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アオイシロ・アナザーストーリー

★ブラックプリンセス


1.交わされた誓い


 あの卯奈坂での合宿も無事に終わり、梢子たちはいつも通り、剣道部の部活動に熱心に励んでいた。
 そして、これまでマネージャーとして部活に参加していた保美だったが、卯奈坂での合宿の後に急に元気になった事で、今後は選手として部活に参加する事になった。
 保美の太刀筋は初心者とはとても思えないほど力強くて、また保美の性格を現しているかのように、とても真っ直ぐで綺麗な物だった。

 「保美!!踏み込みが甘いわよ!!もっと思い切って前に出なさい!!」
 「は、はい!!」
 「それから、もっと声を出して!!それじゃあ有効打突にはならないわよ!!」
 「はいっ!!」

 今日も実戦形式の稽古で梢子が保美の相手を務め、保美に的確にアドバイスをする。
 あの根方宗次の血を引いているからなのか、保美の成長スピードには目を見張る物があった。
 この子は間違いなく、これからどんどん急激に強くなる。鍛えれば来年には全国でも通用する程になる・・・梢子はそれを確信していた。

 とても真剣な表情で、しかし充実した笑顔で、保美は梢子と竹刀をぶつけ合う。
 そんな保美の相手をするのが、梢子にはとても楽しかった。
 保美に素質があるから・・・いや、違う。
 今の梢子は単純に、保美と一緒にいる事自体がとても楽しいのだ。
 保美という存在自体が、今の梢子に必要不可欠な物になりつつあるのだ。

 「保美、今の動きを忘れないでね。」
 「はい!!ありがとうございました!!」

 稽古を終えて、とても満足そうな表情で見つめ合う梢子と保美。
 ……物陰で物凄いジト目で自分と保美を睨んでいる者がいる事に、気付きもせずに・・・。

 「・・・むー!!」

 そして部活が終わった後、梢子は保美に呼び出されて剣道部の更衣室に来ていた。
 既に生徒の多くが帰宅しており、梢子と保美は完全に2人きりだった。
 誰にも邪魔をされない、2人だけの空間。
 梢子と保美は、互いに穏やかな表情で見つめ合う。
 そして・・・

 「・・・梢子先輩。」

 とても恥ずかしそうな表情で、保美は梢子に自らの想いをはっきりと告げた。

 「私、梢子先輩の事、好きです。」
 「保美・・・」
 「入学式で梢子先輩に助けられたあの時から・・・私はずっと梢子先輩の事が好きでした。」

 保美は卯奈坂での合宿以来、まるで重い枷が外れたかのように、やたらと積極的になっていた。
 これまでの保美だったら梢子に対して告白など、絶対に出来なかっただろう。
 だが今の保美は違う。あの卯奈坂での合宿の事件を乗り越えて、精神的な強さを身につけたのだ。
 今の保美を象徴するかのような、保美のとても自信に満ち溢れた、失敗を恐れない、何事にも前向きな、とても輝いた表情。それが全てを物語っていた。

 「・・・保美、ありがとう。保美にそんな風に想ってくれて、私はとても嬉しいわ。」
 「梢子先輩・・・」
 「私も・・・保美の事が好きよ。」

 梢子は保美の想いに応え、保美の身体を優しく抱き締める。

 「あ・・・。」
 「きっと・・・あの入学式の時から、ずっと。」
 「しょ、梢子先輩・・・」
 「こんな私でよければ・・・これからもずっと私の傍にいてくれる?」
 「は・・・はい!!喜んで!!」

 保美は目に涙を浮かべながら、とても嬉しそうな表情で梢子の身体を抱き締めた。

 「やっと、叶った・・・私の大切な想いが、やっと・・・!!」
 「保美・・・」
 「梢子先輩・・・ずっと、ずっと私の傍にいて下さい・・・!!」
 「保美、これからもよろしくね。」
 「梢子先輩・・・好きです・・・愛しています・・・!!」

