カブトムシと俺


※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

2 名前:藍紫[] 投稿日:2010/12/08(水) 22:57:37

窓から日差しが差込むような、とある夏の日。

俺は、夏休みを満喫していた。

「ふぅ…心地よい朝だ」

俺はいつものように昼過ぎに起きて、自分の部屋にあるパソコンに腰掛ける。

「さてと…」

俺はいつものように、ネットサーフィンに明け暮れていた。

さっき俺は夏休みと言ったけど、逸れは大きな間違いだ。

俺は引きこもり。

高校が思ったより面倒くさいから、1学期の半分は休んだ。

で、今は夏休みと言うわけだ。

山積みの宿題。

夏休み+1学期に休んだ分の課題が、一つの大きな山を演じていた。

それみた俺は、異様な痛みに襲われる。

「あーやべっ…ウ○コしたくなって来た…あーやばいやばいやばい…」

普段とは格段に大きな痛みが俺を襲う。

なんだ?今日は何か、不吉な予感が…

「なんていってる場合じゃねえ…もれるぅ!」

俺は一目散に椅子から飛び降りてドアを乱暴に開け放つ。

階段を自己最速タイムで駆け下りて、トイレへと駆け込む。

この間、僅か30秒。

「ふぅ…間に合ったぜ…」

長い大便をを終え、部屋には戻らずにキッチンへと行く。

「腹減ったわ…なんかねーかな…」

その時、後ろから何者かの視線を感じた。

「ヒデ、今頃起きたの?もう2時だよ?」

それは姉貴だった。

「うるせーな。俺が何時起きようが自由だろ」

「もう…学校に行ってないんだから家事の手伝いぐらいしてよね」

「うるせえ、犯すぞ」

「きゃーこわーい」

「……」

くそう、バカにしやがって。

いつかマジで犯してやると心に誓った俺は、緑茶のペットボトルと机にあったパン片手にキッチンを出る。

「全く…どいつもこいつも俺をなめやがって…」

俺が学校に行かなくなった理由は単純明快。

行くのが面倒だったのだ。

毎朝6時に起床…やってられるか。

別に、友達が居ないとか苛められてるからと言う理由ではない。

本当に、面倒だったのだ。

「はぁー朝から不快感マックスだぜ…」

俺は自分の部屋のドアを開ける。



そこには、俺と同じぐらいの大きさのカブトムシが部屋の真ん中で仁王立ちしていた。



一人前に腕を組んで、物々しいその角は天井にギリギリめり込んでいる。

否、よく見たらギリギリどころか堂々と突き破っている。



「遅いぞ、少年」



「……」



「少年?」



エマージェンシーコールが頭の中に鳴り響く。

緊急事態発生。緊急事態発生。

4 名前:藍紫[] 投稿日:2010/12/08(水) 22:59:05

「遅いぞ、少年」



と、とりあえず落ち着け。

これは、夢?



「夢などではない。現実(リアル)だ」

「え?」

「まあ、驚くのも無理ではないか…」

「え?え?ちょっ…」

「いきなり押しかけてすまない。私はカブトムシのカブトムシだ」

「はぁ…」

「私はただのカブトムシでは無いぞ。カブトムシのカブトムシだ」

「??」

全ッ然意味分からん。

何?新手のドッキリ?

「まあ落ち着いて聞いて欲しいのだが…」

つーかなんで普通に会話できんの?

新種?宇宙人?世紀の大発見?

え?○ASA超えた?

この俺が?

「私は、ムシキングになるために異次元からやってきたのだ」

「コレは夢だ…コレは夢…飛び切りタチの悪い明晰夢だ…」

「少年!?」

「…よし!オッケー!で、なんだって?」

「……」



「…で、ムシキングに成るためにはるばるK64星雲から来たと…」

「そうだ、いやあ、理解力があって助かる」

「いやいや、微塵も理解できてねーよ」

部屋であぐらをかいて座るカブトムシに、正座で対面している俺。

つーかよくそんなバランスで座れるな…

「ん?何故バランスが取れているのか疑問に思っているようだな?」

「お前ちょいちょい心読むな、まあ、その通りだ」

「これはな、己を鍛えている過ぎない。正直めっちゃつらい」

「なら普通になれよ…」

「いや、でも角がね。この部屋狭いし」

「あ、なるほど…っていやいや!ねーよ!ありえねーよ!」

「ど、どうした!?」

「なんで俺のトコに来たの?何で俺を選んだの?」

「取り乱すな。落ち着け」

「お前に言われたくねーよ!え?何?俺死ぬの?」

刹那、ドアが勢いよくノックされる。

「ヒデ!何叫んでんの?めっちゃ取り乱してる様子だけど何かあったの?」

「あ!姉貴!」

幸い部屋に鍵をかけていたので、入ってはこない。

まずい、コレはまずい。

カブトムシも涙目で両手を合わせて…気持ち悪!

なんて思ってる場合じゃねえ!

「あ…いや、俺じゃない!ごめんごめん!俺そっくりの声の奴が演技してる動画見てるだけ!」

「こ、こんな大きな音で?」

「そ、そうだ!間違って音量最大にしちまっただけだ!安心してくれ!」

我ながら酷い言い訳だ。

「そう、心配して損した…」

通じんのかよ。

なんか残念な気分になったぞコンチキショウ。

「……」

壁に耳を当てて、階段を下りきるのを聞いた俺は、ほっとため息をつき、カブトムシに親指を立てて合図。

カブトムシも同じく親指を立てて返してくる。

気づけばカブトムシは"人間"の容姿になっていた。

しかもとびっきりガチムチで全身茶色くて見てて嫌になる。

「え?お前変身できんの?」

「なめるな。私を誰だと思っている」

「そ、そうか…なら、はじめからそれで出てこいよ…」

「いや、この容姿でカブトムシだとは信じてくれだろう?」

「た、確かに…」

思わず理解してしまった。

6 名前:藍紫[] 投稿日:2010/12/08(水) 22:59:31 ID:PdumukgE0 [4/10]

