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アカイイト・アナザーストーリー

★あああ


1.悪夢の始まり


 それは、白花が柚明の代わりにオハシラサマになってから、1ヵ月程度経ったある日の事だった。

 「毎度~、佐山急便ですけど~。オハシラサマにお荷物が届いているのですが・・・」

 まだ夏の蒸し暑さが残る9月下旬の昼間・・・槐の木までやってきた宅配業者が、汗だくになりながら小さなダンボールを届けてきた。
 一体何なんだろう・・・具現化した白花が不思議そうな表情を見せならがダンボールを受け取る。

 「ここに鬼切りを捺印して頂けますか?」
 「どりゃあああああああ!!・・・これでいいですか?」
 「はい、結構ですよ。それでは失礼致します~。」

 差出人は、現在は柚明と共に青城市に住んでいる桂からだった。  
 差し入れか何かだろうか。槐の木の中に戻った白花が、一体何が入っているのかと内心ワクワクしながらダンボールを開封する。
 中に入っていたのは・・・PSP本体とゲームソフト、B5サイズの分厚い攻略本・・・そして桂からの手紙だった。

 「おい小僧。何だそれは?」
 「PSP・・・プレイステーション・ポータブルっていう携帯ゲーム機だよ。」
 「ゲーム機だと・・・?大方貴様が退屈しないようにと送りつけて来たのであろうが・・・」
 「まあ確かにここで暮らしてると、娯楽とか何も無いからね~。」
 「しかし囲碁や将棋や花札ならともかく、よりにもよって陳腐なゲーム機とは・・・下らん。」

 そんな他愛ない会話を主としながら、白花は同封されていた手紙に目を通した。
 とても可愛らしい文字と便箋が、桂の性格を現していると言える。

 『白花お兄ちゃん、久しぶり!!白花お兄ちゃんのお陰で私たちは今、とても凄く幸せに暮らしているよ!!』
 「うんうん、桂とゆーねぇが幸せそうで何よりだよ。」
 『それでね、白花お兄ちゃんが槐の木の中で退屈しないようにね、PSPでず~~~っと長く遊べるゲームを送ってあげたよ。日本一ソフトウェア会心の名作、悪魔的やり込みシミュレーションRPG・魔界戦記ディスガイア・ポータブル・通信対戦はじめました!!』
 「シミュレーションRPGかぁ・・・Wiiのバーチャルコンソールでファイヤーエムブレム紋章の謎を遊んで以来だよ。」

 明良と修行していた頃は、修行の合間によくゲームをやっていた物だ。
 あの頃の光景を思い出し、白花はとても懐かしそうな表情になっていた。

 『このゲームはね、美羽ちゃんも遊んでるって言ってたんだけどね・・・何と!!1万時間も遊べるシミュレーションRPGなんだって!!これなら白花お兄ちゃんも退屈せずに済むだろうからって、美羽ちゃんが勧めてくれたんだよ?』
 「ははは、1万時間遊べるシミュレーションRPGだって?桂も美羽も一体何を馬鹿な事を言っているんだ・・・。」
 『それじゃあ白花お兄ちゃん、身体に気をつけて頑張ってね。それじゃあまたね。』

 確かに200~300時間近く遊んだゲームもあるにはあるが、それでも1万時間も遊び尽くせるゲームなど白花は聞いた事が無い。
 パラパラと攻略本に目を通してみると、成る程中々可愛らしいイラストで、とても明るい雰囲気のゲームのようだ。
 一体どんなゲームなんだろうか・・・白花はとても興味深そうに箱からPSPを取り出し・・・

 「まあ、桂が折角送ってくれたんだし・・・ちょっとやってみるか。」

 軽い気持ちでUMDディスクをセットして、電源を入れたのだった。

2.終わらない悪夢


 それから1ヵ月の時が過ぎた。

 「・・・おい、小僧。」
 「あああ。」
 「聞いているのか、小僧。」
 「あああ。」
 「聞こえているなら返事をしろ、小僧。」
 「あああ。」

 もうすっかり夏の蒸し暑さが無くなって涼しくなった、10月下旬・・・なんか白花が物凄く虚ろな表情で、PSPの画面に釘付けになっていたのだった・・・。
 何度もページをめくって読み尽くした攻略本は既にボロボロになっており、インターネットに繋いだパソコンは攻略サイトを開きっぱなしになっており、今では充電をするのも面倒になってしまった白花はPSPをACアダプターに繋いだまま、オハシラサマが食事をする必要も、眠る必要さえも無いのをいい事に、毎日毎日不眠不休でプレイし続けているのだ。

