暑い日が続き早くも夏の到来を感じるこの頃、いかがお過ごしですか…?
皆さん今晩は、稲川JUM二です。
…すいません、引かないでください。
改めまして今晩は、桜田JUMです。
いやぁ、まだ5月なのに暑い!そんな暑い時は…少し涼しさが恋しくなりませんか?
いや、そんなに身構えないでください。
僕の話は、田舎に帰った時にお祖母さんがしてくれた話を聞くような感じで、肩の力を抜いて聞いてくれて結構ですので…
さて…これからお話しする話はある夏の夜のことなんですがね…
僕の知り合いの…槐さんという方から聞いた話なんです。
その日、槐さんは友人の白崎さんと川に夜釣りに行ったんですよ。
日も暮れて夜のとばりが辺りを包み、サラサラとせせらぐ川の音がなんとも心地よかったらしいです…。
槐「さぁ、一勝負行こうか、白崎…。」
白「ふふっ、僕も負けないからね?」
そんな会話をしながら暗い川に釣り糸を垂れていたんです。
夏ですからね、星は綺麗だし夜の風も涼しい…暑い昼間と違う雰囲気に槐さんいい気持ちだったんですよ。
…ところがね、しばらくして何げなーく「ふっ」と視線を川の向こうに向けた…
槐「…ん?」
そのときね、彼の視線の先…そうだなぁ、15mそこらかの距離の川の対岸。
そこに生えている葦の中にあるものを見つけたんだ。
槐(…女?)
彼が見たもの…それは川の対岸に群生する葦のど真ん中に白い服を来た髪の長い女が立ってこっちを見てたって言うんですよ。
こんな夜中に何であんなとこに女性がいるんだ?
…そう思ったのも一瞬のことだったって言います。
それはね、無理なんです…立てっこないんですよ、そんなとこ…
そこは葦は生えているといっても水深は1m以上ある川の中、加えて底は軟らかい泥なんです。
もし実際にそこに立ってるんなら普通胸の近くまで浸かっているはず…
なのにその女は普通に腰のあたりまで見えていたんです。
槐(これ…ヤバいなぁ。普通の人間じゃないな。)
槐さんそう思ったそうです。
隣を見ても友人はその女には全く気付いてない様子で釣りを楽しんでる。
槐(コイツ…あれが見えてないのかな…?)
そう思って槐さんがチラっと再びその女に目を向けた…
槐(……あれ?)
するとね、その女性、さっきいたはずの場所にいないんです。
槐(いない…僕の見間違いだったのかな?)
そう思って槐さん深いため息をついた。
するとその様子を見た友人が声をかけてきた。
白「どうしたんだい、槐?ため息なんかついちゃってさぁ。」
槐「あぁ、すまない。さっきちょっと変な……!?」
白崎さんの方を向いた槐さん…見ちゃったんだ。
さっきまで対岸にいたはずのあの女…
今度はこっち側の川岸の葦の中からじーっとこっちを見ていた。
白「…槐?どうかし…」
槐「帰るぞ!?」
白「え?」
槐「聞こえなかったのか!?帰ると言ったんだ!早く竿をしまえ!」
白「えっ?えっ?何だっていうんだい…まだこれからじゃ…」
槐「いいから!つべこべ言わずにここから離れよう!置いて行くぞ!?」
これ以上ここにいたらまずい…
そう判断した槐さんは半ば強引に友人に釣りを止めさせてすぐに車に乗ってそこから離れたんです…。
そして帰宅してほっと一息した槐さんは疲れと明日の仕事もあるので一杯飲んだらすぐに寝てしまった。
そしてその翌朝…槐さんが起きて仕事の支度をしていると、そこに幼い娘さんがやってきたんです。
槐「あぁ、おはよう薔薇水晶。」
薔「………」
ところが娘さん、挨拶の返事もせずじっと不思議そうな顔で槐さんを見たんだそうだ…
気になった槐さんが娘にどうかしたのか?って聞いた…するとね、
薔「お父様……昨日来た女の人…もう帰ったの…?」
って言うんです。
槐「…え?何を言ってるんだい?僕は女の人なんて連れてきてないじゃないか。」
槐さん、身に覚えがないことを言う娘にそう言うと…
薔「んーん、お父様…昨日後ろに白い服来た女の人連れてきてた…。」
槐「白い服の…女……!!」
その時槐さん、はっと思った。
娘さんが見たって言う白い服の女…あの場所から彼に憑いてきちゃってたんですねぇ…。
槐さん、すぐに知り合いのお寺の人に頼んで身を清めてお祓いしてもらったそうです。
後でわかったことなんですがね、槐さんたちが夜釣りしてたって場所…前に若い女の水死体が上がった場所だったそうですよ…。
これからの季節…夜の涼しさにふと誘われた時は、そこに転がる非日常に出会うのはあなたかも知れません…
その時は、どうか気を付けてください……。