「…で、ムシキングだっけ?」

「ああ、そうだ」

「なんで俺に相談すんの?」

「ああ、そうだな。話せば長いが…」

「全然いいから早く話せ」

「うむ…」



というわけで話を聞くところ、

どうやら何年かに一度全宇宙で昆虫王者を決める大会が開かれているらしく、今回は地球で開かれるとか。

で、開催予定の惑星の人間に取り憑くことで初めて参加資格が得られるそうだ。



「なるほどな、でも、どうして俺なんだ?」

「ああ、それなんだが、話すと…」

「だから長くてもいいっつってんだろ。早く話せ」

「そ、そうか…」



というわけで、話を聞くところ、

このカブトムシは何でも、己の器に見合う人間を探していたらしい。

で、それが俺だった。

どうやら取り憑くにはそれなりに心の余裕と言うものが必要らしく、

俺はその余裕、つまり器が大きい人間だと見抜いたとか。



「なるほどな。で、具体的にどういう風に取り憑くんだ?」

「よし、では早速『魂の共鳴』に移ろうか」

「おい、それってソウ○イー○ーじゃねえか」

「何だそれは?まあいい、行くぞ」

「え?マジで?」

何?『魂の共鳴!』とか一緒に叫んじゃうの?

が、俺の幻想は見事にぶち壊されることになる。

「行くぞ!少年!」

「…ああ!」

途端、カブトムシが、俺の後ろに回りこむ。

「……え?」

そして、カブトムシは俺に後ろから抱きつくような形で腕を回す。

「ちょ…待っ…」

なんか嫌な予感がしたが、もう遅すぎた。

刹那、抱きついていた腕が俺の乳首を服の上から思いっきりつねる。

「━━━━━━━━━━」

声にならない痛みが俺の体を貫く。

声にならない叫びが俺から発せられる。

「我慢せよ!コモンソウル!」





俺は気がつくと、カブトムシになっていた。

「…何コレ」

《え?コレが魂の共鳴》

「いやいや、カブトムシになっただけやん」

《そうだ、これが魂の共鳴》

「え?お前が武器になったりするんじゃねーの?」

《何を言っている。体は参加者をベースに、心は契約者をベースに合体する。それこそが魂の共鳴だ》

「いや、俺の乳首思いっきりつねっただけやん」

《ああ、あれはただの趣味》

「!?」

《ちなみに取り憑いた時点で参加が決定されるから逃げることはできんぞ》

「…マジ?」



次回、バトル開始!

12 名前:藍紫[] 投稿日:2010/12/09(木) 15:07:26

「…おい、とりあえず解除しろ」

《うむ。承知した》

「━━━━━━━━━━」

体に激痛が走る。

胸の辺りから、2箇所に分けて痛みが…

「おっと、スマン。変身前の状態に戻るの言ってなかったわ」

「いいから…早く…その手をどけろ…」

途切れそうな痛みをなんとかこらえて、精一杯の声を搾り出す。





「…しかし、なかなかうまくシンクロできたな」

「こっちとしては最悪以外のなんでもねーけどな…」

今、俺の乳首は服がこすれるだけで激痛が走るようになってしまった。

そのため、上半身はしばらく裸ですごすことになる。

「ヒデー!おつかい行ってきてー!」

「ちょ、今無理だって!」

乳首のダメージといい昆虫王者の戦いに参加決定しているのでうかつには出歩けない。

「なんでよ!シコる暇があんならお使いの一度や二度は楽勝でしょ?」

なんてデリカシーのない姉なんだろう。

自分のことを棚にあげるわけじゃないけど、

もっと、羞恥心を持ってもらいたいもんだ。

「ふむ、私もお腹がすいたぞ」

「ヒデー!誰かいんのー?」

「ちょ!黙ってろ!」

俺はカブトムシに小声で怒鳴るという

文章で見れば起用極まりない行動を起こす。

「す、すまない…」

「あ、姉貴!違うって!俺の腹がすいてんだ!」

「だからお使いに言って来いって…」

姉の口調が変わる。

男にも勝るとも劣らない野太い、あの声だ。

「あ、姉貴?」

「言ってんだろーがぁぁぁぁ!!」

刹那、一転を中心にひしゃげた状態でドアが吹き飛んで、向かいの壁にその全てがめり込む。

家中に轟音が鳴り響き、窓が衝撃で粉々に砕け散った。

つーか、姉貴が?え?こんなに強かったの?

