頁をめくると、そこにあるのは最早"絵"ではなかった。ただ、真っ黒に。スケッチブッ
クという名前のついた四角いカンバスが、黒一色に塗り潰されている。
これは、一人の人物の顔が黒く塗り潰されていた絵よりも後に描かれたもの。
「……」
それは、何かに対する不安と拒絶の顕れ。だけど私には……どうすることも出来ないの
ではないかと。これを見る度に思う。
まみれている灰は落としたけれど、全体にまとわりついてしまった灰がちな雰囲気だけ
はどうしても拭えない。
スケッチブックを手にとったまま。私は暫く、それを見続けていた。