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アオイシロ・アナザーストーリー

★梢子のクジ運


1.まさかの一等賞


 この日、ナミと買い物に出かけていた梢子は、全く予想もしなかった、絶対にありえない、とんでもない状況に直面していた。

 「おめでとうございます!!一等賞の2泊3日の北海道への旅行券・・・見事に当選いたしました!!」
 「な・・・何で・・・!?」

 自分が回した機械から金色の球が転がり落ちたのを見て、梢子は唖然としてしまった。
 幼い頃に一生分の運を全て使い切ってしまったと仁之介が言うほど、梢子のクジ運は最悪なのだ。
 事実、これまで初詣でのおみくじは全て大凶だったし、雑誌の懸賞にも一度も当たった事が無いし、今回のような商店街でのハズレ無しのクジでも、残念賞のティッシュペーパーとか、たわしとか、そういう類の物しか当たった事が無いのだ。
 それなのに、よりによって一等賞・・・北海道への旅行が当たってしまうとは。

 「梢子ちゃん、凄いです!!まさか一等賞を当てるなんて!!」
 「・・・何だろう・・・何故かとても嫌な予感がするわ・・・」
 「どうしてですか?一等賞を当てたのに。北海道への旅行券ですよ?」

 店員から旅行券を貰ったナミは、とても不思議そうな表情で梢子を見ていた。
 確かに一等賞を当てたのに嫌な予感がするなんて言われたら、不審に思えても仕方が無いだろう。
 だがナミは、梢子の壊滅的なまでのクジ運の悪さを知らないのだ。

 「ナミ。私ね・・・はっきり言ってクジ運が無茶苦茶悪いのよ。」
 「そうなんですか?」
 「おじいちゃんが言うにはね、私は幼い頃に一生分の運を使い切ってしまったんだって。」
 「・・・もしかして、安姫様に助けられたあの時にですか?」
 「だから私、こういった抽選会で何かが当たるなんて、一生縁が無い物だと思っていたの。それなのにいきなり一等賞よ?これはもう逆に気味が悪くて・・・。」

 確かに梢子の不安も理解出来なくはないが、それでも北海道への旅行にタダで行けるのだ。
 ナミは努めて明るく梢子の事を励ました。
 それにナミ自身、卯良島という閉ざされた世界で暮らしていて、外の世界の事を知らないのだ。だからこそナミにとっての未知の世界である、北海道への旅行がとても楽しみだった。

 「梢子ちゃん、これはきっと安姫様が、梢子ちゃんにお礼をしてくれたんですよ。」
 「お礼?何の?」
 「梢子ちゃん、馬瓏琉を倒してクロウクルウを再封印したじゃないですか。きっと安姫様が梢子ちゃんへの感謝の印として、ご加護を与えてくれたんですよ。」
 「う~ん・・・そうかしら?」
 「そうですよ!!きっとそうに違いないですよ!!だから梢子ちゃん、もっと喜びましょうよ!!」
 「・・・そうね・・・折角一等賞が当たったんだもの。ナミの言う通り、ここは喜ぶべきよね。」
 「はい!!」

 自分のクジ運の悪さ故に、一等賞を当ててしまった事に不安を感じた梢子だったが、折角の北海道への旅行だ。
 梢子はナミの言う通り、前向きに考える事にした。

 「早速、旅行会社に電話しないとね。旅行の日取りはいつ頃がいいか、夏姉さんとおじいちゃんにも相談しないと。」


 ……壊滅的なクジ運を持っているにも関わらず、何をどう間違ったのか、抽選会で一等賞を当ててしまった梢子。
 それ故に、逆に梢子の心を不安が支配したのだが、ナミに励まされて梢子は努めて前向きに考える事にした。
 ナミの言う通り、これは安姫様が自分へ送ってくれた礼なのだと。


