ソビエト社会主義共和国連邦の戦術機

■ソビエト社会主義共和国連邦の戦術機■
自国領土に多数のハイヴを建設され撤退を余儀なくされたソ連の事情はヨーロッパ諸国のそれに近く、戦術機の運用思想も同様の方向(平野部での密集近接戦およびハイヴ攻略)に基づいている。中でもソ連機の特徴の一つとして挙げられるものが、機体の各部にスーパーカーボン製ブレードを装備している点である。これはハイヴへの突入と、その状況で予想される密集状態でのBETAとの近接戦闘を重視していることの証明である。またBETAとの接触を想定してフレームも強化されている。

ミコヤム・グルビッチ設計局

MiG-21 バラライカ Балалайка (F-4R)


 米マクダエルF-4ファントムのソ連ライセンス生産機F-4Rの現地改修機。
ソ連はその国状から、より高い近接格闘戦能力を持つ戦術機を必要とし、F-4Rを徹底的に軽量化、機動力と運動性が強化されたMiG-21が完成した。
F-4Rとの主な相違点は、頭部モジュールの設計変更、頭部メインセンサーを防御するワイヤーカッターの追加、肩部装甲ブロックの小型化、大脚部装甲の簡略化、脚部および腕部の再設計、跳躍ユニット尾翼形状の変更である。
特に、頭部モジュール・メインセンサーカバー先方に装備された防護用ワイヤーカッターは、ソ連製戦術機の特徴として、ミグ、スフォーニ共に、以降の全てのソ連製戦術機に採用されている。F-4をベースにしているとはいえ、その操縦特性には大きな違いがあるため、通常、F-4からMig-21への機種転換には最低でも1日を要すると言われる。
バラライカはロシアの弦楽器で、その三角形の胴体から三角翼機にしばしば使われる。
1975年、配備開始。

F-4R

F-4のソ連ライセンス生産機。補助腕と副腕の構造が簡略化されるなど、生産性を第一とした改修が行われている。一方で、戦車砲を戦術機の兵装として転用するために主腕が強化された(2008年発売のTE総集編Vol.1より)

アメリカが開発した人類初の戦術機、F-4ファントムのソ連への供与バージョン。寒冷地用の改修が行われている。対BETA戦初期におけるソ連軍の主力戦術機として活躍したが、近接格闘能力の不足により、無為に消耗を重ねることも多かった。東欧諸国への配備は1975年以降となったが、これはソ連がアメリカの兵器であるF-4Rの東欧配備に政治的な懸念を感じたことが原因と言われている。(シュヴァルツェスマーケン 隻影のベルンハルト 第二巻「世界設定」より)

MiG-21bis

MiG-21の最終生産型。

MiG-23 チボラシュカ Чебурашка


F-4ファントムベースのMiG-21バラライカに高機動格闘戦能力を付与するため、ミコヤム・グルビッチ設計局が独自に各部を再設計し、実用化したソ連初の純国産戦術機。
跳躍ユニットの可変翼機構など、意欲的な設計が採用されており、その殆どが米国由来技術の模倣でありながら、準第二世代性能の獲得に成功している。
しかし、前線での整備性においてMiG-21に劣るため、稼働率が著しく低く、衛士の評価も芳しくはなかった。ソ連政府は早々に再設計型の開発に着手すると同時に、応急処置的な改修を施した配備済みの機体を政治的影響力を維持する目的でアジアやアフリカへ安価にて提供、その後開発された発展強化型であるMiG-23MLD、MiG-27アリゲートルを自国の前線へと配備した。
第一世代機と第二世代機の双方の特徴が見られる過渡期的な機体設計。
あらゆる面でF-4の意匠を色濃く残していたMiG-21に比べ、独自の設計思想による軽量化が成されている。
そのサイズや機体特性から考えればむしろF-5に近く、ミラージュⅢなどのF-5派生機の影響も受けている。
密集近接戦において頭部メインモニターを守るワイヤーカッターを装備。
前腕部外縁にはナイフシースがマウントされている。
1980年、配備開始。
TG連載時は、名称がスピオトフォズだったが、文庫化に伴いチボラシュカに修正された。
Q.チボラシュカってなんですか?
A.「ぱったり倒れ屋さん」 という意味

