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 穏やかな午後、開いたままにしていた窓から入って来た爽やかな風に爽一郎は頬を撫でられうたた寝から目を覚ます。
「ああ、うたた寝をしてしまったか…」
 目の前の机には大量の書類などがあり、仕事は山済みだか直ぐに取り掛かる気にもなれず、気分転換に庭を散策することにする。

 ハイマイル区画に立てられた屋敷の広い庭は綺麗に整備され、季節にあったさまざまな花が咲き乱れている。
 何気なくそれらを眺めながら歩いていると、ふと、目の端に見覚えのある長い髪の女性が見えた。
「っ!・・なぜここに・・」
 そう口にしてから気が付く。
 その女性は確か最近雇ったメイドだと。

 そのメイドはこちらに気付き、何か御用でしょうか?と尋ねてきたので、なんでもないと言って踵を返して歩き出す。

 そう、違う。顔も声も全く違う。

 見間違えた女性と、その若いメイドとは髪の色と長さくらいしか似ていないのに、こうもアッサリ見間違えるとは…
 疲れているのか…それとも、自分の中であいつがそれほど大きな存在になっているのか…
 爽一郎はそう考えながら自嘲気味に笑う。

 あいつは今の俺を見てどう思うのだろうな
 世界貴族でトレーダーで帝國軍に所属して…

「ずっと貴方を愛しています」
 あいつが言ったその言葉。
 俺はその誓いが守られるように生きられるのだろうか? 
「いや・・そんなこと考えてもしかたないな…どの道、俺はあいつが俺を許そうが許すまいが俺の道を歩むしかない…」
 そう一人ごちて空を見上げる。


 見上げた空はどこまでも青く穏やかで、この空の下で今も誰かが悲しみ、泣いているのを忘れそうになる。

「どこかの誰かの未来のために 地に希望を 天に夢を取り戻そう  われは そう 戦いを終らせるために来た…」

 爽一郎は静かに目を閉じると一つの思いを胸に、遠い昔に友人達と歌った歌を口ずさみながら仕事に戻ることにした。

 あいつが無理して笑わなくていい世界を作る為に…


(SS:矢上麗華@土場藩国・挿絵:フリー素材)