 そして梢子と保美は唇を重ねる。
 互いの存在を確かめ合うかのように、互いの温もりを求め合うかのように、2人は互いの身体を抱き締め合う。
 ずっと胸の内に秘めていた保美の大切な想いが、今・・・ようやく叶った。

 「梢子先輩・・・ずっと一緒ですよ・・・?」
 「保美・・・保美は私が守るから。これからも、ずっと。」
 「梢子先輩・・・」
 「保美・・・」

 互いの愛を確かめ合いながら、全ては月の光に見守られ・・・

 「梢子・・・せん・・・ぱい・・・っ・・・」
 「保美・・・とても愛しい・・・やす・・・み・・・っ・・・」

 ……保美と存分に愛を確かめ合った後、梢子は保美を寮まで送り、自宅へと帰っていった。
 梢子の後姿を、とても穏やかな微笑みで見つめる保美。
 その保美の表情からは、梢子と強い絆で結ばれたという、確固たる自信に満ち溢れていた。

 「・・・梢子先輩・・・これからもずっと一緒ですよ・・・?」

 だが、その時だ。

 「保美ちゃん。」
 「え・・?桂先輩?どうしてこんな所に?」

 とても可愛らしい、しかし不敵な笑顔を見せた桂が、物陰から突然現れたのだ。
 保美が知る普段の桂とは違う、とても凛々しさに満ち溢れた表情。
 そんな普段とは全然様子が違う、まるで別人のような桂に保美は一瞬戸惑った。

 「こんな時間に一体どうしたんです?私に何か用ですか?」
 「あのね、保美ちゃん。」
 「はい。」
 「・・・ちょっと大事な話があるんだけど・・・いいかな・・・?」
 「え?え?え?」

 不敵な笑みを浮かべながら、ゆっくりと保美に歩み寄る桂。
 慌てて後ずさる保美をぎゅっと抱き締め、そして・・・

2.破られた誓い、新たな誓い


 とてもよく晴れた、土曜日の清々しい朝。
 今日は学校は休みだが、午前中は桂が所属する高校の剣道部との、練習試合が予定されている。

 折角の機会だから今日は桂と試合をして、桂がどれ位強くなったのか確かめてやろう。
 そして試合が終わったら、保美と一緒にデートしよう。

 そんな事を梢子は考えていたのだが・・・

 「な・・・な・・・な・・・!?」

 更衣室で着替えを済ませて道場に足を運んだ梢子は、信じられない物を目撃してしまった。
 それは・・・昨日自分と結ばれた保美が、あろう事か桂と抱き合っている光景だった・・・。

 「・・・桂先輩。」

 とても恥ずかしそうな表情で、保美は桂に自らの想いをはっきりと告げた。

 「私、桂先輩の事、好きです。」
 「保美ちゃん・・・」
 「卯奈坂での合宿で桂先輩に助けられたあの時から・・・私はずっと桂先輩の事が好きでした。」

 その様子を呆然とした表情で見つめる梢子。
 そして梢子の姿を確認した桂は、「ざま~みろ~!!」とでも言いたげな、とても不敵な笑みを梢子に見せ、そして・・・

 「・・・保美ちゃん、ありがとう。保美ちゃんにそんな風に想ってくれて、私は凄く嬉しいよ。」
 「桂先輩・・・」
 「私も・・・保美ちゃんの事が好きだよ。」

 桂は保美の想いに応え、保美の身体を優しく抱き締める。

 「あ・・・。」
 「きっと・・・あの卯奈坂で初めて会った時から、ずっと。」
 「け、桂先輩・・・」
 「こんな私でよければ・・・これからもずっと私の傍にいてくれるかな?」
 「は・・・はい!!喜んで!!」

 保美は目に涙を浮かべながら、とても嬉しそうな表情で桂の身体を抱き締めた。

 「やっと、叶った・・・私の大切な想いが、やっと・・・!!」
 「保美ちゃん・・・」
 「桂先輩・・・ずっと、ずっと私の傍にいて下さい・・・!!」
 「保美ちゃん、これからもよろしくね。」
 「桂先輩・・・好きです・・・愛しています・・・!!」

