わんわん帝國に所属する愛鳴之藩国に榊遊という藩国民がいる。
アイドレス1の頃と違って吏族や護民官での藩国毎の出仕人数ノルマがなくなった関係で
マイル収入元がハローワークでのアルバイトがメインになっているごくごく普通のヒラ国民である。
(※最近、帝國軍の下級指揮官などに応募して応募人数が少なかった為かすんなり採用されているが、
今現在まともに作戦参加していないので収入はない)
アイドレス最初期から国民であり、愛鳴之藩国の合併元藩国の1つ「え~藩国」が元の所属で、
当時から『犬耳しっぽのメードさんアイドレスがお気に入り』と言っている。
今日はそんな彼女の休日の1日を追って見ることにする。
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AM8:00
休日なのでちょっと遅めにセットした目覚ましに起こされての起床。
「あふ・・・今日はお菓子作りの日でしたわね」
前日に決めた本日の予定を口に出しつつ寝床から這い出し手早く身嗜みを整える。
北国人の特徴である白い髪を纏め上げ、メード服を身にまとい姿見の前でくるっと1回りしつつ
耳と尻尾をしゃらんと揺らして全身チェック・・・そして嬉しげに微笑む。
合併してから愛鳴之藩国では戦力的な問題で編成で僧侶や騎士等のはてない国人系のアイドレスを着ていたので
私服としてメード服や付け耳尻尾を着込んで気を紛らわせていたが、
T14では新規取得してナースメードを組み込んだ北国人系アイドレスに着替える事になった為
お気に入りの『白い髪の犬耳しっぽのメードさん』に返り咲いたのである。
まぁ、正確には犬耳しっぽは相変わらず付け耳尻尾なのだが本人的には『ハッピー、ラッキー!イエイ!! 』ってなものであった。
「では、張り切っていきましょう♪」
AM10:00
お菓子を作る為の材料を買いに第三層区画にある大和丘商店街を訪れる。
買い置きがないではなかったがたくさん作る予定でどうせ買い足す必要はあるし、
卵や乳製品などはやはり新鮮なものを使いたかったのである。
「すみません、旧え~藩国エリア産の福酔の卵とクリームチーズ、あと小麦粉を頂きたいのですが扱っていらっしゃいますか?」
「いらっしゃい。え~、福酔の卵とクリームチーズと小麦粉ね。大丈夫、置いてますよ。ちょっと前まで品薄だったんだけどね。
最近また北国の人たちが戻って来たんで生産が安定しだしたらしいねぇ」
「それはなによりです。このまま景気も安定して上向いてくださると嬉しいですわね。あ、ではこのメモにあるもの全部頂きますわ♪」
「え~っとどれどれ・・・これまた随分買い込むね。結構かさばるけど大丈夫かい?」
「ええ、これでも結構鍛えていますしそれに・・・」
「「ゆ~さ~ん、おはようございま~す」」
「お手伝いしてくださるお友達も来て下さいましたから(微笑)」
駆け寄って来る犬士たちの声を聞きつつ店主に優しく微笑むのだった。
AM11:00
さて、商店街で合流した仲の良い犬士2名と共にお菓子の製作開始である。
たくさん作るのに一人では手が足りないのであらかじめお手伝いをお願いしていたのだ。
なお、自室のキッチンでは手狭で一度に作れる量が少な過ぎて追いつかないので
日向玄乃丈の誕生祝いの際に来店して知り合った『味のれん』の親父さんに事情を説明してお店の調理場を借りたのであった。
場所が商店街からもすぐで都合が良かったというのもあるのだが・・・営業時間にそんな事しててこのお店は大丈夫なのだろうか?