MiG-23MLD

MiG-23の発展強化型。

MiG-27 アリゲートル Алигатори


第一世代戦術機の域を脱することはできなっかったMiG-23チボラシュカの発展強化型戦術機。
そのほとんどが新設計の部品に換装された事から独自の制式番号が付与された。
MiG-23と比較して、前線での整備性や稼働率に加えて、機動性、運動性においても格段に向上しているが、総合性能は標準的な第二世代水準の範疇に止まり、実戦配備時には既に旧式化していた。
スフォーニ設計局のSu-27ジュラーブリク、ミグ設計局の新型機であるMiG-29ラーストチカが登場するまで、MiG-25スピオトフォズMiG-31ブラーミャリサと共に、実質主力としてソ連軍を支えた機体であり、2000年の段階においても戦術機配備数の約40%がMiG-23/27シリーズで占められている。
機体を構成するパーツの9割を再設計した本機だが、MiG-23との外見上の差異は殆どない。
機動性の向上により、頭部ワイヤーカッターは小型化され、また、通信や探知識別能力の向上のため、センサーマストは大型化されている。
ナイフシースも大型化され、刃渡りの長いマチェットタイプの近接戦用短刀が納められている。
アリゲートル は露語でアリゲーター(アメリカ鰐)のこと。
1983年、配備開始。

MiG-27D

MiG-27の改修型。

MiG-25 スピオトフォズ Спирт-Воз


MiG-25スピオトフォズは、ミコヤムグルビッチ設計局(ソ連)が開発した第2世代戦術機である。
ミグ設計局は、マクダエル社(米国:後にマクダエル・ドグラム)製第1世代機であるF-4ファントムのライセンス生産から得たノウハウを元に、整備性と近接格闘戦性能ではF-5フリーダムファイターを参考としながら、ライセンス生産機F-4Rの独自改修型であるMiG-21バラライカの開発に成功した。
主力兵器の旧敵性勢力支配を嫌ったソ連政府の強い後押しを受け、ミグ設計局はそれ以降も基本思想、基礎技術をマクダエルのそれと共有しながらも、第2世代機であるMiG-23/27の独自開発を進めた。だが、根本的な開発基礎技術の不足、相次ぐ戦線後退によるインフラ喪失の影響から、完成した機体は常に西側主力機に及ばない性能に止まる。折しもアメリカでは、LWTSF計画(F-16・F-18の開発)に続き、第3世代機の開発(ATSF計画)が開始されており、焦るソ連もそれに引きずられる形で先進戦術機開発計画(MFPTI計画)に着手。支援砲撃能力と高速突撃能力を有する自己完結型ハイヴ攻略型のYe-155(後のMiG-25)と、強力な中、密集近接戦能力を持つ軽量高機動型多任務機9.12(後のMiG-29)という、ソビエト版Hi-Low-Mix構想が始動した。
だが、高度な要求仕様を適える開発技術は元より無く、予想通り計画は難航。絶望的な技術格差に業を煮やした共産党政府は、アメリカの第2世代技術を研究するため、各国の前線からF-15の残骸を秘密裏に回収・集積し、F-4からMiG-21を生み出した流れと同様に、F-15をソビエト独自の運用思想を元に再設計し完成に漕ぎ着けた。MiG-21に続く本格戦術機として完成したYe-155は、MiG-25の制式番号を付与され、1987年に前線配備が開始された。
MiG-25の仕様要求は、核兵器運用を前提とした支援砲撃と高速突撃性能を活かしたハイヴ攻略能力であり、設計母体であるF-15(中近接レンジでの機動砲撃主体)のそれとは大きく異なる。大型の核弾頭誘導弾を携行するために強化された大出力跳躍ユニットと、搭載核兵器を用いた広域面制圧により戦域を直線的かつ最短距離で突破、地下茎構造に突入後は核弾頭弾の波状攻撃によって短時間でハイヴ制圧を行う、というものであった。そのため、損害が大きい近接格闘戦対応能力は殆ど考慮されず、機体はF-15より約20%大型化された。これは、ハイヴ周辺戦域及び地下茎構造にひしめくBETA群を突破するための前面装甲と機体耐久性(両前腕部のハードポイントには専用設計の多目的増加装甲が装備される)高速航行能力と航続距離の延伸が追求された結果である。
ペットネームの「スピオトフォズ」とはロシア語で「アルコール運搬機」を意味する。これはMiG-25初の実戦部隊運用の際、その任務が事実上”核を用いた特攻”であることから、前線指令であるアルセニー・ボグダーノフ中将が、出撃する衛士になけなしのウォッカをすべて振る舞ったことから命名された。だが、その後も作戦内容に関わらずMiG-25の生還率は非常に低く推移したため、ペットネームの由来は「泥酔しなければ乗れない機体」だとする俗説が定着。中でも空軍出身衛士の間では、ソ連軍のIBCM(大陸間核弾道弾)SS24にちなんで「SS25」と揶揄されている。