 そう・・・あの時は本当に確かに軽い気持ちで遊んでみただけだったのだ。
 主も白花が、まさかここまでこのゲームにのめり込むとは夢にも思わなかったのだ。
 このゲーム、メインシナリオをクリアする『だけ』なら50時間もあれば終わるのだが、はっきり言ってその先が物凄く長い。
 何しろ総プレイ時間の9割以上が育成に費やす時間だとまで言われており、それどころか『育成をする為のゲーム』『メインシナリオはおまけ』だとまでユーザーから皮肉を言われる始末だ。

 メインシナリオをクリアする『だけ』ならレベル80もあれば充分いけるのだが、このゲームはキャラのレベルを何と9999まで上げる事が出来る。
 しかもそこからさらに転生してレベル1に戻し、素質能力値(レベルが上がった時にどれだけ能力値が上がるのかを示すパラメーター)を底上げしてから、さらにキャラを1から鍛え直す事で、結果的に転生する以前よりもさらにキャラを強くする事が出来るのだ。

 それだけではない。このゲームにも魔法や技の類があるのだが、それさえもレベルという物が存在し、最高99まで上げる事が出来る。
 しかしその技や魔法の数が半端じゃない上に、やろうと思えばキャラ固有技を覗く全ての技や魔法を、1人のキャラに習得させる事さえも可能なのだ。さらに武器の種類に応じてウェポンマスタリーと呼ばれる熟練度という物が存在し、拳、剣、槍、弓、斧、銃、杖の7種類の熟練度を最高255まで上げる事が出来る。

 (ただし魔物型のキャラは魔物専用武器しか装備出来ず、ウェポンマスタリーも存在しない)

 さらにだ。このゲーム、何とアイテムにすらもレベルが存在し、そのアイテムに存在する『アイテム界』を攻略する事で、レベル100まで上げてアイテムを強化する事が出来る。
 それだけではなく最強武器や最強防具のアイテム界の最深部にいる『アイテム神』は同じアイテムを持っており、それを盗賊に盗ませる事で非売品で貴重品かつ強力な威力を持つ最強武器や最強防具を、無限に増殖させる事が出来るのだ。

 そしてこのゲームでは、各キャラにつき武器を1つ、防具やアクセサリーを3つ装備出来る。
 つまりレベル100まで強化した最強装備をキャラ全員分手に入れようと思えば、アイテム界に潜ってアイテム神から同じアイテムを盗んで、そのアイテムのアイテム界にまた潜ってまた盗んで・・・という作業を何回も何回も延々と延々と繰り返す必要があるのだ。

 しかもだ。アイテムの強化方法は、これだけに留まらない。
 各アイテムに『イノセント』と呼ばれる住人を住まわせる事でアイテムの能力値を強化する事が出来、例えば『ATK屋100』のイノセントを住まわせれば、そのアイテムの攻撃力を100増やす事が出来るのだが、これが各能力値につき19998まで増やせるのだ。

 (ただしEXP増加屋、マナ増加屋、ヘル増加屋は600まで。武器上達屋は3800まで。)

 このイノセント集めもアイテム界に潜ってイノセントを倒す事で行うのだが、1つのアイテムの1つの能力値だけで19998も集められるのに、それをキャラ全員分のアイテムの全ての能力値でやろうと思えば、一体どれ程の膨大な時間がかかるのか・・・想像に難しく無いだろう。

 当然の事ながら、ラスボスより強い敵なんてのも完備している。
 ラスボスのレベルは90なのだが、レベル1000とか2000とかの『ザコ』が出るマップもある程だ。
 しかもそんな連中でさえも、このゲームではただの弱キャラに過ぎない。いわゆる隠しボスと呼ばれている連中は、単にレベル9999にしただけでは到底勝てない程の実力を秘めているのだ。

