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アカイイト・アナザーストーリー

★にゃーっ


1.にゃーーーーっ


 多くの人が寝静まった、深い深い深淵の夜。
 今日は新月であるが故に月の光も地上には届かず、いつも以上に薄暗い夜となっている。
 その張り詰めた暗闇と静寂の中、1人の鬼が美咲の家に忍び込んでいた。

 神通力だけで玄関の鍵を開け、2階にある美咲の部屋に音も無く忍び込み・・・温かい布団にぬくぬくと包み込まれ、安らかな表情で眠っている美咲の寝顔を見て、鬼は邪悪な笑みを浮かべる。
 幾ら熟睡しているとはいえ美咲ほどの達人ならば、鬼の僅かな気配と殺気を敏感に察知して起き上がる事くらいは出来るはずなのだが・・・美咲はこの鬼の気配に全く気が付いていないようだった。
 規則正しい寝息を立てながら、安らかな表情で眠りについている。

 「クックック・・・この娘、やはり俺が思っていた通り、その身に特別な血を宿しているようだ・・・『贄の血』とはまた違った力を持つ血のようだがなぁ・・・」

 彼の名は滅鬼(めっき)。
 あの紅蓮の山神と称された最強の神・・・完全体の主でさえも指一本で倒せる程の力を持つ、史上最凶最悪の鬼であった。
 その高い戦闘能力は勿論だが、美咲にさえも悟らせない程の凄まじい隠密性は脅威の一言だ。
 それ故に、彼は今まで多くの人々の生き血を啜っているのだが、鬼切り部の誰もが彼を捕らえるどころか、その存在自体を突き止める事すら出来ていないのだ。

 滅鬼はニヤニヤしながら、美咲の美しい首筋に鋭い牙を突き立てようとしている。
 彼女の身に流れる聖なる血を、その身に取り込むために。
 今まさに、美咲の身が危険に晒されようとしている。
 美咲はまだ気付かない。相変わらず安らかな表情で眠りについている。

 「最近は下らないカス共の血ばかりだったが・・・今夜は最高のご馳走にありつけそうだ!!ヒャハハハハハハハ!!」

 カッ・・・!!と口を大きく開き、滅鬼が今まさに美咲の美しい首筋に牙を突き立てようとした、その瞬間。

 「にゃーーーーっ。」

 もぞもぞ、もぞもぞ。
 美咲の布団の中から、一匹の白猫が顔を出してきた。
 可愛らしいつぶらな瞳で、その猫は滅鬼の顔を無邪気な表情で見つめている。

 「・・・・・・。」

 カッ・・・!!と口を思い切り開いたまま、猫と見つめ合う形になった滅鬼。

 「・・・にゃーーーー?」
 「・・・・・・。」
 「にゃーーーーっ。」
 「・・・・・・。」
 「ゴロゴロゴロ・・・。」
 「・・・・・・。」

 猫が喉を鳴らしながら布団からもぞもぞと這い出てきて、嬉しそうに尻尾を立てながら滅鬼の頬に顔を擦り寄せてきた。
 次の瞬間。

 「・・・だはははははははははははははははははははははははははははは(泣)!!」

 涙目になりながら、滅鬼は慌てて玄関に向かって走り去っていったのだった・・・。
 彼が去っていった部屋の扉を、つぶらな瞳で見つめている猫。

 「にゃーーーーっ。」
 「・・・ん・・・」
 「にゃーーーーあーーーーーっ。」
 「・・・みーちゃん、どうしたの?」
 「くぁ・・・。」

 大きなあくびをした後、嬉しそうに喉を鳴らしながら、再び美咲の布団の中に潜り込む猫なのでした。

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 「だはははははははははははははははははははははははははははははははは(泣)!!」

 それから30分後・・・梢子の家から慌てて逃げ出した滅鬼。
 その表情は完全に恐怖と絶望に染まりきっていた。

 「・・・はぁっ・・・はぁっ・・・はぁっ・・・!!」

 全身に冷や汗を垂らしながら、慌てて青城の自然公園まで逃げてきた滅鬼。
 誰もいない深夜のグラウンドで、滅鬼は身体をガクガク震わせながら涙目になっていた。
 あの紅蓮の山神と称された最強の神・・・完全体の主でさえも指一本で倒せる程の力を持つ、史上最凶最悪の鬼である滅鬼。

 し か し 猫 だ け は 涙 目 に な る ほ ど 怖 か っ た !!