Ye-155

MiG-25の試作機コード。支援砲撃能力と高速突撃能力を有する自己完結型ハイヴ攻略能力に特化した大型機として、各戦線から無許可回収したF-15の残骸から得た技術を基に開発が進められた。

MiG-31 ブラーミャリサ Пламя-Лиса


MiG-31ブラーミャリサ(Пламя-Лиса:炎の狐)は、ミコヤム・グルビッチ設計局(ソ連)が開発した第2世代戦術機である。
長引く劣勢による衛士の激減に困窮した軍部の要望から、ソ連首脳部は、核運用を基幹とする対BETA戦略の見直しを図り、より生存性の高い機体の開発を国内の各開発局に指示した。MiG-25をベースに、核弾頭誘導弾に代わり、AIM-54フェニックス(アメリカ製の対BETAクラスターミサイル)の運用を前提とした強化型、MiG-31の開発を開始、西側技術の導入もあって改修は順調に推移し、1987年には実戦での部隊運用が始まる。原型機とは打って変わり、そのしなやかな運動性と火力を評した前線衛士によって、ロシア語で「炎の狐」を意味する「ブラーミャリサ」のペットネームが与えられた。
AIM-54運用に伴うアメリカ製アビオニクスへの換装は、探知能力などの電子戦能力だけに止まらず、即応性を始めとする機体性能そのものに劇的な向上をもたらした。機体の性能向上と多任務化に伴う搭乗衛士の負担を減らすため、複座型管制ユニットを採用。後部座席に火器管制専任衛士を配置し、攻撃の精密性を高めている。また、新開発の軽量複合装甲を採用したことにより機体重量が大幅に軽減。運動性は約40%向上し、原型機の利点である長駆侵攻能力、高速直進性、高い兵装搭載能力に加え、結果として高度な近接機動格闘戦能力をも獲得するに至り、その実戦生存率は西側第2世代機の水準に達した。
本格第2世代機性能を発揮するソ連初の戦術機となったMiG-31だが、オルタネイティヴ第3計画の作戦原型機選定に於いてF-14に敗れ、前代未聞の「計画主導国製装備の選定漏れ」という屈辱に濡れた。確かに個々の数値・性能では劣るものの、AIM-54の装弾数はF-14に比して4発多く、機体の調達コストは遥かに低いことから、要求仕様に総合的に照らし合わせれば必ずしも明確に劣っているとは言えず、国連の強圧的な事態収束、その後のソ連軍装備調達に於けるスフォーニ設計局の躍進(F-14AN3の保守整備を担当)などから、MiG-31不採用裁定の裏には極めて政治的な思惑があるとの疑惑が持たれている。

MiG-31M フォックスハウンド Foxhound

MiG-31の西側改修機。

MiG-31SM フォックスハウンド Foxhound

MiG-31の西側改修機。

MiG-31 AN3(仮名)

オルタネイティヴ第3計画(AL3)の進行に有効な戦略強襲偵察機として、ソ連が提示したMiG-31改修案。ハイヴ突入能力と防御力以外プラス評価がなく、逆に機動性と運動性の不足による生還予測が著しく低いことから却下された。