 キャラを何度も転生させ、最強武器や最強防具を揃えた上で、そのアイテムを徹底的に強化して、そこまでやって初めて倒す事が出来る。
 そしてキャラやアイテムを極限までに強化すれば、そんな凶悪な強さを誇る隠しボスでさえも『一撃で』倒す事さえも可能なのだ。
 ダメージ1万なんて温い温い。極限まで強化したキャラなら1000万ダメージを叩き出す事さえも不可能では無い。

 そしてこのゲームでは、固有キャラを含めればキャラを103人まで登録する事が出来る。
 分かるだろうか・・・白花は上記の極限のやりこみを、103人分全員でやろうとしているのだ。
 103人全員の能力値を限界まで鍛え、103人全員に技や魔法を全て習得させて限界まで鍛え、103人全員に限界まで鍛えた最強武器や最強防具を装備させようとしているのだ・・・。
 これは100時間や200時間遊んだ程度では、到底終わらない作業量だ。
 しかも白花は何事もやるからには徹底的にやり込まないと気が済まない性格なので、余計に性質(たち)が悪い。

 白花は不眠不休でもう1ヵ月も遊び続けているのだが、まだまだ全然時間が足りない。
 単純計算すると30日×24時間でプレイ時間が720時間近くにまで達しているのだが、その程度では全然終わらない程のボリュームがこのゲームにはあるのだ。
 もっと、もっとだ。もっと時間が欲しい。その為には余計な事などしてはいられない。1秒たりとも時間が勿体無い。
 当然の事ながら、いちいち主に構っている暇など、今の白花にはこれっぽっちも無いのだ。 

 「おい小僧。腹減った。昼飯にしろ。」
 「あああ。」

 白花は主にカップラーメンを投げ飛ばした。

 「貴様、いい加減にせんかぁっ!?もうこれで何日カップラーメンを食い続けてると思っているのだぁっ!?」
 「あああ。」
 「しかも私が何を呼びかけても『あああ』と応えてばかりで・・・!!このサイトの管理人がそのゲームを遊んでいる時と、同じ症状になっているではないかぁっ!?」
 「あああ。」
 「もうカップラーメンなんて飽きた!!何か他の物を食わせんかぁっ!!」
 「あああ。」

 白花は主に、宅配ピザのチラシと5000円札を投げ飛ばした。
 虚ろな瞳をしながら、ただひたすらにPSPの画面を見つめ続けている。
 柚明がオハシラサマだった頃は、自分に美味しい手料理を作ってくれたというのに・・・この差は一体何なのか。
 主は舌打ちをして、仕方が無いので宅配ピザの注文をする事にした。

 「・・・うむ・・・うむ・・・それにエビとベーコンとバジルソースをトッピングして・・・うむ。」
 『はい、消費税込みで、合計で5250円になります。それでは30分程でお届けしますので、お待ちくださいますようお願いします~。』
 「了解した。大儀であったな。」
 『本日はどうもありがとうございました~。またのご利用をお待ち致しております~。』

 電話を終えた主が手元を見てみると、白花に手渡された現金は5000円しかなかった。

 「・・・あ、5250円と言っていたな・・・チッ、足りないな!!」

 なんかバクマンの中井先生みたいになっていた。

 「おい小僧!!宅配ピザを注文したのだが、金が足りないのだ!!」
 「あああ。」

 白花は主に、1億円が入ったアタッシュケースを投げ飛ばした。

 「うおおおおおお!?」
 「あああ。」
 「貴様、何事にも限度という物があろうが(汗)!!」
 「あああ。」
 「何なのだ貴様は!?一体何が貴様をそこまで駆り立てているのだぁっ!?」
 「あああ。」

 相変わらず白花は主の事に見向きもせずに、ただひたすらにPSPの画面を見つめ続けていたのだった・・・。

3.悪夢の続き


 ピンポーン

 「あああ。」

 ピンポーン

 「あああ。」

 ピンポーン

 「あああ。」

 それから30分後・・・注文した宅配ピザが届いたのか、呼び鈴が何度もなっているのだが・・・相変わらず白花は虚ろな瞳でPSPの画面を見つめ続けるだけで、全く呼び鈴に応じようとしなかった。