 「にゃーーーっ。」
 「うわああああああああああああああああああああああ(泣)!!」

 こんな話を知っているだろうか。
 猫は夜になると、広場に一斉に集まって集会を開くと言われているのだ。

 「にゃーーーーーっ。」
 「どああああああああああああああああああああああああああああああああっ(泣)!!」

 自然公園に居ついている沢山の野良猫たちが、必死の形相で逃げる滅鬼を一斉に追いかけてくる。
 いつもこの時間にエサをやりに来る人間だとでも思ったのか、滅鬼を追いかける沢山の猫たちは、何だかとっても嬉しそうな表情をしていた。

 「・・・痛っ!!てめぇ!!ちゃんと前を見て歩きやがれ!!」
 「すすすすすすすすいませんすいませんすいませんだははははははははははははは(泣)!!」
 「・・・ったく・・・何なんだあのオッサン・・・」

 夜勤の休憩時間中に猫にエサをやりに来た作業着の青年に、涙目で謝りながら逃げ去っていく滅鬼。
 断わっておくが、彼はあの紅蓮の山神と称された最強の神・・・完全体の主でさえも指一本で倒せる程の力を持つ、史上最凶最悪の鬼である・・・。

 「にゃーーっ、にゃーーっ、にゃあーーーー。」
 「おいおいお前ら、沢山あるから慌てるなって。」
 「ゴロゴロゴロ・・・。」

 作業着の男性を一斉に取り囲む、猫たちなのでした。

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 「だはははははははははははははははははははははははははははははははは(泣)!!」

 それから30分後・・・桂と柚明のマンションから慌てて逃げ出した滅鬼。
 その表情は完全に恐怖と絶望に染まりきっていた。

 「・・・はぁっ・・・はぁっ・・・はぁっ・・・!!」

 全身をガクガク震わせながら、涙目になって電柱にもたれかかる滅鬼。
 この街には、猫があまりにも多すぎる。
 今日の夜だけで、一体どれだけ多くの猫たちから逃げてきたのだろうか。

 『安姫の血』を身体に宿す梢子とナミを襲おうとした時も、梢子たちが飼ってる黒猫がとっても嬉しそうに滅鬼に擦り寄って来た。
 ならばペットが飼えないマンションなら大丈夫だろうと、今度は『贄の血』を身体に宿す桂と柚明を狙ったものの、今度は猫が飼えない腹いせからなのか、大量の猫のぬいぐるみが部屋に配置されていたのだ。
 いや、彼女たちだけではない・・・最近この辺りは猫ブームにでもなってしまったのか、多くの住人が猫を飼っている、あるいは大量の猫のぬいぐるみを置いている始末なのだ。

 「・・・ん?おい、そこの君。こんな夜中に何をしている?」

 防犯パトロールを行っていた青城警察署の警察官が、涙目で電柱にもたれかかっている滅鬼に話しかけてきた。
 その警察官に、泣きながらしがみついてくる滅鬼。

 「たたたたた助けて下さい助けて下さいいいいいいいいいっ(泣)!!」
 「一体どうしたんだ?誰かに襲われたのか?」
 「ね、ねねね、猫が猫がぁっ!!」
 「・・・はあ?猫ぉ?」

 断わっておくが、彼はあの紅蓮の山神と称された最強の神・・・完全体の主でさえも指一本で倒せる程の力を持つ、史上最凶最悪の鬼である・・・。

 「・・・にゃーっ。」
 「ひいっ・・・(泣)!!」

 右前足に包帯を巻いた猫が、警察官が乗っていた自転車の籠の中から顔を出してきた。
 それを見て、怯えた表情を見せる滅鬼。

 「ああ、この子はこの辺りで怪我をしていた猫でね。首輪に飼い主の電話番号が載っていたから、取り敢えず署で預かって朝になったら飼い主に電話しようかと思って・・・」
 「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああ(泣)!!」

