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シロイユキ最終章・復活のセラ

第1話「現れた救世主」(後半)


4.時を越えた想い


 「ヒャッハー!!殺せ殺せ!!雫様に逆らう者は皆殺しだぁ!!」
 「「「「「ヒャッハーーーーー!!」」」」」

 竹原の指揮の下、最新型の第2世代の幻装を纏った若杉の軍勢が、妖艶な表情でブリュンヒルデの者たちに襲いかかる。
 隊員たちは必死に応戦するものの、旧型の第1世代の幻装では全く太刀打ち出来なかった。
 隊員たちの銃から放たれるビームは、次々と若杉の軍勢の幻装の前に弾かれてしまう。

 「駄目だ、幻装の性能が違い過ぎる!!」
 「最後まで諦めるな!!ここで俺達が諦めたら、誰が若杉と戦うんだ!?」
 「な・・・陽平!?それにましろも!?」

 駆けつけた陽平がガーゴイルの幻装を身に纏い、ビームサーベルを手に何とか若杉の軍勢を相手に善戦する。
 幻装の性能をもろともせず、陽平は次々と敵を打ち倒していった。

 「そらそらそら!!えい!!やあ!!とぉっ!!」
 「「「「「たわばっ!!」」」」」

 そしてフェアリーの幻装を身に纏ったましろが、治癒術によって傷ついた兵たちを次々と癒していく。
 一時は押されていたブリュンヒルデではあったが、陽平とましろの介入により、何とか持ちこたえる事に成功した。
 その様子を竹原は、舌打ちしながら眺めていたのだった。

 「ヒャッハー!!」
 「ひ、ひいっ!?」

 先に治癒術を使うましろを潰そうと、1人の兵士がましろに襲い掛かった。
 ましろに迫る兵士のビームスピアーだが、その槍がましろの目の前で突然弾かれた。
 そして驚きを隠せない兵士の左胸を、セラの氷の剣が情け容赦なく貫く。
 信じられないといった表情で、兵士は力無く倒れて絶命したのだった。

 「ましろよ、怪我は無いか?」
 「う、うん、でも皆が・・・!!」
 「確かに、この戦況はよろしくないな。」

 一時は持ち直していたブリュンヒルデだったが、竹原の介入によって戦況は一気に若杉有利へと傾きつつあった。
 竹原の圧倒的な力を前に、陽平は完全に押されてしまっている。

 「この暗黒流双斬剣の竹原様が、直々にてめぇらを叩きのめしてくれるわ。」
 「くそぉっ!!」

 必死に竹原と戦う陽平だったが、それでも実力差は完全に明白だ。
 陽平もコハクに鍛えられただけあって、相当な実力者のようだが・・・竹原はさらにその上を行く双剣術の達人のようだ。
 それだけではなく、纏っている幻装の性能が違い過ぎる。

 「成る程、奴が親玉か・・・ましろ。そなたは皆の治癒に専念せよ。」
 「うん、でもセラはどうするの!?」
 「頭を潰せは、どんな大部隊だろうが瓦解する。つまりはそういう事だ。」

 《ファルシオン》を右手に持ち、戦場を颯爽と駆け抜けるセラ。
 目の前に立ち塞がる敵を、次々と左手の氷の剣で斬り捨てていく。
 そして今まさに陽平に振り下ろされた双剣を、セラは《ファルシオン》で受け止めた。
 ギシギシと、ボロボロの《ファルシオン》が悲鳴を上げている。

 「・・・ほう、中々の剣圧よ。」
 「何だてめぇは!?俺様を暗黒流双斬剣の竹原様と知っての事か!?」
 「知らぬな。そのような無粋な流派など。」
 「大体何だてめぇのそのボロボロの剣はよぉ!?それに幻装も纏わずに俺様に太刀打ち出来ると思ってるのかよ!?」
 「フフフ・・・そなたこそ、この程度の実力でわらわに勝てると思うな。」
 「ほざくな女ぁっ!!」

 セラを弾き飛ばし、竹原は邪悪な笑みを浮かべながらセラに襲いかかる。
 だがセラが《ファルシオン》で斬撃を受け止めた・・・その時だ。
 突然錆だらけの《ファルシオン》から、金色の神々しい光が放たれた。
 その光がセラを包み込み、セラの意識を無数の星々に包まれた幻想世界へと導いていく。

