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アオイシロ・アナザーストーリー

★舞い降りた蝶



1.好きだからこそ



 「・・・ふっ!!」

 目覚まし時計を使わずに、決められた時間通りに起きられるというのは、人に自慢出来る特技の一つだ。
 最低限の準備は、仮眠を取る前に済ませてある。

 「よし・・・行こう・・・!!」

 皆が寝静まっている中、梢子は蜘蛛討ちを手に鬼の踏み石へと向かっていた。
 魍魎にさらわれたナミを助け出すために。
 既に潮は引いており、鬼の踏み石はその姿を晒している。
 潮が満ちてしまえば、再び引くまでには夕方まで待たなければならない。そして合宿は今日が最終日だ。
 何の目的で魍魎がナミをさらったのかまでは分からないが、とにかくナミを助け出す為には今ここで踏み石を渡るしか無かった。

 他の皆に黙って、まして部長である自分が規律を乱すような真似をする事に関しては、梢子は本当に申し訳無いと思っていた。
 だが、それでも引く事など出来ない。
 それに、自分がナミを助けに行く事を皆に伝えたら、間違いなく猛反対されてしまうだろう。
 特に自分を慕ってくれる、自分を好きだと言ってくれた桂は・・・。
 だからこそ黙って行くしかなかった。他の皆を危険な事に巻き込まないために。

 「・・・私、部長失格よね。」
 「本当だよ。梢子ちゃん。」
 「・・・え!?」

 梢子の目の前にいたのは、木刀を持った桂だった。
 予想外の出来事に梢子は驚いた。
 自分がナミを助けに行く事は誰にも伝えていないはずなのに。自分の胸の内にしまっておいたはずなのに。
 桂は少し寂しげな微笑を見せながら、梢子の瞳をじっ・・・と見つめている。

 「桂・・・。」
 「梢子ちゃん。こんな夜中にこんな所で何してるのかな?」
 「・・・ちょっと、夜風に当たりにね・・・。」
 「蜘蛛討ちを持って?」
 「・・・・・。」
 「梢子ちゃん、本当に嘘が下手だよね。」
 「・・・皆からよく言われるわ。」

 この卯奈坂において伝説の鬼退治の剣法が伝わっているという話をサクヤから聞いて、夏休みを利用して柚明やノゾミを連れて、剣道の自主トレを兼ねた旅行に来ていた桂。
 そこで宿泊先の咲森寺において桂は偶然梢子と再会し、これもまた何かの縁という奴で、剣道部の練習にも一緒に参加していた。

 桂は以前、夜中に3人のチンピラに襲われていた所を助けてもらってから梢子と親しくなり、それから2人は住所が近いという事もあって、度々会うようになっていた。
 桂が梢子の家を訪ねたり、梢子が桂のマンションを訪ねたり。
 桂が梢子をデートに誘ったり、梢子が桂をデートに誘ったり。
 一緒に笑ったり、一緒に泣いたり、時には喧嘩したり、仲直りしたり・・・。
 いつの間にか2人は、互いの胸の内を余す事なく晒し出せるような、そんな親しい関係になっていた。
 だからこそ、桂は梢子の微妙な一挙一動の『違和感』を敏感に察知し、梢子の様子がおかしい事に気がついたのだろうか。

 「桂こそ、こんな所に、こんな夜中に、木刀なんか持って何してるのよ?」
 「梢子ちゃん。その前に私の質問に正直に答えてよ。」
 「・・・・・。」
 「こんな所に、こんな夜中に、蜘蛛討ちを持って、梢子ちゃんは一体何をしに来たのかな?」
 「桂・・・。」
 「梢子ちゃん、答えてよ。」

 桂の視線は、梢子の一挙一動を見逃さない。
 これ以上隠し通すのは無理だと判断した梢子は、正直に話す事にした。
 強い信念を秘めた瞳で梢子は桂を見据え、そして力強く宣言した。

 「桂。私は鬼の踏み石を渡って卯良島に行くつもりなの。さらわれたナミを助けるために。」
 「そう・・・やっぱりそうなんだ・・・。」
 「だから桂、私は・・・」
 「駄目だよ、梢子ちゃん。行っちゃ駄目だよ。」

 桂は悲しげな表情で梢子を止めた。
 その瞳からは涙が溢れ出ていた。

 「あそこは禁足地だよ?」
 「知ってる。」
 「それに、危険な場所でもあるんだよ?」
 「知ってる。」
 「梢子ちゃんは部長だよ?部長なのに規律を乱すような事をしたらいけないよ?」
 「分かってる。皆には本当に申し訳無く思ってる。だけど・・・」
 「どうして梢子ちゃんが行かなくちゃいけないの!?汀ちゃんとコハクさんに任せればいいじゃない!!」
 「でも私はナミを・・・」
 「梢子ちゃんはあの2人とは違うよ!!ただの一般人じゃない!!なのにどうしてそんな危険な事をしないといけないの!?」
 「桂・・・。」