 そして桂と保美は唇を重ねる。
 周囲の両校の部員たちが黄色い悲鳴を上げている事など歯牙にもかけず、互いの存在を確かめ合うかのように、互いの温もりを求め合うかのように、2人は互いの身体を抱き締め合う。
 ずっと胸の内に秘めていた保美の大切な想いが、今・・・ようやく叶・・・

 「・・・って、ちょっと待ちなさいよ!!」
 「あれ?梢子ちゃんどうしたの?そんなに怖い顔して。」
 「どうしたも何も、何で桂が保美とそんな事してるのよ!?」
 「何でって言われても・・・私、何かいけない事した?」
 「保美は昨日、私と結ばれたのよ!?それなのにあんたって子は!!」

 その時、保美がとても爽やかな笑顔で、何のためらいも無く、梢子にはっきりと告げた。
 自分の今の気持ちを、ありのままの全てを。

 「・・・梢子先輩。私と別れて下さい。」
 「・・・は!?」
 「私、桂先輩の事が好きになっちゃったんです。」

 梢子は一瞬、保美が何を言っているのか理解出来なかった・・・。
 そして呆然とした表情の梢子を桂はニヤニヤしながら見つめ、保美の身体を優しく抱き締める。

 「あ・・・桂先輩・・・」
 「残念だったね、梢子ちゃん。それじゃ、そういう事だから。」
 「桂先輩。あんな人ほっといて、今から私とデートしませんか?」
 「あのね保美ちゃん。今日は午前中は練習試合だから。」
 「・・・ご、ごめんなさい、桂先輩・・・私、つい浮かれ過ぎちゃって・・・」
 「うん。許してあげるから。だからそんな顔しないで。」

 昨日の愛の誓いはどこへやら。
 今の保美には、もう桂しか見えていなかった。梢子の事などかけらも頭に無かった・・・。
 茫然自失の梢子。そんな梢子の様子をニヤニヤしながら見つめる桂。

 「な・・・何で・・・何でこんな・・・」

 だが、その時だ。

 「桂ちゃん!!保美ちゃん!!ここは神聖な道場で、今は鍛錬の時間なのよ!?」

 とても凛とした表情で、とても威風堂々とした態度で、夏夜が姿を現す。
 今日は両校の臨時コーチとして、青城女学院に招かれているのだ。

 「あ・・・夏姉さん・・・」
 「そういう事は、部活が終わってからにしなさい!!剣道は礼に始まり礼に終わる武道よ!?」

 その堂々とした姿は、まさにコーチとしての威厳と風格に満ち溢れていた。
 普段のうっかりなっちゃんからは想像も付かない、とても凛々しい表情。
 その夏夜の姿が今の梢子には、何だかとても頼もしく見えた。

 「・・・は~い。保美ちゃん、ごめんね。」
 「ところで桂ちゃん・・・あなた、何だか雰囲気が変わったように見えるんだけど・・・」
 「え?そうですか?そんなの気のせいですよ。夏夜さん。」

 今の桂の可愛らしくも不敵な、とても凛々しい笑顔。夏夜も保美と同様、違和感を覚えていた。
 いつもの大人しくて控えめな桂からは、まるで想像も出来ない姿。
 それに桂の瞳が金色なのも気になる。確か茶色だったはず。

 だが、今はそんな事を気にしていられる場合ではない。
 夏夜が相手をしなければならないのは、桂だけでは無いのだ。

 「・・・まあいいわ。そんな事より、ウォーミングアップの後に両校の練習試合を・・・」

 夏夜の指導を受け、両校の部員が練習試合をこなし、鍛錬に励む。
 試合を見た後に、夏夜はその部員の1人1人の問題点を的確にアドバイスしていく。
 そしてそれは、身内である梢子とて例外ではない。

 「梢ちゃんは片手面を打とうとする時に、普通の面を打つ時よりも、若干右肘が下がる癖があるみたいね。」
 「・・・え!?そうなの!?」
 「ええ。だから美咲ちゃんに途中で見切られちゃったのよ。片手面を打つ時に手を離す事を意識し過ぎなのよ。」
 「・・・そうか・・・だからさっきから美咲に防がれてばかり・・・」
 「いい?片手面を打つ時に、こうやって・・・」