MiG-29 ラーストチカ Ласточка

ミコヤム・グルビッチ設計局が開発した第二世代戦術機。
Su-27と同時期に開発され、それまでのソ連機同様高い密集格闘戦能力を誇る機体であったが、ペイロードが小さく、連続稼動時間が余りに短い事が災いし、主力戦術機の座を逃してしまった。しかしながら、Su-27ジュラーブリクとともにHi-Low-Mix構想のLowを構成する機体として主に極東地域に配備されている。頭部モジュールのワイヤーカッターや肩部ブレードベーン、前腕部モーターブレードなどSu-27と共通する装備を多く使っているほか、下腿部前縁にも大型モーターブレードが装備されている。
F-16やF-18に匹敵する総合性能を持ちながら、近接格闘戦では上回るとの高評価により、コストパフォーマンスが高い機体として世界各国(東欧社会主義同盟や東ドイツなど)で正式採用されている。さらに、『プロミネンス計画』に於いては、東欧州社会主義同盟所属のグラーフ小隊によって強化型であるMiG-29OVTの開発試験が行われている。
ラーストチカは露語で「燕」のことだが、女性に対する優しい呼びかけとしても使われる。
対戦車ロケットに対する散弾防御システムを装備するが、これが標準装備なのかAH用装備なのかは不明。過去にサンダーク中尉(当時少尉)が搭乗していた機体。
1994年、配備開始。

《9・12》

MiG-29の試作機コード。強力な中・密集近接格闘戦能力を持つ軽量高機動な多任務戦術機として、諜報活動で入手したYF-16/17のデータを基に開発が進められたが難航。Su-27の制式採用によって開発中止に追い込まれるが、そのSu-27の初期トラブルからチャンスを掴み、スフォーニからの技術提供を得て、試作機完成に漕ぎつけた。

MiG-29M

準第三世代性能へアップグレードした機体。競合相手のSu-27M2(Su-37)に敗れ、以降MiG-29の国内調達は打ち切られた。

MiG-29OVT ファルクラム Fulcrum


MiG-29の発展型の概念実証機。MiG-35として実用化された。
ノースロック・グラナン(米)との公式技術提携によって大規模改修されたMiG-29OVTは、『東の鷹』とも呼ばれ、F-15・ACTVの好敵手として、『プロミネンス計画』を象徴する成功例のひとつともといえる機体である。
尚、西側企業との正式な技術提携によって改修された機体の愛称はNATOコードで称するのが通例であり、MiG-29OVTは『ファルクラム』と呼ばれている。
MiG-29からの主な改修点は、機体の5%大型化による稼働時間の延長、アビオニクス換装とOBL化、スラスターの増設による高機動化、ブレードベーン形状の変更、出力強化型主機への換装による跳躍ユニットの大型化などである。

MiG-35 (MiG-29OVT)

MiG-29の発展型であり、MiG-29OVTは、概念実証機。機体を拡張してペイロードを確保、主機も効率の良いものに変更した事で、連続稼働時間の短さを克服している。更に、跳躍ユニットに三次元ノズルが組み込まれており、機動力ではSu-37を上回る。制式仕様のMiG-35は第三世代機に分類され、OVTの基本仕様に加え、機体に対してやや大型のスーパーカーボン製ブレードが装備されている。ソ連軍主力装備の座をかけてSu-47との比較試験が行われている。

プロジェクト1.42/1.44 Проект1.42/1.44

1984年、ソ連軍の多機能前線戦術機計画(MFPTI=МФПТИ計画)に応じミグ設計局が開発を始めたのがプロジェクト1.42である。MiG-23/27が、第2世代戦術機としては凡庸な性能に留まった失敗を挽回するべく、米国のATSF計画機に対抗可能な第3世代機開発計画として開始され、1994年には、概念デモンストレーター機として1.44が試作された。1.42と1.44は共通点が多いものの、1.42はよりステルス性を考慮された機体設計であると言われている。現時点では詳細は不明な点が多く、制式採用されるかも不透明である。