 桂は何となく理解していた。梢子が行こうとしている場所がどれだけ危険な所なのか。
 直接汀やコハクから聞いたわけではないが、桂の体に流れる贄の血が警告を発しているのだ。
 遊び半分の冒険ごっこでは済まされない場所だという事が。
 だからこそ、桂は梢子を素直に行かせるわけにはいかなかった。
 梢子に死んでほしくないから。ずっと梢子のそばにいたいから。

 だが桂にも分かっていた。梢子はまさに『香車』。何事にも一直線でとても頼りがいがあって、一度心に決めた事は絶対に曲げないという事を。
 だからこそ、桂もまた覚悟を決めてここにやってきたのだ。

 「梢子ちゃん。昨日梢子ちゃんに告白したばかりだけど、私、梢子ちゃんの事が好きだよ。」
 「うん・・・私も桂の事が好きよ。」
 「梢子ちゃんが好き。大好き。だからこそ、私は梢子ちゃんを力づくで止める。」

 桂は木刀を構えた。その瞳には一片の迷いも感じられなかった。
 梢子にも分かっていた。桂はまさに『歩』。普段は鈍くさくて頼りないけど、それでも一度心に決めた事は絶対に曲げないという事を。
 正反対の性格をしているが、何だかんだで2人は似た物同士なのだ。
 だからこそ、こうして親しくなれたのかもしれない。
 だからこそ、心の底から笑ったり、泣いたり、喧嘩出来る仲になれたのかもしれない。

 「桂。私も桂の事が好き。大好き。だからこそ、私の覚悟を桂には分かってほしい。桂が好きだからこそ、私は桂を倒して踏み石を渡る。」
 「どうしても引けないんだね?」
 「今更そんな事出来ないわ。」
 「そう・・・だったら・・・」
 「戦うしかないわね。」

 梢子も木刀を構えた。その瞳には一片の迷いも感じられなかった。

 「桂、行くわよ!!」
 「梢子ちゃん!!」
 「だああああああああああ!!」
 「やあああああああああっ!!」

 2人同時に突進し、互いの木刀がぶつかり合う。
 鍔迫り合いの状態のまま、2人は睨み合う。

 「ところで桂、さっきから気になってたんだけど、何で桂が木刀なんか持ってるわけ!?」
 「烏月さんからもらったの!!経観塚のご神木を材料に作った物だって!!強い霊力が込められた物だから護身用に持っておけって!!」
 「銘はあるの!?」
 「鬼払い!!」
 「何よそれ、ちょっとセンスが悪いんじゃないの!?」
 「何よ、私が考えた名前なのに!!」

 蜘蛛討ちと鬼払いが何度もぶつかり合う。

 「桂ってさ、剣道初めてどれ位だったっけ!?」
 「1年ちょっとかな!!」
 「1年でそれだけ動ければ大した物だわ!!うちの百子といい勝負なんじゃないの!?」
 「私が剣道を始めた理由はね、1年前に経観塚に行った時に、私は皆に守られてばかりで何も出来なくて、私を守って皆が傷ついて、それが凄く悔しくて、だから強くなりたいと思ったからなの!!皆に頼るばかりじゃなくて、自分の力で自分の身を守れるようになりたいって!!」
 「桂、その気持ちは私にも分かるわ!!」
 「汀ちゃんもね、私はいいセンスを持ってるって!!とても剣道を始めて1年とは思えないって!!」

 確かに桂のセンスはいい。桂の動きは剣道を始めて1年そこそこの動きではない。
 だが梢子も桂に劣らないセンスを持っている。それに加えて梢子は小学生の頃から剣道を習っているのだ。
 圧倒的な実戦経験の差。それだけはどうにも埋めようが無かった。
 次第に桂は梢子に押され始めていた。

 「さすがに梢子ちゃんは強いね・・・剣術だけなら敵わないよ・・・。」
 「桂、もう降参する気になった!?」
 「ううん。しないよ。」

 桂の周囲を無数の月光蝶が舞っていた。
 だが梢子は、この非現実的な光景にも全く動揺を見せなかった。
 一片の迷いも無い力強い瞳で桂を見据える。

 「確かに剣術だけなら梢子ちゃんには敵わないよね。・・・『剣術だけなら』ね。」
 「桂、あなた本当に何者なの?」
 「梢子ちゃん・・・驚かないんだね・・・。」
 「だって、桂の携帯からノゾミが飛び出る位だもの。今更そんな事くらいじゃ驚かないわよ。」
 「む~、そんな事って何よ~!?私、ここまで使いこなせるようになるまで凄く苦労したんだから!!」
 「とても綺麗な蝶ね。名前はあるの?」
 「・・・月光蝶。」
 「そう・・・。」