 『む・・・この空間は、1000年前のあの時と同じ・・・!?』
 『ああ・・・セラ様・・・この時をずっと待っていました・・・!!』

 驚きを隠せないセラの前に、突然現れたのは・・・。

 『・・・フフフ・・・うすうす感じてはいたが、やはりわらわの復活はそなたの差し金であったか。』
 『・・・・・。』
 『久しいな。広子よ。』

 槐の木のオハシラサマとなった、巫女服を身に纏った広子だった。
 目に涙を浮かべながら、広子は笑顔でセラを見つめている。
 セラもまた、1000年ぶりの広子との再会を果たし、穏やかな笑顔を見せている。
 そして《ファルシオン》によって創り出された高濃度意識共有領域によって、広子の1000年にも渡る記憶がセラの頭の中に入ってきたのだった。
 広子の壮絶な人生、短命に終わった人としての生涯、そしてオハシラサマとしてセラを守り続けた1000年間・・・セラへの想いを。

 1000年前のセラの一件の後・・・広子は大学卒業後、両親に半ば無理矢理に地元の実業家とのお見合い結婚をさせられ、やがて1人の子供を授かった。
 だが結婚から3年後、夫が経営する会社が倒産。裁判所から破産認定を受けた事で住んでいた立派な屋敷を差し押さえられ、6畳1間のオンボロアパートでの暮らしを余儀なくされる。
 広子は家計を支える為に働きに出る事になるのだが、夫は自暴自棄になって毎日酒に溺れるようになり、さらに妻である広子に対して暴力を振るうようになっていった。
 いわゆるドメスティック・バイオレンス・・・広子への暴力は次第にエスカレートしていき・・・そして夫の暴力から子供を庇おうとして、広子は金属バットで頭を強く殴られ死亡した。

 その後、夫は広子の殺人容疑で警察に逮捕され、子供は施設へと引き取られたのだが、広子の魂は無意識の内にセラを求め、やがてセラの遺体が眠る槐の木に宿り、いつの間にか槐の木を守護するオハシラサマになっていたのだ。
 人としての短い生涯を終えてしまった広子だったが、それでも誰にも邪魔されずにセラの傍にいられるようになった事で、心の平穏を得た。
 そして気が遠くなる程の長い年月を、ずっとセラの守り手として過ごしてきたのだ。
 私にはもう何もいらない、セラ様さえ傍にいてくれれば、それだけでいい・・・と。

 だが3年前、若杉雫が若杉の会長に選ばれてからというもの、この日本は若杉の圧政に苦しめられるようになっていった。
 別にこの国がどうなろうと広子の知った事では無かったが、自分の子孫であるましろにまで危害が及ぶ事だけは、さすがに黙って見ていられなかった。
 そこで広子は槐の木が今まで散々削ってきたセラの『力』を再びセラに注ぎ込み、3年かけてセラを何とか蘇らせる事に成功したのだ。

 セラにましろを守って欲しかったから。自分の大切な子孫であるましろを。
 人々に『氷の姉妹』と呼ばれた小雪と雪花は、もう人間たちを助けてはくれないから。
 セラ以外に、もう誰も頼れる人がいないから。

 『・・・その際に、わらわの雪花たちへの怒りや憎しみの感情を消したのだな。』
 『・・・はい。此度の無礼をお許し下さい。どんな処罰でも受けるつもりです。』
 『その行為を責めはせぬ。わらわは1000年前、そなたに随分と世話になったからのう。それにそなたは、わらわの守り手を1000年も務めてくれたのだ。何を責める事があろう?』
 『セラ様・・・』
 『わらわもそなたと同じだ。この国がどうなろうと知った事ではないが、そなたの子孫であるましろを守りたいと願う気持ちだけは、そなたと何も変わらぬ。』

 例え雪花たちへの怒りや憎しみが残っていたとしても、セラはきっと同じようにましろを守っていたはずだ。
 ましろは、セラにとって大恩ある広子の子孫なのだから。
 まして広子は1000年もの間、オハシラサマとして自分の守り手を務めてくれたのだ。
 礼には礼を尽くす。そして絶対に嘘は付かない。それがセラの流儀だ。