「全く、ヒデの…」

「ま、待て!」

もう遅い。

姉が俺の部屋を覗き込んだときに、世界が、時が止まる。

「バ、バレた━━━━━」

部屋にはガチムチの男(しかも茶色)。

俺は上半身が裸。

しかも乳首が紫色に変色している。

「え?…ヒデ?え?え?」

姉貴はさっきとは真逆の震えた声で俺を見る。

瞳孔が開いて、まるで唖然と、呆然としたように。

この情況が飲み込めない。飲み込みたくない。

そんな様子だった。

「ちょっ!待て!姉貴!コレは…」

「む、姉方か。なかなかパワフルな脚力をお持ちのようだな」

「頼むから黙ってろ!」

「ヒデ…うわぁぁぁぁぁん!!」

姉がパニックを起こしてしまい、ついに泣き出してしまった。

子供のように俺達を気にせずわんわん泣き始めてしまった。

「泣くな!泣きたいのはこっち!」

「ヂデが…ビベが…」

「お、落ち着け!話せばわかる!」

「少年よ、女は泣かせたら泣かせた者の負けだぞ」

「お前にだけは言われたくねーよ!」



13 名前:藍紫[] 投稿日:2010/12/09(木) 15:07:44

「…で、ヒデを依代(よりしろ)に選んだと」

崩壊寸前…ってか崩壊した俺の部屋で、

俺達は小さな円を描いて座っている。

「うむ。さすがは姉方。理解力があって助かる」

「まあ、こんな情況じゃあ冷静にならないと…ね?」

姉貴はさっきの羞恥を思い出したのか、顔を赤らめる。

因みに俺は依然と上半身は裸。

乳首は大分とマシになってきた。

カブトムシもガチムチの状態である。

他人から見れば姉貴がいかがわしいことに巻きこまれているようにしか見えない。

「でも、宇宙人が本当に居たなんて、これなんてSF?」

「俺に振るんじゃねーよ。こっちが聞きたいわ」

「…む!姉方!」

「きゃあ!」

その時、カブトムシが姉貴を瞬時に押し倒す。

「おい!クソ虫が!何してやが…」

刹那、姉が元いた場所に、馬鹿でかい針が突き刺さる。

【チッ、はずしたか…】

物凄い轟音がどこかから鳴り響く。

ブゥゥンなどではない。ゴゴゴ…という物々しい音である。

なんだ…何が!?

「くっ!もうエントリー者が攻めてきよったか!」

「え?」

すると、崩壊した窓の方に

これまた馬鹿でかいハチが姿を現した。

【ほぅ…初戦はカブトムシか。なかなかいい相手だな】

馬鹿でかいハチが呟く。

「ちょっと待てよ!お前俺の部屋に何でかい穴あけてんだ!」

【ククク…ごめんなさい】

素直に謝られてしまった。

許すしかないではないか。

「少年よ!バトルは始まっておるのだぞ!」

「そ、そうみたいだな!」

気づけば後ろにカブトムシが回り込んでいる。

「うぉ!びっくりさせんなよ!」

「む、すまない」

「あと、乳首つねったら燃やすぞ」

「分かっておる。行くぞ少年!」

「おう!」



14 名前:藍紫[] 投稿日:2010/12/09(木) 15:07:57

俺は瞬時にカブトムシに変身する。

「いくぜハチ!」

【ククク…やれるものならな!】

といいハチは物凄いスピードで飛んでゆく。

「あ!待て!」

《少年よ!飛ぶ準備はいいか!》

「ま、待て!姉貴は…」

姉貴の方に目をやると、姉貴は気絶していた。

「う、う~ん…」

「姉貴!大丈夫か!?」

「ヒ、ヒデ…ぎゃあああああ次はカブトムシぃぃ!!!」

「あ、しまった…」

また姉貴は気絶してしまった。

「くそっ…ハチのやろうゆるさねえ!」

《いや、お前やん》

「ああ?聞こえねーよ!行くぜ!」

《む!承知した!》

俺もといカブトムシは窓から飛び、

空中で羽を広げて、ハチを追いかける。

「逃さねえぞ!ハチ!」

【くくく…追いつけるものならな!】

いや、追いついてるから話しかけたんだけどな。

「よし、カブトムシ!このまま突進だ!」

《把握した!》

カブトムシの最大の特徴。

それは、この長い角。

「行くぜ…ダンガン!」

【何!それはム○キングの…】

「俺を誰だと思ってる!天下の昆虫、カブトムシ様だぜ!」

ハチの言葉を途中で遮り、俺は力任せに思いっきりハチに突進を咬ます。

【ぐぁぁぁぁぁぁ!!!】

ハチは近くの山に隕石よろしく思い切り激突した。

隕石が落ちたかのような轟音が町中に響きわたる。

「やべっ…やりすぎたかも…」

町の人々にバレたという心配が頭をよぎる。

《安心せい!このことなど誰も気にせぬわ!》

「そ、そういう問題!?ってかハチは?」

俺はハチが激突した山を見る。

大きなクレーターの中心には…人間!?

しかもよく見るとあれは…鳩山!!

鳩山由紀夫。

確か高校のクラスメイトだったはず!

「な、何でだよ!俺はハチを…」

【私のことかな?】

「なっ!何だお前は!」

気づけば、全身が黄色に染まった気持ちの悪い人間らしきものが俺の視界に現れる。

【クク…寸前で解除したに決まっているだろ?】

《何!解除ということは敗北のはず!》

え?解除したら負けなの?

なら俺達一回解除したから負けなんじゃね?

【そうだ、確かに俺の負けだ…おめでとう】

あれ?無視?虫だけに?

というかやけに素直だなコイツ。

根はいい奴なのかもしれない

《ならば、もう参加資格は失われたはず…》

【ああ、そうだな】

《ならば…何が言いたい!》

【フッ…この世界を少し、観光するのさ】

「まさかの!?」

なんだよ、今後の試合に出られないように反抗してくるのかと思っちまったよ。

《少年よ。それはマンガの読みすぎだぞ》

「知ってんの!?」

【ククク…それじゃあ行ってくるぜ】

「あれ?終わり?鳩山は?」



15 名前:藍紫[] 投稿日:2010/12/09(木) 15:08:36

と、いうわけで

初戦はなんとか俺達の勝利のようだ。

んで後に聞いたところの話では、

鳩山は全治半年の大ケガで記憶喪失になっちまったみたいで

学校を留年することになっちまった。

悪い、鳩山。

で、話を戻すけど、俺達は一勝したから本選に出場することになったみたい。

本選は明日から行われるみたいで、隣町の公民館の丘に有る元大木の切り株の上でするみたいだ。

予選は解除したら負けだったけど、それは他のエントリー者によるものではないから俺達はセーフだとか。

てなわけで、波乱の一日が、終わろうとしていた。

明日も、波乱が待ち構えて居そうだなあ。



その日の夜。とある切り株の上。

†カブトムシ…こんどこそ、討つ!†


24 名前:藍紫[] 投稿日:2011/02/22(火) 20:30:56

~決戦当日~



「で、ここがバトル会場…」

どれくらいのでかさなんだろうと思ったらそんなにでかくなかった。

バトルするスペースは一丁前にあるし、大丈夫だろう。

「でも、こっからが本番なんだろ?」

「うむ。そうだぞ少年。気を抜けは喰われてしまいかねんからな」

「まったく、食うか喰われるかなのは試合してみないとわかんねーだろ?」

「そうじゃな。む、初戦の相手がやってきたみたいだ」

「どれどれ…」

俺は、その挑戦者の来た方向へと目を向ける。

そして、俺は愕然とした。



〓フシュゥゥゥゥ…〓



それは、サソリ。

もう、でかいなんてレベルじゃない。

そうだな、キャンピングカーぐらい。

ノシノシ…と音を立てて切り株の上に上がってくる。

揺れ動く尻尾。鈍い緋色に光る幾つもの目は、俺を地面に縫い付ける。

おいおい、昆虫王者じゃねえのかよ。

マジで喰われんじゃねーの?