 確かにその名の通り、月の光に照らされた無数の蝶は、青く白く美しく輝いていた。

 「梢子ちゃん。私のこの力を見た人たちはね、みんな私の事を気持ち悪いとか化け物とか言うの。でも梢子ちゃんは綺麗だって言ってくれた。」
 「何よ、正直な感想を述べただけじゃない。」
 「うん・・・梢子ちゃん、ありがとう。」

 無数の月光蝶が梢子に襲い掛かる。
 普通なら、いきなりこのような非日常的な光景を目の前にしたら取り乱すだろう。
 だが何故か、梢子の心は不思議と落ち着いていた。

 「狙い打つ!!」

 的確に無数の斬撃を浴びせ、月光蝶を次々と還していく。
 だが梢子が還した分だけ桂が再び呼び出すので、きりがない。
 次第に梢子は桂に追い詰められていた。
 先程までとは完全に立場が逆転していた。

 「梢子ちゃん、いい加減降参する気になった!?」
 「これ位で・・・するわけないでしょ!?」
 「お願いだから降参してよ!!私と一緒に咲森寺に帰るって誓ってよ!!でないと私、梢子ちゃんをボロボロにしちゃうよ!!」

 仕留め損ねた月光蝶の一匹が梢子の左腕に直撃した。

 「熱っ・・・!!」
 「梢子ちゃん!!私は梢子ちゃんが好き!!だけど好きだからこそ容赦しないから!!だから、お願いだから降参してよ!!」
 「ぐっ・・・負けない・・・!!」
 「梢子ちゃん!!」
 「負けない・・・負けない!!」

 梢子は蜘蛛討ちを上段に構えた。
 防御を捨てた、攻撃重視の上段の構え。
 このまま長期戦になれば体力を削られるだけだ。桂も月光蝶を呼び出す度に消耗するようだが、梢子の消耗はそれ以上だ。
 だからこそ、短期決戦で決着をつけるつもりなのだ。

 「私も桂が好き!!好きだからこそ引けない!!」

 梢子は全身全霊の一撃を桂にぶつける。

 「私は・・・私は、卯良島に行くんだああああああああああああああ!!」

 梢子は『香車』。雷迅の如き勢いで敵を貫く『香車』。
 『飛車』と呼ばれた夏夜にはまだまだ遠く及ばないだろうけれど、それでも『香車』はたったの一手で敵陣に攻め込む爆発力があるのだ。
 梢子の斬撃が桂に襲い掛かる。だが桂も冷静だ。梢子の斬撃をギリギリ食らわない程度に後ろに下がり、カウンターで月光蝶を浴びせようとする。
 梢子の斬撃が桂の目の前を空振る・・・と思いきや。

 「な・・・伸び・・・!?」

 梢子の斬撃が桂の右肩を直撃した。
 梢子の得意技の1つ、片手面。斬撃の途中で木刀を両手持ちから右手持ちに替える事で、とっさに間合いを伸ばす技だ。
 桂が右肩を抑えてうずくまる。それに呼応して桂が呼び出した月光蝶が消え失せた。
 梢子は、桂に勝ったのだ。

 「あぐっ・・・!!」
 「桂!!大丈夫!?その、自分でやっておいて何だけど・・・」
 「大・・・丈夫・・・これ位の怪我なら・・・自分で治せるから・・・」

 桂が呼び出した1匹の月光蝶が、桂の右肩に溶けていく。
 やがて痛みが引いたのか、桂は何事も無かったかのように梢子の手を借りて立ち上がった。
 手を繋ぎながら、お互いに見つめ合う桂と梢子。

 「梢子ちゃん、本気で戦ってくれてありがとう。」
 「私も、桂が手加減無しで戦ってくれて嬉しかった。」
 「・・・素直に認めるね。私の負けだよ。だから私はもう梢子ちゃんを止めないから・・・もう・・・止められないから・・・」
 「桂・・・ごめん・・・でも私、もう行かなきゃ・・・」
 「うん、分かってる・・・でもその前に・・・梢子ちゃん。」
 「何?」
 「梢子ちゃんが卯良島へ行ってしまっても、私は梢子ちゃんと繋がっていたい。梢子ちゃんに力を与えたい。だから・・・」

 桂は何の迷いも無い力強い瞳で、梢子に告げた。

 「私の血を飲んで。」


2.二人を繋ぐ『アカイイト』



 いきなりカッターナイフで右手首を切った桂を見て、梢子は顔色を変えた。

 「な・・・ちょっと桂、何やってるのよ!?」
 「だから、梢子ちゃんに私の血を飲んでもらいたいんだってば。」
 「血を飲むって・・・そんな、何を馬鹿な事を!!」
 「私の血は特別なの。贄の血って言うんだけどね、私の血を飲んだ人外の存在は、力を増幅させる事が出来るの。あ、この事は皆には内緒にしてもらえるかな?」