「混ぜ混ぜ~♪混ぜ混ぜ~♪ふふんふ~ん♪」
「ゆ~さん、こんなかんじでいいですか?」
「え~っと・・・はい、大丈夫ですわ(微笑)」
「みきさーさんぐるぐるですね。ぐるぐる~・・・」
犬士さんに教えながらハンドミキサーを使って手早く材料を混ぜ合わせていく。
元々え~藩国でお菓子作りが盛んだったことも手伝って趣味として時々作っていたのでこの辺りはお手の物である。
「さて・・・生地を器に流し込んで・・・気泡を潰すために(ドンドン!ドンドンドン!)・・・っと」
「どんどん!どんどど~ん!」
「どろどろですね~・・・(ペロッ)おぉ~あまいです♪」
「つまみ食いは駄目ですよ~・・・うん、後はオーブンで焼くだけですわ。今回も美味しく出来ると良いのですが・・・」
そう言って生地を流し込んだいくつかの器を予熱しておいたオーブン(店の物だけでは足りなかろうと自室のものを台車を使って持ち込んでいたりする)にセットして焼き始める。
こうなると調理場の片付けやケーキの焼け具合のチェックはあるが基本的には焼き上がりまでは待つのみだ。
そんな訳でお世話になった事だしそのままここで昼食にしようかと思ったところで客がやってくる。
「おう、いらっしゃーい。よくきたねー、今日はサービスばい」
「あら、ありがとうございます。では、地鶏の塩焼きをお願いしますね。って、榊さん?」
「はい?・・・まぁ、こんにちは。お久しぶりですわ、たまきさん」
「えっと・・・みんなで味のれんのアルバイトですか?」
「いえ、ちょっとチーズケーキをたくさん作りたかったのでこちらの調理場をお借りしてたのですよ。あ、コロッケ定食を3つお願い致しますわ」
「「ころっけ、ころっけ~♪」」
「なるほど・・・でも何故そんなにたくさん作るんです?」
「最初は折角作るならちょっと色んな所に差し入れをしようかと思っただけなんですけど差し入れ先を色々考えてたら病院の先生方とか孤児院とか結構たくさんになってしまって・・・(苦笑)」
「あー・・・頑張って下さってる方々はたくさんいらっしゃいますものね・・・それでこの子達にも助けてもらってるんですね(微笑)」
「けーきのつくりかたをおしえてもらいました!(えっへん!)」
「つくったけーきをいっこもらえるのです♪」
そんな話をしている内に注文の品が出てきたので昼食タイム。
「どうよ?」
「うん、おでんも良いですがホクホクのコロッケも美味しいです♪食事が美味しいのは幸せですわね(微笑)」
「ええ、地鶏の旨味を塩が引き立ててて大変美味しいです(微笑)」
「「はふはふはふ・・・(熱さと美味しさで答える余裕がない模様)」」
「そらよかばい」
嬉しそうに笑う親父さんに見守られながらしばし幸せな昼食を楽しむ4名であった。
PM2:00
焼きあがったケーキを冷やす等の諸々の工程を終えた後、『味のれん』を後にしてケーキを持って各所へ差し入れに向かうのだが、
目的地全部を1人で回るのは大変なので警察署と交番、職業訓練施設の職員さんへの差し入れは犬士2名にお願いすることにした。
「では、こちらの手紙と一緒にお渡しして下さいね」
「「かしこまりました♪」」
ケーキと手紙を受け取った犬士2名はメードさん風(?)に応えて目的地へと出掛けて行く。
たまきと一緒に北国とはてないの子供が遊びまわる商店街を抜け、層間エレベータを使って第四層区画にある市民病院へと移動していた。
もう少し遅い時間になれば商店街は夕飯の買出しに来る親子連れなどで賑わうところだろう。
尚、持ち込んだ器材の撤収は後でということでまだ店に置かせてもらっている。
「すみません、手伝ってもらってしまって・・・。でも、たまきさんせっかくのお休みなのに良かったんですの?」
「ええ、ミーアさんが婚約されたと聞きましたので病院へも寄るつもりでしたから大丈夫ですよ」
「なるほど・・・ミーアさんはずっと病院に詰めていらっしゃいますから会おうと思ったら病院行くのが一番確実ですわね」
「ええ、会って直接幸せな様子を確認します(微笑)」
市民病院で
そんな事を話しているうちに病院へ到着。受付でそれぞれの来院目的を告げて医局へと通してもらうとちょうどミーアが医局に戻ってきたところであった。