「お、おい!反則だろ!こんなの!」

〓グモモモ…サソリはクモ科かクモ目だったはず〓

「マジで?そ、そんな曖昧でいいの!?」

〓グモモモ…早くしよう観光したい〓

「なら試合に出ずに観光優先のほうがよかったんじゃね?」

〓うん。これは計算ミス〓

なら、棄権しろよとは、いえなかった。

怖かったのだ。

「少年よ!覚悟は良いか!」

「あ、ああ!いいぜ!」

〓グモモモ…セミのごとく粉砕してくれるわ〓

「ふ、粉砕!?」



25 名前:藍紫[] 投稿日:2011/02/22(火) 20:31:14

傍から見ればでかいカブトムシとでかいサソリが切り株の上ですもうと言う実にシュールなのに壮大な光景である。



「くっ…キャンピングカーに乗用車がかなうとこなんてあんのかよ!」

〓グモモ…先手必勝!!〓

刹那、キャンピングカーがF1のレースカーのごとき速度で突っ込んでくる。

「ちょ!えっ!?ええええええ!!!」

《むぅぅうううおおおおああああああ!!!》

ほぼ同時に、カブトムシが根性、角で受け止める。

ドォォン!!というすさまじい衝突音、否、爆音が鳴り崩れる。

「カ、カブトムシ、すげえ!あんなの受け止め…」

《少年!おぬしも力を抜くな!轢き裂かれるぞ!!》

俺の言葉を遮り、カブトムシが俺に緊急警報を促す。

「わ、わりい!お、おらあああああ!!!」

実際、角がよく折れなかったものだ。

俺も渾身の力をこめる。

〓グモモ…さすがはカブトムシ…セミのように脆(もろ)くは無いか〓

「ぐっ…くぅぅ…」

俺達二人かなりの力をこめているののに、少しづつ押されているのがわかる。

《うぉぉ!!ヒデ!いけるか!?》

「ああ!つーかお前口調変わりすぎだろ!」

《コレが俺だ!文句なんていわせねーよ!》

「へっ!急にかっこよくなりやがって…ん?」

そこで俺が、頭上に影ができたのを初めてしる。

「……!!」

完全に忘れてた。

それは、サソリにあり、最大の武器である"尻尾"

「ちょ…」

刹那、カブトムシ(俺)の耳に、ズシリではない。

メキリという音が流れ込み、直後に背中を初め激痛が全身を襲いだす。

「ぐぁあああああああ!!!!」

心がベースの俺ですらこの痛みだ。

カブトムシが本当に凄いと実感する。

《あ、俺は大丈夫だぜ?》

「え…?」

《いや、痛みは心がつかさどるからな。お前しだいだ。ガンバ!》

「えっ…ちょ…」

あまりの衝撃に痛みが完全に吹き飛ぶ。



おい…ちょっと待てよ…



〓グモモ…これだけではないぞ!?〓

《……毒か!!!!まずい!!》



俺はなんにも悪くない…



《ヒデ!おい!大丈夫か!答えろ!答えてみろヒデー!!》

〓グモモ…諦めろ…このままだと契約者が死ぬぞ〓



なのに…なのに…!!!



《ヒ、ヒデ!おい!!!!》



なんでこんなに損な役回りばかり任されんだよ!!!



「ふ…」

《おお!ヒデ!大丈夫か!おい!》

「ふざけんじゃ…」

《ヒ、ヒデ!?》





「ふざけんじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!」





《……こ、これは!!!!!!!!》

〓グモモ!!!!〓



そこに、かつての俺達の姿は無かった。



銅に輝かせた甲冑や鎧を全身に着て、

その両手には、これまた銅に輝く大剣を持った━━━━━━



『待たせたな!反撃開始だぜ!』



"カブトムシとしての意識と体がこめられた装備と武器と、俺としての心と体"

