僕の毎朝の仕事の1つにお嬢様達を起こす仕事がある。
1人1人部屋を回り起こさなくてはならない。
これが、また大変なのだ。
コンコン
ジ「お嬢様。入りますよ?」
銀「いいわよぉ」
彼女は、水銀燈お嬢様。
大抵は起きていて、何事もなくすみそうなのだが…
ジ「御朝食の準備ができているので下に降りてください。 では、失礼します。」
そう言って、ドアに手をかけた瞬間、スルリとお嬢様の手が僕の首に回る。
銀「もぅ、そんな執事みたいな喋り方してぇ。」
そう言って、更にギュッとされるとお嬢様の胸が背中に当たる。
ジ「おっ、おやめください!お嬢様」
思わず声が裏がえる。
銀「フフッ。可愛いわぁ。今日はこのくらいで勘弁してあげましょぉ」
ジ「では、失礼します。」
ハァ…。水銀燈お嬢様は、僕をからかうのが好きなようだ。
次は、金糸雀お嬢様のお部屋に。ノックをするが返事がないので中に入る。
金糸雀お嬢様の姿がない……ということは
部屋をでて、雛苺お嬢様の部屋へ向かう。
お二人は仲良しで、よく一緒に寝ているのだ。(というより、夜お二人で遊んでいて、いつの間にか寝てしまっていると言ったほうが正しいのだが)
ジ「お二人共起きてください。朝ですよ」
雛「……うゆ? あっ!ジュンおはよーなのぉ」
金「おはようかしらぁ」
ジ「おはようございます。お嬢様」
金糸雀お嬢様は次女、雛苺お嬢様は六女だが、お二人はとてもよく似てる。
雛「朝ご飯なのぉ」
嬉しそうにお部屋から飛び出る雛苺お嬢様
ジ「廊下は走らないでくださぁい。お嬢様」
……聞こえてない
次は、三女の翠星石お嬢様。
同様に、ドアをノックするが返事がない。
もう一度ノックをする。
………が、返事はない。
また、寝ていらっしゃるのか
翠星石お嬢様は寝ていることが多い。
ドアを開け中に入る。
そこには、今まさにパジャマを脱いで、下着姿になっているお嬢様がいた。
流れる沈黙
翠「~~ッ!?キャーーー!!!」
翠星石お嬢様の叫び声が屋敷中にこだまする。
翠「ジュン!てめぇ、何勝手に入ってきてやがるですか」
ジ「いえ、ノックをしましたが、返事がないので寝ていらっしゃるのか……」
僕が言い終わらないうちに、そこらの物を投げてくるお嬢様。
翠「ででけですぅ!!」
バタンとドアが閉められ、廊下へ投げ出される僕。
ジ「イテテ…」
そこえ今の騒ぎを聞きつけた蒼星石お嬢様が
蒼「ジュン君、大丈夫?」
心配そうな顔をなさるお嬢様に、大丈夫ですと答え立ち上がる。
蒼星石お嬢様は、翠星石お嬢様の双子の妹で四女にあたる。頭脳明晰で落ち着いていてお嬢様達の中で一番しっかりしていらっしゃる。
ジ「朝食の準備が……」
蒼「わかったよ」
そう言って、階下に降りていった。
次は、七女の薔薇水晶お嬢様。
コンコン
薔「……入っていいよ」
ドアをノックすると、お嬢様の声が
今日は、起きていらっしゃるのか…
薔薇水晶お嬢様は、起こしにいけば大抵寝ている。しかし、極希に起きてる場合がある。
この時がやっかいなのだ。
前回起きていたときは、ドアを開けた瞬間に上から盥が。さて、今回は…と用心してドアを開ける………が、何も起きないどころかお嬢様の姿もない。
焦ってあたりを探そうとした瞬間、開けたドアの後ろからこめかみにひんやりとした物を押し当てられる。
まさかお嬢様を誘拐しにきた強盗!?
「…いいか?動いたら……撃つぞ。 手を…挙げろ」
此処は逆らわず言われた通りに手を挙げる。
「……動いたな」
そう言って、引き金に手をかける。
ジ(そんな理不尽な!?)
が、犯人が引き金を引き終わる前に、腕を掴み投げ飛ばし馬乗りになる。
ジ「!?」
薔「……ジュン…朝から…積極的…」
お嬢様ぁ…
ジ「撃とうとした時は、さすがにあせりましたよ」
チッチッチと、指を振り
薔「…大丈夫……弾…入ってない」
そう言って引き金を引く
ズガーン!
入ってんじゃん
薔「……アハハ」
笑って逃げるな!
正直、前に述べた六人などまだ良い方だ(今日の薔薇水晶お嬢様は酷かったが)しかし、これも僕のつとめ!
と気合いを入れて、部屋に入る。
ジ「起きてください。お嬢様」
スースー
可愛らしい寝息をたてている。
ジ「お嬢様!朝ですよ」
体を揺らす
ガシッ
右腕を捕まれる。
雪「……ん~、フライドチキン…ですわぁ」
恐ろしい寝言を言いながら、口を大きく開ける。
ガブッ
…
……
ジ「イッテ~~~~~!!」
僕の叫び声で、飛び起きるお嬢様。
雪「何事ですの!?……って、ジュン様。おはようございます」
ジ「おはようございます。お嬢様」
彼女は、八女の雪華綺晶お嬢様。
花より団子。何より食べることが大好きなのだ。
雪「朝ご飯ですわぁ」
こうして僕は毎朝、歯形をつけられるのだ
最後は、五女、真紅お嬢様。
コンコン
紅「入りなさい」
真紅お嬢様は必ず起きている。
ジ「失礼します」
お嬢様は必ず化粧鏡の前に座って
紅「ジュン。私の髪をときなさい」
と言う。
クシをとり、お嬢様の髪をとかす。
いつみてもお嬢様の金色の長い髪は綺麗である。
紅「………なんなの?」
ジ「…え?なんとおっしゃいましたか?」
お嬢様の綺麗な髪に見とれ、話を聞き逃すことが多々ある。
紅「ハァ…まったく。使えない下僕だわ。今日の朝食は何かと聞いたのだわ」
ジ「今日は、クロワッサンにポタージュ、サーモンサラダ、料理長特製デザートになっております」
紅「そんな敬語なんて使って…。2人っきりのときくらい……」
ボソッと何か呟くお嬢様
ジ「今なんと?」
紅「なんでもないわっ!」
お嬢様は部屋を出ていってしまった。
これが僕の朝の仕事の1つ。
どうかな?
僕の大変さ…わかってくれた?
ぢゃぁ、僕はまだ仕事がたくさんあるからね
このへんで、失礼させてもらうよ
続く