 だが、みんな・・・これで終わりだと思ってはいけない。
 梢子は決して、安姫から加護など受けてはいないのだ。
 何だかんだ言って、結局梢子はクジ運が悪いのだ。

 そう・・・梢子の壊滅的なクジ運の悪さが最大限に発揮されるのは・・・ここからだ・・・。

2.まさかの同伴


 結局、部活の予定を考慮して、5日続けて部活動が休みである盆休みに旅行に行く事になったのだが、

 「1日や2日ならともかく、3日も店を空ける訳にはいかねえよ。大体北海道なら、秋芳に死ぬほど連れ回されたから興味ねえしな。お前等だけで楽しんで来いや。」

 という事で、仁之介は今回の旅行への不参加が決定し、梢子、ナミ、夏夜の3人で旅行に行く事が決まった。
 旅行券は4人分なので、この際だから誰か誘おうかと梢子は思っていたのだが、残念な事に誘った全員が既に予定が埋まっていて、無理だった。
 桂は柚明やノゾミと一緒に経観塚にいるお兄さんに会いに行くと言っていたし、ついでに百子も経観塚の実家に帰る予定なので保美と一緒に同伴すると言っていたし、汀もコハクもその日は守天党の社員旅行でグアムに行くとか言っていたし、綾代に至っては過保護の両親の猛反対に遭って、誘う事自体が出来なかった。
 盆休みという時期が悪かったのかもしれないが、この際だから梢子は家族水入らずで旅行を楽しむ事にした。

 そして、旅行当日・・・梢子たちは千歳空港へと向かう飛行機の中にいた。
 空港、飛行機、そして未知の世界である北海道・・・どれもこれも初体験で新鮮で、ナミはとてもわくわくしていた。
 飛行機の滑空前・・・窓際の席で外の風景を楽しそうに眺めているナミ。
 その隣の席に梢子が座っていたのだが、その隣の席は空席で、夏夜の航空券の座席番号は反対側の窓際だった。 

 旅行会社の人が平謝りしていたのだが、どうやら本来夏夜が座るはずだった梢子の隣の席は、既に先約があったとの事。
 予約が確保できずに止むを得ず通路側にしたのではなく、以前から予約がしてあったというのだ。
 普通は窓際の席を取る物なのに、何でまたこんな通路側の席を好き好んで取ろうとするのか。
 余程の物好きがいる物だ。一体誰なんだろう・・・梢子はそんな下らない事を考えていた。
 だが、現れた「物好き」の姿を見て、梢子は唖然としてしまった。

 「すいません、隣、よろし・・・ぐっ・・・」
 「・・・げ。」

 梢子の隣の席を予約したのは、何と烏月だったのだ。
 互いに顔を見合わせて、引きつった表情を見せる。
 はっきり言ってこの2人は、特に険悪な仲という訳ではないが、あまり仲がいいとは言えなかった。
 何しろ桂を巡っての恋敵だし。現在発売中のコミックス「花影抄」の第3巻では<<剣>>と維斗で戦ってるし。

 何でこんな時にこんな所で、こんな奴に出会ってしまうのか。
 梢子と烏月の表情がそう語っていた。
 そして梢子は、やはり自分はクジ運が悪いんだと改めて実感した。
 楽しいはずの旅行で、まさか烏月と同伴する羽目になるとは。

 「やれやれ・・・まさか私の隣の席が、よりにもよって貴方だとはね。梢子さん。」

 溜め息を付きながら、烏月はどっかりと席に座る。
 それと同時にスチュワーデスからのアナウンスが入り、飛行機が上空へと飛翔する。
 どんどん遠くなっていく地上の風景に夢中になるナミを尻目に、梢子と烏月はあんまり楽しくなさそうな表情で話をしていた。
 隣にいるのが桂(さん)だったら良かったのに。
 口には出さなかったが、2人の表情が思い切りそう語っていた。

 「それで梢子さん。今日はどうしたんだい?一体何の用件で千歳まで?」
 「ああ、ナミと夏姉さんを連れて旅行なんですけど・・・その、抽選会で旅行券が当たったから。」
 「そうか。だから2人も一緒だったのか。」
 「そういう烏月さんは、千歳まで何の用なんですか?」 
 「ああ、ちょっと鬼切りの任務でね。」
 「わざわざ烏月さんが千歳まで?」
 「北海道の鬼切り部が社員旅行でね。アメリカのメジャーリーグの試合を観に行っているらしいんだ。だから葛様の命令で私が派遣されたんだよ。」
 「はあ・・・。」