を持った"一人の甲虫"が存在していた。



26 名前:藍紫[] 投稿日:2011/02/24(木) 19:48:34

〓グモモ!!何だこれ!!〓

『これか?単に"俺の心"と"カブトムシの心"が、入り混じっただけだ』

〓グモモ!そんな変身きいたことねーよ!〓

『ああ…俺達も正直わかんねえ…お前の毒でも効いたんじゃね?』

毒は、常に体に害を及ぼすとは限らない。

それは時に、恩恵を授けるときもある。

まあ正直に話せば

俺の心が一瞬カブトムシの体をも支配した。

つまり、自分自身はもちろん、"カブトムシの要素も俺の自由"になった。

だから、変身時の形を変えたのだ。

といっても、今はカブトムシの意識が戻っているのでこの状態から変われないが。

〓グモモモ!!バカな!ならば、背中に打ち付けた尻尾で多少の傷が…あれ?〓

そこで、サソリはようやく気づく。

〓尻尾の針の部分が…無い?〓

『ああ、吸収しちまったみてーだ。興奮して気づきはしなかった見てーだがな』

実際には、カブトムシとしての形態を変えるときに巻き込まれただけだ。

背中の傷を埋め合わせるには十全だった。

〓くっ…ならば何故銅色になったんだ!?〓

『さあ、それはしらん』

〓!?〓

まあ、作者の都合とゆーことで。

『さて…油断しすぎだぜ?』

〓しまっ…!!〓

大剣の刃ではなく、なんというのか知らんがなんか面の部分で思い切り殴り飛ばす。

相手は切り株から落ち、周囲に砂煙が巻き起こる。

『切り株から落ちたらから負け…俺の勝利だ』



そして、砂煙が晴れる。

そして、そこにいたのは━━━━



『…管!?』

そう、管直人。

確か、クラスの理科係に任命されし者だったはず。

『なんてお前が…』

白目をむいて、よだれをたらして気絶している。

〓グモモ…油断した〓

ふと、下から女の声がする。

その声がするほうに目を向けると、コレは可愛らしい少女が一人。

見た目から推測するに、十三歳ぐらいだろうか。

『えっ!まさか…』

〓そう、私こそサソリよグモモ…〓

『かわいいなあ、オイ』

〓そうなの?よくわかんないグモモ〓

『そうか、お前は宇宙人…』

ふと、ある考えがよぎる。

『そうだ、お前、あの契約者になんかされたりしてないか?』

〓特には…あ、なんかやたらと体をなめ回し…〓

『おk、それ以上は何も喋るな』

言葉を遮り、全てを悟る俺。

管に若干の嫉妬…ではない、軽蔑を覚えた瞬間だった。

〓さて、負けちゃったし、観光でもしようかな…グモモ〓

と言って、歩き始めるサソリを俺は引き止める。

『待て、お前が一人で観光すると間違いなく犠牲者が出まくる』

精神的にも、肉体的にも。

そして、おまえ自身も。

〓えぇ!?なら、観光できないの?〓

涙目になるサソリ。うおお、かわええ!