「あ、たまきさん久しぶり~♪それにに遊ちゃん!なんだか珍しい組み合わせだけどいったいどうしたの?」
「私はチーズケーキを作ったので差し入れして回っているところです。と、言うわけでこちら病院の皆さんで召し上がってくださいませ(微笑)」
「私はお休みで愛鳴之藩国に少し戻ってきたのでバルクさんとの婚約で幸せいっぱい、と噂のミーアさんに会いに来ようと思ってたんです。
で、お昼に偶然榊さんと会ってお話を聞いたら行き先が同じだったのでケーキ運びをお手伝いしてきたました」
「わぁ、遊ちゃんのチーズケーキ美味しいからみんな喜ぶよ。ええ!そ、そんなに噂になってるの(真っ赤)」
「ええ、かなり(笑)」
「うう~・・・そんなに聞いて楽しい話でもないと思うんだけど・・・と、取り敢えずもうすぐ休憩になるからお茶にしようか」
「あ、では私はまだ差し入れに行くところがありますからこれで・・・」
「あ、そうなんだ・・・まだケーキいっぱいあるみたいだけど他に何処に差し入れに行くの?」
「ええ、あとは・・・孤児院の子供たちと政庁の皆さんにもですわね」
「そっかー、頑張ってね。孤児院にはもしかしたらバルク様が行ってるかもしれないからその時はよろしくね」
「政庁ですか、なんでしたらみんなの顔を見に後で行きますから一緒にケーキ届けておきましょうか?」
「はい、もし会えたらご挨拶させて頂きます。あ、そうして頂けると助かりますわ。ではこちらお願いします。・・・では、失礼しますね(微笑)」
PM3:00
今回の差し入れのメインである孤児院に到着。
もっとも全部の孤児院に差し入れるのは流石に無理なので今回は一箇所だけ・・・時間と財布の具合と相談して少しずつ回って行ってる次第である。
今日は中でも小さい子の多いところを選んだ。
「みんな良い子にしていますか? 私の焼いたチーズケーキですおやつにどうぞですわ」
ナースメードを着た職員の女性に手渡すと、もう子供たちが集まってきていた。
みんな期待に目を輝かせている。職員さんもにっこり笑顔だ。
「みんな~、今日のおやつはこちらのお姉さんがチーズケーキを作って来てくれました」
子供たちがぱああと笑顔になる。
「「お~、ケーキ!!」」
『まるで笑顔の花が咲いたみたいですわ。こういう顔が見れちゃうから、差し入れってやめられないんですのよね』
遊も釣られて笑顔になる。
「ちゃんと『ありがとう』ってお礼言って食べましょうね」
職員さんがこちらを向いて、ありがとうーと頭を下げた。
「「どうも、ありがとうー!!」」
一斉に倣う子供たち。
「はい、どうぞ召し上がれ、ですわ(微笑)」
遊もうれしくてちょっと尻尾が揺れた。
PM7:30
おやつの後、孤児院で仕事のお手伝いをしたり子供たちと遊んだりしているとすっかり日が落ちていた。
『味のれん』に戻って夕飯を頂きつつ器材を回収し、台車を押しての帰り道。
あちこちからささやかながらも幸せそうな団欒の様子が漏れ聞こえてくる。
「皆さんに喜んで頂けた様で良かったですわ・・・流石に少し疲れましたけど」
「・・・そう言えば、玄乃丈さんにはチーズケーキを召し上がって頂いた事がありませんでした。
クリスマスプレゼントは色々あってなかったようなものですから是非食べて頂きたいですわね。
- ん~、私の誕生日も近いですし『お誕生会』という名目で招待して召し上がっていただきましょうか♪」
「『お誕生会』にするならお世話になってるACEの方をお呼びするのも良いかもしれませんわね。
ベルカイン様やバルク様とは是非一度お会いしてお礼の言葉をお伝えしたかったですし(微笑)」
「うん、今度ミーアさんや弓美さんに相談してみましょう。もしご都合がつくようなら素敵な1日になりそうです♪」
PM10:00
誕生日会を夢にみながらおやすみなさいませ♪
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文章作成:榊遊・ミーア
イラスト作成:赤星 緑・ミーア
発表:榊遊
最終更新:2009年05月15日 20:17