 烏月が言うには、鬼切り部も鬼と戦う使命を持っているとはいえ、一般企業と同じできちんと休日は設けられているし、社員旅行などのイベントもあるとの事。
 確かに365日働き詰めでは心も体も持たないだろうし、英気を養うのも必要だろう。梢子はむしろ当然の事だと思っていた。
 そこで各党毎にローテーションを組んで、どこかの党が社員旅行などで留守になった時に、他の党がサポートするという形を取っているのだ。
 ちなみに烏月の所属する千羽党は、来週から社員旅行でハワイに行くとの事。

 「ところで烏月さん、何でわざわざこんな通路側の席を予約したんですか?普通は窓際を予約する物ですよね?」
 「ああ、それはね・・・。」

 烏月が言いかけた途端、外国人の男数人が拳銃を持って乗客を威嚇した。
 乗客の誰もが怯えた表情を見せ、騒ぎ立てる。

 「ハイジャック!?まさか、こんな国内の便で!?」
 「・・・こういう連中が現れた時に、迅速に対処出来るようにするためだよ。梢子さん。」
 「な・・・!?」

 維斗を抜いた烏月が一瞬で間合いを詰め、斬りかかる。
 一瞬即斬。
 銃を撃つ暇さえ与えず、烏月の神速の斬撃が、あっという間に外国人の男たちをなぎ払う。
 何が起こったのか理解出来ずに取り乱し、騒ぐ乗客たち。

 「心配はいらない。峰打ちだよ。」 

 気絶している外国人の男たちを係員に任せ、維斗を鞘に収めて何食わぬ顔で、烏月は席へと戻っていく。

 「・・・悔しいけど、やっぱり烏月さんは私より強いわ。」

 梢子は今の烏月の剣さばきを見て、改めてそれを思い知らされた。
 まあ、剣道の全国クラスとはいえ一般人でしかない梢子と、鬼切り役である烏月とでは、戦闘能力に差があって当たり前なのかもしれないが。
 それでも梢子は悔しいとは思いながらも、烏月の実力自体は1人の武人として認めていた。

 「いや、梢子さんも充分に強いよ。あの卯奈坂での一件以来、葛様も随分と貴方の事を気に入っていたしね。出来れば今すぐにでも千羽党に引き入れたい位だよ。」
 「はあ・・・。」
 「そんな事より、折角の旅行なのにハイジャックに遭うとは・・・貴方は本当に運が悪いようだね。たまたま私がいたから良かったものを・・・。」

 烏月の言葉で、梢子は改めて思い知らされた。
 私は本当にクジ運が悪い。

3.腐れ縁



 梢子たちは烏月と別れ、一通り観光施設を回った後に、予約していたホテルに辿り着いた。
 今まで見た事も無かった様々な物を体感して、ナミはとても満足そうな表情をしていた。
 まあ、飛行機の中で烏月と同伴する羽目になったとはいえ、ナミがこれだけ満足してくれたのだから、これはこれで良かったのかもしれない。
 時計の針は、既に夕方6時を回っていた。

 「すいません、今日予約していた小山内と言う者なんですけど・・・。」
 「ああ、小山内様ですね。お待ちしておりました。ここにサインをお願い出来ますか?」
 「・・・これでいいですか?」
 「はい、小山内梢子様、鳴海夏夜様、根方維己様ですね。確かにご予約伺っております。それではお部屋の方に案内いたしますね。」

 係員の女性に連れられて、梢子たちは部屋に案内される。
 質素な部屋だがとても綺麗に掃除されていて、窓から見える広大な草原の景色がとても美しかった。
 草原を走り回る沢山の羊たち。農家の人が放し飼いにしているのだろうか。
 良く見ると、確かに農場らしき施設が遠くに見える。

 「うわ・・・綺麗です・・・。」
 「はい、この景色は当旅館の自慢の一つなんですよ。うふふ。」

 目の前に広がる壮大な光景に感嘆の声を上げるナミに、係員は穏やかな微笑みを見せる。
 確かにこの美しい光景は、疲れた心と身体を癒すには充分だろう。
 この景色を見て、何だか梢子も癒されるような気してきた。

 「夕食はいつ頃お持ちしましょうか?7時からご用意出来ますが・・・」
 「じゃあ7時で。」
 「かしこまりました。温泉の方は24時間いつでも入れますので。それでは失礼いたします。」

 しばらくの間、3人でくつろぎながら談笑していたのだが、10分程経ってから係員が慌てて駆けつけてきた。
 一体何が起こったのか。その申し訳無さそうな表情に、梢子は何だかとても嫌な予感がした。