いや、駄目だ。俺の人生をこんな宇宙人に捧げれるわけが無い…

『はぁ…とりあえず、ウチに来い。いい案内人紹介してやるからよ』

〓本当!?なら、早く行こう!〓

『よし、今すぐ行きたい…トコだけどお前と一緒に居ると俺は…』

〓何?どうなるの?〓

『いや…なんでもねーよ。さ、行こうぜ』

〓うん!そうだ、変身は解除しないの?〓

『ああ、それは絶対に駄目だ』

ガチムチと幼女が一緒に歩いてたら、間違いなく捕まるからな。

ここは恥ずかしいけど、この鎧を着たまま帰るのが適切だろう。



『…管、ごめんな』

軽蔑を覚えた相手でも、ここまでするとさすがに申し訳なく感じる。

と、いうわけで

本選初戦はなんとか俺達の勝利のようだ。

んで後に聞いたところの話では、

管はただの脳震盪で無事退院したけど、ロリコンが表になっちまったみたいで

結果いかがわしいものを所持していたらしく捕まってしまった。

悪い、管。

で、話を戻すけど、俺達は勝利したから第二回戦に出場することになった。

明日はどんな敵が待ち受けてるのだろう。

と、不安もあったけど、そこには確かな興奮もあった。









その日の深夜、切り株の上━━━━

†フン…騎士形態(ナイトランス)になりやがったか…それでこそカブトムシ…†



同じく深夜…閑散とした市民プールの子供用プールの中央━━━━

★ククク…カブトムシ!今度こそ満たしてくれよなぁ!この殺意(しょうどう)をよぉ!★

「誰だっ!そこにいるのは!」

★パトロール!!やべっ、逃げるが勝ち!★

「ま、待て!…くそっ…なんて速さだ…高校時代コンドルと呼ばれたこの俺が追いつけないとは…」

28 名前:藍紫[] 投稿日:2011/02/24(木) 22:53:01

さて、少し時は戻るけど、俺の家。

『さて…変身解除っと…』

「ふぅ…死ぬかと思ったぜ」

カブトムシは、ガチムチではなくなってて、俺に似た青年体になっていた。

茶髪に若干焼けた肌が最高にマッチしており、俺よりかっこいいのは明白だった。

「しっかし、騎士形態へのレベルアップがこんなにも早いとは」

「うん、私も見たことない変身でとってもかっこよかったよ!」

「やめろって…照れるだろ…」

「何調子乗ってんだクソガキが」

「サソリちゃん!?」

物凄く怖い顔のつもりなのだろうが、結局は幼女だ、むしろ萌える。

「しっかし、ここまで変わると別人だな」

「ああ、騎士形態は容姿から精神まで契約者に合わせるからな」

え?ということは…

「俺の前にその、騎士形態になったやつって…」

「ああ、かなりのガチムチだったな。おかげで前大会では圧勝できたぜ!」

「……」

「ハハッ、そう心配すんじゃねーよ。たった二回のバトル、こんなに速く騎士形態になったのはお前が初めてだぜ」

「そ、そうか…」

心配の対象が別にあることには気づいてもらえなかった。

ま、そんなのはどうでもいいとして、ここからだ。

どのように姉貴を説得しようか…

「イケメンはまだしも幼女はどうしたもんか…」

「ん?わたしがどうかしたの?」

「ま、いっか。ガチムチカブトもなんだかんだで受け入れてくれたんだ…」

心を落ち着かせて、家のインターホンを押す。

「はいはーい…」

姉が返事も無く出てきた。

おい、さすがに誰かぐらいは確認しろと思ったときに、ドアが開く。

「あ、ヒデ…とお友達?…と……」

「あ、あの…」

明らか右となりの幼女に疑心を持った様子の姉貴。

「…えーと、誘拐(した)?」

「いやっ!それだけは絶対に無いから!とりあえず話を聞いてくれ!」

32 名前:藍紫[] 投稿日:2011/02/24(木) 23:45:38

とりあえず俺はことの事情を説明する。

まずは、カブトムシのこと。

「ええ!?キミがあのカブトムシ!?確かに色は茶色っぽいけど…」

「ああ、そうだぜ」

「へー。カブトムシって環境に合わせて体ごと帰るんだね。初めて知ったよ」

「いや姉貴、あくまでもコイツは宇宙人だからな」

「あ、そっか。宇宙人だったのか。なら、不思議でもないか…」

「今後ともよろしくな。短い間だとは思うけど」

「うん。よろしくね」

と言う感じで、カブトムシの説明は終わった。

さて、次が問題だ。

「で、この子は?めちゃかわいいけど、どこで拾ったの?」

「いや、こいつも宇宙人だよ」

「はじめまして」

「あ、初めまして…でも、どうみても人間だよ。かわいいー」

そういってサソリの頭をなでる姉貴。

サソリは、いかにも満足げな表情になる。

「でさ、姉貴。一つ頼みが…」

「何?」

サソリは姉貴のひざの上に座っている。

どうやら互いに気に入ったようだ。

「コイツ、観光したいらしいんだ。だから、案内人してくんねーか?」

「え?私なんかでいいの?」

「ああ、いいよなサソリ?」

「うん。でも、どうしてこんなにも優しくしてくれるの?」

「え?そ、それは…」

見た目(ロリータ)だからとは言えないし…

「それはな、お前が安全に観光するためだよ」

カブトムシがフォローをしてくれた。

うおお、なんかいきなりかっこいいぞコイツ。

「安全?」

「そ、その姿はこの惑星ではちょっと危険だからさ。それを見てもらうってわけ」

おおお、こいつ急に口が達者になったぞオイ。

「ちょっと、それじゃあ私が強いみたいな言い方じゃない」

「え?違う…」

「アハハハ、俺とかコイツだと姉貴のようにとんでもない誤解を招きそうだからさ、それなら姉貴のほうがまだ安全だろうってことさ」

「あーなるほどね。それなら納得」

「だろ?なあ、カブトムシ?」

「そ、そうだな…」

すると、何かを思い出したかのようにサソリが姉貴に話しかける。

「…そういえば、わたしはお姉ちゃんのことなんて呼べばいいの?」

「あ、そうだね。名前、言い忘れてた。私は佐奈(サナ)。よろしくね」

コクリ、とうなずくサソリ。

「そうだ、なら私はサソリちゃんのこと、『りっちゃん』って呼んでいいかな?」

「うん。いいよー」

「まあ、もう遅いし、明日からな」

「うん。わかった」

「じゃあ、りっちゃんお風呂行こっか!」

「お風呂!?なにそれ!」

「それはお楽しみー」



行ってしまった。

つーか、本当に…なんというか観光したかったんだな…

「さて、どうするよ」

カブトムシが話しかけてくる。

今部屋には、俺とカブトムシの2人。

「ああ?そうだな…寝るか」

「えっ」



つーわけで予想的中波乱で長い一日が終わった。

そして、俺の心が少しだが、変わっているのにも気づいた。



同世代ぐらいの奴と話すのは、楽しいって事を。




35 名前:名無しんご[] 投稿日:2011/02/27(日) 01:14:48

そして次の日。切り株の上。



姉とサソリは観光中。



『この試合に勝てば準決勝か…』



そして、切り株の上に一つの影が現れる。



★よぉ…ヒデじゃないか★



そこには"一人の甲虫"がいた。



つまり、騎士形態ということ。



相手の契約者がわかると言うこと。



そして、その顔は見慣れたものだった。



そしてそれは、何よりも見たくない顔だった。



『お…お前は…』



★(ニヤリ)★



それは、俺の大切な人を壊した人物。



『お前は…小沢…』