 慌てて滅鬼はその場から逃げ出したのだった・・・。

 「・・・何だありゃ?」
 「にゃーっ。」

 つぶらな瞳で警察官に甘い鳴き声を上げる、猫なのでした。

2.にゃーーーーあーーーーーっ


 翌日の夕方・・・今日の授業を終えた桂と美咲が、剣道部の練習の為にチームメイトと一緒に、楽しそうに雑談をしながら更衣室で道着に着替えていた。
 今度の冬の大会まであと一週間を切っており、前回の秋の大会に続いての全国大会出場を目指し、剣道部員の誰もが意気込みを見せていた。
 既に試合に出るレギュラー陣も発表されており、桂は先鋒、美咲は大将に選ばれている。 

 「いよいよ冬のインターハイの地区予選まで、あと一週間かぁ・・・」
 「もし青城女学院が決勝まで勝ち進んだら、羽藤さんは前回百子ちゃんに負けた雪辱を今度こそ晴らさないとね。」
 「うん、そうだよね。百子ちゃんも先鋒で出るってこの間言ってたし。」
 「決勝戦は青城女学院か北斗学院付属高校か、どちらかが出てくると思うけど・・・それ以前に私達も足元をすくわれないようにしないとね。」
 「うんっ!!」

 そんな他愛無い話をしながら、穏やかな笑顔で着替えをしていた2人だったのだが・・・。

 「さてと・・・皆、ちょっといいかしら?」

 着替えを済ませた美咲が先程までの穏やかな笑顔とは一転して、とても真剣な表情で更衣室にいる部員全員に呼びかけた。
 楽しそうに雑談をしていた部員たちが一斉に静まり返り、視線が美咲に集中する。
 美咲は一度深く深呼吸して・・・気持ちを一旦落ち着かせて、重く口を開いた。 

 「分かってると思うけど・・・今日は25日よ?」
 「・・・・・。」

 美咲のこの言葉で、更衣室の空気が一気に張り詰める。
 誰もが緊張した表情で、美咲をじっ・・・と見据えている。
 一体これから、何が始まると言うのか・・・。

 「皆、準備は大丈夫?忘れ物とかあったら今の内に言ってね?」
 「・・・・・。」
 「どうやら準備は万端のようね・・・皆、覚悟はいいかしら?」
 「はいっ!!」

 部員たちの誰もが、一斉に気合いを込めた返事を美咲に送る。
 それを聞いた美咲はとても真剣な表情で、更衣室に置いてある大きな箱に手を掛けた。
 桂もゴクンと喉を鳴らし、美咲の傍らにある大きな箱を、とても緊張した表情で心配そうに見つめている。

 「・・・それじゃあ皆・・・開けるわよ・・・いいわね・・・?」
 「・・・・・。」
 「油断すると・・・死ぬわよ・・・!?」
 「・・・・・!!」

 覚悟を決めた表情で、美咲は大きな箱の蓋を外し・・・そして・・・


 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 「今度こそ・・・今度こそ、あの小娘どもの血を頂いてくれる・・・!!」

 桂たちが更衣室で着替えている頃・・・桂と美咲の人ならざる力を持つ血を狙って、滅鬼が道場に姿を現していた。
 強力な陰身の術を使って姿を消し、2人が現れるのを腕組みをしながら、虎視眈々と待ち続けている。

 あの紅蓮の山神と称された最強の神・・・完全体の主でさえも指一本で倒せる程の力を持つ、史上最凶最悪の鬼である滅鬼。
 そんな彼の陰身の術は、達人クラスの剣と術の使い手である美咲でさえも、全く見破る事が出来ない程の強力な代物だった。

 これまでの猫の妨害によって、滅鬼は桂と美咲の特別な血をその身に取り込む事が出来なかった。
 そんな彼が目を付けたのが、この学校の敷地内なのだ。
 さすがに学校の中にまで猫はいないだろうし、わざわざ猫のぬいぐるみを部活の練習にまで持ち込むような馬鹿はいないだろうと・・・滅鬼はそう判断したのだ。

 それでも更衣室で2人を襲うとなると目のやり場に困ってしまうので、滅鬼は2人が更衣室から出た瞬間を狙っていた。
 その時に姿を現して、力づくで2人を襲ってしまえばいい・・・美咲は鬼切り役にも匹敵する程の実力を有しているようだが、それでも完全体の主さえも遥かに凌駕する最凶最悪の鬼である滅鬼にしてみれば、そんな美咲でさえも虫ケラ同然だ。