 『広子よ。1000年にも渡るわらわの守護、誠に大義であった。そなたのお陰で今こうしてわらわは再びこの世に生を得た。だからそなたはもう天へと還るがいい。これ以上ハシラの使命に縛られる必要はあるまい。』
 『セラ様・・・お願い・・・私の代わりにましろを守って・・・!!ユキも雪花さんも、もう皆を助けてくれないから・・・!!』
 『うむ。若杉雫はわらわが倒す。だからそなたはもう安心して眠るがよい。』

 セラの力により、「セラを守る」というオハシラサマとしての使命を果たし終えた広子の魂が、とても安らぎに満ちた表情で天へと還っていく。
 そして《ファルシオン》が創り出した高濃度意識共有領域が途切れ、セラは元の世界へと戻ったのだった。

 「・・・安らかに眠れ、広子よ。そなたの想い、このわらわが確かに受け取ったぞ。」

 セラの手にある《ファルシオン》は、いつの間にか剣の形をしたオブジェ形態へと変貌し、神々しい金色の光を放っていた。
 まさかの出来事に、その場にいた誰もが驚きを隠せない。
 《ファルシオン》はセラを新たな継承者と認め、幻装へと進化したのだ。 

 「ファルシオンメイル・・・ブラストオフ!!」

 セラの掛け声と共に幻装へと進化した《ファルシオン》が、オブジェ形態から分離してセラの身体に装着されたのだった。

5.伝説救世主


 ファルシオンの幻装を身に纏ったセラは、興味深そうに目の前の空間にタッチパネルを呼び出し、左手でタッチパネルを弄(いじく)り回しながら、幻装の性能を色々と調べていたのだった。
 セラの右手にあるのは、金色に神々しく輝く一振りのバスタードソード。
 そしてセラの全身を、同じく金色に神々しく輝く幻装が包み込んでいる。
 そして背中の純白のマントをなびかせる、その神々しくも美しい姿は、まさしくブリュンヒルデに突如舞い降りた黄金の天使だ。

 「お・・・黄金の・・・幻装だと・・・!?」
 「・・・ふむふむ。成る程。搭載されている武装はリフレクビットにフェザーファンネル、そしてビームシールドにライトライフル・・・この長剣はファルシオンソードという名称か。実に安直よのう。」
 「何だこの幻装は・・・!?第1世代とも第2世代とも違う・・・!?データベースに何も登録されてねえだと・・・!?」 
 「おお、インターネットにも接続出来るのか。それに色々なアプリケーションも入っておる。ほほう、こうやってキーボードも呼び出せるのか。まるでパソコンではないか。実に面白いな。」
 「てめぇ・・・さっきから俺様を無視してんじゃねえぞコラァ!!」

 竹原が怒りの表情で、二本の剣でセラに襲いかかる。
 だがセラは余裕の表情で、それを次々と紙一重で避け続けたのだった。
 まるで当たらない・・・まさかの事態に竹原は苛立ちを隠せない。

 「こ・・・この変態女・・・こんなに強かったのかよ・・・!?」
 「陽平。そなたは他のザコ共を片付けよ。そなたの実力ならばやれるはずだ。」
 「う、うるさい!!俺に命令すんな変態女!!」
 「フフフ・・・それだけ減らず口を叩けるのであれば、怪我の方は心配なさそうだな。」
 「お前に言われなくても分かってんだよ!!皆は俺が守る!!だからそいつはお前に任せたからな!?」
 「うむ。行って来い。」

 ビームサーベルを手に走り出した陽平を見て、セラは思わず苦笑いをしてしまう。
 苦笑いが出来てしまう程、今のセラは余裕に満ち溢れていた。
 それはセラと竹原との間の、ごまかしようの無い圧倒的なまでの実力差の証だ。
 仮にセラがファルシオンの幻装を身に纏わずに生身のままだったとしても、《ファルシオン》が復活しないままだったとしても、セラは竹原を完膚なきまでに叩きのめしていただろう。

 「てめぇ!!さっきから逃げてばかりで、この俺様に臆したのかよ!?」
 「まだ分からぬのか?そなたの実力では、わらわには到底勝てぬという事が。」
 「減らず口を!!暗黒流双斬剣奥義!!双破鬼神撃ぃっ!!ぬあああああああっ!!」