 「おい小僧!!客だぞ!!」
 「あああ。」
 「ええい、全く世話の焼ける奴だ!!」
 「あああ。」

 仕方が無いので主は槐の木から出て、先程から呼び鈴をしつこく鳴らしている来客を出迎えたのだが・・・

 「何だ、ピザ屋か?さすがに時間通り・・・貴様、野咲美羽!?」

 そこに立っていたのはピザの宅配員ではなく・・・虚ろな表情をした美羽だった。
 予想外の来客に、さすがの主も驚きの表情を見せたのだが・・・
 次の瞬間美羽は誰もが予想もしなかった、物凄くとんでもない事を言い出した。

 「ねえ主。ちんちん頂戴。」
 「・・・はああああああああああああああああああああああ!?」

 アッーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!?

 「ねえ主。貴方ちんちん持ってるんでしょう?」
 「いや、持ってるというか、付いてるというか・・・」
 「じゃあレジェンドのちんちん持ってる!?ねえ、持ってるんでしょう!?」
 「いや、確かに私のちんちんは伝説級というかビッグサイズというか・・・」
 「本当!?じゃあ頂戴よ!!お願いだから私にレジェンドのちんちんを頂戴よ!!」
 「うおおおおおおおお!?」

 美羽は鬼気迫る表情で主を押し倒し、美羽は上着のボタンを外して胸元をはだけさせた。 
 その開かれた上着から垣間見える美羽の豊満な胸の谷間、そして美羽の体の柔らかさ、美羽から漂ってくるとてもいい匂いが、思わず主を興奮させてしまう。
 とても恍惚に満ちた表情で、美羽は主を見つめ続けている。
 何というか、なんか凄くエロい状況になっていた。

 「・・・はあ・・・はあ・・・!!」
 「ちょ、おま・・・」
 「ねえ主、レジェンドのちんちん持ってるなら頂戴よ!!それさえ手に入れば全部コンプリート出来るのよ!!」
 「全部手に入るって一体何が全部手に入るというのだぁっ!?」
 「持ってるんでしょ!?ねえ、持ってるのよね!?お願いだから頂戴よぉっ!!」

 なんか涙目になりながら、プチヤンデレ状態で主に迫る美羽だったが、その時だ。

 「・・・あ・・・あの・・・山神様・・・ご注文があったピザを・・・届けに来たんですけど・・・(汗)」

 宅配員の青年が、引きつった笑顔で2人の様子を眺めていたのだった。
 次の瞬間、美羽はいきなり青年にも襲い掛かって押し倒した。
 押し倒されながらもピザをちゃんと確保している所が、いかにも仕事意識が高いというか。

 「ひいいいいいいいいいいいいいいいいいい!?」
 「ねえ、貴方レジェンドのちんちん持ってる!?」
 「もももももももももも持ってません!!僕のちんちんは極めて普通のサイズですっ(泣)!!」
 「何よ!?貴方も持ってないの!?誰に聞いても皆、普通のちんちんしか持ってないって・・・!!どうして誰もレジェンドのちんちんを持ってないのよぉっ!?」

