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アオイシロ・アナザーストーリー

★妹自慢


1.似た者同士


 「あら、柚明ちゃんじゃない。久しぶりね。」
 「夏夜さん・・・まさか夏夜さんも今日の番組に?」

 テレビ局の控え室に入ってきた夏夜が、たまたまそこにいた柚明に声を掛けた。
 2人は出演依頼のあった番組に出るために、地元のテレビ局にやってきたのだ。
 現代の浦島太郎と賞賛された柚明は、あの経観塚での出来事から1年が経過した今も絶大な人気を誇っており、同じく現代の浦島太郎と呼ばれている夏夜と共に、毎日のように各テレビ局からの出演依頼が殺到していた。
 出演料が馬鹿に出来ない金額なので、2人共月に一度は依頼された番組に出ているのだが、逆に言うとそれ以上の番組出演は全て断っていた。

 桂ちゃん(梢ちゃん)との時間が取れなくなってしまう・・・という理由で。

 2人にとって何よりも大切なのは、桂や梢子と過ごす穏やかな時間なのだ。
 確かに依頼された番組に全て出演すれば莫大な金額を稼げるのだが、2人共そんな物に全く興味は無いのだ。そもそもそんなに生活に困窮しているわけでもないし、何よりも番組1本の出演料だけで数十万近くもの金が入るのだ。月に一度は出れば充分だった。

 「もしかして夏夜さんも、『あの人のどっきり家族自慢』に出演するんですか?」
 「そうだけど、それじゃあ柚明ちゃんもなの?」
 「はい。折角だから大好きな桂ちゃんの事を皆さんに自慢しようかと思って・・・。」
 「あら、奇遇ね。私も大好きな梢ちゃんの事を皆に自慢しようかと思って、番組に出る事にしたの。」

 現代の浦島太郎。
 11年前(8年前)に従妹を守る為に犠牲になったが、その従妹に救われて元の生活に戻る事が出来た。
 そして、その従妹の事が大好き。
 根方と互角に渡り合う程の戦闘能力の持ち主(術と剣という違いはあるが)。
 だが、肝心な所でうっかりさん。

 あまりにも似た境遇で似た者同士である為なのか、2人は卯奈坂で初めて会ってからすっかり意気投合し、今では頻繁に連絡を取り合うようになっていた。
 とはいえ、まさか今日は互いに同じ番組に出る事になるとは思っていなかったようだが。

 「羽藤さん、鳴海さん、あと10分で番組が始まりますので、スタンバイよろしくお願いしま~す。」

 しばらく2人で談笑していた所へ、スタッフの1人が2人を呼びにやってきた。
 非常に慣れた足取りで、2人はスタジオへと向かっていく。
 既に何回か番組に出演している為なのか、テレビに出る事に対する緊張感のような物も全く感じられない。まさに余裕の表情だ。
 だが、2人がスタジオに入ったその時だ。

 「ほう・・・柚明。剣鬼。まさかお主らもこの番組に呼ばれたのか?」

 後ろからコハクが2人に声を掛けてきた。
 予想外の人物の登場に夏夜は驚いていた。
 何でこんな所にコハクさんがいるのかと。 

 「あの・・・コハクさんって・・・確か守天党の鬼切り役でしたよね・・・?」
 「いかにも先日、役付きに任命されたばかりだが・・・それがどうかしたのか?剣鬼よ。」
 「・・・何でこんな所にいるんです?」
 「番組の解説者として呼ばれたのだ。」
 「あの、そうじゃなくて、鬼切りの任務は・・・」
 「これは副業のような物だ。烏月の所の千羽党は忙しいそうだが、わしらは最近暇なのでな。」
 「・・・・・。」

 そう言えば汀が以前、守天党というのは他の党に比べると、非常に大らかでいい加減な組織だと言っていたのを、夏夜は思い出した。
 沖縄故の南国気質の為なのか、それとも守天党の党首が細かい事を気にしない大雑把な性格をしているせいなのか。
 まさに、党首が堅物で規律にやたらと厳しい千羽党とは正反対の組織だ。
 汀が「あんな息苦しい所(千羽党)で平気な顔をして働いていられるズッキー(烏月)は凄いよ」とか夏夜に愚痴っていたのだが・・・。

 と言うか、何で鬼切り役であるコハクさんが、こんなバラエティ番組に出ているんだろう。
 以前も他局が放送していた恋愛相談か何かの番組で、オニワカが柚明をひねり潰していたのを夏夜は観た事があり、そもそも何でオニワカが出てくるのか、と言うか何で柚明ちゃんがひねり潰されているのか、夏夜は疑問に思えて仕方が無かったのだが。