スフォーニ設計局

Su-11

Su-11は、F-4Rの格闘戦性能と量産性に不満を持ったソ連軍首脳部のオーダーにより、スフォーニ設計局がF-5をベースに開発したソ連初の純国産戦術機、になる予定だった。"F-5R"という継承が存在する程の完全なコピー機でありながら、オリジナルに比べ連続稼働時間、兵装搭載能力の何れもが劣っていたため、またミグ設計局が独自に改修・再設計を施したMiG-21の生産が優先されたため、制式番号を付与されながらも量産に至らなかった。LD1の戦術機開発系統図では、F-4ベースとなっているが、それは間違い。

Su-11TM

Su-11TMは、ソビエト連邦のスフォーニ設計局がF-5をベースに開発した第1世代戦術機である。
ユーラシアを北上しながらソビエト領を徐々に蝕むBETAの進行に備え、ソ連首脳部は1974年から翌年にかけてF-4R(米・マクダエル・ドグラム)を緊急導入した。だが開発間もないF-4に、導入国の運用事情に合致した仕様を準備することは不可能であり、制式番号にロシアを表すRが付いていても、それは単なる寒冷地仕様に過ぎなかった。広いユーラシア中央部の戦場における中長距離の機動砲撃戦に関して、F-4Rは軍首脳部に高い評価を得たが、将来予見されるモスクワなどの主要都市防衛戦で重視される近接格闘戦能力の評価は著しく低かった。また、新概念兵器のため整備環境の構築と人材育成が後手に回り、前線での稼働率は日を追って低下していった。ソ連首脳部はアメリカの協力を得ながら生産インフラの整備を進めていたが、それが実稼働するまでは戦力増強を完成機の購入に頼らざるを得ず、F-4の弾数が世界的に不足している状況ではそれすら侭ならなかった。ソ連首脳部は軍部と協議の上で重装甲のF-4を諦め、より安価で軽装高校機動のF-5導入に活路を見いだそうとした。だが、完成を前に西側諸国からのオーダー分で生産枠は既に充たされており、アメリカ政府の高度な政治判断によって、運用試験中の先行量産型1個中隊12機が急遽ソ連に引き渡された。ソ連首脳部はこれを前線に配備せず、スフォーニ設計局に引渡し、ソ連初の純国産戦術機誕生を実現するための糧としたのである。同設計局は軍の要求仕様を反映しながらも、早期に生産ラインに乗せるべく改修は小規模に留めて開発を進めた。

だが75年末、F-4Rをベースに開発が先行していたMiG-21(ミコヤム・グルビッチ設計局)が実戦配備となり、ソ連初の国産戦術機という栄誉を逃す。焦燥したスフォーニ設計局は開発期間をさらに圧縮し、翌年末に量産試験型のロールアウトに漕ぎ着ける。高価なMiG-21の不足を補い、より格闘戦に優れた安価な機体を渇望していた軍部と首脳部は、早々に制式番号を与えるほどの厚遇を見せ、期待の高さを示した。だが、性能評価試験でその態度は一変する。関係者に"F-5R"と揶揄されるほど変更点が少ない機体でありながら、原型機と比して連続作戦稼働時間が短く、兵装搭載量も劣っていたのだ。量産見送り後もスフォーニ設計局は独自に仕様の変更や改良を進め、ことある毎に再試験を申請し続けた。だが二度目の評価試験が行われることは遂になかった。76年以降、ソ連軍首脳部はMiG-21の性能にある程度満足しており、その生産に集中したい考えだった。スフォーニ設計局は第1世代戦術機開発を放棄し、第2世代機の研究にシフトする。これにより、Su-11は、制式番号を与えられながらもソ連軍機として一度も戦場を駆け巡ることなくその生涯を閉じた。
だが、Su-11は第2世代機研究用のテストベッドとして中期型Su-11TMをベースに開発が続けられ、戦場での運用テストなど過酷な運用試験を精力的に継続し、その後のSu-15、Su-27開発に繋がるスフォーニ設計局の技術力向上と経験蓄積に大きく貢献したのである。