 十文字に刻まれた凄まじい二刀の一撃が、情け容赦なくセラに襲いかかったのだが。
 セラはその十文字の一撃を、左腕のビームシールドで軽々と受け止めたのだった。

 「馬鹿な・・・この俺様の双破鬼神撃をまともに食らって・・・微動だにしないだと・・・!?」
 「ほう、これは中々便利な代物よのう。」
 「だ、だが、俺様のタイタンの幻装は、第2世代の幻装の中でも最強の防御力を誇る!!てめぇがどれだけの実力者だろうが、俺様の体には傷1つ付けられねえんだよ!!」
 「愚か者め。わらわにしてみれば、そなたの幻装などただの鉄の塊も同然よ。」

 妖艶な笑みを浮かべ、セラは右手のファルシオンソードを竹原に突きつける。

 「おい。一応警告しておくぞ。命が惜しくば今すぐに部下たちと共にこの場から立ち去り、そなたらの主の若杉雫とやらに報告せよ。この氷の女神セラが直々にそなたの命を奪いに行くとな。」
 「馬鹿がぁっ!!てめぇなんざ雫様のお手を煩わせるまでも無いわぁっ!!」
 「・・・所詮は相手の力量も測れぬ愚か者か。」

 セラとて無益な殺生を好みはしない。折角生かしておいてやろうと思っていたのだが。

 「ぶっち殺してやる!!るあああああああああああああ!!」
 「もう良い。ならば死ね。」

 一閃。
 いつの間にか竹原の背後に回り込んでいたセラが、威風堂々とファルシオンソードに付いた返り血を振り払っていた。

 「・・・ほれ見た事か!?これがこの俺様のタイタンの幻装の圧倒的な防御力!!貴様の剣など蚊ほども効かんわ!!」
 「・・・そなたはもう、死んでおる。」
 「何だと!?何を訳の分からない事を言って・・・言って・・・言って・・・痛って・・・痛って・・・痛ててててててててててててええええええええええええ!?」

 最強の防御力を誇るはずのタイタンの幻装が、セラの一撃によって亀裂が走っていく。
 そしてセラがファルシオンソードを鞘に収めた瞬間・・・竹原の巨漢の身体から、凄まじい勢いで鮮血が噴き出した。 

 「・・・いってればあっ!?」

 自分の敗北が未だ信じられないといった驚愕の表情で、竹原は無様に絶命したのだった。
 その光景を見た部下たちは一気に戦意喪失し、陽平たちの活躍によって次々と叩きのめされていく。
 そして指揮系統を完全に失った若杉の兵士たちは、達也の的確な指揮の下に連携して戦うブリュンヒルデの隊員たちの前に、完全に防戦一方となり・・・やがて生き残った敗残兵たちは無様に逃げ帰ってしまったのだった。
 頭さえ潰せば、戦いは終わる・・・まさにセラがましろに言った通りの結果になったのだ。

 「やった!!やったぞ!!俺達が若杉の連中を倒したんだ!!」
 「これも全て彼女のお陰だ!!」
 「ああ、彼女は我々の救世主だ!!」
 「今ここに、伝説救世主の誕生だ!!」

 生き残ったブリュンヒルデの隊員の誰もが、大喜びでセラの元に駆けつける。
 誰もが自分たちの危機を救ってくれたセラを、「伝説救世主」と称えていた。
 そしてましろが涙目になりながら、満面の笑顔でセラに抱き着く。
 穏やかな笑顔を見せながら、セラはましろの身体をぎゅっと抱き締めたのだった・・・。

6.恐怖のキメラクイーン


 「おらおら、さっさと中に入れや。雫様がお前にお会いしたいとの事だ。」
 「ぐはぁっ!!」

 夜10時、若杉の本部である巨大な塔の最上階・・・竹原に敗れて拘束された流騎が、ボロボロの姿で雫がいる大広間に蹴り出された。
 竹原から受けた傷が癒えないまま、流騎は何とか槍で身体を支えて立ち上がる。
 流騎の目の前にいたのは、薄着姿の20人近い少女や女性たちと・・・そして足を組みながら玉座に威風堂々と座している1人の女性・・・若杉雫。