 「お客様、申し訳ありません。実は当旅館を予約していたお客様の部屋が、何者かに荒らされてしまったのですが・・・」
 「え!?まさか泥棒!?」
 「はい、現在警察の方が現場検証を行っているんです。それでお客様には本当に申し訳無いのですが、そのお客様と相部屋にさせて頂いてもよろしいでしょうか?18歳の女子高生の方なのですが・・・」
 「ナミ、夏姉さん、どうする?」

 相談の結果、2人は特に反対はしなかったので、梢子はその女子高生を受け入れる事にした。

 「ああ、どうもありがとうございます!!実は他のお客様には全員断られてしまいまして、皆さんにも断られたら一体どうしようかと思っていたのですが・・・」
 「はあ・・・そうですか・・・。」
 「それでは今から、そのお客様をお連れしてきますので。少々お待ち頂けませんか?」

 まあ自分と同年代の女の子だし、何かと話も合うかもしれない。年が離れたおばさんとかが来るよりは肩身の狭い思いをする事は無いだろう。
 自分たちに迷惑を掛けさえしなければ、特に拒絶する必要も無い。
 そう梢子は思っていた。思っていたのだが・・・

 「すみません、お世話になりま・・・んな・・・!?」
 「・・・げ。」

 その女子高生は、何と烏月だったのだ。
 2人共、何だかとても引きつった表情になる。
 何でまたこんな所で再び巡り合ってしまうのか。
 そんな2人の心情など知らずに、夏夜はとても心配そうな表情で烏月に話しかけた。

 「まあ、奇遇ね烏月ちゃん。鬼切りの任務はもう終わったの?」
 「は、はい・・・たった今、片付けたばかりなんですが・・・」
 「そう、お疲れ様。大変だったでしょう?それにしても予約していた部屋が荒らされるなんて可哀想。今日はここに泊まっていきなさいよ。梢ちゃん、いいでしょう?」

 夏夜に促されて、梢子は言葉に詰まった。
 確かに3人で相談して受け入れる事を決めたのだが、まさかよりにもよって烏月だったとは。
 だが一度決めた事を後になって撤回するなど、梢子の剣道部部長としてのプライドが許さなかった。
 それに、確かに烏月が桂を巡っての恋敵とはいえ、烏月はとても誠実で礼儀正しい娘だ。自分達に迷惑を掛ける事は絶対に無いだろう。

 「・・・まあ、いいですよ。私だって烏月さんに野宿しろだなんて言えないし。」
 「最悪の場合はそれも覚悟していたんだが・・・まさか貴方もこの旅館に宿泊していたとはね。」
 「まさか烏月さんもこの旅館を予約していたなんて。」
 「これも一種の腐れ縁という奴なのかもしれないね。取り敢えず礼を言わせてもらうよ。」
 「はあ・・・」


 そして夜が更け、梢子たちが寝静まっている頃。
 薄暗い旅館の廊下を、1人の中年の男が忍び足で歩いていた。
 係員の目を盗んで烏月の部屋を荒らした泥棒だ。性懲りもせず今度は梢子の部屋を狙いに来たのだ。
 その気配の消し方から、相当な隠密行動のプロだという事が分かる。

 「くっくっく・・・この旅館の警備体制は本当にボロいぜ。これならいくらでも盗み放題だ。」

 最近のホテルで増えている、ICカードで施錠する方式の扉。
 ピッキングが不可能なので侵入者対策は完璧だと思われがちだが、実は鍵を開ける際に不審な音がしないという落とし穴もある。
 そしてICカードが無いと開けられないとはいえ、そのICカード自体をコピーされてしまってはどうしようも無い。
 旅館側としてはプロテクトや暗号化など、コピー対策もきちんとしているつもりなのだろうが、この泥棒のハッキング技術はさらにその上を行っているようだ。
 不正に作り出した偽のICカードで、梢子の部屋の鍵を開ける。

 泥棒は事前に今日の宿泊者名簿を調べて、この部屋にいるのは若い女4人だという事を確認していた。だからこそ盗みの標的に選んだのだろう。
 そしてあばよくば、その女たちを拘束して、あんな事やこんな事を・・・