 静かに・・・ただ静かに、滅鬼は桂と美咲が更衣室から出てくるのを待ち続け・・・

 「・・・来たな・・・!!」

 しばらくして、更衣室の扉が勢い良く開け放たれ・・・

 「羽藤桂!!松本美咲!!貴様等の血、貰っ・・・!?」

 陰身の術を解除し、桂と美咲に襲い掛かる滅鬼。
 だが、次の瞬間。

 「「「「「にゃああああああああああああああああああああああああああっ!!」」」」」

 そこから一斉に現れたのは、猫のコスプレをした桂たちの姿だった・・・。
 猫の耳を面に、猫の手を小手に、猫の尻尾をお尻に装着し、さらに竹刀の先端に肉球が付けられ、全身が猫で武装されている・・・。

 「何じゃこりゃあああああああああああああああああああああ(泣)!?」

 慌てて陰身の術を掛け直し、怯えた表情でその場を離れる滅鬼。
 ガタガタと身体を震わせながら、物陰に隠れて泣きそうな顔で、桂たちの様子を伺っている・・・。

 「にゃーーっ。」
 「にゃーーっ。」
 「にゃーーーごーーーっ。」
 「うにゃにゃにゃ。」
 「ゴロゴロゴロ・・・」

 にゃあにゃあ言いながら、楽しそうな表情で会話(?)をする桂たち。
 何だこれ・・・何だこれ・・・何だこれ・・・何だこれ・・・何だこれーーーーーー!?
 目の前の信じられない光景に、滅鬼の表情は恐怖と絶望に支配されていた・・・。
 あの紅蓮の山神と称された最強の神・・・完全体の主でさえも指一本で倒せる程の力を持つ、史上最凶最悪の鬼である滅鬼。

 し か し 猫 だ け は 涙 目 に な る ほ ど 怖 か っ た !!

 「うにゃにゃにゃーーーっ。うにゃ。うにゃ。」
 「うにゃっ。うにゃっ。うにゃっ。」

 美咲の指示(?)で、桂たちは一斉に柔軟体操を始めた。
 2人一組になって、互いの身体をぐぐっと押し始める。

 「・・・って、何で今ので通じてんだぁーーーーーーーーーーーーーー!?」
 「こらぁーーーーっ!!貴方たちぃーーーーっ!!」
 「・・・!?」

 そこへ鳴り響いた、剣道部の顧問の先生の怒鳴り声。
 部員たちの視線が、一斉に道場の入り口に集中する。

 「そうか!!立花先生がこいつらのふざけた行為を注意しに来たんだ!!きっとそうに違いない!!」

 剣道は、礼に始まり礼に終わる武道だと言われている。
 それ故に猫のコスプレをしてにゃあにゃあ言いながら練習するというのは、明らかに礼節を弁えていない・・・剣道を侮辱する行為その物なのだ。
 だからこそ滅鬼は、立花先生が桂たちを厳しく注意し、それによって桂たちが全身の猫装備を外してくれる事を期待していた・・・のだが・・・

 「・・・気合いが足りないにゃっ!!今日が何の日なのか本当に分かってるのかしらにゃん!?」

 全身をドラえもんで武装した立花先生の姿が、そこにあった・・・。

 「・・・って、立花先生ぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーー(泣)!?」
 「今日は25日・・・猫(25)の日なんだにゃん!!」

 そう・・・今日は25日・・・桂の高校の剣道部の、月に一度の猫(25)の日なのだ・・・。
 これはこの高校の創業時代から代々受け継がれてきた、由緒正しき伝統。
 だからこそ桂の高校の剣道部では、猫(25)の日は完全に猫に成り切って練習に励まなければならないという、厳格なる掟があるのだ・・・!!