 そして彼女の隣には、拘束されている流騎の妹の絵梨と、ブリュンヒルデ宮城支部から連れ去られた36人もの少女や女性たちがいた。
 薄着姿の20人の少女や女性たちは、全員が若杉の軍勢によって連れ去られた者たちだ。
 彼女たちは全員が虚ろな表情をしており、感情が無い瞳で流騎を見つめている。

 「絵梨!!絵梨ーーーーーーっ!!」
 「お兄ちゃん!!」
 「ようこそ。私が若杉の会長の若杉雫よ。ブリュンヒルデ宮城支部の武藤流騎君。」

 妖艶な笑みを浮かべた雫の身体には、何とも禍々しい雰囲気の幻装が身に付けられている。
 そして拘束された絵梨や連れ去られた女性たちが、不安そうな表情で流騎を見つめている。
 そんな光景を見て、流騎は怒りを爆発させたのだった。

 「若杉雫・・・よくも皆を!!」
 「さて、私が貴方をここに連れて来た理由はただ1つよ・・・皆の前で貴方を、この私自らの手で公開処刑してあげようかな~って思ってね。」
 「何だと・・・!?」
 「聞けば貴方、絵梨のお兄さんらしいじゃない。だから絵梨の目の前で貴方を殺して、絵梨の心を完膚なきまでに壊してあげようと思ったのよ。」
 「ふざけるなぁっ!!ここで死ぬのはお前の方だぁっ!!」

 竹原に敗れた流騎が今まで生かされていたのは、絵梨の目の前で流騎を公開処刑する為。雫は物凄く残忍で悪趣味だと言わざるを得ない。
 だが逆に言えば、流騎自らの手で雫を倒し、絵梨たちを救い出す絶好のチャンスだとも言える。
 心と身体を奮い立たせ、流騎は力強く槍を構えた。

 「僕をここに連れて来たのが仇となったようだな!!今ここでお前を倒せば、主を失った若杉は完全に崩壊する!!」
 「でもここで貴方が死ねば、絵梨の心は完全に壊れちゃうでしょうね。あははははは!!」
 「ほざけよ女ぁっ!!相馬剣聖流奥義!!天竜牙突槍!!でやあああああああああっ!!」

 まさに防御を捨てた渾身の一撃が、情け容赦なく雫の頭部に迫る。
 だが雫は玉座に座ったまま、それを指一本で受け止めた。
 まさかの事態に、流騎は驚きを隠せない。

 「ば・・・馬鹿な・・・!?天竜牙突槍を・・・指一本で・・・!?」
 「なあんだ、ブリュンヒルデ最強の戦士とか言われてたから、どれ程の物かな~って思ってたけど・・・とんだ期待外れだったわね。」
 「ぐああああああああああっ!!」

 そのまま槍にデコピンされた流騎は、物凄く派手に吹っ飛ばされてしまった。
 壁に叩きつけられ、流騎はあまりの激痛にうめき声を上げる。

 「まあ竹原如きに負けたって言うし・・・所詮はこの程度でしょ。」
 「僕は・・・僕は・・・まだ・・・っ!!」
 「あら、まだ立ち上がれるなんて凄いのね。気に入ったわ。私の部下にしてあげましょうか?」
 「誰が・・・誰がお前なんかの部下になるかああああああああっ!!」
 「あらそう残念。折角命拾い出来る所だったのに。」
 「ぬああああああああああああっ!!」

 それでも臆せずに雫に挑む流騎だったが・・・やがてその表情が絶望へと変わる事になる。

 「このキメラクイーンの幻装の力、見せてあげるわ・・・行きなさい、ファング。」

 雫の幻装に取り付けられた無数の牙が分離し、突然全方位から流騎に襲い掛かった。 
 放たれた牙は物凄い速度で、情け容赦無く流騎の全身を切り刻む。
 そして流騎の全身から凄まじい鮮血が噴出し・・・それを見た絵梨が絶望のあまり絶叫した。

 「あ・・・が・・・っ!?」
 「嫌ああああああああああああああっ!!お兄ちゃあああああああああああああん!!」
 「さてと、止めは私の手で直接刺してあげようかしら。」