36 名前:名無しんご[] 投稿日:2011/02/27(日) 01:24:38

以下、回想。



小沢。本名、小沢一郎。

こいつは俺の中学時代に数多の人間を貶めた、いわば悪。

俺の幼馴染だった五月晴葉衣(さつきばれ はごろも)も、犠牲者の一人。

いや、一番の犠牲者と言っていいかもしれない。

葉衣は、こいつに殺されたも同然だ。

ちなみに殺されたというのは社会的に殺された。

コイツの罪を、罰を、すべてなすりつけられた。

そして、おそらく小沢の命であろう、葉衣は学校全てから忌み嫌われるようになった。

葉衣が受けるハメになった"いじめ"は性的暴行とかじゃない"差別"で━━━━無視。

葉衣はあの日から、"居ないもの"としての扱いを受けた。

僅かにいた俺と葉衣の親友や友達は、それから俺と葉衣に関わることは無かった。

自分が同じ目に合わされたくないから。それはそれでいい。あいつらは何も悪くない。

そして、学校側はそれを黙視し、挙句の果てに小沢を崇拝しだした。

毎日が欠番。

テストなど渡されること自体無く、テストは毎回全教科0点。

提出物なんて受け取らない。そもそも話を聞かないのだから。

プリントも渡されない。行事予定なども俺から全て聞き、行動していた。

それでも、彼女は俺だけでなくみんなを"信用"して、そして逆らうことなど無かった。

時に乱暴されかけたら、俺が護り通した。



次第に俺も葉衣ほどではないが、同じ扱いを受けていた。

俺だけは"信頼"もされていた。彼女いつしか言ってくれたから。

そして、学校が葉衣に言った最後の一言は一生忘れない。

【お前は卒業な。ほれ、証書。本当は証書もあげる価値無いんだけど、小沢が渡せと言うからさ】

護るために常に隣に居たため聞こえていた俺など眼中にも無く、彼女にのみ、そう告げた。

俺は唖然とした。彼女は呆然とした。

いままでは俺の護りでなんとかやりすごせてた毎日が、終わった。

卒業。それは課程を終えたものに与えられる称号。

つまり、葉衣が今後学校に来ても意味が無くなってしまうということ。

帰り道、彼女とした最後の会話も覚えている。

≪えへへ…卒業だって…どうしよう…≫

≪んなもの、気にするな!俺が護ってやるから、学校に行こうぜ!≫

≪ヒデくん…でも…≫

≪でもなんだよ!≫

≪…もう、私疲れちゃった…≫

直後、地に腰を落とし、止まってしまう。

すでに限界を超えつつも耐えた彼女が、ついにパンクしてしまった。

歯止めが、無くなった。

その瞳からは、涙が流れ、やがて 大きな運河へとつながっていく。

日ごろためていたものが、一気に運ばれていく。止まることを知らずに。

≪私、悪くないよね!?私は、いい子だったよね!?≫

≪ああ!当たり前だ!だから落ち着け!≫

そして、あいつが現れる。

≪おや…泣いてるのは五月晴さんじゃないですか≫

≪小沢…テメェ…≫

≪やめとけ。今の俺を殴ってみろ。それこそ学校を敵に回すようなもんだぜ?≫

≪構わねぇ!俺は…≫

≪もし学校の誰かが暴力団とつるんでたら?≫

≪!……くっ…≫

≪なあに、五月晴さんには何も"しない"よ。少しやりすぎたからね≫

そして、俺の横をとおり後ろで泣き喚く葉衣に一言。

≪××××≫

≪━━━━━━━━!≫

≪俺は"言わない"とはいってないぜ?(ニヤリ≫

≪葉衣!!≫

彼女が、壊された瞬間だった。

彼女の純粋さを逆手に取ったその一言で。

彼女は気絶してしまい、それから病院に運ばれ

目覚めたときには全てを失っていた。

記憶が飛んでいた。何もかも。

俺の名前すらも、覚えていなかった。

俺はこのときを今でも悔やんでいる。

彼女を…最後の最後で護りきれなかったことに。





以上、回想終了。



37 名前:藍紫[] 投稿日:2011/03/11(金) 23:16:38

『お前だけは…ゆるさねえ!』

★待てよ★

俺の攻撃がひらりとかわされて、俺はこけてしまう。

★そんな虚構で切れられても、困るんだよ★

『嘘もいいかげんにしやがれ!虚構だと!?ふざけるのも…』

刹那、俺の脳内に一つの記憶がよみがえる。



≪おら小沢、悔しかったらかかってこいよ≫



それは、俺が小沢を貶めている記憶だった。



俺はその場に立ち尽くす。

左腕で頭を抑えたあと動けなくなってしまった。

『嘘…だろ…!?』

★嘘じゃないよ。事実さ★

いや、葉衣は確かにコイツに…

『……あれ?』

あれ?葉衣って…誰だ!?

★な?言っただろ?葉衣?誰だよそれ★

気づけば口に出していたらしく、小沢が口を挟んできた。

『待ってくれ!お前が確かに…』

そうだ、俺の幼馴染は…あれ?俺の幼馴染…

★確かに…なんだよ★

俺に…幼馴染なんて…いない!?

俺は…小沢を貶めた!?

『はぁ?ちょ、まて意味わかんねーよ!なんで…俺がお前を貶めてるんだ!?』

★ああ、確かに俺はお前に貶められて散々な学園生活だった★

嘘だろ?俺はさっきまでコイツに憤慨していたはずだ、

だけど今は…

★あの時俺は悔しかった…なんにもできない自分がな…だけど、今は違う★

『……!』

気づけば小沢は俺の前に立っていた。

★スキありすぎだぜ?…おらぁ!★

『!!』

渾身の右ストレートが俺の顔面中心、鼻に炸裂する。

『がっ…くっ…がはぁ…』

鼻血が止め処なく流れる。

鼻で息ができない。

『はぁ…はぁ…』

鼻を中心に3センチほど感覚が無い。

★苦しいか?苦しいよなぁ!俺も苦しかったんだぜ!?★

『はぁ…待って…はぁ…くれ…』

★いいや待たない!積年の恨み、晴らさせてもらからな!★

膝を突き鼻を押さえうずくまる俺の空いた脇腹に異常に重い衝撃が走る。

『ぐぶっ…ぐあああああ!!』

はきそうになるのをこらえるうちに、また一撃、一撃と確実に叩き込んでくる。

★おらおら!どうした?アン時のように俺を貶めてみろよ!★

違う。俺はそんなことしてない。

だけど、記憶として残っている。

本当に、意味が、訳がわからない。

『はぁ…はぁ………』

★おらっ!おらっ!ははは、楽しーなぁコレ!下克上って!★

息が…できない…

鼻が…熱い…

『……』

薄れ行く意識の中、俺が最後に見た景色は、

これ以上なく歪みほほえむ小沢の姿だった。



38 名前:藍紫[] 投稿日:2011/03/12(土) 00:08:14

〔…ここは…?〕

あれ?俺は小沢に…

ってかカブトムシは?あれ!?

ココどこだ?

〔久しぶりだね…ヒデ〕

俺の名を呼ぶ声がした。

顔を向けると、同級生くらいの可愛い女の子が一人。

〔!…キ、キミは…〕

あまりの可愛さに言葉を失ってしまった。

〔え?アタシだよ?覚えてないの?〕

〔いや、あの…〕

覚えてないどころか初めてあった気がした。

見渡す景色も無。本当にどこなんだろう。

〔ガーン!まあ、仕方ないっか…〕

〔わ、悪い!えーっと…〕

頭が働かないのに今更気づく。

〔そうだ、佐奈お姉ちゃんは元気?〕

〔え?姉貴?ああ、元気だけど…〕

〔そう、よかった〕

〔あの…〕

必死に思い出そうとするけど、頭が働かない。

体中の感覚も無い。俺はいまどうなってるんだ?

〔ううん。ヒデは悪くないよ。むしろアタシを護ってくれたじゃん〕

〔え!?俺がキミを…護った?〕

この子を…護った!?