 梢子と身体を密着させ、熱心にアドバイスする夏夜。
 夏夜の体温と吐息を直に感じ取る梢子。
 顔を赤らめながら梢子は夏夜の指導を受けて、身体を密着させながら竹刀を振るう。
 とても穏やかな表情で梢子を指導する夏夜。

 ……その様子を、桂が物凄いジト目で見つめていた・・・。

 「・・・むー!!」

 そして練習試合が無事に終わり、梢子は夏夜に呼び出されて剣道部の更衣室に来ていた。
 既に部員全員が学校を後にしており、今ここにいるのは梢子と夏夜の2人だけだ。
 誰にも邪魔をされない、2人きりの空間。
 梢子と夏夜は、互いに穏やかな表情で見つめ合う。
 そして・・・

 「・・・梢ちゃん。」

 夏夜はとても真っ直ぐな瞳で梢子を見据え、自らの想いをはっきりと告げた。

 「私は保美ちゃんみたいな、優柔不断な女じゃない。」
 「夏姉さん・・・」
 「ただ1人、梢ちゃんだけを愛する・・・それを心から誓うわ。」

 梢子をぎゅっ・・・と抱き締める夏夜。
 顔を赤らめながら、梢子は夏夜に身体を預ける。

 「あ・・・。」
 「梢ちゃん・・・あなたが好きよ・・・」
 「夏姉さん・・・」

 互いの存在を確かめ合うかのように、互いの温もりを求め合うかのように、2人は互いの身体を抱き締め合う。
 ずっと胸の内に秘めていた夏夜の大切な想いが、今・・・ようやく叶った。

 「夏姉さん・・・ずっと一緒だよ・・・?」
 「梢ちゃん、今度は離さない。今度こそ守り抜いて見せるから。」
 「夏姉さん・・・」
 「梢ちゃん・・・」

 互いの愛を確かめ合いながら、全ては日の光に見守られ・・・

 「夏・・・姉さん・・・っ・・・!!」
 「梢ちゃん・・・」

 ……夏夜と存分に愛を確かめ合った後、梢子はこの後用事があるという事で、葵先生との打ち合わせをしなければならない夏夜を残して、学校を後にした。
 梢子の後姿を、とても穏やかな微笑みで見つめる夏夜。
 その夏夜の表情からは、梢子と強い絆で結ばれたという、確固たる自信に満ち溢れていた。

 「梢ちゃん・・・ずっと一緒だからね・・・」

 だが、その時だ。

 「夏夜さん。」
 「・・・!!あなたは・・・!!」

 桂がとても不敵な笑みを浮かべながら、夏夜に話しかけてきた。
 とても厳しい表情で、夏夜は桂を睨む。
 そんな夏夜の威圧感のある瞳にも、桂は全く怯まない。

 「何か用なのかしら?今の桂ちゃんには保美ちゃんがいるでしょう?」
 「うん。保美ちゃんも大事だけど、今日は夏夜さんに用があるの。」
 「私に・・・?」

 ぎゅっ。
 突然夏夜の身体を抱き締める桂。
 予想外の出来事に夏夜は戸惑いを隠せない。

 「な・・・!?」
 「・・・ちょっと大事な話があるんだけど、いいかな?」

3.狂った愛の果てに


 「な・・・な・・・な・・・な・・・な・・・!?」

 翌日、梢子が目撃した信じられない光景。それは・・・

 「ねえ、夏夜さん。夏夜さんは私のペットだよね?」
 「は、はい・・・私は桂ちゃんのペットです・・・」
 「・・・ペットだよね?」
 「わ、わん!!わんわんわん!!」
 「・・・私、どちらかと言うと猫派なんだけどな・・・。」
 「にゃ、にゃー!!にゃー!!にゃー!!」
 「うんうん、夏夜さんはとっても素直でいい子だね。」
 「ゴロゴロゴロ・・・」