 桂の右手首からボタボタと血が流れ落ちる。
 さすがに致命傷には程遠いが傷跡は深く、血がどんどんあふれ出てくる。
梢子には、桂が何を考えているのか、桂が何を言っているのか理解出来なかった。
 血を飲めなんて、何を馬鹿な事を言い出すのか。

 「だから梢子ちゃん、飲んで。私の血を飲んで、私の力と想いを梢子ちゃんの中に。」
 「桂!!馬鹿な真似はやめなさい!!さっきの力で早く傷口を・・・!!」
 「・・・もう、梢子ちゃんったらしょうがないなあ。人の話をちゃんと聞いてた?」

 桂は自分が傷つけた右手首に口を当て、次の瞬間・・・。

 「ちゅっ。」
 「・・・・・!?」

 唇と唇が触れ合った。
 桂の口の中の血が、梢子の口の中に流れていく。
 桂の『力』と『想い』が、梢子の中に流れていく。
 梢子の中に、桂の『力』と『想い』が溢れていく。

 「んん・・・んんんっ・・・んはっ!!」
 「はあ・・・梢子ちゃん、今のが私のファーストキスなんだよ?」
 「私もよ!!って言うか口移しで血を飲ませるファーストキスなんて、ちょっとあり得ないと思うんだけど!!」
 「梢子ちゃん、私の体に流れる贄の血はね、普通の人が飲んでもあまり意味は無いって烏月さんが言ってた。」
 「私は普通の人間よ!?だったら飲ませても意味が無いんじゃないの!?」
 「ううん、私の体に流れる贄の血が私に知らせているの。梢子ちゃんは私と同じで特別な存在だって。」
 「私が・・・特別な存在・・・!?」
 「だから梢子ちゃん、飲んで。もっと私を受け入れて。」

 桂は再び傷口に口を付け、先程と同じように梢子に口付ける。

 「ふっ・・・」
 「んん・・・ちゅぱっ・・・」

 いつの間にか梢子は、桂の血を受け入れていた。
 梢子は何だか体の中が温かくなっているのを感じていた。そして桂の『力』と『想い』が、『桂そのもの』が、自分の中に入り込んでいるような感覚を感じていた。
 まるで、桂と1つになったかのような感覚を。自分の中に桂が入り込んでいるような感覚を。

 「んはっ・・・はあ・・・桂・・・」
 「何?」
 「頂戴・・・桂を、もっと頂戴・・・」
 「いいよ・・・。梢子ちゃんになら、私をあげてもいいよ。」
 「桂・・・」
 「梢子ちゃん・・・」

 顔を紅潮させながら、2人は見つめ合う。
 だがその時、突然具現化したノゾミが割って入った。

 「梢子。」
 「うわっ!!・・・な、なんだノゾミか。脅かさないでよ。」
 「ノゾミかじゃないわよ。それよりも飲むなら飲むで早くしなさいな。また潮が満ちても知らないわよ?」
 「・・・そ、そうだった!!私、急がないと!!」

 さすがに毎回口移しでは効率が悪すぎるし、何よりノゾミが見ている前で恥ずかしいので、梢子は直接桂の手首から血をすすった。
 まるで赤子が母の乳をすするかのように、梢子は桂の手首にしゃぶりつく。

 「んふっ・・・ちゅぱっ・・・」
 「んっ・・・梢子ちゃん・・・。」
 「んは・・・はあ・・・桂、もういいわ。ありがとう。」
 「それで、どう・・・かな?」
 「不思議だわ・・・。何だか力がみなぎっているみたい。」
 「そ、そう、良かった~。」
 「何だか、私の中に桂が入り込んでるみたい・・・。」
 「えへへ、これで私と梢子ちゃんは一心同体だね!!」

 桂は月光蝶で傷を塞いでから、梢子に鬼払いを差し出した。
 先程まで梢子の蜘蛛討ちとぶつかり合った、桂の『力』と『想い』の結晶を。

 「梢子ちゃん。何かの役にたつと思うから、梢子ちゃんに貸してあげるね。」
 「うん、ありがたく借りさせてもらうわ。」
 「だから・・・貸すだけだからね!?ちゃんと返しに来てよ!?」
 「分かってる。必ず生きて桂の元に戻ってくるから。」
 「梢子ちゃん・・・約束だよ?」
 「必ず。約束する。」

 梢子は桂と指切りを交わす。
 必ず生きて帰る。その誓いを胸に秘めて。

 「・・・指切った。」

 ちゅっ。
 最後に桂と軽いキスを交わして、梢子は桂とノゾミに見守られながら卯良島へと向かっていった。
 桂と交わした約束と、桂から託された鬼払い・・・そして自らの体に宿した桂との契りの証・・・『アカイイト』と共に。