 「・・・いや、ドラえもんは猫だけれども!!確かに猫だけれどもーーーーーーーー!!」
 「にゃーーーっ!!うにゃにゃにゃうにゃん!!」

 準備体操が終わり、立花先生の号令(?)で一斉に打ち込み稽古を始める桂たち。

 「にゃーーーっ!!にゃーーーっ!!にゃーーーっ!!にゃーーーっ!!にゃーーーっ!!」

 美咲に向かって、思い切り面打ちを繰り出す桂。

 「にゃ。にゃ。にゃ。にゃ。にゃ。」

 それを的確に竹刀で受け止める美咲。

 「にゃーーーーっ!!」
 「にゃっ!!」
 「にゃにゃにゃーーーっ!!」
 「にゃにゃっ。」
 「ぶぎゃーーーーっ!!」
 「ふーーーーーーーっ!!」

 他の部員たちもにゃあにゃあ言いながら、一生懸命竹刀を振るっている。
 ガタガタと身体を震わせ、逃げ腰になりながら、滅鬼はその様子を恐怖と絶望に満ちた表情で見つめていた・・・。

 「ひいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっ(泣)!!」

 あの紅蓮の山神と称された最強の神・・・完全体の主でさえも指一本で倒せる程の力を持つ、史上最凶最悪の鬼である滅鬼。

 し か し 猫 だ け は 涙 目 に な る ほ ど 怖 か っ た !!

 「にゃーーーっ!!にゃーーーーーーーーっ!!にゃーーーーーーー・・・あ。」

 すっぽ~ん。
 桂の竹刀からすっぽ抜けた肉球が、物凄い勢いで滅鬼に向かって飛んでいった。
 それが見事に滅鬼の顔面にクリーンヒットし・・・そして・・・

 「・・・うおおおおおらああああああれえええええええええええええええええ(泣)!!」

 物凄い叫び声を上げながら、滅鬼は恐怖と絶望に満ちた表情で、慌てて道場から逃げ出していく。
 だが滅鬼は道場の入り口付近で、美咲の帰りを待つアクリアに遭遇した。
 アクリアは滅鬼に気付き、そのつぶらな瞳でじぃーーーーーーーっ、と滅鬼を見つめ・・・そして・・・・

 「・・・にゃーーーーっ。」
 「って、お前もかよアクリアぁーーーーーーーーーーーーーーーっ(泣)!!」
 「ゴロゴロゴロ・・・」
 「ひいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっ(泣)!!」

 嬉しそうに喉を鳴らしながら懐いてくるアクリアを、滅鬼は物凄く情けない顔で振り払って、物凄い勢いで校門に向かって走り去って行く。
 そんな彼の後ろ姿を、とっても残念そうに見つめているアクリア。
 断わっておくが、彼はあの紅蓮の山神と称された最強の神・・・完全体の主でさえも指一本で倒せる程の力を持つ、史上最凶最悪の鬼である・・・。

 「嫌だあああああああああああ!!こんな街、もう嫌だああああああああああああ(泣)!!」

 どいつもこいつもどいつもこいつも、どこを見渡しても猫、猫、猫。
 どこの誰を襲っても、猫遭遇率100%。
 しかも毎月25日が猫(25)の日って。ありえない。馬鹿げている。
 まさかこの街が、こんなにも恐ろしい場所だったとは・・・滅鬼の心を恐怖と絶望が支配していた。

 「うわあああああああああああああああああああああああああああああん(泣)!!」

 物凄い表情で鼻水を垂らしながら、滅鬼は全速力でこの街から逃げ出したのだった・・・。


 そういうわけで桂と美咲は、完全体の主さえも遥かに凌駕する実力を持つ史上最凶最悪の鬼である滅鬼を、自分たちが滅鬼に命を狙われているという事に気付きもしないまま、無自覚の内にこの街から追い出してしまったのである・・・。

3.おまけ


 同時刻・・・青城女学院剣道部。

 「いよいよ大会まであと一週間を切ったわよ!!順当に勝ち進めば北斗学院付属高校と準決勝で当たる事になるわ!!皆、気を引き締めて練習に励みなさいワンワンワン!!」
 「オサ先輩ワンワンワン!!」
 「梢子先輩ワンワンワン!!」


 同時刻・・・北斗学院付属高校剣道部。

 「いよいよ大会まであと一週間を切った!!順当に勝ち進めば青城女学院と対戦するのは準決勝だ!!前回の雪辱を皆で今度こそ果たそう!!皆、気を引き締めて練習に励むブッブブブッブーーーー!!」
 「烏月先輩ブッブブブッブーーーー!!」
 「千羽さんブッブブブッブーーーー!!」