主な仕様として一番印象に残るのは頭部モジュールで、密集格闘戦を想定し前方に向けて配されたセンサーマストであろう。近年のロボット物としても異質と言えるデザインである。(他作品で言えばアニメ版デモンベインのアトランティスストライク時における頭部ブロック変形時のような印象といえば理解してもらえるだろうか)
伝統のワイヤーカッターも装備しており、Su-15に繋がる印象的な配置との事で、Su-15も同機と(ある意味)似たデザインなのかもしれない。
胸部ブロックは側面に各種モジュール装甲(通常装甲から重装甲、予備弾倉コンテナなどのバリエーション在り)を装着できる仕様となっており、ミッションに応じた機体重量と装甲値の選択が可能となっている。また、機体の形状にMiG-21的アプローチがなされており、これはSu-11の量産を同機によって葬られた衝撃の大きさと、「ライバルでも良いものは学ぶ」というスフォーニの謙虚と真摯な姿勢を雄弁に物語っている。
肩部装甲ブロック及び上腕外縁部には80年に最終型で実証実験されたカーボンブレードが装備されており、これは後のSu-27に繋がる固定武装の概念がこの頃から既に研究されていた事実。それこそがスフォーニの先見性の証左だろう。ソ連の状況を鑑みれば、上腕外縁部の複雑な短刀展開機構の排除はメリット以外存在しないのである。

Su-15

Su-11量産キャンセルの反省を踏まえ、汎用総合性能の強化を図った機体。設計の全面改修によってF-5に勝る格闘戦能力と連続稼働性能を獲得したが、最後の欠点を克服するための量産試験段階でMiG-23の電撃的な制式採用により、Su-11同様、制式番号を付与されながらも受注には至らず、また「ソビエト初の純国産戦術機」という栄誉も得られなかった。その結果、財務、技術の両面で行き詰ったスフォーニは、西側の技術獲得に活路を見出し、当時マクダエルの後塵を拝していたアメリカの兵器メーカー・グラナンに接触。同社による水面下での技術提供(主にF-14、ノースロックとの合併後はF-18も)の結果、Su-27を開発し、遂に念願の主力戦術機の座を獲得するに至った。

Su-27 ジュラーブリク Журавлик


第二世代戦術機。BETA大戦開戦以来、米国製戦術機の改修版で戦局に対処してきたソ連軍であったが、米国との戦術機運用思想の違いから次期主力機の選定が難航、結果的に軍の決戦兵器としての要求仕様を満たす独自戦術機の開発を決定した。Su-27の開発に当たっては、米国の主力機開発の潮流から外れたノースロック・グラナン社(米)の技術提供を秘密裏に受けているため、複座型の存在や機体レイアウトなど、F-14トムキャットF-18ホーネットとの共通点が多く、事実上の後継機といっても過言ではない。内部フレームまでF-14と酷似しているという噂まで存在する。その後もスフォーニとノースロック・グラナンの良好な関係は続いており、Su-37への改修に際して第三世代機動実験機・X-29(グラナン:当時)の実験データが流用された事は、兵器産業関係者の間では公然の事実である。
Su-27は高い運動性と近接格闘能力が最大の特徴である。地上あるいはハイヴ内での密集戦を想定し、肩部装甲ブロック両端のベーン(×2)の他、膝及び下腿前縁、前腕部モーターブレード外縁の各所にスーパーカーボン製ブレードエッジを装備している。この画期的な固定武装は実戦に於いて非常に有効であったため、以降ソビエト製の標準仕様となった。その反面、無茶な要求仕様を力業で実現させたため、配備当初はトラブルが絶えず、前線の衛士には不評であった。
ジュラーブリクは露語で「鶴」を意味するシュラーブリの指小形。
実機はともかく、本機を「小さい」「可愛いい」と名付けるセンスは侮れない。
1992年、配備開始。

