コジロー先生の舵取りを上手くやれないあたしが悪いんだ…

「キリノ先輩、次の練習試合の事とか、先生は…」
「うぅん、なぁんにも。任せる、って…」

ツテも何にも無いあたしじゃ、練習試合なんて組もうにも限界がある。
大会に出るのだって、勿論手続きが必要だ。でも肝心の先生がアレじゃあ…
おかげで大きな目標も見つけられずに、折角みんな才能があるのに
それを磨く機会を与えてあげられないまま、ただ、だらだらと時間を過ごしてしまった。
全部あたしの責任、なんだよね…

「…先輩、ちょっと話があるんですけど…」

慙愧の念に駆られていると、
それまで普通のトーンであたしとお話していたユージくんがやけに深刻な表情をして、立っていた。

………

「…卓球部?」
「ええ、だから卓球上手なキリノ先輩もできたら一緒にって…」

ユージ君の話はこうだ。
ユージ君の説得で剣道を続けてくれてたダンくんだったけど、
そろそろ自分の好きな卓球をやってみたいから自分で卓球部を作ろう、という話になって。
そして一年生のみんなも、剣道部は一旦置いて、そっちに協力するのがもう決まっているらしい。
懇意にしてくれる、熱心な顧問の先生も見付けてて、何でもさとりんのクラスの副担任なんだとか。
ユージ君は最後まで剣道を続けたかったそうだけど、それは川添道場でも出来るし、何より…

「…それに、こんな所に居ても、何も出来ませんよ、キリノ先輩だって…」

その言葉が胸に突き刺さる。
自分がこれまでこの子等に何をして来たか、何をしてこなかったか。
今のこれは、その痛いしっぺ返しを受けているのだと。そんな風にしか、理解できなかった。
でも、今のあたしには、差し伸べられた暖かい手を取る資格は無いし、何よりも。

「…ごめんね、あたし剣道、好きだから」

………

「えいっ!」
「てえぃっ!」
「たぁっ!」

こうしてまた、今度はついに一人きりになった道場に、相手の無い素振りの掛け声が響く。
4月から半年が経ち、もう季節も寒くなりかかる初秋の道場で、
目標もなく、従って理由もなく、あたしはひたすら竹刀を振り続ける。
「剣が何かを教えてくれる」だとかの境地は分からないけど、他にする事も見つからない。
ただ、こうして竹刀を振り下ろすたび、一瞬でも楽しかったあの春先の頃が記憶として甦る気がして。
そんな日が更に何日か続いたある日。その突然の来訪者はけたたましい足音と共にやって来た。

「…こんちゃーすっ!!あれ?キリノひとり?」
「サヤ!?どーしたの?」
「うん久々に剣道やろっかなーってねー …どしたの?」

来訪者―――サヤにこれまでの一部始終を話す。

「そっか…そりゃ大変だったね、キリノ。ご苦労様」
「ううん、全部あたしが悪いんだし…いいんだよ。
 今は、サヤが戻って来てくれただけでもよしとしなくちゃ」
「あたしは、オマケかい…」
「えーっ、そんなつもりじゃないのになあ?ふふ」

久々に交わす、親友との取り止めの無い会話に思わず心が緩む。
嬉しさに思わず泣き出しそうになる気持ちを抑えて。

「ねーサヤ、じゃあ早速稽古しよう!勝負だよ勝負!」
「おーっ久々の実戦だねえ、いいねぇ~」

サヤが倉庫の奥にある自分の防具を引っ張り出す。
あっという間に防具をつけ終わり、正対し、いざ勝負!

「メーーンッ!!小手っ!どぉっ!小手ェッ!!」
「ちょ、ちょっとストップ!キリノぉ!?あたし、ブランクあるんだから手加減してよ~」
「へへへぇ、サボってる方が悪いもんねっ!」
「むきぃぃぃ、もう絶対サボらないよ、キリノに勝つまでは!」
「…そうだよ!ずっと一緒にいてよね!?」
「それって、負けないって事!?くっそぉ~絶対勝ってやるっ!」

――――うん、大丈夫。
もし、また一人だけになってしまっても。
サヤがいつか帰って来てくれて、こうして一緒に練習できるなら。
取り敢えずは、それがあたしにとっての剣道部って事で、あたしは大丈夫。

「たははは…つくづく、”待つ女”って奴なのかもねえ、あたしゃ」

一人ごちるあたしを訝しげに覗き込むサヤ。

「ん?キリノ、松がどうかした…??」
「何でもない何でもない…よ~しもう一本いくよお!」
「おおぅっ!」

終わる