 首に鎖を繋がれ、四つんばいになって、桂のペットと化した夏夜だった・・・。
 あまりの衝撃的な光景に、梢子は言葉が出ない。
 そして梢子の姿を確認した桂は、「ざま~みろ~!!」とでも言いたげな、とても不敵な笑みを梢子に見せ、そして・・・

 「ねえ夏夜さん。夏夜さんは私の事、好き?」
 「は、はい、とっても大好きです・・・桂ちゃん・・・」
 「じゃあ梢子ちゃんの事、どう思ってる?」
 「あんな奴、もうどうでもいいです・・・私は桂ちゃん一筋です・・・」

 昨日の愛の誓いはどこへやら。
 今の夏夜には、もう桂しか見えていなかった。梢子の事などかけらも頭に無かった・・・。
 茫然自失の梢子。そんな梢子の様子をニヤニヤしながら見つめる桂。

 「うんうん、夏夜さんはとっても素直でいい子だね。」
 「にゃー。」

 とても満足そうな表情で、桂は四つんばいになった夏夜の首を優しく撫でる。
 とても気持ち良さそうな表情で、夏夜は桂に身を委ねる。

 「あ・・・が・・・な・・・あが・・・んな・・・!?」
 「・・・あ、梢子ちゃん、いたの?」
 「な・・・何で・・・!?一体何がどうなって・・・」
 「あ、そうだ。あのね、梢子ちゃんに紹介した人たちがいるの。皆、出ておいでよ。」

 桂の呼びかけに応じて出てきた者たち、それは・・・

 「はとっち・・・」
 「桂・・・」
 「桂ちゃん・・・」

 完全に桂の虜と化した汀、コハク、ナミだった・・・。

 「はとっち・・・アタシ、はとっちの事が好きです・・・」
 「桂・・・わしにはもうお主しかおらぬ・・・」
 「桂ちゃん・・・ふわふわです・・・」

 3人共顔を紅潮させながら、桂に抱き着こうとする。
 だが桂は突然維斗を抜いて、3人に突きつける。
 それを見た3人の動きが、突然止まった。

 「・・・お座りっ!!」

 桂に言われるまま、3人はその場に正座する。
 全く無駄の無い、とても綺麗に揃った、何の迷いも無い3人の動き。
 まるで、桂に完璧に調教されてしまったかのように・・・。

 「・・・ねえ、3人共梢子ちゃんの事、どう思ってる?」

 ニヤニヤしながら、桂は自分のペットにそう質問する。
 3人の回答に、一片の迷いも無かった。

 「オサなんか、もうどうでもいい・・・」
 「必要とあらば、オニワカで捻り潰そうぞ・・・」
 「あんなのは飾りです。偉い人にはそれが分からないのです。」

 自分のペットの回答に、とても満足そうな表情で頷く桂。

 「うんうん、皆とっても素直でいい子たちだね。」
 「・・・け・・・桂・・・」
 「残念だったね梢子ちゃん。それじゃあ、そういう事だから。」
 「・・・あんたって子は・・・!!」
 「あれ?どうしたの梢子ちゃん。そんなに怖い顔して。」

 何食わぬ顔の桂。それを見た梢子の頭の中で「何か」が切れた。

 「あんたって子はあああああああああああああああああああああああああ(激怒)!!」

 右手に《剣》を召喚し、怒りの形相で梢子は桂に斬りかかる。

 「・・・おっと。」

 桂は慌てる事なく、維斗で《剣》を受け止める。
 そのまま鍔迫り合いの状態のまま、2人は睨み合う。
 両者互角のぶつかり合い。それを見かねた汀が慌てて立ち上がったのだが・・・