Su-27SM

それら諸問題は段階的に解消され、最新改修型であるSu-27SMに於いては「F-15(ボーニング)に勝るとも劣らない」との高い評価を得るに至った。だがその当時、西側諸国では既に準第3世代戦術機への機種転換が始まっており、焦ったソ連軍首脳部はスフォーニが技術検証目的に独自開発していた、準第3世代戦術機・Su-27M2(西側評価は2.5世代)に急遽Su-37の制式番号を与えて制式採用し、Su-27の予定調達数を大幅に削減した事から、軍関係者の間では悲運の戦術機として記憶される事となった。Su-27には前腕部のモーターブレード(x2)、肩部装甲ブロック先端にマウントされた二振(x2)のスーパーカーボン製ブレード等、多くの固定武装が装備されている。運動性と格闘戦能力の重視というソビエト機に於ける超近接戦思想が色濃く反映されていることが覗える。Su-37にある腰部装甲前面の噴射ノズルが本機ではまだ採用されていない。両機の“機動性の差”と“開発の経過”を見て取れる箇所である。本機の跳躍ユニットには、初期型にはない吸入口側面の前翼型ブレードが実装されている。これはSu-27M2/37での運用実績が良好だった為、本機Mにも反映された。
http://www.total-eclipse.jp/te/mechanics10.html

Su-27M2

スフォーニが技術検証目的に独自開発した準第3世代戦術機。運動性能を強化した実証試験機で、後にSu-37として制式採用された。

Su-27SK

Su-27の輸出仕様機。

Su-32

MiG-25/31の更新機。
F-14と同様の長距離制圧誘導弾を運用可能。実機の愛称プラティパス(英語:Platypus)はカモノハシの意。ロシア語だとウツコノス(Утконос)。

Su-33

海軍仕様。戦術機母艦運用を前提とした艦載型。

Su-37 チェルミナートル Терминатор


準第三世代戦術機。米軍呼称はジュラーブリク。チェルミナートルはSu-27と区別するためにNATOがつけた名前。
Su-37は、ソビエト連邦軍の第二世代機・Su-27を準第三世代仕様にアップグレードした戦術機である。通常戦闘からハイヴ突入戦までを視野に入れた全戦局での運用が可能な多任務戦術機として開発されたSu-27の設計を継承し、近接格闘戦能力と瞬発機動力の更なる向上に重点を置いた強化改修が施されている。固定武装も同様で、肩部装甲ブロック先端に4振(x2)、膝部装甲ブロック前縁に1振(x2)のスーパーカーボン製ブレードがマウントされており、ソビエト機の特徴である前腕部のモーターブレード(x2)と併せ、超近接戦仕様となっている。
攻撃的な印象を強調する肩部装甲のスーパーカーボン製ブレードは、大規模BETA集団との混戦状態を想定したもので、多くのハイヴを抱えるソ連の国土奪還という悲願が色濃く反映された設計といえる。密集近接戦を想定した設計は、欧州各国の第二世代機にも見受けられる特徴である。
腰部装甲前面のノズルに推力を逃がす構造によって逆噴射機構を廃した本機の跳躍ユニットには、噴射方向制御パドルではなく、従来型の噴射ノズルが採用され、信頼性と整備性の両立が考慮されている。
本機が装備する突撃砲は、西側のものと同様36mmチェーンガンと120mm滑空砲で構成されており、使用する砲弾も共通である。各所に"AK-47"を彷彿とさせるそのデザインがこの機体の出自をより強く主張している。
1997年、配備開始。

Su-37UB


Su-37に複座式管制ユニットを搭載したタイプ。火器管制処理などを分担して
衛士の負担を減らすことを狙っている。
これは、複座で運用することを念頭に置いて開発された米製戦術機F-14及びF-18の影響(技術流入)が
あると実しやかに語られている(作中で発言したのはヴィンセント)。
『トータル・イクリプス』にて、"紅の姉妹"ことイーニァとクリスカが搭乗する機体である。
http://www.total-eclipse.jp/te/mechanics05.html