3.絆の結晶



 桂の血を飲んでからというもの、梢子の体からは力がみなぎっていた。
 それ故に梢子は、自分でも想像していなかった程の常人離れしたスピードで、あっという間に鬼の踏み石を渡り切ってしまった。

 そして梢子は全てを思い出した。
 8年前、自分がこの卯良島で何を経験したのかを。何をされたのかを。
 何故、自分は奇跡的に助かったのかを。

 そして、普通の人間が飲んでもあまり効果が無いという桂の血・・・『贄の血』。
 それを飲んだ自分が、何故力がみなぎったのか・・・梢子は理解した。
 梢子は8年前に根方に斬られ、クロウクルウへの生贄にされかかった所を、安姫によって助けられたのだ。
 安姫によって『力』を与えられた梢子は、この時点で普通の人間では無くなっていたのだ。
 桂が言う所の、『特別な存在』へと生まれ変わっていたのだ。
 だからこそ、梢子は桂の血を力に変える事が出来たのだ。

 さらに突き詰めると、ナミがさらわれた理由と連れ去った犯人、連れ去られた場所すら分かった。
 根方は8年前の自分と同じように、ナミをクロウクルウへの生贄にするつもりなのだ。
 そんな事をさせるわけにはいかない。

 幸い、まだ時間はたっぷりとあるし、ナミがいると思われる場所も割れている。
 夕方に行われる『牛斬りの儀式』が終ってから、地下祭壇で秘密裏に行われる『生贄の儀式』。
 それが始まるまではナミは絶対に殺されたりしない。

 焦るな、焦るな、焦るな。
 考えずに動くな。考えてから行動しろ。
 仮眠をとったとはいえ、ほとんど徹夜の強行軍でここまで来たのだ。
 今はじっくりと体を休め、来るべき時に備えて体調を万全な状態にするのが先決だ。
 手ごろな洞窟に身を潜め、体を休めるために、梢子は深い眠りへと落ちていった。


 そして、遂に『その時』が来た。
 梢子は蜘蛛討ちを手に、桂から託された鬼払いを腰にぶら下げて、地下祭壇へと足を踏み入れた。
 梢子は全てを思い出していた。地下祭壇への入り口、そして祭壇への道のりに至るまでを。
 ここから先にあるのは、かつて自分が斬られた所。かつて夏夜を失った所。
 ここから先に待ち受ける者は、かつて夏夜を倒し、自分を斬った相手・・・根方クロウ流正当伝承者・根方宗次。
 それなのに梢子は不思議と落ち着いていた。焦りは感じられなかった。
 それ所か梢子は、まるで自分の中に桂がいるような、桂と繋がっているかのような、そんな奇妙な安心感を感じていた。

 地下祭壇にたどり着くと、そこでは既に戦いが始まっていた。
<<剣>>を手に馬瓏琉と戦うコハクと汀。
 ナミを巡って根方と戦う夏夜。 
 そして地下祭壇の台座で眠らされているナミ。

 「ナミ!!今助けるからね!!」

 梢子は一直線にナミの元に向かった。
 予想もしなかった相手にそこにいた全員が驚くが、梢子はそんな事を気にもせずにナミを無事に救出した。

 「ナミ!!ナミ!!しっかりして!!」
 「ん・・・梢子ちゃん・・・」
 「ナミ!!良かった・・・無事だったのね!?」
 「梢子ちゃん・・・助けにきてくれたんですね?」

 だがそんな2人の隣を夏夜の体が通り抜ける。
 夏夜は壁に体を叩きつけられ、その場にうずくまった。

 「あ・・・がはっ・・・!!」
 「夏姉さん、ありがとう。後は私がやるから。」
 「しょ・・・梢ちゃん・・・生きて・・・生きていたの・・・!?」
 「積もる話は後にしましょう。根方さんとは私が戦うから、だから夏姉さんは休んでて。」

 根方に深手を負わされ、もう動けない夏夜の代わりに、梢子が根方の前に立ちはだかる。
 かつて自分が殺したはずの梢子が生きている事に根方は驚きを隠せなかったが、すぐに平静を取り戻して身構える。

 「小山内梢子・・・そうか、生きていたのか。」
 「根方さん。これ以上無駄な犠牲を増やすのはやめて下さい。」
 「・・・儀式にはこの島の、いや、この島から溢れたならば卯奈坂の、卯奈坂から溢れたならば近隣一帯の、全てがかかっているのだ。」

 確かに儀式をいきなり中断した際に爆発する爆弾の存在も、一概には否定できない。
 だからと言って梢子はこのままナミを斬らせるつもりも、自分が再び生贄になるつもりも無かった。
 そして、根方にも譲れない信念がある。この島を、そして卯奈坂を、近隣一帯をクロウクルウから守るという信念がある。
 お互いに、譲れない想いがある。
 だからこそ今の2人に出来る事は戦う事だけだ。戦って相手の信念を折る事だけだ。