 さすがに放っておくわけにはいかなかった。
 主は青年から美羽を引き離し、その綺麗な頬に平手打ちした。
 パァン!!と、乾いた音が羽様の森に響き渡る。

 「この、馬鹿者がぁっ!!」
 「きゃっ!!」
 「ここは私に任せて、今の内に早く行けぇっ!!」
 「あ、あの、代金は5250円になりま・・・」

 主は青年に1万円札を手渡した。

 「釣りは要らん!!迷惑料だ!!とっておけ!!」
 「あああああああありがとうございます山神様ぁっ(泣)!!」

 なんかもう涙目になりながら逃げ出す青年を尻目に、主は美羽に対して説教をしていた。
 目から涙を流しながら、美羽は主の説教に正座しながら黙って耳を傾けている。

 「いいか!!貴様も羽藤真弓のクローンとして、これまで凄惨な宿命に翻弄されて続けてきた事は私にも分かっている!!だがそれでも貴様は篠原スミレを打ち倒し、己の力で己の人生を掴み取ったのであろうが!!」
 「うっ・・・ううっ・・・」
 「悠峰学園での初めての学校生活・・・友人との人間関係・・・フェンシング部での部活動・・・そして貴様も女だ。クラスメイトの男子に恋をする事だってあろう・・・貴様にもそういった色々と深い悩みがあるのだろう。だがだからと言って、それで自暴自棄になってどうするというのだぁっ!?」
 「だって・・・だって私・・・」
 「もっと自分の身体を大切にせんかぁっ!!今の貴様のそんな様では、天国にいる不知火奈々が浮かばれぬわぁっ!!貴様は奴の分まで幸せになると誓ったのではなかったのかぁっ!?」

 何という醜態なのか。これがあの『現代最強の鬼切り役』と呼ばれている野咲美羽だというのか。
 主は失望していた。心の底から失望していた。
 それでも美羽にだって、決して譲れない物があるのだ。
 主の説教に心打たれながらも、決意に満ちた表情で立ち上がり・・・

 「私だって・・・私だって・・・どうしてもレジェンドのちんちんを手に入れたいのよぉっ!!」

 ボタンを外した上着の裏ポケットから・・・突然PSPを取り出した。

 「・・・は?」

 いきなりの美羽の行動に、呆気に取られる主。そして・・・

 「あああ。」

 具現化した白花がPSPを持って、美羽の傍までやってきた。
 そして美羽のPSPに赤外線通信を送った途端、美羽はとても嬉しそうな表情になる。

 「・・・あああ・・・レジェンドの『馬のちんちん』・・・やっと手に入れた・・・」
 「あああ。」
 「これでやっとアイテムをコンプリート出来た・・・良かった・・・本当に良かった・・・!!」
 「あああ。」
 「ありがとう白花!!貴方のお陰でようやくアイテムをコンプリート出来たわ!!」
 「あああ。」

 このゲーム、一部を除くほとんどのアイテムにはコモン、レア、レジェンドの3種類が存在し、公式には名言されていないもののレジェンドのアイテムのドロップ率は10%以下だと言われている。
 ちなみに美羽が手に入れたがっていた『馬のちんちん』というアイテムは実際に存在するアイテムであり、特定のマップの特定の時期にしか出現しない、特定の敵しか所持していない。
 おまけに美羽が探しているのはレジェンドだ。入手は極めて困難な代物だと言える。

 そしてこのゲームは他のプレイヤーと赤外線通信を送る事で、そのプレイヤーが入手した事のあるアイテムを、ヘルと呼ばれるゲーム内の通貨を払う事で入手する事が出来る(一部を除く)のだ。
 これを活用すれば、アイテムのコンプリートへの道がより開けるという訳だ。
 白花はアイテムなんてとっくの昔にコンプリートしているので、美羽にレジェンド版の馬のちんちんを提示する事など別に造作もない事だった。

 「やっと手に入れたよぉ、レジェンドのちんちん・・・えへへへへ・・・ちんちん、ちんちん・・・」
 「こ~ら、美羽ちゃん。いたいけな女の子が、そんなはしたない言葉を乱発したら駄目よ?」

 そこへ、遅れてやってきた美鳥がようやく美羽に追いついた。
 とても嬉しそうな表情で、美羽が美鳥に駆け寄る。

 「もう、美羽ちゃんったらバスから降りてから、縮地法であっという間に槐の木に行っちゃうんだもの。本当にせっかちさんなんだから。私は縮地法なんて使えないから、明鏡止水で慌てて追いかけて来たのよ?」
 「えへへ・・・お母さん、アイテムコンプリートしたよぉ・・・」
 「はいはい、良かったわね。だけど白花君にもちゃんと礼を言わないと駄目よ?」 
 「うん、ちゃんと白花に礼を言ったよ?」
 「はい、よろしい。白花君。私からも礼を言わせて貰うわね。ありがとう。」

 美羽の頭を撫で撫でしてから、美鳥は白花に紅茶とクッキーの詰め合わせを手渡した。
 ダージリンとかアールグレイとかベルガモットとか、色々な銘柄が入っている。
 しかもティーパックなどというインスタントな代物ではなく、いずれも本格的な茶葉ばかりだ。