 「オサ!!はとっちに何て事を・・・」
 「汀ちゃん!!お座りっ!!」
 「・・・は、はいっ!!」

 慌てて桂に加勢しようとした汀を、桂は一喝して黙らせる。
 とても不機嫌そうな表情で、桂は梢子を睨んだまま汀に告げた。

 「・・・ねえ汀ちゃん。私、汀ちゃんにお座りって言ったよね?」
 「は、はい、言いました!!」
 「・・・誰が動いていいって言ったの?ねえ?」
 「も、申し訳ありませんでした!!」
 「これから梢子ちゃんと思う存分楽しむつもりなのに・・・汀ちゃん。私と梢子ちゃんの邪魔をしないでくれる?」
 「わ、分かりました!!」
 「全く・・・私を誰だと思ってるんだか・・・」

 とても怯えた表情を見せる汀など無視して、桂は梢子に斬りかかる。
 常人には捉え切れない超高速の桂の斬撃を、梢子は超高速の剣捌きで的確に受け止める。
 桂と梢子の、人間の限界を超越した斬撃のやり取り。
 桂の維斗と梢子の《剣》が何度もぶつかり合う。
 2人の周囲に無数の閃光が走る。

 「あはははは!!やっぱり梢子ちゃんは凄いよ!!《剣》の力を借りてるとはいえ、この私と互角に渡り合うなんて!!」
 「桂!!あなたねえ、何で私の邪魔ばかりするのよ!?私から皆を奪って何が面白いわけ!?」
 「さすがは私が心の底から好きになった人!!うんうん!!ますます好きになっちゃった!!」
 「質問に答えなさいよ!!このウスラ馬鹿!!」
 「だから言葉通りの意味だよ!!私は梢子ちゃんの事が好きだから!!」
 「な・・・何ですって!?」

 予想外の桂の言葉に梢子は戸惑いを隠せない。
 私から皆を奪っておいて、何をふざけてるのか・・・そう言おうとした梢子だったが、桂のあまりの真剣な表情の前に言葉が出ない。

 「だって梢子ちゃん、私がこんなにも梢子ちゃんの事を想っているというのに、皆からとても好かれてるんだもん!!皆、私から梢子ちゃんを奪おうとするんだもん!!」
 「桂、何を訳の分からない事を!!」
 「だから私、梢子ちゃんを奪おうとする女の子たちを皆、私の虜にしてあげたの!!」
 「・・・はあ!?」
 「梢子ちゃんが私だけを見てくれるようになるまで、私が梢子ちゃんの大切な人をみーんな、私の虜にしてあげるの!!そうすれば、梢子ちゃんにはもう私しかいなくなるでしょ!?」

 まさに、桂の梢子への狂った愛。
 梢子に想いを寄せる者を全員自分の物にし、梢子から大切な者を根こそぎ奪い、徹底的に梢子の心を萎えさせて、最終的に梢子を自分の物にする・・・ある意味恐ろしいまでに純粋な、桂の梢子への強く淡い想い。
 だが桂は梢子を想うあまり、想い過ぎるあまり、皆から慕われている梢子に嫉妬するあまり、梢子への愛情の表現方法を完全に間違えていた。

 「私が本当に好きなのは梢子ちゃんだけだから!!梢子ちゃんさえ私の物になってくれれば、後はもうどうでもいいから!!」
 「桂、それでもし仮に、それこそ何かの間違いで、私が桂と付き合う事になったら!!」
 「何かの間違いでってどういう事よ!?私はこんなにも梢子ちゃんの事が好きなのに!!」
 「それで、桂が虜にしたナミたちはどうするつもりなのよ!?」

 それこそが、梢子が納得出来ない理由なのだ。
 桂が自分を好きだと言ってくれた事自体は嬉しいが、それでもし自分が桂と結ばれるような事になったら、桂が自分から奪ったナミたちは一体どうなるのか。
 だが桂が出した答えはあまりにも純真無拓で、純真無拓過ぎて恐ろしい物だった。

 「そんなの決まってるじゃない。あんなのペットだもん。梢子ちゃんさえ手に入れば、あんな奴等もういらないもん。」
 「け、桂ちゃん、酷すぎます・・・私は・・・」
 「ナミちゃん、お座りっ!!」
 「・・・は、はいっ!!」