 もう動けない流騎に雫はゆっくりと歩み寄り・・・禍々しい漆黒の大剣を両手で振りかぶった。
 そして妖艶な笑みを浮かべたまま、雫はそれを思い切り振り下ろす。

 「は~い、さようなら~。」
 「がああああああああああああああっ!!」

 頭から真っ二つにされてしまった流騎の体は、どうっ・・・と左右に分離して倒れてしまったのだった。
 雫の全身に浴びた返り血が、その残忍な光景をさらに引き立たせる事になる。

 「お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!ああああああああああああああああっ!!」
 「あらあら、完全に心が壊れちゃったようね、絵梨。でも安心して。すぐにお兄さんの事なんか忘れさせてあげるから。」

 雫はゆっくりと絵梨の前に歩み寄り・・・そして絶叫する絵梨に強引に唇を重ねた。
 そして雫が口の中で生み出した月光蝶が、口移しで次々と絵梨の身体の中に吹き込まれる。
 やがて絶望に満ちた絵梨の表情が、次第に虚ろになっていき・・・そして・・・

 「・・・あ・・・あ・・・あ・・・は・・・あ・・・っ・・・ん・・・。」
 「絵梨。貴方の主は誰かしら?」
 「・・・はい・・・愛する雫お姉様ただ1人でございます・・・。」
 「フフフ・・・いい子ね・・・それでいいのよ・・・これで貴方は晴れて私の妹・・・。」
 「雫様・・・大好きです・・・。」

 雫によって拘束を解かれた絵梨は、自分から雫に抱き付いて唇を重ねた。
 その姿からは、兄を目の前で惨殺された絶望が微塵も感じられない。
 今の絵梨は最早、心も身体も雫に夢中なのだ。
 竹原によって連れて来られたブリュンヒルデの少女や女性たちは、その異様な光景を見て青ざめてしまう。 

 そして薄着姿の20人の少女や女性たちは、一連の出来事を虚ろな瞳で見つめていた。
 そう・・・彼女たちもこうして雫によって「妹」に選ばれ、身も心も支配されてしまったのだ。

 「ひ・・・ひいっ・・・!?」
 「・・・ん・・・ちゅっ・・・ちょっと待っててね、絵梨・・・。さてと、貴方たちが私の妹になる資格があるかどうか・・・今から選別してあげるわ。」
 「嫌・・・やめて・・・!!」
 「う~ん・・・。」

 拘束された36人の少女や女性たちを、じっくりと品定めする雫。
 容姿やスタイル、年齢を見定められ、全身を触られ、クンカクンカと匂いまで嗅がれる。
 誰もが恐怖に身体を震わせながら、雫にジロジロと「選別」られていた。
 そして。

 「え~と、貴方はもう処女じゃないのね。中古品は要らないわ。それと貴方は容姿が不合格。貴方は胸が小さいから駄目。貴方は少し太ってるわね。貴方は私より年上でしょ?私は年上には興味が無いのよ。」

 次から次へと服にマジックで×印を書かれた女性たちは、実に36人中30人にも及んだ。
 彼女たちは雫に「不合格」と認定されたのだ。
 そんな彼女たちを、雫は情け容赦なく窓から突き落とした。
 悲鳴を上げる彼女たちを、下で待ち構えていた雫の部下の男たちが次々と受け止める。

 「貴方たちにあげるわ。好きにしなさい。」
 「「「「「「「ヒャッハーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」」」」」」」
 「「「「「「「嫌あああああああああああああああああああああああ!!」」」」」」」

 邪悪な笑みを浮かべた男たちは彼女たちを奪い合い、そのまま自分の部屋へと連れ去ってしまったのだった。
 絶望に満ちた表情の彼女たち。これから一体どうなるのか想像に難しくない。
 そして残された6人の少女たちは、絵梨と同じように雫に次々とキスをされ、口移しで月光蝶を体内に吹き込まれ・・・やがて絵梨と同様に虚ろな瞳になってしまった。

 「「「「「「あ・・・あ・・・あ・・・あ・・・はぁ・・・っ・・・ん・・・。」」」」」」
 「おめでとう。これで貴方たちは無事に合格よ。正式に私の妹として歓迎するわ。」
 「「「「「「・・・はい・・・光栄至極に存じます・・・雫お姉様・・・。」」」」」」