 「やああああああああっ!!」
 「ふっ!!」
 「だああああああああっ!!」
 「ぬうん!!」

 梢子の蜘蛛討ちを根方は精密機械のような正確さで受け流す。
 夏夜と同じような、梢子の雷迅の如き剛直な太刀筋。だがそれは相手の攻撃を受け流してから反撃するタイプの根方の剣とは相性が悪かった。
 確かに桂の血を飲んだ梢子の身体能力は、鬼と化した夏夜にも匹敵するまでになっていた。
 だがそれだけでは根方には通用しない。

 「・・・そうか。8年前にヤスヒメサマの力を取り込んだのは、ヤスヒメサマの命を奪ったのは、君だったのか。」
 「根方さん!!」
 「そして、君のその異常なまでの身体能力・・・どういう経緯でかは知らないが、贄の血をも取り込んだか。」
 「負けない・・・私は負けない!!」
 「だが、ヤスヒメサマの力を取り込んでなお、その程度なのか!!贄の血を取り込んでもなお、その程度の力なのか!!」
 「負けるもんかああああああああああっ!!」

 梢子の渾身の一撃を根方はまたしても受け流し、梢子に斬撃を加える。

 「ぬうん!!」
 「がはあっ!!」

 梢子の体から流れる鮮血。とっさに直撃は避けたものの、その剛剣から生み出された真空の刃が梢子の体を傷つけていた。
 だが梢子は立ち上がる。体は傷ついても心だけは決して折れない。

 「根方さん、あなたのやっている事は無意味です!!」
 「ぬ・・・!?」
 「今の私の体の中には、桂の『力』が宿っているから!!今の私の心の中には、桂の『想い』が宿っているから!!」
 「維己!!」

 梢子の傷をナミが治す。
 そう、死体にさえならなければ、ナミが梢子の傷を癒してくれるのだ。
 そして今の自分には桂の『力』と『想い』が、そして桂との契りの証・・・『アカイイト』が宿っているのだ。
 だから梢子は思う存分、根方と戦う事が出来た。
 桂の『力』と『想い』が、梢子をしっかりと支えてくれるから。

 「だから、例えあなたに何回斬られても、例えあなたに何回倒されても、私の心が砕けない限り、私は何度でも立ち上がる!!」
 「そうか・・・。ならば私は君の心を砕く事にしよう。」

 根方の構えは根方クロウ流究極奥義・・・『海石榴(つばき)』。
 8年前、梢子はこの技をその身をもって体感した事がある。
 まさに一撃必殺の、根方クロウ流の究極奥義。

 「君の心が砕けなければ君を倒せないというのであれば、私は君の心を完膚なまでに砕いてみせよう!!」
 「ならば私もあなたに見せましょう。私と桂の絆の証を・・・私と桂の絆の結晶の一撃を!!」

 梢子は蜘蛛討ちを上段に構える。防御を捨てた攻撃重視の構え。
 互いに繰り出す一撃必殺の奥義。それ故に次の一撃が最後となるだろう。

 「やあああああああああああああっ!!」

 梢子が繰り出したのは桂を破った片手面。とっさに木刀を両手持ちから右手持ちに変える事で間合いを瞬時に伸ばす梢子の得意技。
 だが根方は、桂とは比較にならない程の剣術の達人だ。突然伸びた間合いにも動じる事無く、梢子の面を受け止める。

 「君の言う『絆の結晶の一撃』とは、この程度なのか!!」
 「あぐっ!!」
 「今度こそクロウクルウの御許へと行くがいい!!」

 そこへ根方の一撃が襲い掛かる。

 「根方クロウ流・・・」
 「まだだあっ!!」

 だが梢子はまだ諦めない。
 梢子は約束したのだ。桂の元に必ず生きて帰ると。
 そう、梢子が桂から託されたのは、契りの証・・・『アカイイト』だけではないのだ。
 梢子が桂から託された、もう1つの『力』と『想い』の結晶。
 蜘蛛討ちを右手に持ち替えた事で、がら空きになった左手。
 その左手が、腰にぶら下げた鬼払いを掴む。

 「海石・・・」
 「虎噤み(とらつぐみ)!!」

 桂から託されたもう1つの力・・・鬼払いが根方に迫る。

 「何っ!?」

 桂の血を飲んだ事で得た驚異的な身体能力でもって放たれた剛剣が、根方の剣を弾き飛ばした。

 「二刀流・・・だと・・・!?」
 「根方さん、動きが止まりましたよ!!」
 「ぬ・・・!?」

 一撃必殺の威力を誇る海石榴。だがそれ故に、外した時の隙は膨大だ。その隙を梢子は見逃さない。
 右手の蜘蛛討ちによる面と、左手の鬼払いによる胴が、丸腰になった根方に同時に襲い掛かる。
 梢子と桂の絆の結晶の一撃。
 今まさに、梢子の下に、蝶は舞い降りた。

