「Q109」(2006/03/04 (土) 18:51:25) の最新版変更点
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Q.みちるがしゃぼん玉遊びばかりしているのはなぜ?
A.直接的な理由としては、遠野みちるが胎児の時に聞いていた美凪の願いに答えたかったから。
「あのね、いっしょにね、おままごととかシャボン玉遊びとかしてあそびたいの」
だが、物語全体という観点から見ると、二つの意味が込められているように思える。
なかなか飛ばないしゃぼん玉は、生まれてくることができなかったみちる自身の象徴。
空に浮かび上がったしゃぼん玉は、空で泣いている神奈に届けたい幸せな思い出の象徴。
しゃぼん玉とんだ やねまでとんだ
やねまでとんで こわれてきえた
かぜかぜふくな しゃぼん玉とばそ
しゃぼん玉きえた とばずにきえた
うまれてすぐに こわれてきえた
かぜかぜふくな しゃぼん玉とばそ
(作詞:野口雨情 大正11年)
しゃぼん玉をテーマにした有名な曲だが、この歌詞の作者である野口雨情は作詞する一昨年前、娘をわずか二歳で失っている。だから「うまれてすぐに こわれてきえた」と嘆く。幼くして亡くした我が子を悼む詩だ。
SEEN601.TXT
飛べないシャボン玉が、いくつもいくつも、生まれたと思ったら壊れて消えた。
美凪シナリオでも同じように「生まれて」すぐに「壊れて消えた」と表現される。明らかに野口雨情の詩を意識しているのが分かるだろう。ここでしゃぼん玉は、はかなさと壊れやすさの象徴として扱われている。
みちるも同じだ。
SEEN603.TXT
【美凪】「…でも…みちるは生まれてくることができなかったんです…」
遠野みちるは生まれてくることすらできなかった。みちるは所詮ニセモノでしかないし、彼女自身そのことを知っている。
なかなか飛ばないしゃぼん玉は、みちるという不確実な存在そのものを象徴しているように見える。
SEEN609.TXT
【みちる】「…でもね…」
【みちる】「やっぱりみちるはみちるじゃない…」
【みちる】「ほんとうのみちるはどこにもいない…どこにも居場所なんてないの…」
SEEN607.TXT
みちるの声が、空を知ることなく、生まれてすぐに消えたシャボン玉のような声に聞こえた。
いずれは美凪を残し空へと消えることになるだろう自分の運命を、みちるはしゃぼん玉に重ねて儚んでいたかもしれない。
しかし、それだけではないだろう。
くるくると色を変えながら浮かぶしゃぼん玉を、とても綺麗だといってみちるは喜ぶ。空へと浮かび上がるかわいらしい姿に、みちるはきっと自分の持つ願いを重ね見てもいた。空に届けたい願い。空で泣いている神奈に、少しでも幸せな夢を見せてあげたい。
【みちる】「みちるは…しあわせな思い出をいっぱいもらったから…」
【みちる】「美凪と…それに国崎往人にも、いっぱいもらったから…」
【みちる】「女の子からもらった悲しいだけの思い出に、少しはしあわせな夢を
みせてあげることができたとおもうから…」
【みちる】「だからね、みちるはあの女の子に羽をかえしにいくの」
【みちる】「しあわせな思い出をいっぱいかかえて、女の子に会いにいくの」
いつの間にか笑わなくなってしまった美凪。自分のせいで、彼女から笑顔が消えた。美凪に笑っていて欲しい、幸せになって欲しい。それは、みちるの存在理由。
【みちる】「みちるね、美凪の笑ってる顔好きだよ」
【みちる】「美凪の笑ってる顔をみると、心があったかくなるもん」
みちるは願う。美凪に幸せになって欲しい、と。美凪が笑ってくれたなら──。美凪との幸せな思い出を届けて、神奈に少しでも幸せな夢を見せてあげることができる。
空に浮かぶしゃぼん玉は、みちるの必死の願い、空に届けたい願いの象徴でもあっただろう。
悲しみ、そして希望。全てを託して、みちるはしゃぼん玉を飛ばす。
自分の存在そのものが、美凪を足踏みさせているとしても。
風は吹くと、信じて。
風が吹けば、しゃぼん玉は壊れて消えてしまう。それでも。
風はきっと、空へと願いを届けてくれる。
しゃぼん玉きえた とばずにきえた
うまれてすぐに こわれてきえた
かぜかぜふくな しゃぼん玉とばそ
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