 「ぐへへ、ぐへへへへ・・・今からよだれが止まらねえ・・・これだから旅館の盗みは辞められねえぜ・・・ひひひひひ・・・」

 だが可哀想な事に、この泥棒は知らなかった。
 ここに泊まっている若い女というのが鬼切り部千羽党鬼切り役と、その鬼切り役に一目置かれている剣道の全国クラスの実力者と、かつてコハクと汀に剣鬼と呼ばれた「特練の飛車」だという事を。
 泥棒が扉を開けた途端、いきなり突きつけられた維斗と2本の竹刀。

 「んな・・・!?」

 予想外の出来事に泥棒は唖然とする。

 「気配の消し方は見事だったが、貴方はあまりにも欲情を表に出し過ぎている。これでは気付いてくれと言っているような物だよ。」
 「ごめんなさい。烏月さんが寝言で私の悪口ばかり言うから、眠れなくて。」
 「こんな夜遅くにこそこそと、一体何の用なのかしら?」

 烏月、梢子、夏夜が厳しい目つきで泥棒を睨んでいる。 
 完全に気配を消したつもりだったのに、物音1つ立てなかったのに、何故こいつらは自分の存在に気付いたのか。
 泥棒は焦りを隠せなかった。

 「な、何だこいつら・・・!?だが、所詮は女3人だ!!こうなったら力づくで・・・!!」

 スタンガンを取り出した泥棒だったが、抵抗する暇も与える事無く、一斉に3人の剣が泥棒に襲い掛かった。


 「千羽妙見流奥義・魂削り!!」
 「打ち抜けーーーーー!!その一点を穿てーーーーー!!」
 「鞘は無いけど虎噤み!!」


 ドカッ!!バキッ!!グシャッ!!


 「ぶぎゃあああああああああああああああああああ!!」

 烏月たちにフルボッコにされた泥棒は、梢子からの通報で駆けつけた警察官によって、あっさりと現行犯逮捕されたのだった。
 そんな騒ぎなど知らず、安らかな寝息を立てて眠っているナミ。

 「・・・梢子さん。よりにもよって旅行先で泥棒に遭うなんて、貴方は本当に運が悪いようだね。たまたま私が同じ部屋で寝ていたから良かったものを・・・」

 烏月の言葉で、梢子はまたしても思い知らされた。
 私は本当にどうしようも無くクジ運が悪い。 


4.結局最後の最後まで



 そして翌朝、梢子たちは再び烏月と別れた。
 アメリカまで旅行に行っていた北海道の鬼切り部が今日帰ってくる予定なので、今回の任務に関して報告をしなければならないのだという。
 それで、わざわざ自分達の代わりに鬼退治をしてくれたという事で、そこの党首が烏月にどうしても礼をしたいと言い出して聞かないのだそうだ。
 なので、千羽党に戻るのは翌日になりそうだと烏月が言っていた。

 梢子たちはもう一泊の旅行を満喫し、様々な観光施設を回り、美味しいものをたらふく食べて・・・
 そして翌日、帰りの飛行機に乗る事になった。
 今回の旅行を充分に満喫したナミは、とても満足した表情を見せている。
 行きの飛行機で烏月と同伴する羽目になるわ、ハイジャックに遭うわ、烏月と一緒の部屋で寝る羽目になるわ、泥棒に遭うわで散々だったが、ナミがとても喜んでくれたので、これはこれで良かったのかもしれない。

 そして窓側の席にナミが座り、梢子はその隣の席に座り、夏夜は反対側の窓側の席に座り・・・

 「・・・梢子さん。また貴方なのか。」
 「・・・げ。」

 またしても烏月が隣の席に座り・・・

 「お前等騒ぐんじゃねえぞコラァ!!少しでも動けば容赦なく撃つからな!!おいパイロット!!この機体をフィリピンまで飛ばせ!!早くしろ!!」

 ハイジャックが拳銃を持って乗客を脅して・・・。

 「・・・がはっ!!」
 「安心しなよ。峰打ちだから。」

 烏月がハイジャックを叩きのめした。

 「な・・・何でこんな・・・最後の最後まで・・・」
 「・・・梢子さん・・・貴方は本当に壊滅的に運が悪い人だね。これはもう一種の呪いか何かなんじゃないのかい?たまたま私がいたからよかったものを・・・。」

 烏月の言葉で梢子はまたしても思い知らされた。
 私は本当にどうしようもなく絶望的にクジ運が悪い。