 「番組放送5分前です。皆さん準備はよろしいでしょうか?生放送なので、くれぐれも言動には気をつけて下さいますようお願いします。」

 スタッフの動きが慌しくなっていく。
 生放送独特の緊張感のような物が、スタッフから伝わってくる。
 それを見たコハクが含み笑いをしながら、自分の席へと向かって行った。
 コハクも柚明や夏夜と同様に何度もテレビに出ているからなのか、その態度には余裕すら感じられる。
 それともコハクにとってテレビの生放送など、緊張するに値しない物なのか。

 「まあ今日は存分に楽しませてもらおう。お主らが桂と梢子をどういう風に自慢するのか、存分に見させてもらうぞ?クックック・・・。」


2.柚明と夏夜の妹自慢



 そして、番組が始まった。
 番組の内容はスタジオに集まった有名人が自分の家族を得意げに自慢し、解説者のコハクが色々とツッコミを入れるという物だった。
 よく見ると、スタジオにはプロ野球選手やら歌手やらアイドルやらお笑い芸人やら、数多くの有名人が集まっている。
 一体これだけのメンツを集めるのに、テレビ曲はどれだけの費用を費やしているのだろうか。
 柚明と夏夜の出演料は20万円だそうだが、中には彼女たちよりも遥かに多い金額を貰っていそうな超有名人までいる始末だ。
 テレビ局も視聴率を稼ぐ為に必死なのだろう。
 彼等は流されたVTRを元に、自分の家族を得意げに自慢していく。

 だがツッコミを入れる役目を担うコハクは、正直とても退屈だった。

 (全くどいつもこいつも、この程度の事でよくもまあ得意げに自慢出来る物よ。)

 インパクト・・・コハクに分かりやすい言葉で言うと「新鮮さ」「意外性」が足りない。コハクはそう思っているのだ。
 客席は有名人たちの巧みな話術もあって盛り上がっていたのだが、コハクは正直つまらなかった。

 剣道を習っているから何だと言うのだ。この程度の実力なら、梢子や剣鬼の方が遥かに腕が立つという物だ。
 料理が得意だから何だと言うのだ。この程度の料理なら、柚明や保美の方が遥かに美味く作れるという物だ。
 大食い競争で優勝しただと?食べ物を粗末にするでないわ。この阿呆が。
 腕相撲大会で優勝しただと?そこまで言うならオニワカに腕相撲で勝ってみせよ。

 心の底ではそんな事を考えていたコハクだが、それでもスタッフから「相手を立ててやって下さいね」と頼まれていたので、コハクは不本意ながらも適当に相槌を打ちながら、そこそこのツッコミを入れていた。
 俗に言う「やらせ」。コハクは姑息な真似をするテレビ局に失望しながらも、報酬を受け取る以上は文句を言う事が出来ない。渋々従う事にした。

 だがそんなコハクの退屈は、次の夏夜と柚明の「私たちの可愛い従妹自慢」で解消される事になる。

 「それでは本日最後のゲストはこの2人!!現代の浦島太郎と賞賛された奇蹟の女性!!羽藤柚明さんと鳴海夏夜さんです!!」

 司会の男性の紹介で、客席がどよめきと歓声に包まれる。
 客席に向かって深く頭を下げる2人。
 どうやらこの瞬間から視聴率が物凄い事になっているらしく、スタッフの何人かがガッツポーズをしていた。
 毎日毎日、各テレビ局が数十万もの金を出してまで、柚明と夏夜の奪い合いをしているだけの事はある。

 「本日紹介して頂くのは、柚明さんと夏夜さんの従妹さんです。え~、まず夏夜さんに伺いたいのですが、一体どういう方なのでしょうか?」
 「はい、私の梢ちゃんはとっても可愛いんですよ?剣道部の部長も勤めてますし、実力も全国クラスなんです。」
 「ほう、それは凄い。さすがは『特練の飛車』の従妹さんですね。まさにサラブレッドですよ。」
 「それに私、梢ちゃんと凄く仲がいいんですよ?」




 「へぇ~、従妹さんに整体師の訓練を手伝って貰ってるんですか。仲睦ましいですねぇ。」
 「はい、梢ちゃんのお陰で毎日少しずつですけど上達してるんですよ?おじい様も私は筋がいいって言ってくれてます。」
 「なるほど。次は柚明さんの従妹さんなのですが、一体どういう方なのでしょうか?」