 「主。貴方にも美羽ちゃんが迷惑をかけてしまったようで・・・本当に御免なさいね。」
 「あ・・・いや・・・気にするでない・・・(汗)。」
 「それじゃあ美羽ちゃん、さかき旅館に戻りましょうか。」

 美鳥と手を繋ぎながら、美羽はとても嬉しそうな表情で山道を降りていく。
 そして白花もPSPの画面と睨めっこしながら、槐の木の中へと戻っていった。
 ひゅ~っ。
 ピザを両手に抱えながら唖然とした表情の主に、冷たい秋風が降り注いだのだった・・・。

4.悪夢の果てに


 それから1年の時が流れた。
 あれから24時間365日、不眠不休でこのゲームをやり込み続けた白花は、遂にこのゲームの最終到達地点にまで辿り着いた。

 登録された103人全員のレベルを9999にした。
 転生を何回も何回も繰り返して何度も何度も鍛え抜いて、103人全員の能力値をカンストさせた。
 103人全員に、キャラ固有技を覗く全ての魔法や技を覚えさせ、その全てをレベル99にした。
 魔物型を除いた全員の全てのウェポンマスタリーを、全てレベル255にまで鍛えた。
 当然、103人全員に最強武器と最強防具を装備させ、その全てをレベル100に鍛え、その全てに限界まで鍛えたイノセントを限界まで移住させた。
 アイテムもコンプリートしたし、職業も全て出現させた。
 マルチエンディングも全種類見たし、隠しシナリオのエトナ編もクリアした。隠しボスも全員ぶち殺した。
 このゲームの通貨であるヘルも、9兆9999億9999万9999でカンストさせた。

 ここまでやり込んだ結果、プレイ時間が既に8000時間にまで到達しようとしていた。
 桂が「1万時間遊べるシミュレーションRPG」などと言っていたのも、伊達ではなかった。
 もう、やれる所までやり尽くした。このゲームの最高の限界点にまで到達したのである。

 「終わった・・・やっと全部終わったよ・・・」

 なんか達観した清々しい笑顔で、白花はPSPの画面を見つめ続けていた。
 画面にはHP8000万、その他全ての能力値が2000万近くにまで到達した、白花が精魂込めて育て上げたこのゲームの主人公が映っている。
 もうこれ以上、このゲームで一体何を目指せと言うのだろう。

 「こんなのやっても、もう仕方がないかなぁ・・・」

 そう呟いた白花の表情は、何だかとても晴れやかだ。
 そんな白花の様子を見て、これで主も『ようやく小僧がこんな下らないゲームを辞めてくれる』と一安心したのだが・・・

 「毎度~、佐山急便ですけど~。オハシラサマにお荷物が届いているのですが~。」
 「あ、は~い。」
 「ここに天叢雲剣を捺印出来ますか?」
 「千羽妙見流最終奥義ぃ!!」
 「はい、結構ですよ。それでは失礼致します~。」

 またしても、桂からダンボール箱が届けられた。
 開封すると中に入っていたのは・・・PSP版「魔界戦記ディスガイア2ポータブル」の廉価版と攻略本だった・・・。

 『白花お兄ちゃん、こんにちわ。私たち、今も幸せに暮らしているよ。それで白花お兄ちゃんに朗報があるの。去年白花お兄ちゃんにあげたディスガイアなんだけどね、何と続編のベスト版が出たんだよ。』
 「・・・続編・・・だって・・・!?」
 『今回の続編はねぇ・・・何と!!100万時間遊べるシミュレーションRPGなんだって!!美羽ちゃんもね、これで白花お兄ちゃんもまた槐の木の中で退屈しないで済むからって勧めてくれたんだよ?良かったね、白花お兄ちゃん。それじゃあ身体に気をつけて頑張ってね。』

 なんかソフトのパッケージから、どす黒いオーラが放たれている。
 そして再び虚ろな表情になった白花が、どす黒いオーラに吸い寄せられるかのように、早速UMDをPSP本体に挿入したのだった・・・。

 「・・・あああああああはははははははああああああははははははあああああああ・・・」
 「やめろーーーーーーーーーーーーーーーーー(泣)!!」

 悪夢はまだまだ続く・・・!!