 「虎噤み弐の太刀・・・五月雨(さみだれ)!!」
 「がはあっ!!」

 直撃を受けた根方はその場に崩れ落ちる。
 いかに強靭な肉体を誇る根方といえども、桂の血を飲んだ梢子の渾身の一撃を受けては、無事では済まなかった。
 根方を倒した梢子。だが。

 「・・・そうだ、コハクさんと汀は!?」

 まだ安心するわけにはいかない。
 コハクと汀が馬瓏琉と戦っているのだ。
 だが馬瓏琉に敗北した汀は重傷、コハクもまた馬瓏琉の邪眼に圧されて動きが鈍っていた。

 「どうした虎姫よ!?お前の力ってのはそんな程度かよ!?」
 「おのれ、瓏琉・・・がはっ・・・!!」
 「さあ、さっさとその<<剣>>を俺に渡しちまいなあ!!」

 このままではコハクがやられてしまう。

 「桂・・・もう一度だけ私に力を貸して!!」

 蜘蛛討ちを腰にぶら下げ、鬼払いを両手に構え、梢子は馬瓏琉に突撃する。

 「やあああああああああああああああっ!!」
 「ちいっ、根方め、肝心な時に使えない奴だ!!」

 とっさに龍戟で鬼払いを受け止める馬瓏琉。

 「だが、この俺様を根方ごときと一緒にするなよ!!」
 「私は帰る!!あなたを倒して桂の下に必ず!!」
 「馬鹿が!!そんなチャチな木刀なんぞでこの俺を倒せると本気で思ってるのかよ!?」

 だが鬼払いは、ただの木刀にあらず。桂の『力』と『想い』が込められた、桂と梢子の絆の証。
 そして鬼払いは、経観塚のご神木を材料に作られた霊剣。つまりはオハシラサマである白花の分霊とも言える存在だ。
 さらに今の梢子の体の中には桂の『力』が、心の中には桂の『想い』が宿っているのだ。

 「小山内梢子!!てめえも虎姫同様、俺様の邪眼に飲み込まれちまいなあ!!」

 馬瓏琉の邪眼が梢子を襲う。
 だが鬼払いから放たれた無数の月光蝶が、桂の『力』と『想い』の結晶が、邪眼から梢子を守った。

 「何だと!?」
 「いっけええええええええええっ!!」

 鬼払いが青く白く美しい光を放つ。

 「馬鹿な・・・何なんだこいつは!?」
 「打ち抜けーーーーーーーーっ!!その一点を穿てーーーーーーーーっ!!」

 梢子の鬼払いによる強烈な突きが、馬瓏琉の邪眼を貫いた。

 「俺の左目が!!俺の邪眼が!!」
 「この機は逃さぬぞ!!瓏琉!!」
 「な・・・虎姫!?」
 「門を閉じて終わりとしよう!!貴様の野望を終いとしよう!!」

 邪眼から解放されて自由になったコハクの<<剣>>が、遂に馬瓏琉の首を刎ねた。

 「ぐおあああああっ!!」

 いかに不死身の肉体を誇る馬瓏琉と言えども、首を飛ばされたのでは生きてはいられなかった。
 どうっ・・・と崩れ落ちる馬瓏琉の体。そして。

 「オニワカァーーーーー!!」

 オニワカによって踏み潰される馬瓏琉の頭部。
 終った。全てが終った。
 ナミを救出し、生贄の儀式は未然に防ぎ、全ての黒幕である馬瓏琉はコハクによって殺された。
 そして<<剣>>は真の守護者たるコハクの手に渡った。もう二度と誰の手にも渡らないよう、厳重に封印される事だろう。
 そう、全ては終わったのだ。

 「桂・・・勝ったよ・・・終ったよ・・・。」

 梢子は自分を心配して駆け寄ってきたナミを抱きしめた。

「ナミ・・・。」
「梢子ちゃん・・・。」
「一緒に帰ろう・・・。桂の元へ。」


4.果たされた約束



 咲寺森の仏像の前で、桂は一心不乱に祈っていた。
 梢子の無事を祈って、ただただ祈っていた。
 あの日の夜に梢子を止める事が出来なかった以上、今の桂に出来る事は梢子の無事を祈る事だけだった。
 無駄なあがきだと言われるかもしれない。笑われるかもしれない。
 だがそれでも、桂は祈らずにはいられなかった。

 「桂ちゃん、朝ご飯の用意が出来たわよ?」
 「・・・・・。」

 保美の調理の手伝いを終えた柚明が、桂を呼びにやって来た。
 だがそれでも、桂は動かない。

 「もうみんなお腹空かせて待ってるわよ?だから・・・。」
 「・・・先に食べてていいから・・・みんなにはそう伝えておいて。」
 「桂ちゃん、もう昨日の夜からずっとその調子じゃない。いい加減休まないと体に悪いわよ?」
 「うん・・・だけど・・・」
 「桂ちゃん・・・。」
 「だけど、私・・・!!」