 司会に促されて、柚明は顔を赤らめながら恥ずかしそうに語り始めた。

 「私も桂ちゃんと凄く仲がいいんですよ?その、一年前の経観塚での出来事なんですけど・・・」
 「経観塚・・・ですか。聞いた事の無い地名ですが・・・。」
 「そこで桂ちゃんと10年ぶりに再会したんですけど・・・」
 「まさに感動の再会ですね。」
 「だけど桂ちゃんったら、私だけじゃなくて他の皆からも愛されてて、それで皆で桂ちゃんを奪い合って・・・まあ桂ちゃんが可愛いからなんですけど・・・」
 「それで柚明さんは嫉妬しちゃったんですね。分かります。」
 「はい。だから私、桂ちゃんを誰にも渡したく無くて・・・ついカッとなって、桂ちゃんと一緒に崖から飛び降りたんです。」
 「・・・は?」 




 『ちょ、ユメイさん、いきなり何・・・うわあああああああああ!?』
 『だって私、桂ちゃんと2人きりになりたかったんだもん。さすがに烏月さんたちも、こんな所までは追って来れないでしょ?』
 『だからって何でいきなり崖から飛び降りるんですか~~~~~~~~~!?』
 『桂ちゃん諦めないで。私が何とかしてみせるから。』
 『嫌ああああああああああああああああああああああ!!』


 グシャッ!!




 『ユメイさん!!いくら何でも無茶し過ぎですよ!!私はユメイさんのお陰で無傷で済みましたけど、ユメイさんが受身に失敗してどうするんですか!?』
 『ごめんね桂ちゃん。でも私、桂ちゃんとどうしても2人きりになりたくて・・・。』
 『全く、ユメイさんったら本当に世話が焼けるんだから!!ほら、私の血を飲んで!!』
 『ん・・・ぴちゃ・・・ぴちゃ・・・』
 『・・・もう大丈夫そうかな。』
 『・・・桂ちゃん、私ならもう大丈夫。大丈夫だから。』
 『もう、ユメイさんったら・・・本当に私がいないと駄目なんだから。』
 『うふふふふ・・・全て私の計画通り・・・』
 『・・・へ?』
 『さすがにここなら誰にも邪魔はされないわよね。』




 『ちょっと、ユメイさん、いきなり何・・・ひあああっ!?』
 『がぶっ・・・ぺろぺろぺろ・・・』
 『ユ、ユメイさん、くすぐった・・・はあ・・・っ・・・』
 『桂ちゃんの身体・・・とても柔らかいわ・・・それにいい匂い・・・』
 『ちょ、ちょっとユメイさん、このサイトの管理人さんが18禁のSSを書くつもりは一切無いって言ってたし、だからこんな・・・』
 『駄目、私もう我慢出来ない・・・桂ちゃん・・・』
 『ユ、ユメイさん・・・』


 ……………。


 「・・・え~と・・・(汗)。」
 「でもあの後、サクヤさんが私と桂ちゃんを助けに来るなんて余計な真似をするから、結局最後まで出来なかったんですよ?」
 「・・・最後まで出来なかったって、一体何を出来なかったんですか。柚明さん。」
 「困りましたね、このサイトの管理人さんが18禁のSSを書くつもりは一切無いって言ってましたから、さすがにそれをこの場で言うわけには・・・」
 「・・・と、とにかく次行きましょう!!次!!」


3.何事も度を超えると良くない



 柚明の凄まじいまでの桂ちゃんラブっぷりを見た夏夜は、これはもう負けられないと思った。
 自分が掲載した梢子との整体院での光景など、先程の柚明のVTRに比べたらどれ程小さき物なのか。
 いつの間にか夏夜は柚明に対抗心を顕わにしていた。
 負けっぱなしは嫌だった。

 「あのですね、実は私、色々と複雑な事情がありまして・・・梢ちゃんの血を飲んだ事があるんです。」
 「ほう・・・従妹さんの血をですか。それは興味深い話ですね。」
 「そのお陰で私は、命を救われたような物なんですよ。」




 「これは・・・口移しで・・・血を飲ませてるのでしょうか。」
 「はい、あの時の私は深い事情があって、意識を失ってたものですから。」
 「ですがこれはある意味、心温まる光景ですね・・・。まさに従妹さんとの強い絆のような物を感じられます。」

