僕達は、あの廃ビルからまっすぐギルドに向かい、事の報告を終わらせて、新しい家でそれぞれ自分の時間を過ごしていた。
しかし、そんな中事件は起こった。
僕は、その時自分の部屋にいた。
すると、「コンコン」と扉をノックする音が聞こえた。
「JUM君、入るよ。」
どうやら、蒼星石さんのようだ。
「どうしたの?」
「うん、ちょっと手伝って欲しいんだけど・・・・」
なんか、申し訳なさそうに言ってくる。
「いいよ。どうせ暇だったから。」
そういって、蒼星石さんとリビングに向かった。
しかし、後で、お願いの内容を聞かないで事を引き受けてしまった事を後悔した。
「ここで待っててね。」
そういって、蒼星石さんはリビングを後にする。
僕は、ソファーに座りながら蒼星石さんが来るのを待っていると、
「お待たせ・・・」
と、なぜか、肌着一枚で来た蒼星石さんだった。
「チョッ!蒼星石さん服着てくださいよ!!」
いくらなんでも、これは、刺激が強すぎる。
思わず、ソファーの上で後ずさってしまう。
「どうしたの?JUM君・・・」
そういって、僕に詰め寄ってくる。
やばい、やばい!!
「どうして、逃げるの?JUM君・・・」
どうしてって、怖いからです。さっきのゾンビたちとは180°違う恐怖があるからです。
「あ、あの・・・」
やっとのことで声を搾り出す。
「何・・・?」
「こういうのって、不味いんじゃないかな?」
「何が?」
「何がって、僕達初対面だし・・・お互いの事よく知らないし・・・」
「ふふ、紳士だね。JUM君は・・・・だけど、僕は、別にいいんだ。会った時から君の事が気になっていたから・・・」
え、え~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!
何?このおいしい展開!!
やばい!!マジで、ヤバイ!!
「・・・JUM君・・・・」
ヤバイ!!もう僕の上に乗ってきた!!
誰か!!誰か助けて!!
「ふわぁ~。ちょっと喉が渇いたですぅ~。」
そういって入ってきたのは、翠星石さん。
これは、助かったのか、死んだんだか分からない!!
あ、今僕と目が会った。つまり、これを見られてしまった。
「~~~!蒼星石に何やってるですか~!!」
と言って、僕と蒼星石さんを引き離した瞬間、僕の鳩尾に翠星石さんの鉄拳が落ちる。
「ぐふっ!!」
この人、前衛でも結構いけるかも・・・
「どうしたの?」
と、さっきの騒ぎを聞きつけた真紅さんがリビングに入ってきた。悪夢再び・・・
「ふ、不純なのだわ!!絆ックル!!」
と、右ストレートを僕の顔に打ち込む。
「がばっ!!」
さっきの翠星石さんの一撃で上手く体を動かせず真紅さんの右ストレートを思いっきり食らう。
俺、マジで死んだかも・・・
しかし、薄れていく意識の中、翠星石さんが、僕の胸倉を掴みガクガクと振り出した。おかげで、気絶する事も出来ない。
何か、問い詰めているようだけど、今の僕には聞こえない。意識を保っているのに精一杯だから。
「どうしたの?すごい音がしたけど・・・・」
そういって入ってきたのは、ここにいるはずの蒼星石さんだった。
翠星石さんの手が止まる。すると、僕の意識は闇の中に落ちてしまった。
気が付いたときには、僕は自分のベッドで寝ていた。
「いてて、なにも思いっきり殴らなくてもいいじゃないか。」
愚痴を、こぼしてからベッドを降り、リビングに向かった。
すると、なぜか蒼星石さんの前で正座して、俯いている水銀燈さんがいた。周りの皆も何故か小刻みに震えている。
「あ、JUM君。気が付いたんだ。」
「う、うん。でも、どうしたの?何で、水銀燈さんが正座しているの?」
すると、周りの皆は蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
え!!何?どうしたの!?何で皆逃げるの?
「JUM君。さっきの事を覚えている?」
「さっき?ああ、蒼星石さんが僕に詰め寄ってきた事ですね。」
「そう、その犯人が水銀燈なんだ。」
え?どういうことですか?水銀燈さんが犯人?
「この子は、自分に変化の魔法をかけて君に悪戯していたんだ。」
ん?今、空間歪まなかった?
「君が、どのくらい耐えられるか試して見たそうなんだ。」
あれ?蒼星石さんの後ろに蒼い炎を吐いている龍が見える。
「全く、よりによって、何で僕に変化したかって聞いたら、」
さっきの龍が炎のように赤くなってきた。
「もしもの事があっても大丈夫だからだって、本当に君は何考えているの!!」
何?この威圧感?尋常じゃないよ。蒼星石さん、ちょっと落ち着いたら?
威圧感むんむんのこの部屋は、さっさと出た方がいいな。
そう思って、こっそりとリビングから出た。
僕は、この日一つ学んだ。それは、
『蒼星石さんは、起こると物凄く怖い。』
ということだ。