 拘束を解かれた彼女たちは、とても嬉しそうな表情で雫を見つめていた。
 その表情からは、先程までの絶望や恐怖は微塵も感じられない。
 今の彼女たちにとっては、雫だけが全てなのだ。

 「貴方達、彼女たちが皆の新しい家族よ。さあ、皆で彼女たちを愛してあげなさい。」
 「「「「「はい・・・雫お姉様・・・。」」」」」

 そして雫に促された20人の薄着姿の少女や女性たちは、次々とその場で衣服を脱ぎ捨て、6人の少女たちと絵梨に寄ってたかって一斉に抱き着き、体を絡め合い、競うように唇を重ね合う。
 そのまま睦み合う彼女たちを、雫は妖艶な笑みで見つめていたのだが。

 「あの・・・雫様・・・お楽しみ中の所、申し訳ありませんが・・・」

 雫の秘書を務める女性が、戸惑いの表情で部屋に入ってきた。
 その秘書にも雫は抱き着き、唇を重ねる。
 ここまで来ると雫は、最早ただの変態だ。

 「ん・・・ちゅっ・・・なあに?どうしたの?」
 「あの・・・ブリュンヒルデ本部への侵攻作戦に参加した部隊が、戻ってきたのですが・・・」
 「ああ、そう言えば竹原からの連絡がまだだったわね。で、どうだったの?今日は女の子たちを何人連れて来たの?」
 「それが・・・侵攻作戦は失敗、部隊の8割が壊滅・・・竹原様も戦死なされたとの事です・・・。」
 「・・・何ですって・・・!?」

 それまで余裕の笑みを崩さなかった雫が、突然厳しい表情になった。
 いくらブリュンヒルデを統括する総本山とはいえ、あのコハクが病死した今となっては、あそこには陽平以外にまともな戦力など無かったはず。
 その陽平にしても、竹原とは実力も幻装の性能も違い過ぎたはずだ。なのに何故・・・。

 「一体どういう事なのか説明しなさい。」
 「それが、黄金の幻装を身に纏った正体不明の謎の女に、竹原様は敗北なされたとの事で・・・生き残った者たちからの報告によると、その女は氷の女神セラと名乗っていたと・・・。」
 「氷の女神・・・セラ・・・!?」

 戸惑いの表情を隠せない雫だったが、そんな彼女の下に2人の男と1人の女が姿を現した。
 四天王の残り3人・・・笹崎、須藤、そして東条鈴(すず)だ。

 「がっかりしないで下さい雫様。竹原など所詮は我ら四天王の中では最弱の存在。」
 「どれだけブリュンヒルデの連中が歯向かおうが、我々の前では無力でございます。」
 「そうそう、て言うか何であんなザコが四天王になれたのか自体が、私は不思議で仕方が無かったんですからね~。」

 竹原をザコ呼ばわりした四天王の紅一点・鈴が、3人の少女に愛されている絵梨に抱き着いて唇を重ねた。
 絵梨も特に抵抗する事無く、ただされるがままになっている。

 「・・・ちゅっ・・・ちゅっ・・・ふふふっ、柔らかくて温かくて、とっても美味しい♪」
 「もう、鈴ったら相変わらずなんだから。」
 「えへへ♪」 

 そんな鈴を穏やかな表情で見つめながら、雫は竹原を倒したというセラに対して、強い興味を抱いたのだった。
 別に竹原が死んだ事に対しては特に何とも思っていないのだが、仮にも四天王と呼ばれた竹原を倒した程の実力者・・・それに黄金の幻装という物にも興味がある。

 (氷の女神セラ・・・1000年前の歴史上の人物のはずだけど・・・本物が生き返ったのか、それとも別の誰かがそう名乗っているのか・・・いずれにしても興味はあるわね・・・ふふふ・・・。)

 そんな事を考えながら、雫は鈴を抱き寄せて唇を重ねる。

 「笹崎、須藤。貴方達はもう下がっていいわ。ついでにそこの死体を片付けておいてくれる?」
 「「はっ、了解しました。」」
 「鈴、佐奈。今夜は久しぶりに私が2人を愛してあげるわ。さあ、こっちにいらっしゃい。」
 「「はい、雫様・・・。」」

 雫は穏やかな笑顔で、鈴と女性秘書を寝室へと連れて行ったのだった・・・。