 立ち上がろうとしたナミだったが、桂に一喝されて再び正座する。
 怯えた表情のナミなど無視して、桂は梢子との斬撃のやりとりを続ける。
 だがそんな桂の傲慢な、ナミたちの事をペットとしてしか扱わない態度に、遂に梢子がブチ切れた。

 「・・・こんの、桂のどアホがああああああああああああああああああああ!!」
 「・・・きゃっ!!」

 梢子の渾身の一撃が桂を弾き飛ばす。
 慌ててバックステップして体勢を立て直す桂だが、梢子の怒りの表情に背筋が一瞬凍った。

 「桂。私、正直言ってあなたの事を見損なったわ。」
 「・・・見損なった?何を言ってるの?私はこんなにも梢子ちゃんの事が好きなのに。」
 「そんなに私の事が好きなら、正面から正々堂々と、私に面を向かって真正面から好きだって言えばいいじゃない!!それなのにこんな酷い事を!!」
 「だって、皆が私から梢子ちゃんを奪おうとするんだもん!!」
 「桂・・・!!あんたって子はああああああああああああああああああっ!!」

 2人の維斗と《剣》が再びぶつかり合う。
 そのまま鍔迫り合いの状態のまま、2人は睨み合う。

 「・・・梢子ちゃん。どうやら私の気持ちを分かってくれないみたいだね。」
 「桂、何を・・・!!」
 「だったら・・・私も梢子ちゃんにだけは、こんな事をしたくは無かったんだけど・・・」
 「・・・な!?」
 「仕方無いよね・・・梢子ちゃんが私の事を分かってくれないんだから。」

 一瞬、身の危険を感じた梢子。
 とっさに間合いを離そうとするが、一瞬遅かった。
 桂の金色の瞳が光り輝き・・・

 「・・・梢子ちゃん。私の目を見てよ。」
 「・・・・・!!」

 梢子の身体から、力が抜ける。
 それは決して苦痛な物ではなく、むしろ天国にいるかのような、心地良い気分。

 「梢子ちゃん。私、梢子ちゃんの事が大好きだよ。」
 「うっ・・・くっ・・・!?」
 「梢子ちゃん、大好き。」
 「か・・・はっ・・・!!」

 桂の声を聞く度に、桂から「好き」と言われる度に、梢子の身体から力が抜けていく。腰が砕ける。
 何が何だか分からないといった表情の梢子。
 そんな事などお構いなしに、桂は梢子に斬撃を浴びせる。
 だが動きの鈍った梢子は、桂の斬撃を防ぎ切れない。
 梢子の身体が、桂の維斗によって傷つけられていく。

 「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
 「あはははは!!どうしたの梢子ちゃん!?太刀筋が鈍ってるよ!?」
 「くっ・・・桂・・・まさか、あなた・・・」
 「そうだよ!!私のこの『総誘い受けビーム』で、皆を私の虜にしてあげたの!!」

 全く、冗談じゃない。ふざけるな。
 ナミも、保美も、汀も、夏姉さんも、コハクさんも、皆こんな物にやられたというのか。

 「それにしても梢子ちゃん凄いね!!私の『総誘い受けビーム』にここまで耐えるなんて!!」

 て言うか何なのよ、そのふざけた名前は。ただの邪眼でしょうが。
 木刀に鬼払いとかいう名前を付けた時もそうなんだけど、あんたのそのネーミングセンスの悪さはどうにかならないわけ!?

 「梢子ちゃん大好き!!とっても愛してる!!」

 桂に好きって言われる度に、身体から力が抜けていく。
 だけど負けるか・・・こんな物に負けてたまるか・・・!!