 いたたまれなくなって、桂は柚明に抱きついた。
 こらえていた感情が、桂の一番の理解者とも言える柚明に声を掛けられた事で、一気に沸いて出てきた。

 「私、梢子ちゃんを止められなかった!!」
 「・・・・・ええ。」
 「それで、梢子ちゃんは今、卯良島に・・・!!」
 「・・・・・ええ。」
 「だから私は、祈る事しか出来なくて・・・だから・・・!!」
 「・・・桂ちゃんは、梢子ちゃんと戦ったんでしょう?」
 「うん・・・うん・・・!!」
 「梢子ちゃんは、桂ちゃんの月光蝶を破ったんでしょう?」
 「うん・・・うん・・・!!」
 「梢子ちゃんは、桂ちゃんの血を飲んだんでしょう?」
 「うん・・・うん・・・!!」
 「だったら梢子ちゃんを信じましょう。桂ちゃんの『力』と『想い』を受け止めた梢子ちゃんを信じましょう。」
 「ゆ、柚明お姉ちゃん・・・!!柚明お姉ちゃああああああん!!」

 震える桂を柚明は優しく抱きしめた。
 今の柚明に出来る事は、不安に心を支配されている桂を支えてあげる事だけだった。
 桂と両想いになった梢子に柚明は正直ちょっとだけ嫉妬したのだが、それでも柚明も梢子の事を本当の妹のように大切に思っているのだ。
 だから柚明は桂に諭したのだ。梢子の事を信じろと。桂との契りの証・・・『アカイイト』をその身に宿した梢子の事を信じろと。

 「私ね。梢子ちゃんになら、桂ちゃんをあげてもいいって思ってるの。」
 「うん・・・!!」
 「梢子ちゃんはとっても頼りがいがあるし、優しいし。それに私も梢子ちゃんが大好きだから。正直ちょっと妬けちゃうけど・・・。」 
 「うん・・・!!」
 「だからね、私は梢子ちゃんに『柚明さん』じゃなくて『お姉さん』って呼んでもらいたいの。」
 「うん・・・!!」
 「だって梢子ちゃんは桂ちゃんの恋人なんですもの。だから私にとっても妹も同然よ。」
 「うん・・・!!」
 「だから梢子ちゃんに伝えましょう。青城女学院を卒業したら、私たちと一緒に暮らしましょうって。」
 「うん・・・!!」
 「それに、この私を差し置いて桂ちゃんのファーストキスを奪ったんだから、梢子ちゃんにはちゃ~んと責任を取ってもらわないとね。」
 「うん・・・!!」

 いつか桂が夢見た、淡い幻想。
 自分と柚明とノゾミと梢子の4人で過ごす、静かで平和な毎日。
 自分と梢子ちゃんが働いてお金を稼いで、柚明おねえちゃんが家事全般をこなして、ノゾミちゃんはちょっとうるさいけど頼りになるボディーガード。
 4人で笑いながら過ごす、夢のような日々。
 だが、夢だけで終らせたくない。この幻想を現実にしたい。
 だから桂は梢子に帰ってきてほしかった。
 梢子ちゃんが好き。梢子ちゃんが大好き。梢子ちゃんを愛している。この想いはもうどうにもごまかしようがない。

 と、そこへ百子が血相を変えてやってきた。

 「はと先輩!!大変です!!大変なんですよ!!」
 「百子ちゃん、悪いけど朝ご飯は先に済ませてもらえるかしら?」
 「違うんですよ柚明さん!!そうじゃなくて、オサ先輩が・・・オサ先輩が・・・」
 「・・・・・え?」
 「オサ先輩が・・・帰ってきたんですよおおおおおおおお!!うわああああああああああああああああん(泣)!!」

 梢子が帰ってきた。
 その言葉を聞いた桂は柚明と顔を見合わせる。
 柚明は、優しい微笑みで桂に頷いた。

 「桂ちゃん。」
 「うん!!」

 桂は泣きながら駆け出した。梢子の元へと駆け出した。
 梢子は咲森寺の庭に立っていた。ボロボロの汀を支える夏夜と、コハク、ナミと共に。

 「梢子ちゃん!!」
 「桂!!」

 梢子もまた、桂の姿を確認すると一目散に桂の元へと走っていく。

 「梢子ちゃん・・・梢子ちゃん!!」
 「桂・・・桂!!」

 梢子の胸の中に、桂が飛び込む。
 梢子の胸の中に、蝶が舞い降りた。

 「・・・お帰りなさい!!」
 「・・・ただいま!!」

 ―――――――――――HAPPY END『舞い降りた蝶』