 どう?柚明ちゃん。これが私と梢ちゃんの強い絆・・・『アカイイト』の証よ?
 夏夜が勝ち誇った表情で柚明を睨みつける。
 口移しで血を飲ませる・・・これ以上の仲睦ましい光景がそうそうあるかしら?
 夏夜はそんな事を考えていたのだが、それでも柚明は余裕の態度を崩さなかった。
 顔を赤らめながら、柚明は恥ずかしそうに語り始めた。

 「実は私も夏夜さんと同じように、桂ちゃんの血を飲んだ事があるんです。」
 「ほう、柚明さんもですか。それは興味深・・・」




 『だからユメイさん、何で崖から飛び降りるんですかあああああああああああ!?』
 『あんな奴ら(烏月、サクヤ、ノゾミ、葛)、どうせ桂ちゃんの事なんか何も分かっていないんだからあ!!』
 『落ちる落ちる落ちる!!嫌あああああああああああああ!!』
 『桂ちゃんは私と一緒にいるのがいいの!!それが一番の幸せ!!』


 グシャッ!!




 『ずずずずず・・・ぺろぺろぺろぺろぺろ・・・』
 『ユ、ユメイさん、そんな風に血を飲むなんて、ユメイさんはやっぱり変態ですよ!!』
 『んぐ、んぐ、んぐ・・・んちゅ、んはぁ・・・』
 『しかもその血って、今ユメイさんが出した血ですよね!?自分で出した血を自分で飲んで戻すなんて!!』
 『桂ちゃん、忘れた?今の私の身体には桂ちゃんの血も大量に流れているのよ?つまりこれは私の血でもあるし、桂ちゃんの血でもあるの。』
 『だ、だからってそんな・・・そんなに興奮して地べたに這いつくばるなんて!!』
 『こ、これが桂ちゃんと私との絆の証・・・ハァ、ハァ・・・』
 『ユメイさん、みっともないからやめて下さいってばあ!!』




 『そうね、そこまで言うなら桂ちゃんの血を貰おうかしら。』
 『ユ、ユメイさん、そんな・・・鼻からなんて・・・はうっ!!』
 『がぶっ。』
 『ひあっ!!な、何だかくすぐったい・・・!!』
 『んぐ、んはっ、ぴちゃ・・・やっぱり桂ちゃんの血は凄いわ。とても甘くて美味しい・・・。』
 『ユ、ユメイさん・・・』
 『・・・あ、桂ちゃん。こんな所からも血が出てるわ。』
 『ちょ、そんな、そこはちょっと・・・ひああああああああああっ!?』
 『れろれろれろれろれろ』
 『ユ、ユメイさん、そ、そんな所舐められたら、私、頭がどうにかなっちゃいそう・・・はあ・・・っ・・・!!』


 …………………。


 「・・・い、一旦CM入り・・・」
 「オニワカ。この変態をひねり潰せ。」
 「ぶぎゃっ!!」


4.絶対に負けられない戦いがそこにある



 番組の収録が終わり、柚明と別れて帰宅する夏夜。
 今の夏夜は、言いようの無い敗北感に包まれていた。
 自分と梢子の強い絆・・・『アカイイト』の証。それを柚明に見せ付けたはずが、逆に柚明に見せ付けられてしまったのだ。
 圧倒的なまでの、柚明の桂への狂おしいまでの愛を。
 自分と梢子を遥かに凌駕する『アカイイト』の証を。
 あれに比べたら自分の梢子への愛など、どれだけ小さき物なのか。それを完全に思い知らされてしまったのだ。

 このままでは終われない。
 むざむざと柚明ちゃんに負けっぱなしではいられない。
 何とかして柚明ちゃんに一矢報いなければ。
 決意を秘めた瞳で、夏夜は自宅の玄関を開けた。 

 「・・・ただいま。」
 「あ、夏姉さんお帰りなさい。例の番組観たけど柚明さんって凄いよね。まさか桂とあんな事・・・」
 「梢ちゃん、私に血を飲ませてくれる?」
 「・・・え?」

 予想もしなかった言葉に梢子は一瞬、戸惑った。
 そんな梢子を安心させる為に、とても穏やかな表情で夏夜は梢子を見つめる。
 だが表情は穏やかでも、夏夜の心の中は全然穏やかでは無かった・・・。

 「・・・久しぶりに梢ちゃんの血を飲みたくなった物だから。駄目かしら?」
 「いや、別に構わないんだけど・・・いきなりどうしたの?」
 「このまま柚明ちゃんに負けっぱなしでいるわけにはいかないから。」
 「・・・は?」


 がばっ!!


 「ちょ、夏姉さん、どこから血を吸って・・・ひあああああっ!?」
 「れろれろれろれろれろ」