 「・・・け・・・ない・・・」
 「ん?梢子ちゃん何か言った?聞こえないからもっと大きな声で言ってよ。」
 「負けない・・・私は負けない・・・!!」
 「・・・もう、往生際が悪いなあ。だけど、そんな梢子ちゃんだからこそ大好きだよ。」
 「負けて、たまるかあああああああああああああああ!!」

 梢子のその想いに応え、《剣》が真の力を発動する。
 《剣》が神々しく光り輝き、そして・・・ 

 「な・・・鏡!?」

 《剣》に映った自分の邪眼。それを見た桂は全身から力が抜ける。
 ギリシャ神話において、勇者ペルセウスはメデューサの石化の瞳に対抗する為に、鏡でメデューサの視線を跳ね返したという伝承が残されている。
 そう・・・桂は自分の邪眼を自分で食らってしまったのだ。

 「・・・ふにゅ~・・・梢子ちゃん、好きぃ・・・」

 梢子の身体の呪縛が解ける。桂の動きが止まる。
 時間にして、わずか数秒。
 だが梢子ほどの達人クラスが相手だと、その数秒が命取りになる。

 「桂!!動きが止まったわよ!!」
 「はっ・・・梢子ちゃん!?」

 ようやく桂が正気に戻った時には、もう遅かった。
 《剣》をピコピコハンマーに変化させた桂が、思い切り桂に殴りかかる。

 「打ち抜けーーーーーーーーー!!その一点を穿てーーーーーーーー(激怒)!!」
 「にぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 梢子の《剣》が、桂の脳天をぶち抜いた。 

4.実はまだまだ続く


 ……こうして、ブラックプリンセス・羽藤桂は制裁を受けた。
 そして桂との壮絶な戦いで心身共に壮絶なダメージを受けた梢子は、その傷を癒す為に綾代の家へと向かっていた。

 「ははは・・・ナミも、保美も、汀も、夏姉さんも、コハクさんも・・・皆、桂に取られちゃったわ・・・」

 電車の中で、疲れ切った表情で窓の景色を眺める梢子。
 だが、その疲れが癒される時がもうすぐ訪れるのだ。

 「・・・桂。あなた、私からアオイシロの攻略対象キャラを、根こそぎ奪ったつもりなんでしょうけど・・・」

 桂が虜にしたのは、全員アオイシロで梢子と結ばれる可能性のある・・・つまり攻略可能な女の子。
 だからこそ桂はサブキャラクターである綾代や百子、葵先生に見向きもせずに、この5人を梢子に攻略される前に梢子から奪ったのだろう。
 だが、しかし。

 「だけどね、桂・・・あなたは知らないでしょうけど・・・」

 まさに盲点。逆転の発想。

 「PC版アオイシロの初回予約特典のドラマCD『青い城の凱旋門』ではねえ!!私は既に綾代の事を1年生の時に攻略済みなのよ!!」

 梢子の表情が、どんどん強張っていく。
 桂に対して「ざま~みろ~!!」とでも言いたげな、何だかよく分からない物凄い表情。

 「桂の馬~鹿!!馬鹿馬鹿馬~鹿!!あははははは!!あははははははははははははは!!」


 一方、その頃。

 「ふふんふ~ん、ふ~んふふふ~ん♪」

 鼻歌を交えながら、綾代は梢子を招待する為にクッキーを焼いていた。

 「今日は梢子さんが私の家に来てくれる日ですわ!!そうだ、今日は梢子さんに、私の家に泊まって頂きましょう!!」

 ドラマCD『青い城の凱旋門』の時のように、また同じ部屋で一夜を共に・・・
 そのまま2人は、愛を確かめ合い、睦み合い、そして・・・
 想像しただけで綾代は、何だかとっても幸せそうな表情になった。

 「そうと決まれば、梢子さんに似合いそうなパジャマを用意しなければ・・・」

 ピンポーン。
 玄関の呼び鈴が鳴った。

 「あら?約束の時間より30分も早いですが・・・」

 真面目一辺倒な梢子の事だから、いつものように約束の時間の5分前に来ると思っていたのに。
 だがそんな事はどうでもいい。こうして梢子が綾代の元に来たのだから。
 満面の笑顔で、綾代は梢子を迎え入れる。

 「まあ、梢子さん、いらっしゃ・・・」

 だが、そこにいたのは梢子ではなく・・・

 「・・・綾代ちゃん」
 「まあ、桂さん、一体どうなさ・・・れ・・・!?」
 「・・・ちょっと大事な話があるんだけど、いいかな?」

 ……桂と梢子の戦いは、まだまだ続く!!