〔嘘!本当に覚えてないの?〕

〔あ…ああ、わるい〕

〔そんな…ヒデ!じゃあこれは?〕

そういって彼女は一つのお守りを見せてくる。

〔…なんだ?それは…〕

〔……〕

彼女は呆然とした様子だった。

〔ちょ、ごめん!俺が悪かった!だから、そんな表情しないでくれ!〕

〔!!〕

まさしく驚いた顔をする彼女。

まるで、心に思っていたことをズバリ当てられたような。

〔…やっぱりヒデは私のヒーローだね〕

〔……??〕

〔…そうか、ならもしかしたら…〕

何かを考える仕草に入る女の子。

〔?〕

〔××××〕

彼女が何かを口ずさみ、俺に話しかける。

〔…ヒデ…"私の名前、言ってみて?"〕

刹那、俺の頭に何かが入ってくる感じがした。

入ってきた情報…それは…



〔五月晴━━━━━━葉衣!!!〕



俺の…大切な大切な人物。

〔正解。だけど時間だね…また会いにきてね〕

〔嘘だろ!?葉衣かよ!ずっと会いたかったんだぞ!!〕

〔アタシもだよ。でも残念。次会うときはもっとしゃべろうね〕

視界が晴れていく。晴れるものが無いのに晴れていく。

全てを思い出した俺は"人生最大の後悔"を取り戻そうとする。

〔待ってくれ葉衣!今お前はどこに居るんだ…""生きているのか""!!〕

〔え━━━━━━━━こと?〕



━━━━━━━━



━━━━━━



━━━



『(…デ!ヒデ!おい起きろ!負けちまうぞ!!)』

『ん…?ってぐああああああ!!』

鼻に激痛が。そうだ、俺は鼻に渾身の一撃を食らっていたな。

鼻の骨折れてんじゃね?…ってそんなことはどうでもいい!

★起きたかー遅かったな、もう終わりだ★

気づけば小沢が俺を担いで切り株のふちで立っていた。

★じゃあね★

俺が場外へ投げられる。

『…おおおおおあああああああああ!!!』

★……!!★

『…ッセーフ!』

俺は剣を地面に突き刺し渾身の力でふみとどまる。

そして体をしならせて飛びなんとか切り株に復帰する。

★バカな!どこにそんな剣が…★

『俺の相棒はカブトムシだぜ?どこにいても必ず飛んできてくれる!』



39 名前:藍紫[] 投稿日:2011/03/12(土) 00:35:07

★…まあどうでもいい。それよりもお前はここに居ていいのか?★

刹那、俺の頭の中にとある記憶が…

それは…



≪…俺は悪くない…う、うわあああ!!!≫





『……俺が…人殺し!?』

★ああそうだ。お前は俺を貶めさらにまた別の人を殺しさえしたんだ★

『嘘…』

★嘘じゃねえよ。お前そういって結局は事実だったじゃねーか★

『そうだったな……』

★ああ、お前は人を殺した罪さえ持った極悪人だ★

『そうか…おれは極悪人か…』

★ああ、まあまだばれてないみたいだがな★

『…そうか、"黙っててやるから降参しろ"ってことだな?』

★!…あ、ああ。そうだ。この事実を言えばお前はどうなるだろうなあ…★

『どうにもなんねーよ。屑野郎』

★!……ぶごぉ!★

俺は会心の一撃を小沢に食らわせた。

★お、お前殴ったな!?ゆるさねえ!通報して…★

『俺もゆるさねえ。人の記憶を弄びやがって!!』

★!!!!★

鳩が豆鉄砲を食らったような顔をして実に気持ちがあ悪い。

『"相手の脳に捏造した記憶を作る"…お前、こんな能力持ってたなんてなぁ』

★なっ!何故だ!何故気づいた!!★

気づいてねーよ。バカ。

『命よりも大事な人に、教えてもらったんだ』

★はぁ?さっきまで気づいてなかったじゃねーか!★

『だからさっき教えてもらったんだよ』

★ああ?いつそんな…まさくぁ!!★

完全に動揺している小沢の頭にひざを打ち込む。

小沢は動かなくなってしまった。

『お前が何考えてるか知りたくもねーよ』



そして、俺は小沢を場外へ剣で弾き飛ばし勝利した。



『あんがとな…葉衣』

恩人に感謝して、その場を去る。

43 名前:Ain[] 投稿日:2011/03/30(水) 01:54:34

「しっかし…どうした?あんなお前は始めてみたけどよ」

「ああ、悪りぃ。ちょっと嫌な過去を思い出しただけさ」

「そっか。ま、おれにとっちゃあどーでもいいけどな」

そして、俺たちは家の前に一つの人影を見つける。

「ん?誰だあれ…」

「……!!」

それは、見間違えること無い人物。



「……葉衣!」

俺は彼女の元へ駆け寄る。

「…久しぶりだね。ヒデ」

「!!」

彼女は記憶喪失のはず。

だけどいま、オレの名を呼ばなかったか?

「うん。呼んだよ。ヒデ、ヒデ、ヒデェ…」

葉衣が抱きついてきた。

後ろからヒューと粋な音色が聞こえてきた。

「ごめんね…ごめんね…」

「い、いやぜんぜん構わんがそれよりどうした?」

「あのね、急に全て思い出したの。なぜだろう…」

「…まさか、小沢をぶちのめしたからか?」

俺が小沢の名を声にした刹那、抱きついていた彼女がわずかに震え出した。

「怖い…怖いよ…」

事の重大さに気づいた俺。

俺は震えながらもしっかりと抱きついてくる

葉衣の肩をつかむ。

そして俺の正面に立たせて、そのままキスをした。

そっと唇を離し、今にもなきそうな葉衣を強く抱きしめて、一言。

「安心しろ。もうお前につらい思いはさせない」

「ビ、ビデェ…」

泣き出す葉衣。

俺はぬくもりを途切れさせずに抱きしめ続ける。



ちなみに小沢はコレまでの全ての悪事が発覚し、

さまざまな人物から命を狙われてしまい蒸発してしまった。

当然だ。死ねとは言わないけど、もうなんにもすんな。
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。