Su-37M2

第二世代戦術機Su-27を準第三世代性能(西側評価では2.5世代)に改修した機体がSu-37である。改修では特に格闘機動性能に重点が置かれ強化されたが、最新生産型のM2では射撃管制能力も大幅に向上されている。技術的な開発系譜は西側の軍関係者からはF-14F-18の直系に分類されており、両機と同様、複座式管制ユニットへ換装した機種が(Su-37UB)が存在する。尚Su-37はスフォーニ社が独自に第三世代技術研究のために製作した実験機Su-27 M2が急遽Su-37として制式採用された経緯から、Su-27の愛称である“ジュラーブリク”の名が継承されているが、NATO関係者が識別のため付与した“ターミネーター”の俗称がソ連軍に逆導入され、そのロシア語読みである“チェルミナートル”が定着しつつある。三次元起動が取りにくく死角も多いハイヴ内ではBETAとの近接戦闘の頻度が上がる。そのため、近接格闘戦能力重視というSu-27の開発コンセプトはキープされ、腕部モーターブレードが継承された。また、肩部装甲ブロックのスーパーカーボン製ブレードベーンはSu-27の倍、四振に強化されている。また、跳躍ユニットに従来型の噴射ノズルを採用するなど、整備性や信頼性も向上させている。射撃管制コンピュータの強化に伴い、頭部センサーマストが強化型に換装されたことにより、通信出力やレーダー等のセンサー機能も性能が大幅に向上している。
http://www.total-eclipse.jp/te/mechanics11.html

Su-47 ビェールクト(ベルクート) Беркут


(右はマブラヴ ディメンションズ版)
スフォー二設計局が独自開発した第三世代局地戦術機。
Su-37をベースに、ハイヴ攻略・制圧戦における密集格闘戦を主眼に再設計が施され、X-29の面影を色濃く残しながら、究極の機動近接格闘性能を追求した強化改修機。
近接戦性能向上を図り増設・大型化されたスーパーカーボン製ブレードベーンにより制御困難になった空力特性を補佐するため、西側最新アビオニクスの導入とOBLへの換装が施されている。結果としてその処置が、高効率・高出力の跳躍ユニット主機との相乗効果を生み、三次元多角形機動とも言うべき驚異の運動性能を獲得した。
また跳躍ユニットには前進翼が採用され、これも運動性能の向上に一役買っている。
加えて、新設計の大型主脚の採用で連続稼働時間も30%増加している。
本国でMiG-35との比較試験が行われており、また2001年の時点で第43親衛戦術機甲師団へ配備が進められている。
名称は露語でイヌワシのこと。
愛称はオルタ本編及びLD1・LD3ではベルクート、TE・TSFIAではビェールクトとなっている。基本的にロシア語なので発音が難しく、実機でも複数の呼び名がある。なお画像に関しては後述のSu-47pzX1の物を使用している。
『マブラヴディメンションズ』(旧『イモータルズ:マブラヴ オルタネイティヴ』)では、ゲームオリジナルのGSh-40近接戦兵装を装備しているイラストが公開された。

Su-47E


最新鋭戦術機Su-47をベースに強化改修されたП3計画専用の実証実験機。
2001年10月にソ連軍中央戦略開発軍団・331特殊実験開発中隊がアラスカ・ユーコン基地に於いて運用試験を開始している。なお、TE初期案ではクリスカが乗っていた同機をユウヤが使用する予定で、それをベースにした約15分もの新作アニメがPC版に搭載予定だったが大人の事情で泣く泣くカット。ただし作業そのものは良好だったようで、監督も決定し、字コンテ(俗に言うプロットと考えればいい)も制作され、絵コンテにする段階まできていたようである。絵コンテそのものはなかったが、LD9にてそれっぽいもの(と表現するしかないもの)が公開されている。もしアニメ化されていればオルタ本編のラストシーン並みの迫力であったことだけは間違いない。

Su-47pzX1


Su-47をベースに、ソビエト陸軍中央戦略開発軍団・331特殊実験開発中隊ПЗ計画のテストベットとして開発されたE型を発展させた機体。有人機、無人機が存在しており、機体色、管制ユニットの仕様を除けば違いは無い。


T-50 PAK FA

正式名称Su57

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最終更新:2023年08月15日 11:52